2011年11月30日水曜日

釜山ハイレベルフォーラム4

KOREA.net から
朝、日経を読んでいると、韓国の釜山で、MDGs(ミレニアム開発目標)について、ドナー(先進国)や途上国政府、国際機関、NGOや民間企業など約3000人が集まって、ハイレベルフォーラム(HLF4)という会合が開かれていることを知った。昨日開会し、明日までの3日間の日程らしい。恥ずかしながら、現場の高校教師には、そういう情報はなかなか届かない。

ちょうど、政治経済と言う名の「アフリカ開発経済学」の授業では、ジェフリー・サックスのMDGsについて教えているところだ。このHLF4も、そのMDGsの達成を最大の問題として討議されるのである。MDGsの多くは、2015年に達成されるべきものとされている。UNDP(国連開発計画)などの様々な資料から、その実現が危ぶまれていることは知っていた。で、このHLF4につて少し調べてみた。

釜山の会合が、HLF4と4という数字が付いているのは、これまでにもMDGsの実現のための同様の会合がもたれてきた(02年のモンテレイ、05年のパリ、08年のアクラ)ことの延長線上にあることを示している。つまり3年ごとに開催されているわけだ。

この間、世界の経済シーンは大きく変化している。最大の変化は、欧米や日本といった先進国の経済失速と、BRICsなどの新興国の経済成長である。そもそも、ジェフリー・サックスは、先進国のGNPの0.7%をMDGsに支出すれば、貧困は終焉すると断言していた。実際HLF1のモンテレイで、先進各国はこの0.7%をODA支出にあてると約束したが、その約束は守られていない。日本も0.2%である。

そんな中、今回の釜山では、様々な問題が噴出しているようである。それぞれ紹介していくと無茶苦茶長くなりそうなので簡潔に述べると、①援助の質の向上の問題(最貧困層のニーズにあっているか)②モニタリング(援助の効果を明確にする)のグローバルレベル化③OECDに参加していないBRICsや湾岸諸国など新興ドナーをいかに引き込むか④援助のアンタイド(用途が制限されないこと・ヒモつきでないこと)の問題などがあるようだ。詳細は以下のWEBをご覧いただきたい。
http://jp.devex.com/news/hlf-5.html
http://jp.devex.com/news/hlf-2.html

私は、このMDGs、確かに普遍的正義であると思っている。アマルティア=センの人間の安全保障という観点から、ジェフリー・サックスが作り上げた芸術的な世界的計画である。様々な国や機関、NGOが力を合わせてやっていくべきことであろう。ただ、2015年後は、ザンビアのモヨ女史が言うように、途上国の国債発行やガバナンスの成長、自助努力を信じて、あえて援助を停止するのもいいのではないか、と最近考えたりしている。

追記:我がブログに、お二人の新読者をお迎えすることになりました。浅井さんと、Whiteさんです。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。(稀勢の里みたいに気持ちをストレートに表現してみました。)

2011年11月29日火曜日

コンゴ民主共和国大統領選

昨日28日に、コンゴ民主共和国の大統領選挙が行われ、またまた混乱しているようである。NHKニュースWEBによると、投票所に武装勢力が襲撃してきたり、投票用紙の搬送トラックが襲撃されたり、投票所が突如移転したりして、死者も出ているというのだ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111129/t10014266761000.html

今日も公園で紅葉を愛でながら、喫煙タイムを楽しんでいて、ふと思った。日本もまたコンゴと同様に、政治の問題を暴力に訴えた時期があったではないか。必要なのは、貧困撲滅と普遍的な教育なのだ。ルソー的な一般意志が、コンセンサスを得て、暴力的に強い者も弱い者も同等の立場にたてるようになったのは、先進国でもそんなに昔の話ではない。飢えから脱却し、教育が普遍的になってこそ民主政治は成立するのである。アフリカでも最悪の内戦を繰り広げてきたコンゴ。天然資源の罠にも紛争の罠にも、悪いガバナンスの罠にもみんなハマってきたコンゴにとって、デモクレイジーの克服にはまだまだ時間がかかるのだろう、そんなことを考えていたのだった。

実は、私のブログを見ていただいている方の全期間各国別統計によると、コンゴ民主共和国の方は、323回のアクセスをいただいていて第6位なのである。(日本:66944、USA:3819、フランス:1202、インド:672、イスラエル:523)
現地に滞在している方は、日本の報道にもしかしたら違和感を持たれているのではないか?と私は考えたりする。もし、コンゴ在住の方で、大統領選等の様子を少しでもコメントしていただければ幸いである。

