2019年4月3日水曜日

マレーシア連邦憲法を読む 9

現最高元首
さて、第4部は<連邦>で、マレーシアの政治規定となる。第1章は最高元首の規定。
第32条は<最高元首とその配偶者>である。(1)~(4)の要旨は、以下の通り。
連邦内の何人より上位に位するYang di-Pertuan Agongと呼ばれる最高元首を置く。最高元首の配偶者は元首に次ぐ上位に位する。この最高元首は5年を任期に統治者会議によって選出される。最高元首は何時でも辞任できるし、統治者会議は解任することもできる。

第33条<連邦の副元首>要旨は以下の通り。最高元首の空位期間、病気、連邦内不在その他何らかの理由でその職務が遂行できない時、代行する副元首が統治者会議で選出される。

第34条は<最高元首、有罪の場合の職務停止><最高元首の執務不能、その他>第35条は<最高元首とその配偶者の王室費、および副元首の報酬>第36条<国璽>第37条<最高元首の就任宣誓>と続くが割愛。

第2章は、すでに何度か登場している<統治者会議>についてである。
第38条「(1)統治者会議(Majlis Raja-raja/Confernce of Rulere)を置く。
(2)統治者会議は次の機能を遂行する。(a)最高元首および副元首の選出(b)宗教的行事、儀式あるいは式典などの連邦全体への拡大に関する賛否の表明(c)法律に対する同意あるいは同意の保留。また本憲法にもとづき統治者会議の同意を必要とし、または同会議との協議によりまたは協議後に行われるべき任命について助言を与えること。(d)本憲法182条(1)にもとづく特別裁判所の、委員の任命、(e)本憲法第42条(12)にもとづく特赦・刑罰の執行延期・猶予の下賜、もしくは判決の差し戻し・一時延期・減刑、または国家的政策(たとえば移民政策などの変更)の諸問題およびその他の同会議が適切と思う何事についても討議することができる。
(3)この会議が国家的諸事につき討議する際は、最高元首は首相の、またはその他の統治者および知事・各州首相の陪席を得るものとする;かかる討議は、内閣の助言に従う最高元首、および各州政府内閣の助言に従うその他の統治者および知事などの遂行する機能のひとつとする。
(4)統治者の特権、地位、爵位、あるいは位階に直接影響を及ぼす法律は、いずれも統治者会議の同意なしには可決されない。
(5)統治者会議は第153条にもとづく行政活動に影響を及ぼすような何らかの政策変更が行われる前には、協議をうける。(原文)」

…この後、(6)統治者会議の委員の自己の自由判断にゆだねられる事項の列挙と(7)(2)の(b)はサバ・サラワク州には及ばないことが描かれている。(1)(d)の182条(1)にもとづく特別裁判所とは、最高元首や州統治者が訴追された時に開かれる裁判所を意味する。第42条(12)は、統治者の一族の訴追に関する場合を意味している。特に重要だと思われるのは、(3)の規定である。マレーシアは立憲君主制の政治形態をとっているが、最高元首ならびにこの各州の統治者(スルタン)の統治者会議はかなり形式的なもので首相や各州の首相・知事などの助言に従うと明記されている。基本的には、日本の象徴天皇制や英王室のような『君臨すれども統治せず』に近い。ただ、(4)にあるように、スルタン制は、この統治者会議の同意なしには変えれないシステムになっており、しかも(5)153条の行政活動(すなわちマレー人優遇政策のブミプトラ政策)が変更されるときは、統治者会議で協議すると決められている。ブミプトラ政策変更のハードルは極めて高いと言える。

0 件のコメント:

コメントを投稿