ラベル 開発経済学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 開発経済学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2026年9月12日土曜日

「私の開発計画文書」

https://www.sankei.com/article/20260619-K4AJM6OP2BMETJ
O4LT7BORNQ5I/?outputType=theme_soccer_worldcup2026
昔々、M高校で3年生に受験の地理を教えていた時、アフリカの任意の国の開発についての計画を立ててみようというグループワークの課題を課した。当時の受講生は5名、それぞれ国公立や難関私大に進学していった優秀な子たちだった。

彼女らが選んだのは、コートジボワールだった。国立公園の観光開発などが提案されていたのだが、私が注目したのは、サッカーのナショナルチームを強化してW杯に出るという提案だった。多くのエスニックグループをまとめ上げ、国家としてのアイデンティティを確立したいと彼女らは言った。私は、高校生の斬新なアイデアに少しばかり感動したのを覚えている。

今回学院でもダイヤモンドランキング(8月8日付ブログ参照)を、やってもらうのだが、提示した政策群以外にも、自分なりの必要だと思える政策を入れてもらいたいと伝えてある。M高校での経験が、私にそう言わせたのだが、果たして意外で、なるほどと思わせるような政策提案が出てくるだろうか。楽しみにしている。

2026年8月22日土曜日

SUZUKI in INDIA

https://www.youtube.com/watch?v=URCrMg5B3ps
生徒諸君に見てもらいたいと私が考えているYouTubeチャンネルは、日本の自動車会社であるSUZUKIのインドでのビジネスと国際協力の話である。アニメーションになっているので生徒諸君も見やすいと思う。我がブログの読者の皆さんにも是非見ていただきたいと思う。
https://www.youtube.com/watch?v=URCrMg5B3ps

今回の授業では、HDI、サブ=サハラ・アフリカの4つの罠、サプライチェーンに組み込まれた中進国、金融と技術でリードする先進国の姿を伝えたが、このYouTubeでは、日本の関わり方が象徴的に描かれている。

SUZUKIがインドにインドに進出したのは、ビジネスである。ただ、他の先進国のメーカーのように単なる1つの市場としてインドを見たのではなく、インドという市場に合わせた車作りをした点で他を席巻した。インドの人々が購入できる価格に合わせて、しかも丈夫で雨にも悪路にも強い車を提供することに成功した。

当然ながら進出のメリットであるインドの労働賃金は安い。そのメリットは輸出することで多くの場合活かされる。だがSUZUKIは、国内需要にしぼり、消費を生み出した。工場建設を進めたわけだが、自動車工業は、部品の集積が重要である。インド国内にそういう様々な部品工場も生まれ、雇用を生んでいき、技術力も上がり、やがて彼らが消費者となってくれるというサイクルが生まれるわけだ。

一方で、カースト制度を工場内で打破していく。副社長自ら労働者と同じ食堂でランチを取るというのは、現地人幹部を戸惑わせる。インドのカースト制度(ジャーティといった方が正確だが…)では、上位の者が下位の者と食事をするとその穢れが伝染ると信じられてきたからである。しかし、この大きな大きなタブーを破ったことで、生産性は4倍になったという。これは伝統の破壊というより、覚醒であろう。

女性の地位向上にも働きかける。牛糞を集めるのは女性の仕事であるが、その牛糞を買い取ってガスに変え再利用する戦略をSUZUKIは取っていく。そのおかげで女性は現金収入を得て、やがて地位向上に結びついていったのである。ちなみに、インドの牛の数は世界最多である。

飲料水が安全基準値を越えた地には、ろ過装置付きの水販売機を設置していく。企業利益の還元のひとつだが、無料にはしない。1リットル0.2円という少額だが、あえて無料にはせず管理を地域に任せるカタチを取っている。

JICAの国際協力のテーゼは、”魚を与えるのではなく、釣り方を教える”というものである。SUZUKIが行っているビジネスと国際協力の融合は、この日本の国際協力のテーゼに従っている。インドの人々に寄り添いながら、これからも”魚の釣り方”をどんどん模索していくのではないかと私が思う。

生徒諸君には、こういう日本の姿勢を知ってもらい、世界の構造的暴力に対して、自分が何をできるのか、高校生という純粋な時期に考えて欲しいと思っている。

2026年8月11日火曜日

2学期に向けての教材研究4

サブ=サハラ・アフリカ諸国から中進国のASEAN諸国への学習は、さらに先進国へと進む。先進国の定義は、一応OECD加盟国なのだが、重要なのは、金融立国とサプライチェーンのトップやその周辺に位置する技術を持っていることである。今回の学習の最重要キーワードとなるサプライチェーンの内容から入ることにした。

現在のアメリカ経済を牽引しているのは、まぎれもなくIT企業である。ソフトウェア、ハードウェア、半導体の設計、SNSなの分野で世界トップの実績を誇るGAFAMGoogle/Apple/Meta/Amazon/Microsoftが有名である。

最も先端的なAIなどに使われる半導体のサプライチェーンは、設計はアメリカ企業、純度の高い素材は日本企業、製造設備機器はオランダのASML、実際の製造は台湾のTSMCがトップシェアをそれぞれ誇っている。ここには、中進国の(たとえばマレーシア・ペナン島の)半導体産業は、まだまだ入り込めない。技術力が追いつかないからである。だが、家電製品や自動車に使われる半導体なら作れるわけで、この辺が労働賃金の上昇とともに中進国の罠といわれる停滞状況があるわけである。やはり人は石垣・人は城、優秀な人材育成が待たれるところ。

自動車産業に関しては、完全に国内だけで内燃エンジンを作れるのは、日本、アメリカ、ドイツのみと言われている。世界の自動車メーカーも基本この3カ国の主導するいくつかのグループに組み込まれている。インド系のタタ・モーターズはジャグアーやランドローバーのイギリス系自動車メーカーの親会社であるが、エンジンに関しては自社開発もしているが、ステランティスと提携しているようだ。数え切れないほどの部品メーカーと、サプライチェーンを構築しているはずだ。ちなみに、インドで頑張っているズズキは自社でエンジン開発製造をしており、孤高の存在。この表中にはない。

旅客機の航空機産業に関しては、仏独のエアバス社と米のボーイング社が双璧をなしているが、日本企業は炭素繊維やチタン、ニッケル合金などの素材面で、重要なサプライチェーンを担っている。

先進国の技術力といっても、ある一部の国の影響力のもとにある。ただこれらの技術力を支えている開発や設備投資には莫大な資金が必要である。次は、先進国の金融面に移っていく。

2026年8月9日日曜日

2学期に向けての教材研究3

サブ=サハラ・アフリカの学習の後は、ASEAN(特にマレーシア・タイ・インドネシア・ベトナム・フィリピン)などの中進国にスポットを当てることにした。サブ=サハラ・アフリカとの対比のために4つの罠の提出課題に主要輸出品の欄を追加した表から入る。サブ=サハラ・アフリカ諸国との最も大きな相違は、工業製品を輸出しているところである。
これはグローバリゼーションの進展下で、サプライチェーンに組み込まれていることを示している。労働賃金が安い故に先進国の企業進出が増加した故である。治安・ガバナンス・ビジネス環境、教育をベースにした質の良い労働者という条件が、呼び寄せたものであることを生徒諸君に理解してもらうことが重要だ。