最近、私はアメリカやイギリスの通信社の配信をそのまま伝える日本の報道に疑問を抱いている。もしかしたら、先日のソマリアのアルシャバブの話のように、イスラームの側から見れば、真実とは全く逆の報道がなされているのかもしれない。ちなみにアルシャバブは、ユニセフなど16の国際機関の活動を禁止したという報道も流れている。理由はそれらの機関がアルシャバブの情報を漏洩しているらしいと言う事だ。うーん。なにか他に理由があるのかもしれない。

日々の情報に振り回されず、結論を急がず、じっくりと物事を考えるようにしたいと思った次第。

2011年11月28日月曜日

叢裏鳴虫Ⅵ

今日のブログとは関係なしの昨日の航空ショーからF4
歓喜の航空ショーのブログを書き終えたら、一気に「暗黒の日曜日」になってしまった。今はまだ、大阪市長ではないので、ハシズムを批判するのは自由だと思うので、書かせてもらうと、今回の大阪の教育を破壊するW選挙結果に絶望しているところだ。(ちなみに私たち夫婦は期日前投票を済まして岐阜に行った。)

今日学校へ行くと、他の先生方もみんな一様に嘆いていた。あーあ。TVでは、顔も見たくない、声も聞きたくないハシズムのオンパレードである。すぐミュート(消音)しなければならず、結局TVを消すことになる。新聞を読んでいると、モーニングで読んだ日経の社説には、都構想が争点になったわけで、批判の多い教育条例については慎重にということが書いてあった。毎日には、出口調査では、教育条例が4割賛成とあった。しかし、きっと『民意』という詭弁が使われるのだろう。あーあ。

おそらく、都構想で、なんか変わりそうだという、なんとなくブルーな気分がハジズムを勝たせたのだろう。民主党が、自民党の失態を受けて、いっぺんやらせてみようという気分で勝った時と同じだ。時代の閉塞感の産物、時代の病理かと思う。

民主党が政権を握って、「少なくとも県外」「2番じゃだめなんですか」といった無茶苦茶な素人政治になったことの二の舞になるのは明らかである。素人受けすることが政治ではない。面白ければいいというのが政治ではない。

やむにやまれぬ思いで、現場からの教育に関する政治的発言をしてきたが、これからは、この件に関しては筆を置こうと思う。私なりの分別である。

追記:whiteさんという読者から長文のコメントをいただいています。この件に関して私が筆を置くことに際し、自らの意見を見事にまとめていただいています。よろしければ併せてご覧ください。

2011年11月27日日曜日

岐阜に航空ショーを見に行く

死ぬまでに一度は見たいブルーインパルスである。今日は妻と、H交通社の日帰りツアーで岐阜の空自基地まで行ってきた。凄いバスの数である。凄い人の数である。ちょっと人酔いしながら基地に近づくと、さっそくC-130 マーキュリーが旋回していた。今から思えば、陸自の空てい団を吐き出していたのかもしれない。航空ショーは朝8:15から始まっていたのだ。
11:00からのブルーインパルスのショーに間に合うように妻とメイン会場までダッシュした。とはいえ、凄い人出だ。滑走路は全然見えない。(笑)しかも世の中に、こんなに超望遠レンズをもっている人がいるのかという光景である。アナウンスが流れて、いよいよ発進である。4機同時にダイヤモンドの形のまま離陸していく。「カーッコイイー」と妻が叫んだ。(笑)5番機、6番機も続けて離陸し、数々の演技を見せてくれた。あんまり詳しく書かないほうがいいと私は思った。誰もが、死ぬまでに一度は見たいブルーインパルスである。
愛機G12ではシャッタースピード優先でこの辺が限界
「いやー。良かった。」夫婦共々大歓喜である。ツアーについている弁当を地べたに座って食べた後、展示されているヒコーキを見て回った。F-16をベースにした国産戦闘機F-2。名機・F-4ファントム。E-15イーグル。C-1やE2-Cホークアイもいた。パトリオット・ミサイルシステムも展示されていた。いやあ、満足。満足。
バスの集合時間を考えると、13:30からの飛実団の異機種の編隊飛行をゆっくり見れない。シャトルバスに乗らず、歩きながら編隊飛行を見ることにした。ところが、F-4の耳をつんざくような爆音にしびれ、その姿を追ってはシャッターを押すことになる。今度はF-15の重みのある爆音。赤い2つのケツ(排気口)を見ては、感激する。なかなか進めない。(笑)編隊飛行の姿は、ほとんど機影のみだが、うーん、凄い。ブルーインパルスの編隊飛行も凄いのだが、これも凄い。Cー1の周りには気流の乱れが生じるそうで、かなり難しいらしい。
C-1と異機種(F2・F4・F15・T4)編隊飛行
いやー。大満足の航空ショーだった。しかも、今日のブルーインパルスの飛行、1番機の隊長にとっては、最後のフライトだったらしい。そのアナウンスになんかジーンときた。

