2016年10月9日日曜日

ハイチのマタイ受難曲

http://blog.goo.ne.jp/gyp-vision/e/52
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昔々、私がまだ中学生だった頃、春休みを利用して東京の親戚の家に遊びに行ったことがある。当時、私はクラシック音楽に凝っていたのだが、早稲田の院生だったご長男もクラッシク好きでコンサートに連れて行ってもらった。それがバッハの「マタイ受難曲」だったか「ヨハネ受難曲」だったか、今は記憶が定かではないのだが、とにかくバッハの受難曲(福音書を元にイエスが十字架刑に処せられる様子を描いた歌曲)だった。中学生の私には、そういう教養は遥か彼方のもので、爆睡しただけだったと思う。

ハイチにハリケーンの「マシュー」が大きな被害をもたらしたというニュースが流れている。アメリカでは、公的な気象機関があらかじめアルファベット順に名前を決めていて、今回のハリケーンは、Mの番だった故に、マシューになったようだ。この、マシューという名前は私の前々任校の仲の良かったALTと同じ名前である。ヘブライ語に直すと「マタイ」になる。彼は、ちなみに無神論者で、自分の名前を気に入っていなかったのたが…。

ハイチは、西半球の最貧国である。後発開発途上国中の後発途上国であるといっていい。人間の安全保障をいかに行うかが開発のポイントと、されている。特に、保健医療の分野や教育の分野がそれが顕著である。MDGsでもまだまだ目標に届いていないのが現状である。そこに、先年大地震が発生し、日本も震災の経験を生かそうとハイチへの国際協力に大きく乗り出している。詳細は、外務省のHPにある「国別データブック」「国別援助方針」に載っている。(こういう開発に関わって詳細な資料が必要なとき、日本の公式見解が載っているので重宝する。)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/region/latin/haiti/index.html

今回の「マシュー」による被害は800人を既に超えているようだ。そもそもガバナンスが極めて脆弱な国なので被害者数はかなりいい加減にならざるを得ない。ここに、コレラが蔓延する可能性を多くの識者が指摘している。さらに被害が拡大することは必至だ。ハイチは、まともな水を利用できる人口比率が国連の最新資料では57.7%。これがコレラの危惧の主因である。おそらく飲料水インフラが大きな被害を受けるだろうし、下水でかなり汚染されるだろう。それを冷静に判断するための初等教育の就学率(57.2%)が、かなり低いからだ。

このハイチの度重なる受難を、異教徒の私は、イエスの受難に結び付ける気など、さらさらないのだが、まずは旧宗主国フランスの責任をやはり問いたい。他の先進国にも、アフリカ同様、ハイチのこのような人間の安全保障を置き去りにしてきた責任を問いたい。先進国の一員として日本が関わるのも当然。先進国はいつまでもポンテオ=ピラト(注:イエスの裁判に関わったローマ帝国のユダヤ属州総督で、ローマ法とユダヤ人の極刑論の中で揺れた人物。)のような中途半端な立場ではいられないはずだ。

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