ちなみに、ASEAN諸国の現在の月額最低賃金の目安は、マレーシア/500USドル、インドネシア/250400、タイ/300USドル、ベトナム/160230USドル、フィリピン/160200USドル、カンボジア/210USドル、ミャンマー/60USドルとなっている。(日本の現在の最低賃金は、約179,3601~94,830円=約1137USドル〜1,235USドル)である。

マレーシアのペナンは東洋のシリコンバレー、タイのバンコクは東洋のデトロイトなどと呼ばれて発展しているが、実際のところは、ペナンではAIに使われるような最先端の半導体は作れないし、バンコクの自動車工場は日本製のエンジンをつんだ日本車そのものである。中進国の罠に陥っており、先進国入りにはまだ届いていない。

2026年8月8日土曜日

2学期に向けての教材研究2

サブ=サハラ・アフリカの学習の〆は、ダイヤモンドランキングとするアイデアが浮かんだ。このダイヤモンドランキングは、様々な命題に、重要だと思う項目をランキングしながら9つ選ぶという国際理解教育(開発教育)で学んだもの。

ポール・コリアーの4つの罠は、サブ=サハラ・アフリカ理解の重要な視点だが、これに追加的な学びを加えねばならない。貧困の最大の原因である農業の問題。植民地時代に良い土地を商品作物のプランテーションに取られたサブ=サハラ・アフリカでは、悪い土地で主食となるメイズや雑穀の生産を行うことになった。灌漑農業ではなく天水農業を今だに行っているので土地生産制が低い。これは、学院の図書館で借りてきた『シリーズ地域研究のすすめ② ようこそアフリカ世界へ』(遠藤貢・坂本拓人著))の第7章「経済と開発」(出町一恵)に詳しい。緑の革命が取り組まれた時代、1950年代にはケニアやジンバブエでも穀物生産が押し上げられたが、多くの国では80年代に経済停滞が起き、IMFの構造調整プログラムに飲み込まれ、関税引き下げ、公営企業の民営化とともに、政府支出削減の一環として農業分野の肥料補助金が廃止されたりして、農業の近代化が遅れたことも大きい。さらに、主食の慢性的な不足から、商品作物で得た外貨はその補填に使われている。

若者は農村から都市へと移動したが、雇用がなくインフォーマルセクターとしてその日暮らし医を強いられる。3度のアフリカ行で、いやというほどインフォーマルセクターの実態を見てきた。彼らの収入は、当然課税の対象とはならないので、政府の税収は拡大しない。このインフォーマルセクターの存在も貧困の原因として大きい。

これに帝国主義が、多民族社会を無視して引いた国境線によって、国民国家的なまとまりがないことも重要である。これらの学びを追加して、ダイヤモンドランキングを行うことにした。

最大の懸念は、サブ=サハラ・アフリカといっても国によってかなり違うことである。必要な政策を思考しランキングするのに、ステレオタイプはない。たとえば南スーダンやサヘル諸国なら紛争の罠をまず解決する必要がある。治安に問題がない国も多い。そこで、生徒自身に対象とする国を選んでもらうことにした。対象国を自ら詳しくリサーチする必要が生まれるが、それも重要。但し、HDIの上位にある国(モーリシャスや南ア、ボツワナ等)は対象国から省くことにした。

さて、その政策群は、以下のとおり。①軍・警察の充実、②政権の民主主義化(王政打倒)③デモクレイジーの打倒(クーデター等)④腐敗を監視するマスコミの確立⑤税制の確保⑥金融・商法などビジネス環境の整備⑥海外企業の誘致⑦世界銀行・IMFの融資を受ける⑦欧米や日本の融資を受ける⑧海外への移民を奨励しGNIを増やす⑨鉱産資源の国有化⑩新たな鉱産資源の開発⑪観光資源の開発⑫交通インフラ(道路等)の整備⑬発電所上下水道などの生活インフラ整備⑭公共交通システムの整備⑮スマホなどの通信設備の整備⑯デジタル化の推進⑰灌漑で農業の生産性を増やす⑱肥料の使用で農業の生産性を増やす⑲初等教育の充実⑳高等教育(大学・職業教育)の充実㉑保健医療の充実㉒環境問題への対応 後に国債の発行を付け加えた。

②はこれはエスティワニ王国のみに該当する。⑥⑦はそれぞれ厳しい条件がつく。⑧はディアスポラとなった自国民からの送金を期待すること、GNIは海外送金も入る。これと関連しているのが⑮⑯である。今や海外からスマホで送金可能な時代になっている。国債については、外貨(ドルやユーロ)になるし、高金利にならざるを得ないと思う。実際国債を発行している国もある。

サブ=サハラ・アフリカの様々な国に対応する政策となれば、これくらい政策の種類が多くなってしまったのだった。生徒諸君には、それぞれその選択理由を書いてもらう。かなり難しい提出課題になってしまったが、仕方がない。

2026年8月7日金曜日

2学期に向けての教材研究1

北海道から帰ってから、2学期の中間考査の範囲の教材研究をコツコツ進めている。昨年同様、この範囲は、政治経済的なアプローチである。本年はアフリカの開発経済学的な学びから、中進国のASEAN、さらに先進国へというベクトルで進めようと考えている。

1学期の末、期末考査後にすでに提出課題として、アフリカの地名の作業(提出課題)の授業を行った。アフリカ諸国の地名は、ヨーロッパやアジアと違い、馴染みが薄い。この作業の延長戦上で、今回もHDI(UNDP作成の人間開発指数:豊かさのランキング)の整理作業から入る。(昨年7月16日付ブログ参照)世界的な視点でアフリカ(アラブ系のホワイト・アフリカを除いたサブ=サハラ・アフリカ諸国)の置かれた位置を確認してもらうためだ。

さらに、ポール・コリアーの『最底辺の10億人』にある4つの罠を解説してから、サブ=サハラ・アフリカ諸国に絞って、HDI順に確認してもらう作業(画像参照)もすることにした。

「紛争の罠」については、外務省の海外安全HP(https://www.anzen.mofa.go.jp/riskmap/)のレベルを記入してもらうことにした。(これが最も現状としては正確で同時に調べやすい)

「天然資源の罠」については、かなり時間を要するので私の方で具体的な資源など事前にまとめ表に記しておいた。ポイントは資源との関わりで、コンゴ民主共和国のように、資源が紛争の罠と繋がっている:●、ザンビアのように、モノカルチャー経済に陥り国際価格に左右される:◎、現在新たな資源開発されている国:○、ボツワナのように、資源がうまく利用されている国:△、資源に恵まれていない国:ーといった記号も事前に挿入しておいた。