引退と言えば、航空ショーの帰りのバスにメールが届いた。獣医の勉強をしながら、馬術部の主将をしていたOGのパカパカ君からだった。関東選手権で優勝したらしい。引退試合でやっとタイトルがとれ、12月の全日本学生選手権まで引退が伸びたらしい。やったね。最後の最後には勝つ。パカパカ君らしい。

いい一日だった。妻が、「宝くじが当たったら、アメリカの航空ショーに行こな。」と言いだした。…はまったな。

2011年11月26日土曜日

南部アフリカの「レジリアンス」

マラウイのメイズ畑
南部アフリカの気候変動が、メイズ耕作にかなり影響を与えそうだと、24日のロイター電が伝えている。WEBの記事では、マラウイの農業組合の代表がこう言っている。「降雨パターンがむちゃくちゃになっている。」「農民は作付け計画を立案できなくってきており、農業システムの大きな問題になりつつある。」
ちょっと、時事通信社の和訳がヘンだ。おそらくこういうことだろう。要するに、雨季の時期がずれているらしい。農家は、毎年、雨季の直前にメイズ(トウモロコシ)の種をまき、天水で栽培している。メイズは800mmほどの降雨が必要だ。このタイミングがずれると、大変なのである。農業システムの大きな問題とは、この天水に頼る農法自体を指しているのだと思う。これからは灌漑を行わざるをえないという意味だろう。
http://www.jiji.com/jc/rt?k=2011112500364r
アフリカの農法は、そもそも、エコでしかも出来るだけ労力を使わないようにしている自給農業だった。土地自体がそんなに良くないし、半永久的に農地を使うという考えがあまりない。土地生産性も労働生産性も低いわけだ。だめになったら移動すればいいというのが伝統だった。ところが、最近は政府の方針や補助金など、様々な近代的な農政が入り込んできている。メイズも商品作物化している。各農家とも、生産性をあげることが必要になりつつある。

で、ちょっと調べてみた。東大・大学院農学生命科学研究科の川島准教授の「水資源と農業生産」というレポートが面白かった。川島先生の資料によると、南アフリカ地域の灌漑面積/全耕地面積の割合は13%である。おそらく、そのほとんどが南ア共和国だと思われるので、マラウイやザンビア、ジンバブエなどは、よくて東アフリカの6%、もしかしたら西アフリカと中央アフリカの1%に近いと思われる。南アフリカ地域の水資源は、797立方km、中央アフリカや西アフリカよりはるかに少ないが、ヨーロッパより多い。南アフリカ地域の取水率は5%とある。20%を超えるヨーロッパに比べ、はるかに灌漑する余地があるといえるだろう。
http://www.jiid.or.jp/files/04public/02ardec/ardec38/key_note1.htm

南部アフリカの農業の未来は灌漑にかかっているように思われるのだが、一方で、こんな研究もある。天水農業に依存する人々の生活は、環境変動に対して脆弱である。この変動に対して、人間社会および生態系が環境変動の影響から速やかに回復すること(レジリアンス)がカギとなるので社会・生態系のシステムのレジリアンスを高めることが必要だというものである。なんと、公開講座で教えを受けた京大の島田修平先生が関わっておられる。
http://www.chikyu.ac.jp/archive/brochure/2011/yoran2011j_44-47.pdf
ただ単に、灌漑を推進するだけでなく、天水農法の脆弱さを補うカタチで、地域にあった生産活動を行う事がどうやらいいようだ。

2011年11月25日金曜日

朝日新聞 『記事有論』 リベリア

毎日新聞のコラム『金言』(西川恵専門編集委員)は、今週も南スーダンでの国連やJICAなど国際社会の取り組みの現状を取り上げている。『自立まで不確定要素は多いが、アフリカにおける独立・復興のモデルになってほしい。』と結ばれている。アフリカへの温かな記者の目を感じる次第。

さて、今日の本題は、学校でいつも読む朝日新聞から。『記者有論』という杉山正ナイロビ支局長のコラムだ。なかなか衝撃的な記事である。タイトルは『ノーベル賞と「金権」の溝』さっそく引用してみたい。
「ノーベル賞のイメージが吹っ飛ぶ場面に出くわした。西アフリカ・リベリアで今月、大統領選挙を取材した時のことだ。今年の平和賞が決まった現職エレン・サーリーフさん(73)の故郷で本人を待っていると、彼女は多くの住民に囲まれながら現れた。一緒にいた陣営関係者の手には、ピン札の50リベリアドル(約50円)の束が握られていた。何をするのかと見ていると、近づく住民に1,2枚ずつ渡して歩いていた。」
凄い書き出しである。選挙の買収の現場の目撃談である。記者は、この後リベリアでは選挙に際し、候補者が地方に行っては、現金や食料を渡して支持を求めるのはよくあることらしいと知る。だが、記者はノーベル平和賞をもらう人までが金権選挙に染まっていることに驚きを隠せなかった。そこで、本人に直接聞くのだ。

「将来的には禁止すべき風習だ。」サーリーフさんも非を認める。だが「今やめることはできない。」とも。

「失業率は8割を超え、1人あたりの国民所得は約170米ドル。選挙期間中、人々は施しへの期待が高まってしまうのだという。」「サーリーフさんは(中略)米国での生活が長く、国連開発計画などで活躍した人だ。しかし米国流をそのまま持ち込んでも立ちゆかないことを熟知しているのだろう。急激な変化は反発を招きかねない。」「国家再建を果たすための必要悪ということなのだろう。その手腕はしたたかさや、しなやかさとともに、リベリアが抱える問題の闇の深さがうかがえる。」
リベリアは、つい最近まで失敗国家の最たる存在だった。綺麗ごとだけで、抜け出せるとは私も思わない。果たして、リベラルが基調の朝日の記者は、どう結論付けるのか。

…さすが、ナイロビ支局長。アフリカを温かい目で見ていた。
「ノーベル賞は、サーリーフさんに対してだけでなく、アフリカの将来に希望を込めて贈られたものだと私は考えている。真のモデルになりうるような彼女の2期目に期待したい。」

私も全く同感である。

2011年11月24日木曜日

「在日米軍司令部」を読む

春原剛氏の「在日米軍司令部」(新潮文庫)を急いで読んだ。ちょうど、17日にオーストラリアの北部ダーウィンに米海兵隊を駐留させる方向で、米豪首脳が合意したというニュースがあった故である。数年間で2500人にまで拡大するという。中国や北朝鮮のミサイル射程から海兵隊を守るためではと言う解説も新聞に載っていた。

で、この「在日米軍司令部」という本である。よくぞここまで調べたものだというくらいの情報量である。とはいえ、結局結論的なことは、在日米軍司令部は、有事の際の米軍4軍(陸・海・空・海兵隊)の指揮権をもたないこと、米空軍の将軍(中将)が司令官だが、ワシントンの国防総省などで、その存続を含め様々な人事を巡る(海軍や陸軍が司令官の任につくこと)争いが起こっているといった、極めて生々しい内容だった。現在の在日米軍司令部は、横田基地内にあり、主として米大使館と連携しながら、日本政府ならびに自衛隊の制服組と交流し、情報交換を密に行っているというのが、アウトラインである。特に、北朝鮮のミサイル実験の際には、司令部の根回しが極めて有効だったようだ。また、東北震災時の「トモダチ」作戦でも大いに面目をほどこした。もちろん、沖縄の様々な問題の火消しにも活躍している。今日の地位協定に関するニュースが報道されたが、大きく関わっているに違いない。

さて、印象に残ったことをいくつか、記しておきたい。
この本のための取材で大きな協力をした、在日米軍司令官ライト氏は、司令官であるが、同時に空軍の現役パイロットであることだ。彼の訓練の様子もこの本では描かれている。多忙な中で三沢基地に行き、F16を操る。月に1時間ほどの訓練飛行を4回行わないと実戦パイロットとは認められないのだ。資格保持のため、ライト氏は、三沢でのフライトとともに、体に何Gもの力がかかるパイロット業務をこなすため日々の鍛錬を欠かさない。時間を見つけては現役兵士やパイロットに交じって現役の戦闘機乗りに課せられている練習メニューをこなしていたという。凄いなあ。やるよなあ。とヒコーキ大好きの私などは思ってしまう。
三沢基地のF16 尾翼にWW(野生のイタチ)とある