さらに、「内陸国の罠」で、内陸国に○を入れるようにした。最後の「劣悪なガバナンスの罠」については、”腐敗認識指数ランキング”(https://www.globalnote.jp/post-3913.html)から、数値と記号を入れるようにした。

最後に、この作業を通じて判明した「法則性」を箇条書きに文章化してもらうことにした。こういう思考的な教育実践が今最も重視されていると思う。

プリント・提出課題・パワーポイントを同時に作成していくわけで、すこぶる時間がかかる。しかしこれまでの教材研究で最高のものをつくりたいという想いが、酷暑の中で湧き上がるのである。

2026年2月28日土曜日

イランの影で…サヘルの現状

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_117.html#ad-image-0
ついにイスラエルと米軍のイラン攻撃が始まったようだ。3月に入ると砂嵐の季節がやって来るので、戦闘機等のジェット機の飛行に支障をきたす故、攻撃は2月中に始まるのではないかという予想がされていた。今はまだ速報段階であるので、イラン情勢のことは置いておいく。

本日は、日本ではあまり報道されないアフリカ・サヘル地方の現状について訴えるYouTubeがあったので、そちらのエントリー。https://www.youtube.com/watch?v=TvNQQg8sLUU

私がブルキナファソの北部サヘルの地に足を踏み入れたのは、かなり過去の話になってしまった。すでにブルキナファソの治安状況は、外務省の情報では、サヘル地方はレベル4・退避勧告になっている。首都ワガドゥグもレベル3・渡航中止勧告が出ている。あんなに平和で、治安など心配する必要がなかったのが嘘のようである。(画像参照)

YouTubeによると、ブルキナファソだけでなく、ニジェール・マリ・チャドといった旧フランス領の地域は、極度の貧困、天然資源の搾取(ニジェールはウランで有名。ブルキナファソも金の算出が増えている。)が要因となって、軍部によるクーデターで、反仏意識が向上し、フランス軍も撤退。そのあおりを受けてアルジャジーラやISIS系のイスラム武装組織が暗躍しているようだ。軍は、テロ組織を十分に抑えきれていないらしい。

ブルキナファソ事情を少しばかり知っている私は、当時の民主政府(といってもデモクレイジー的であった)は、やはりかなり腐敗しているように映った。もちろん、専門家としてJICAで日本に派遣された教育省のエリート官僚や、経済学を学んでいた学生さんなどは、真剣に国の将来を考えていたのだが、SONYという名の電化製品&ゲームの店に入ると、むちゃくちゃ高価な製品も並んでいた。(汚職で手に入れた金で得た)高級官僚などの家族向けの店とのこと。大統領が作ったという私的動物園の横を車で通過したこともある。一方で、日々の食を得るのに苦労している人々も、数多く見てきた。

一方で、青年たちは、反訪米的で”ラスタ”思想が強かった。ネスカフェ(現地ではコーヒーをみんなこう呼んでいた。)の空き缶を加工して土産物を作り、欧米人に売っていたのだが、「お前らの売りつけたもののゴミを持って帰れ。」というコンセプトだった。こういう国民感情があったのだ。一方、貧困家庭から口減らしで、首都に出てきた半分ホームレスの子供たちの多くは、コーラン学校の生徒だった。と、いっても仏教で言う乞食行(こつじきぎょう)のようなことをしてわずかな食を得ていた。極度の貧困の中、彼らがアルカイダやISISの組織に、飲み込まれても全く不思議ではない。ただ、ブルキナファソのイスラム教徒は穏健で、キリスト教徒徒と対立しているわけではなく、両者の混在した墓場を見て大いに驚いたこともある。わりとゆるいのである。

ちなみに、軍隊も警察もブルキナファソでは、教育を受けたエリートである。HDIでも世界最下層のブルキナファソでは、軍人になるのはそう簡単ではない。彼らが、国を憂う気持ちも理解できる。よって、軍事クーデターを批判する気は私にはないし、反欧米感情やラスタ思想にも理解できるところが大きい。これからも”アフリカ”留魂録としては注目していきたいところだ。

2026年2月24日火曜日

熱帯の経済が発達しない理由

https://www.youtube.com/watch?v=XQ-ITuArBLA
地理の教材でも使えそうなYouTubeを発見した。https://www.youtube.com/watch?v=XQ-ITuArBLA

経済が発展しているとは、国民1人あたりの付加価値が多いことを意味する。この付加価値を多く生み出すためには重化学工業が発達する必要がある。この重化学工業は、資本集約的産業という特徴がある。つまり、設備投資に膨大な金が必要である。これは「蓄財」への取り組みこそが重要であることを意味する。このYouTubeでは、蓄財を不道徳とするカトリックと、不道徳ではないとするプロテスタントの相違でヨーロッパの南北格差を説明している。さらに、蓄財の背景として、気候の相違からも語られる。Cs(地中海性気候)の南欧では、温暖故に食料を貯めるという行為は愚か(=腐らせる)な行為であり、北欧はその逆になる。高温多湿な熱帯(A)は、ヨーロッパの例から導かれる(食料の)備蓄の文化の無さが顕著であり、蓄財への意識も同様である。

農業の生産性の問題も大きい。生産性の高い国ではと蓄財が可能だが、低いと不可能である。熱帯の地質は、微生物の働きが活発すぎて、落ち葉や遺骸が分解され尽くしてしまい、土壌に還らないという特徴がある。Af(熱帯雨林気候)やAm(熱帯モンスーン気候)では、多大な降水量が養分を洗い流してしまう。樹木が多いことと土壌が豊かであることは関係しない。熱帯の樹木は根から酸を放出して、土や岩を溶かし痩せた土地から養分を得ることができる能力がある。これにより、土壌が酸性化し、作物にとっては成長が鈍る。伝統的な焼畑農業で生まれる灰や炭はアルカリ性で中和させる事が可能だが、どうしても生産性は低くなる。よって農業従事者の蓄財は厳しくなるのである。ところが、日本では渋沢栄一が、農業従事者に蓄財を勧め、銀行に預金を集めて、資本を形成したという過去があり、このことが日本の経済的成功の重要な一因だと説いている。…なるほど。

最初に、「教材に使えそうな」と書いたのだけれど、途中、もろにカトリックの悪口が語られていて、カトリックの学院で、直接このYouTubeを見せることは諦めた次第。(笑)

2026年1月18日日曜日

共通テスト2026 公共政経

続いて、公共政経の問題の考察。政経分野もかなり資料を読み、思考力を問う問題が多い。まずは、公共の問題から。日本国内の在留外国人の資料問題が第2問問2で出ていた。(画像参照)人口の数値の変化(資料1)と、定住者/永住者・技能実習/特定技能者・技術/人文知識/国際業務・留学・家族滞在/日本人の配偶者などの各国別分類(資料2)をもとに、読み解く正誤問題である。時節柄、良問であると思う。