在韓米軍の司令官は陸軍が握っている。在日米軍との関わりの中で出てくるのだが、韓国の有事の際、韓国軍の指揮権は未だ米軍(朝鮮戦争時の国連軍:今はまだ休戦中である。)が握っているのだった。私は休戦中だということは知っていたが、少なくとも韓国軍と協力して(対等な立場で相談しながら)有事に備えるのだと思っていた。意外であった。そのうち韓国軍に指揮権は譲られるらしいが、いろいろともめている。韓国もFTAとともに対米戦略に悩んでいるよなあという感想をもった。

オーストラリアも長いこと孤立主義を貫いてきた。ところが2002年のバリ島テロで同胞200人が犠牲になった事をきっかけにして、米英とアングロサクソン同盟を結び、イラクでも共同歩調を取り始めたという事実も、今回の海兵隊駐留というニュースと繋がってくるわけだ。

国際政治をちゃんと見ようと思うと、こういう軍事的な面を避けては通れない。ちょっと疲れる文庫本だったが、勉強になった。

2011年11月23日水曜日

南アの首都プレトリア改名?

南アの行政府首都・プレトリア駅
WEBニュースを見ていたら、南アの事実上の首都(行政府上の首都・立法府はケープタウン、司法府はブルームフォンテーン)、プレトリアの名称が2012年末には、ツワネに変更になるとのこと。22日に市長が発表したそうだ。記事にあるように、このプレトリアは、アフリカーナー(ボーア人:オランダ系白人とフランス人ユグノーなど、カルヴァン派のプロテスタントが多い。アパルトヘイト政策を行ったことでも有名である。)の英雄であるアンドリュース・プレトリウスの名前に由来するそうである。少し調べてみた。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011112300078

A・プレトリウスは、ケープ植民地をイギリスに追われ、内陸部に移動したボーア人で、先住のズールー人をブラッド・リバー(血の川)の戦いで撃破し、ナタール共和国を建国した人物である。このナタール共和国は後に4年で崩壊、アフリカーナーは、トランスヴァール共和国とオレンジ自由国を建国する。このトランスヴァール共和国の初代大統領は、A・プレトリウスの息子、マルティヌス・プレトリウスである。M・プレトリウスが、父の名と兄弟への敬意をもとにプレトリアフィラデルフィアと名付けた。後にフィラデルフィアという兄弟愛を意味するギリシア語が取れて、プレトリアという名称になったようである。
http://en.wikipedia.org/wiki/Andries_Wilhelmus_Jacobus_Pretorius
http://en.wikipedia.org/wiki/Marthinus_Wessel_Pretorius

こういう機会だからこそ、南ア史を勉強し直すことができた。ありがたいことである。ところで、『ツワネ』というのは、先住民の首長の名前だとしか、結局わからなかった。WEB上は、当然欧米世界である。

プレトリアは懐かしい街だ。南アに行った時のベースとなった街。かなり街歩きをした。行政府の首都故各国の大使館も集まっているからか、ヨハネスブルグとは異なり、治安も良かった。(昨年3月19日・21日ブログ参照)

地理の教師としては、こういう地名の変更には敏感になる。大抵、欧米人のつけた地名から現地語へ変更である。あるいは政変による変更。今回は、どっちかというと後者の地名変更だといえるわけだ。現大統領は、A・プレトリウスに撃破されたズールー人出身である。

2011年11月22日火曜日

地球市民商社マンの仕事の流儀

昨夜のNHKで、「プロフェッショナル 仕事の流儀/不屈の課長 情熱を力に」を見て久々に感動した。レアアースやリチウムを扱う片野裕という大手商社マンの話である。商社マンというと、我々の世代は、エコノミックアニマルと日本人が呼ばれた高度経済成長の走狗のような印象がある。”なんとなく左翼”的な見方で申し訳ないが、世界中で、暴利を貪っているような印象があるのだ。その妙な印象が昨日のNHKの番組で払拭された。この片野と言う商社マン、日本経済の土台のため、日夜奮闘しているのだった。詳細は、NHKのHPで見ていただくとして、私の特に感じたところを述べたい。