また政経では、第6問で、SDGsに関する問題も登場した。いつかはこういう正面から取り上げた問題が出されると思っていたのだが…。問1では、HDI(人間開発指数)の誤りの記述も見られた。この第6問自体は、資料が膨大であるが、選択肢を見ればそんなに解けない問題ではない。第4問は政経の基本的知識が要求されるが、ここが勝負どころ。第5問が日本の人口減少問題でかなり時間を費やすので、第4問にどれだけ時間を費やしたかが分かれ目だというある予備校の解説は正しいと思う。

2026年1月10日土曜日

米国 反グローバリズムの鐘2

https://townphoto.net/tokyo/shibuya176.html
本日は、昨日に引き続き、大統領令14199で米国が離脱した国連関連31件のリストの備忘録である。国連関連では、日本は全て参加しているので◯✕などの記号は付記していない。

36:UNDESA/国連経済社会局(SDGsの推進を担当する国連事務局の中枢部門) 37:ECA/国連アフリカ経済委員会(アフリカの経済・社会開発を促進する国連地域委員会) 38:ECLAC/国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(中南米の経済政策研究・統計分析を行う国際地域委員会) 39:ESCAP/国連アジア太平洋経済社会委員会(アジア太平洋地域の同様の国連地域委員会) 40:ESCWA/国連西アジア経済社会委員会(中東・アラブ諸国の同様の国連地域委員会) 

41:ILC/国際法委員会(国際法の法典化と漸進的発展を担う国連総会の補助機関) 42:IRMCT/旧ユーゴ・ルワンダ交際刑事法廷残余機構(旧ユーゴスラビアとルワンダの国際刑事法体の残務処理を担う国際機関) 43:ITC/国際貿易センター(途上国の貿易促進・輸出支援を行うWTO共同機関) 44:OSAA/国連アフリカ特別顧問室(アフリカ開発アジェンダを推進する事務局組織)45:紛争下の子供に関する事務総長特別代表事務所(少年兵の動員禁止・紛争地の子供の保健を推進する国連機関) 46:紛争下の性暴力に関する事務総長特別代表事務所(紛争地での性暴力防止・被害者支援を担う国連機関) 47:子供に対する暴力に関する事務総長特別代表事務所(児童虐待・暴力防止の国際アドポカシー<擁護・代弁>を担う国連機関)48:PBC/平和構築委員会(紛争後の復興・平和構築を支援する国連の政府間諮問機関) 49:PBF/平和構築基金(紛争後の緊急復興支援を行う国連基金)50:アフリカ系の人々に関する常設フォーラム(世界のアフリカ系住民の人権保障・差別撤廃を推進する国連機関) 

51:UNAOC/国連文明の同盟(異文化・異宗教感の対話促進、過激主義対策を担う国連イニシアティブ)52:UN-REDO/国連森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減プログラム(途上国の森林保全を支援する国連プログラム) 53:UNCTAD/国連貿易開発会議(途上国の貿易投資・開発を支援する国連機関)54:UNDEF/国連民主主義基金(途上国の民主化・市民社会支援を行う国連基金) 55:国連エネルギー(国連機関感のエネルギー政策調整メカニズム・SDGsの7推進) 56:UNWomen/ジェンダー平等と情勢のエンパワーメントのための国連機関(2010年設立のジェンダー平等推進、情勢の権利保護を担う国連機関) 57:UNFCCC/国連気候変動枠組み条約(パリ条約の基盤条約) 58:UN-Habitet/国連人間居住計画(持続可能な都市開発を推進) 59:UNITAR/国連訓練調査研究所(途上国の外交官・公務員の研修を行う国連機関) 60:UN-Oceans/国連海洋(国連機関間の海洋政策調整メカニズム) 

61:UNFPA/国連人口基金(家族計画・母子保健等を支援する国連機関) 62:国連通常兵器登録制度(通常兵器の国際移転を透明化する国連の登録制度) 63:CEB/国連システム行政長官調整理事会(国連諸機関の政策調整を行う事務レベルの調整機関) 64:UNSSC/国連システム職員大学(国連職員の研修・能力開発を行う機関) 65:UN-Water/国連水(国連機関の水資源政策調整メカニズム・SDGsの6推進) 66:UNNU/国連大学(日本に本部があるグローバル課題の学術研究・政策提言を行う国連機関/本日の画像参照)

…こうしてみると、国連関連の離脱した組織一覧を確認した時の第一印象は、ずばりSDGsの破壊である。SDGsの総司令部・UNDESA/国連経済社会局からリストが始まっているのでその意図は明らかである。(その理想をたとえ理解できたとしても)国連にまかせておいても無理・無駄という諦観を感じるのであるのだが…。私家的考察は少し間を置いてエントリーしようと思う次第。

2026年1月9日金曜日

米国 反グローバリズムの鐘

激動の2016年年始であるが、トランプ政権が66の国際機関・条約から離脱したニュースは、まさに反グローバリズムの「鐘」をついに高らかに鳴らした、と私は思っている。昨日、その66の離脱した国際機関・条約の詳細を知りたくて、ホワイトハウスのHPにアクセスし、大統領令14199をなんとか和訳しようとしたが、うまく行かなかった。授業が始まった今日、学校で検索していたら、あるHPに詳細が示されていたのを見つけた。

https://dq310.com/ai/2026/01/08/%E3%80%90%E5%AE%8C%E5%85%A8%E7%89%88%E3%80%91%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97%E6%94%BF%E6%A8%A9%E3%81%8C%E8%84%B1%E9%80%80%E3%82%92%E6%B1%BA%E3%82%81%E3%81%9F66%E3%81%AE%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%A9%9F/

この66機関について備忘録的にエントリーしておこうと思う。膨大な資料となるので、本日は非国連機関の35機関のみを扱いたい。内容を記した( )の最後の◯△✕は日本の加盟状況を示している。

1:24時間365日炭素フリーエネルギー協定(2030年までに電力網の脱炭素化を目指すイニシアティブ◯)2:コロンボ・プラン評議会(アジア太平洋地域の経済。社会開発を支援する枠組み◯)3:環境強力委員会/CEC(米・加・墨の環境協力機関✕) 4:ECW/教育を後回しにはできない基金(紛争・災害地域の子供への緊急教育支援基金◯) 5:欧州ハイブリッド脅威対策センター(EU・NATO加盟国が設立したサイバー攻撃。情報戦対策の専門機関✕) 6:欧州国立道路研究所フォーラム(欧州各国のインフラ研究機関の連携フォーラム✕) 7:FOC/自由なオンライン連合(インターネットの自由・表現の自由を守る民主主義国家の連合◯) 8:GCERF/グローバル・コミュニティ・エンゲージメント・レジリエンス基金(過激主義対抗・テロ予防のため、地域コミュニティを支援する国際基金◯) 9:GCTF/グローバル対テロ・フォーラム(29カ国+EUが参加する対テロ制作強調の枠組み◯) 10:GFCE/グローバル・サイバー専門フォーラム(サイバーセキュリティ能力構築のための途上国支援中心の国際プラットフォーム◯) 

11:GFMD/グローバル移住・開発フォーラム(移民政策と開発政策を統合的に議論する政府感対話の場◯) 12:米州地球変動研究機構(南北アメリカ大陸の気候変動・県境研究ネットワーク◯) 13:IGF/鉱業・金属・持続可能開発に関する政府間フォーラム(鉱物資源ガバナンス改善を目指す70カ国の枠組み◯) 14:IPCC/気候変動に関する政府間パネル(気候科学の評価報告を作成する国際機関◯) 15:IPBES/生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム(生物多様性IPCCと呼ばれる◯) 16:ICCROM/国際文化財保存修復研究センター(文化遺産保護の技術支援・人材育成を行う政府間機関◯) 17:ICAC/国際綿花詰問委員会(綿花の生産・貿易・消費に関する情報交換と政策狭義を行う◯) 18:IDLO/国際開発法機構(途上国の法の支配教科、司法制度改革を支援する政府間機関◯) 19:IEF/国際エネルギーフォーラム(エネンルギー生産国・消費国の対話プラットフォーム◯) 20:IFACCA/国際芸術評議会・文化機関連盟(各国の文化政策機関が参加するネットワーク△)

21:IDEA/国際民主主義選挙支援研究所(民主主義の強化、選挙制度改革を支援する政府機関✕) 22:国際正義・法の支配研究所(対テロ法執行・刑事司法分野での国際協力推進◯)23:ILZSG/国際鉛・亜鉛研究会(鉛・亜鉛の生産・消費に関する統計・分析を提供する政府間機関◯) 24:IRENA/国際再生可能エネルギー機関(再生可能エネルギー普及を推進する政府間機関◯) 25:ISA/国際太陽光連合(インド主導で設立された途上国への太陽光発電推進の国際枠組み✕) 26:ITTO/国際熱帯林材機関(熱帯雨林の持続可能な管理と木材貿易の促進を目的とする政府間機関◯) 27:IUCN/国際自然保護連合(世界最大の自然保護ネットワーク・絶滅危惧種リストを作成◯) 28:PAIGH/汎米地理歴史研究所(米州機構傘下の地理・歴史・地図作成に関する専門機関✕) 29:大西洋協力パートナーシップ(海洋安全保障・環境保護中心の大西洋を挟む欧米・アフリカ・南米の協力枠組み△) 30:ReCAAP/アジア海賊対策地域協力協定(日本主導のアジア海域での海賊。武装勢力対策情報共有機構◯)

31:RCC/地球協力協議会(バルカン諸国の地域協力・EU統合支援✕) 32:REN21/21せいきのための自然エネルギー政策ネットワーク(再エネ普及状況を政府・NGO・企業が毎年報告する国際ネットワーク◯) 33:STCU/ウクライナ科学技術センター(旧ソ連の軍事科学者を民生分野に転換支援する機関・米・EU・日本が資金拠出◯) 34:SPREP/太平洋地球環境計画事務局(太平洋島諸国の環境保護・気候変動対策支援◯) 35:欧州議会ヴェネツィア委員会(欧州の憲法問題に関する諮問機関✕)

…ICPP(14)やIPBES(15)は高校の社会科でも教える重要な国際的枠組みだと思うが、それ以外にもこんなにも国際組織があったのかと、正直驚いた。日本でも一時期、かなり問題視された官僚の天下り先の関連団体ような感じなのだろうか。私自身は、直感的にこのことを思い出したのだった。

2026年1月5日月曜日

米国のベネズエラ侵攻 考

https://www.youtube.com/watch?v=KvZbYoRQIKw&t=9s
年末から、強襲揚陸艦イオー・ジマ等を沖合に展開させていた米軍は、ついに3日、ベネズエラに侵攻、極めて短時間でマドゥロ大統領夫妻を逮捕、NYCまで移送した。副大統領がその代わりになったようだが、アメリカは民主的な政府が確立するまで残る、という方針である。ベネズエラの大多数の国民は大歓喜している。本日はこのベネズエラ侵攻を考察しておきたい。参考にした信用できるニュースソースとトランプ大統領の演説内容は以下の通りである。

https://www.youtube.com/watch?v=BC2LxYT_4Go

https://www.youtube.com/watch?v=KvZbYoRQIKw

https://www.youtube.com/watch?v=HjeBeQlPcWw

まずは、国際法違反かという点。NYの裁判所から麻薬取締法違反で過去に訴追された、アメリカが大統領とは認めていない(前回の大統領選挙は、どう見ても不正選挙であった:国家元首免責の国際法に対しての立場)マドゥロを逮捕するための軍事行動であった。逮捕目的なのでFBIも同行し、また戦争ではないので国会の承認を得なくてもよいという、この筋道は一応通っている。(1989年のパナマ侵攻でのノリエガ逮捕に相似している。)

EU・西欧諸国の多くは、国際法違反だとはしつつも、今回の侵攻を是認している。日本は、あえて国際法や軍事行動には触れず、自由と民主主義・法の支配の確立という正義を支持する内容で、EU・西欧諸国よりトランプ支持の色合いが濃い。ロシア・中国・イランなどは当然強く批判している。(画像参照/拡大可能)

次に今回の侵攻の目的について考察したい。コロンビアからベネズエラ経由で、アメリカに麻薬が流れていたわけで、後ろ盾を失った麻薬組織もこれで壊滅させられる可能性が高い。トランプも演説の中で第二波(おそらく麻薬組織の撲滅)の可能性について言及している。マドゥロの逮捕・麻薬組織の撲滅・ルートの破壊が今回の侵攻の最大の目的であるといえる。

ベネズエラは社会主義化の際に、埋蔵量で世界一と言われた油田において、アメリカ企業を追い出して国有化した歴史がある。トランプの演説でもその再建が語られていた。ベネズエラはこの油田の設備投資を怠った故に経済危機に陥っており、国民は極度に疲弊していた。社会主義政権以前のアメリカ企業による経営に戻す、というのが2つ目の目的である。このアメリカ企業による採掘は、現状よりはるかに国民に経済的恩恵をもたらすだろう。

アメリカ国内の治安安定をトランプは演説の中でかなり語っている。麻薬と不法移民の蔓延はかなり深刻だったようだ。中南米の政治的・経済的安定は、アメリカへの不法移民の減少に繋がる。最も厳しかったベネズエラが復興すれば、その影響は大きい。これが目的の3つ目である。

ベネズエラの油田は、多額の融資をしていた中国の支配下に置かれる可能性が高かった。これを阻止したというのが4つ目の理由である。ちょうど、中国の特使がベネズエラを訪れて会談した直後に侵攻が行われたのは偶然ではないだろう。見事なタイミングである。中国特使はマドゥロの位置の特定に一役買ったわけだが、彼らは空路・陸路とも封鎖され、人質になった。ベネズエラ国民からすれば彼らは敵であり、これ以後どうなるかは全くわからない。

この米軍の侵攻は、世界中の独裁者に恐怖を植え付けることになった。やろうと思えば米軍は独裁者を簡単に倒すことができることが、白日のもとにさらされたといってよい。これも5つ目の目的に挙げていよいだろう。実際、北朝鮮はこれに呼応してまたミサイルをぶっ放した。北京もテヘランも怯えている可能性が高い。