レアアースである
それは、彼が新人の頃、インドネシアで石の採掘をして、日本の料亭などで売ると言う仕事をしていた時のことだ。採掘現場で、彼は裸足の子どもたちを見る。学校にも行けない彼らの貧しさに、自分がやっていることを重ね合わせ、ただ儲けることだけを考えていた自分を恥じるのだ。商社マンとしての仕事に嫌気がさしてしまう。悶々とした日々の中で、自分に何ができるのかを自問自答していく。結局、自分は商社マンとして、がむしゃらに働くことで、彼らの生活を変えることができるかもしれないと考えるようになる。日本中に、インドネシアの石を売り込み、販売量を増やした。すると、少年たちは、やがて靴を履けるようになり、さらに学校にも行けるようになったのだ。一サラリーマンでも、がむしゃらに頑張れば、何かを変えることができるという事実が、彼の過酷な日々の戦いを支えていたのだった。

彼が行き詰った時、いつも裸足のインドネシアの少年たちの写真を見るのだそうだ。

彼もまた、”日本の”商社マンというスタンスを持ちながら、同時に”地球市民”のスタンスを持っていた。そのことが、私を感動させたのだと思う。

24日(木)の深夜、日付けが変わって25日(金)午前0:15~再放送する予定。もし、読者でご覧になっていない方は是非。

2011年11月21日月曜日

アンゴラのポルトガル支援?

アンゴラの首相が、宗主国だったポルトガルに対して支援する用意があることを表明したらしい。EUの中で、ギリシャ、イタリア、スペインと、それぞれ財政悪化が問題視されている。その次はポルトガルだと思われている中で、アフリカでも成長率の高い産油国アンゴラが支援を表明したわけだ。首相いわく「アンゴラは両国の利点と利益のために、この危機に直面しているポルトガルへの支援可能である。」

私は、アフリカの宗主国の中でも、ポルトガルは極めて悪徳だと思っている。ポルトガルは、英仏などと比べて、植民地を長らく手放さなかった。各地で独立戦争を戦い、国際的非難を受け1974年のカーネーション革命で、反独立戦争を放棄し、一気に本国に自国民を退避させた。以後、各植民地は大混乱に陥る。

http://www.africa-news.jp/news_pI5hcY2KS.html?right

アンゴラもモザンビークもその後長らく内戦に苦しむことになる。これは冷戦の影響も大きい。歴史にIFはないが、もしアフリカの年と呼ばれた1960年頃に独立していれば、莫大な地雷による悲劇(アンゴラ)や少年兵の悲劇(モザンビーク)は回避できたかもしれない。

そのアンゴラが、宗主国を救おうとしている。素晴らしい話ではあるが、正直、私は不思議な思いがする。アフリカのこの鷹揚さはどうだ。
モザンビークも、ガス田が見つかったり、沿岸部での工業化が進み発展が著しい。もしかすると同調するかもしれない。因縁を超えての支援。それもつい先日まで最貧国であったアフリカの国が…。

2011年11月20日日曜日

アフリカの長者番付2011

CNNのWEBニュースが、長者番付で有名な米経済紙フォーブスが、アフリカ大陸の長者番付を初めてまとめ発表したと報じている。上位400人のトップは、ナイジェリアの建設業で財をなしたアリコ・ダンゴート氏で資産総額は約7700億円だという。

少し調べてみた。2005年3月には、中東とアフリカを一まとめにして発表している記録がWEB上に残っているので、これまで、中東・アフリカというカテゴリーで地域別に発表していたことはあるようだ。ちなみに、この時は、5位(世界91位)にエジプトのOnsi Swir氏、17位(世界418位)に南アのDnald Gordon氏が入っている。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=aszn1DanY1OU&refer=jp_europe

とはいえ、アフリカ大陸単独の長者番付が作成・発表されたことに、意義があるとCNNは報じている。それだけ世界経済におけるアフリカの重要性が増し、あらゆる国で多種の産業で冨が蓄積されつつあるという説明だ。
http://www.cnn.co.jp/business/30004654.html