さて、これもトランプ演説の中で語られていたベネズエラ国民の独裁者(というより犯罪者)を排除できたことで、もたらされる未来が、6つ目の目的であるといえよう。トランブは、あえて副大統領をそのままにした。国民からすれば、大統領選挙のデモクレイジーで敗北した野党統一候補のゴンザレスに一気に託したかったろうが、アメリカの指示ではなく、国民自らが民主的な選挙で次の指導者を選ぶべきだと考えたに違いない。私はこれを強く支持する。

私は、今回の軍事侵攻が、ベネズエラ国民に大歓喜で迎えられていることを何より重視したい。昔ポール・コリアーの開発経済学の本の中に、デモクレイジーの独裁者を先進国が排除し民主化することを推奨するという記述があったことを思い出した。当時は、植民地を多数抱えたイギリス人らしい発想であると思っていたが、トランプが実現してしまった格好だ。たしかに、これも必要悪かもしれないと思ったのである。

2025年10月4日土曜日

教え子からの依頼2題

あるクラスの授業終了後、生徒から社会学の本を読んで感想を書くよう指定校から指示があったそうで、どんな本を読んだら良いかと質問されたのである。

指定校はどこかを聞いた後、浮かんだのは、大澤真幸の『社会学史』だったのだが、これはかなり難解であるし、国際関係にも興味があるとのことで、少し時間をもらった。帰宅後に浮かんだのは、現在京大の大学院にいるL君から贈呈された古市憲寿の『古市くん、社会学を学び直しなさい』であった。日本を代表する12人の社会学者との対談で、マレーシアでL君と読書会をした『社会学史』よりは読みやすいだろうと思う。この中から印象に残った社会学者と専門領域について自分の意見をかけば良いし、熟読すべき分量も少なくてすむというメリットもある。興味を持った社会学者の著書なども良き参考文献案内になるだろう。月曜日にこの本を持っていって説明しようかと思っている。

同じく昨日、学園の教え子から嬉しいメールがあった。KG大学1回生で国際関係をやっていて、すでに途上国に行き、様々な学びをしていてアフリカにも行く予定があるそうだ。改めて高校生のためのアフリカ開発経済学テキストを送ってほしいとのこと。学園は、生徒1人ひとりに「iPad」を貸し出しするシステムなので、すでに手元にないのだろう。さらに資料があれば欲しいとのことだったので、今地理総合で教えている内容のパワーポイントをPDF化して送っておいた。少しでも参考になればと思う。

2025年9月15日月曜日

教材研究 工業と金融の周縁化考

https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1574570.html
教材研究のエントリーの続きである。グローバリゼーション下では、自由貿易体制の工業は周縁化している。前回のエントリーで示したように、途上国はサプライチェーンに入っているか否かで、経済発展の可能性大きく違う。一方、先進国の中でも、先進的な技術を持つ国が優位である。その例を少しばかり語ろうと思っている。

設計開発能力:IT(半導体などのハード面とOSなどのソフト面)や航空機、自動車などの設計開発能力(開発資金も含む)をもつ国が最も優位。これは、アメリカ、日本、ドイツ、フランス、イギリスなどになる。中国は、(かなり穏やかに言うと)リーバース・エンジニアリングを行い他国の開発能力を再現することに長けている。今のアメリカの対中強行経済戦略の原因でもあるわけで、このことも少し話しておこうかと思う。

高度な材質:半導体を例に取ると、必要なシリコン加工には、日本の信越化学(世界シェアが40%)とSUMCO(同20%)といった世界を牽引する企業が存在する。純度が高いので、他の追随を許さないようだ。凄いぞ、JAPANという話。

高度な生産設備:日本企業が作った純度の高いシリコン・ウエハースに回路を露光する装置・設備は、オランダのASMLが圧倒的シェア(95%)を占めている。(本日の画像はASMLからインテルへ装置を貨物航空機で運ぶ様子)昔はNIKONやCANONも参入していたようだが撤退したという。ちなみに、隣国の半導体はおろか、自動車などの機械工業の工作機械はほとんどが日本製で、以前感情的に不買運動を頑張っていたが、工作機械も破棄・不買したらよかったのに、と思う。

高度な部品生産:自動車では、最も生産が難しいのは、トランスミッション装置だそうで、日本企業は、アイシン(シェア20%)を筆頭に多くの企業が生産しており、極めて優秀だそうだ。これも同じく凄いぞ、JAPANという話。

先進的ではないが、どこでも作れるわけではない技術として、機械部品に使われる合金鋼がある。粗鋼ではなく、ニッケルやクロム。モリブデンなどを加えた強度・耐摩耗性・耐熱性が優れた素材で、中国やインド、マレーシアなどで生産されている。このあたりは先進国を中核とすれは、その周囲に広がるサプライチェーン国である。

その周縁に前述のサプライチェーンに入れない国々=経済構造の変化という「梯子」を外された国があるわけだ。

ところで、先進国の強みは工業だけではない。第三次産業で最大の収益を上げる金融のことに触れておかねばならない。ネットで、金融立国のランキングがあったので整理してみた。1位はアメリカ、2位はイギリス、3位はルクセンブルグ、4位はシンガポール、5位はドイツ、6位フランス、7位アイルランド、8位香港、9位スイス、10位はオランダ、11位カナダ、12位日本、13位イタリア、14位ベルギーと続いている。かの政府系ファンドのノルウェーは意外に22位だった。金融センターのランキングは、ニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポール、サンフランシスコ、シカゴ、ロサンゼルスの順となっている。

…グローバリゼーションのモノ・カネの話をしたので、最後に人についても語っておきたいと考えている。少子高齢化が進む先進国では、外国人労働者の増加という問題を抱えている。ヨーロッパでは、旧植民地からの流入に始まり、EU統合後、旧社会主義国からの流入、さらにシリア難民などのイスラム教徒が流入したという経過が有る。移民国家アメリカでは、中南米からの不法移民を巡って、民主党と共和党の政治的な問題から分断の危機さえ言われている。

…2024年の移民人口ランキングを見つけたので表にしてみた。1位はアメリカ。2位はドイツで、伝統的にトルコ系が多いが、シリア難民を多く受け入れて苦悩している。3位は、アラブ諸国からの労働者の多いサウジ。4位イギリス、5位フランスと旧植民地からの移民の多い国が続き、6位スペイン、7位カナダ、8位はUAE(サウジと同じアラブ系労働者が多い)、9位オーストラリア、10位は意外でロシア、11位はトルコ(シリア難民が多い)、12位はヨルダン(こちらはパレスチナ人)、14位はこれも意外だがウクライナ、15位はインド、16位はパキスタン、17位はイラン。この辺は良くわからない。(笑)18位はマレーシア(インドネシアやバングラディシュなどイスラム系アジア人が多いのは経験上知っている。)そして19位に日本となっている。少しずつ解説する時間があればいいなと思っている次第。

2025年9月14日日曜日

教材研究 自由貿易と保護貿易考

https://www.senghuat.com.my/brand-pensonic
体育大会関連の5連休の今日は4日目である。とはいえ、ずっと教材研究と中間試験の作成に励んでいる。久しぶりに教材研究のエントリー。資本主義経済の歴史で自由貿易と保護貿易、歴史的考察とグローバリゼーション下の現状を開発経済学の視点から考えてみた。

最初の先進国イギリスは優位性の中で、リカードの比較優位説によって国際分業を提唱する。しかし、フランスはナポレオンの大陸封鎖令で保護貿易化し自国の工業を育成、ドイツもリストの保護貿易説をビスマルクが採用、関税を導入して自国の工業を育成した。また、アメリカでは南部の自由貿易政策、北部は保護貿易政策を唱え、南北戦争の遠因をつくった。日本でも関税自主権の回復が大きな政治課題であった。保護貿易ができないわけで、自国の工業化が進まなかったのである。WWⅠの後の世界恐慌後、英仏はブロック経済、アメリカはニューディール政策、ドイツと日本はファシズム(この米独日はケインズの有効需要を自国内のインフラ整備で行うか軍需で行うかという相違)で、すべて保護貿易化を行った。その結果WWⅡが起こったという反省から、戦後の自由貿易体制(CATT/IMF/IBRD)を生むことになる。さらに、情報通信・交通機関の発達、そして冷戦の終了後、人・モノ・カネが国境を超えるグローバリゼーションへと発展する。

さて、このグローバリゼーションにおいて、コストを最も容易に削減できるのは労働賃金である。そこで安価に抑えられる途上国で生産を行う企業が増えてくる。もちろん、前述の紛争の罠や劣悪なガバナンスの罠に陥っている国は避けられ、きちんと教育を受けた従順な労働力がある国に投資され、技術力によって、サプライチェーン(SCM)に組み込まれることになる。たとえば、日本のメーカーのパソコンでも、ある部品は台湾、ある部品はマレーシアといった具合である。こうした企業の途上国への進出は、企業はコスト面のメリット、途上国に生産・経営等のスキルを学べるというメリットがある。実際に代替産業が生まれる可能性がある。上記画像は、サプライチェーンに組み込まれた国々。輸出品目(額)を確認すると、機械類が多い。インドの石油製品とあるのは、精製を行っていることを意味している。

…マレーシアには、Pensonicという(代替産業の)家電メーカー(画像参照)がある。(笑)私は日本企業と勘違いして、えらく安いなあと思い扇風機を購入したのだが…。また日本企業の協力を受けて国産車メーカーが頑張っている。フィリピンと聞くとバナナを連想するが、マレーシアで、メガネ(日本のMIKIの店舗)を購入した際、フィリピンで私に合ったレンズを作ると言われて驚いたことがある。

ところで、(前述のように)自由貿易体制は、国家間の戦争を防止するという利点があるが、同時に保護貿易可で国内産表を発展させることが難しくなる。投資を受け、スキルを学べる国はいいが、様々な罠に陥って投資を受けられない国には、経済発展への展望が見えない。しかもIMFや世界銀行等は、そういった国々に半ば自由貿易政策(先進国の商品を低関税で輸入させられ、先進国は天然資源やプランテーションの商品作物を低関税で輸入できる)を強制しており、これを受け入れないと融資を受けることができない。すなわち、途上国側から見るとその経済構造を固定化するもので、梯子を外されているのに等しい。開発経済学では、このような状況を「構造的暴力」と呼んでいる。

…最後に、最近のニュースでもあった中国のアンゴラモデル(天然資源を担保に資源開発やインフラ整備を行うが、全てを中国企業と中国人労働者によって賄う方式)の解説と、新植民地主義についても論じるつもりである。

2025年9月2日火曜日

教材研究 産業別人口から Ⅱ

https://garden-index.com/botsuwana/
経済発展は、産業別人口の変化を促す。第1次産業から、第2次・第3次産業へと移り変わっていく。古くは、イギリスのエンクロージャー。農園を追われた人々は自由な賃金労働者となって、都市の工場へち吸引された。日本でも高度経済成長期に、農村から都市(工場)へという人口流出が起こっている。これは、農業技術の進歩や農業の利益が低い故の貧困が理由であるといえる。

都市に移り住んだ工場労働者は、その賃金で様々な財・サービスを消費する。(前述の竹田・苫野氏の指摘する「普遍消費」である。)ここから第3次産業が発展するわけである。これが、一般的な法則性で、先進国や中進国では、同様の動きが起こった。

ただ、アフリカ諸国では、農業技術が進んでいない関係で、農業の労働人口が過剰になることも多い。そこで、青年層を中心に血縁や地縁を頼り都市に出る場合が多くある。ここでも「情の経済」が有効に働く。ただ、劣悪なガバナンスのもと、先進国からの投資はあまり行われていないこともあって、彼らを吸収する工場の雇用は少ない。そこで、インフォーマル・セクター(正規の経済活動ではない仕事)につくことになる。タンザニアのマチンガ(路上で先進国から放出された古着を売る人々)が有名だが、ケニアでは、売り物にならなくなった花をまとめ、交差点で停車した女性に売る正装した男性を見たし、ジンバブエでもタバコを1本売りする少年、ブルキナでもマルシェ(市場)で、注文を受けて買ってくるのが仕事という人々にも出会った。これらは間違いなくインフォーマルセクターだと思うが、路上の商店など、どこまでがフォーマルで、どこからがインフォーマルなのか判別がつかない状況があった。

ところで、最貧国の内陸国、ブルキナファソには、コカコーラの工場があった。商品が重いので、他国から輸送するより国内に設置した方が効率的だという理由だと思うが、これは装置工業ゆえに雇用が少ない。産油国の中には、石油精製工場を持っているところもあるが、これも装置工業。輸入代替工業は、中国の安価な中国製品の進出を受けて発展していない国がほとんどである。アフリカの第2次産業化への移行はなかなか進んでいないのが現状である。面白いのは、モーリシャス。雇用が多く必要な縫製業が盛んで、GNIを押上ている。ボツワナでは、ダイヤモンドの生産から、研磨(画像参照)へ、さらにはデ・ビアズ社と合弁で首都ハボロネで国際取引市場を形成している。第2次産業から第3次産業まで一環して利益を挙げているわけだ。しかも内陸国ではあるが、ダイヤモンドは高価でしかも小さい故に、航空機輸送で輸出できている。

…ところで、東南アジアの中進国などでは、先進国からの投資を受け、輸出加工型工業が発展している。自由貿易と保護貿易の葛藤や比較優位説などの歴史を踏まえて、「グローバリゼーション」と、地理分野として今や無視できない「サプライチェーン」に話を進めていこうと、今考えているところである。

2025年9月1日月曜日

教材研究 産業別人口から Ⅰ

地理総合の教材研究は、近代国家論の資本主義に入っていく。どこから入るか大分悩んだのだが、産業別人口から考えていくことにした。

まずは、缶コーヒーの価格が120円であるとすると、コーヒー豆(第1次産業)は15円、缶代と缶の加工費(第2次産業)が25円、販売(第3次産業)が80円になる。それぞれ、労働賃金とコストと利益が含まれているのだが、コストについては、あえて細かく説明したい。高校生にとってこういう現実的なコスト(例えば、缶の原料費のコスト:鉄やアルミの採掘費用+精錬費用+輸送費+それぞれの労働賃金になる。)は、イメージしにくいからである。

このコーヒー缶の例で、利益は、第1次産業<第2次産業<第3次産業となる。第3次産業のなかでも金融業が最も利益率が高いのだが、これは後に説明するつもり。

次に、産業別人口比とHDIの順位を比較してみる。二宮書店のデータブック・オブ ザ ワールド(画像参照)から、15カ国をピックアップしてみた。第1次産業の人口比が低い順に表にしてみた。第1次産業人口比における先進国(低い)と途上国(高い)の差は歴然である。また特記事項として、農業従事者1人あたりの耕地面積(データブックの各国別データから引用)なども追加した。

第一次産業は農林水産業であるが、多くの国はその中でも農業の比率が高いと考えられるので、農業における土地生産性と労働生産性(これは地理のカテゴリーである。)について、少し深く見ていくことにした。①土地生産性が低く、労働生産性が高いアメリカやオーストラリアなどの(地理の専門用語で言うと)商業的穀物農業。②土地生産性も労働生産性も低い途上国の天水耕作の影響を大きく受ける(これも地理の専門用語で言うと)自給的穀物農業。③土地生産性が高く、労働生産性が低い(=安価で雇用)、途上国のプランテーション。この安価で雇用されていることについては、フェアトレードにも触れることにした。④土地生産性も労働生産性も高い園芸農業。農業従事者1人あたりの耕地面積が狭い日本やオランダだけでなく、途上国でも見られる。

…地理総合というフィールドで、資本主義を語ろうとした場合、意外にこの産業別人口比から見ることは有効だと思う。次回は、第1次産業から第2次産業・第3次産業へと労働人口が移動していく資本主義の発展の法則に繋げたい。…つづく。

2025年8月25日月曜日

長岡高専のケニア技術協力

https://www.nagaoka-ct.ac.jp/80381/
TICAD9の報道の中で、長岡高専の学生がケニアで、「現地で調達できる装置」を使って、栄養価の高いキノコ栽培を行える減菌装置を発案、地元の大学と実証実験を行った成果発表を行った、ということを知った。これは凄い。この「現地で調達できる装置」という視点がなにより重要だと私は思う。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20250820/1030034079.html

少し長岡高専のことを調べてみた。最初メインのHPを見たので、物質工学科で生命応用コースに学ぶ学生かと思っていたのだが、環境都市工学科の学生であるらしい。なにより驚いたのは、長岡高専の学科専攻横断型一貫プログラムなどの特色ある学びのシステムである。多くの高校などで行っている「探求」の授業を遥かに凌駕した教育実践である。おそらくは、物質工学科の生命応用コースの先生方も絡んでいるに違いないと私は推測している。高専は男子のイメージが強いが、今回の発表者は全員が女子学生であったのも驚いた。https://www.nagaoka-ct.ac.jp/

当然ながら、JICAケニア事務所も関係している。今回の長岡高専と関わったのは、JICAのアフリカ型イノベーション振興プロジェクトに参加しているジョモ・ケニヤッタ農工大学である。この大学には、ケニア視察の際、ちょっとだけ訪問させていただいたことがある。懐かしい。これは、ちょっとした邪推でもあるのだが、我々の視察の際もそうだったが、JICAケニアのスタッフさんは、所長以下、今回の長岡高専の学生さんの安全面等に大いに気を使っただろうと思う。本当にご苦労さまと申し上げたい。

2025年8月9日土曜日

PP 近代国家論 国民国家

近代国家論の次の視点は、国民国家である。国民国家は、日本の近代化に於いて最も早く施策されたもので、日本史組に是非確認してもらいたいと思っている。この国民国家化は国民皆兵と同義語である。富国強兵のため廃藩置県を強行した西郷やその背後にいた勝海舟と、戊辰戦争を途中で抜けヨーロッパの軍隊を視察して国民皆兵の重要性を認識して帰国した山縣有朋についてはイラスト・名前なしで示した。見栄えもそうだが、授業では日本史組に質問したいところ。山縣はちょっと難しいかもしれない。

この国民国家=国民皆兵は今も徴兵制に繋がっている。徴兵制を今も継続している地図を見せたうえで各国の事情(特にスイスやスウェーデン、フィンランドなどの、中立国の立場とロシアとの関係性)についても伝えたいと考えている。スウェーデン、フィンランドのNATO加盟にも関係してくるからである。

国民国家化を阻止した黒歴史は、ベルギーの恣意的民族分断(ツチとフツ)やフランスの少数派優遇などがある。こういう現在裕福で力を持っているヨーロッパの黒歴史という事実は生徒に伝えておきたい。ちなみに、ルワンダの虐殺については、映画のポスターのみで陰惨な画像は使わなかった。

国民国家と民族の関係、ヨーロッパの引いた国境の無意味さを見事に表しているアフリカの地図を発見した。世界史組には、この国境線引きを決めた会議の名を質問してベルリン会議という回答を引き出したい。これはおそらく大丈夫だと思う。

国民国家の最後は、多民族国家のアメリカ・カナダ・オーストラリアの移民帰化時の「宣誓」を英文で紹介したPPも作っておいた。この三カ国の宣言の違いも興味深いと思う。

…地理総合(空間的把握)という科目の中で、世界史、日本史、政治・経済のコアな部分を語りながら、国民国家とは何かを語れればと思う。

2025年8月8日金曜日

PP 近代国家論 民主主義

パワーポイントの作成を続けている。「4つの罠」から「近代国家論」へ。世界史的にはウェストファリア条約以降の近代国家=領域国民国家であるので世界史組に確認した後、近代国家=民主主義・資本主義・国民国家の三要素と目されるようになったので、まずは民主主義のPPの作成過程である。
政治・経済とかなり重なる分野であるので、チャーチルの箴言とともに民主主義が絶対的ではないことも伝えたい。同時に民主主義指数という地図も見せて、やはりHDIとの関連が強いこと、劣悪なガバナスの罠とも関連しても示したい。さらに前述のアフリカのHDIの優等生、モーリシャスとボツワナの紹介もPPにした。
イスラム諸国と民主主義についても、1学期後半の学習を踏まえて解説してみた。イスラムにおける個人主義と集団主義の対比も最初想定していたのだが、イスラムの専門家の息子に聞いてみたら、超個人主義であるとの回答なので割愛した。地縁血縁は強そうなのだが、他者の信仰に口出ししないことや、特定のモスクや聖職者がいないことなどの方が重要な資質だとのこと。どこに視点を置くかで、分析が変化する。難しいところである。