なるほど。たしかに、アフリカの世界経済への重要度が増していること、またそのひとつの指標としての長者番付。開発と言う視点から嬉しいニュースであると私は思う。アフリカは、ガバナンスが悪く、経済における様々な統計等が不透明なことが多い。それが投資のリスクとなり、経済成長を鈍化させていた。その暗雲をこの記事は、ちょっとだが払拭したような気がする。おそらくは、そういう所得の統計をきっちり把握できている国は、サブ=サハラ・アフリカ諸国ではまだまだ多くはないと思う。だが、こうした発表が徐々にガバナンスの向上を促していくと信じたい。
一方、不透明な部分を完全に払しょくしたら、おそらくデモクレイジーの面々が長者番付にどーんと登場するだろうと思える。フォーブス誌は経済紙だから、そこまでやらないと思うけど…。

と、ここまで書いて、ブータン国王夫妻来日のニュースが毎日好意的に伝えられていることを喜ぶととともに、なんとも不思議な感覚を覚える事をも書かざるを得ない。ブータンのGNHの意味をマスコミが誤って捉えているような気がしてならないのだ。グローバリゼーションは必ず経済格差を伴う。ブータンのGNHは、アメリカ的なる価値観・効率性・拝金主義といったものが侵食するグローバリゼーションに伝統文化が対抗するものだ。極論するとGNHは、反グローバリゼーション的ブータンの信仰心に支えられている。『開発』とはなにかを突きつけているのだ。日本人は呑気にブータンの良さを賛歌しつつ、豊かさ維持のためにTPPの是非を論争している。うーん、あまりにマスコミの薄っぺらな感覚を私は危惧するのである。

この感覚は、アフリカの長者番付にも共通する。私は、あくまでこのようなアフリカの統計が、さらなるガバナンスの向上を図るだろう、それは投資リスクの軽減につながると思っている。『開発』という観点から、それは通常の感覚なのだが、一方でグローバリゼーションがアフリカを巻き込んだ経済格差の結果でもある。アフリカの人々は、経済的豊かさと精神的豊かさのどちらを望んでいるのだろうか。おそらくは、このような欧米的二元論で語れないものだと思う。わからない。だから考えるのだが…。今日も結論を持ちこすのだった。

2011年11月19日土曜日

アフリカに呼ばれた藤井さん

DoDo WORLD NEWS(アフリカ旅行の道祖神の月刊誌)の11月号に、『何かが私をアフリカに呼んでいる』と題して、藤井千江美さんという人の寄稿文が載せられていた。なかなか面白かったので紹介しておきたい。

藤井さんは、スイスの旅行会社で勤務している時、偶然が重なってサハラ砂漠を縦断することになったそうだ。アフリカと言えば「怖い、汚い、虫や病気がいっぱい」といったイメージだったそうだが、その後西アフリカを3か月ひとり旅して、後ろ髪を引かれる思いになったそうだ。スイスの会社を辞めて帰国する際にも、セネガルからまり、ブルキナ、ガーナを旅したという。ブルキナやガーナではそれぞれ1カ月地元の人と暮らしてみたという。その時藤井さんは29歳。現地での保健医療活動に関わりたいという思いがあったものの、看護学校に入る覚悟が決まらず、結局日本の旅行社の南ア駐在員となった。この間6年。35歳を迎えた時点で、このままでは一生後悔する。気力も体力も今を逃したら、もう保健医療への道は閉ざされるという思いに駆られ日本に帰国。37歳で看護学校へ入学したそうだ。3年間看護学校に通い、1年間病院で実務を経験した後、熱帯医学を学ぶためにイギリスへ。ケニアの病院で飛び込み実習をさせてもらい、アフリカでHIV/エイズ関連の職種に携わりたいと強く思うようになったという。2005年JICAのシニアボランティアとしてボツワナへ。ボツワナは、検査も薬も無料という恵まれた国だが妊産婦の34%が感染しているという現状だったという。様々な啓発活動やエイズ孤児たちへの支援を行い、帰国。今度は、JICA専門家としてシエラレオネへ派遣される。アフリカでも最貧国とされるシエラレオネの苦労話は尽きないようだ。だが、このシエラレオネでも最も僻地であるガンビア県の暮らしの中で、様々な喜びと発見をしたという。現在、藤井さんは、ブルキナに活動の場を移し、持続可能な地域産業を起こし、自立を目指しているという。

是非会ってみたい人だと私は思った。すると記事の片隅に講演会のお知らせが載っていた。なんと大阪である。藤井さんは奈良県出身だったのだ。だいぶ先だが、私は万難を排してこの講演会に行くつもりである。
2013年3月10日(土)14:00~16:00 大阪中央公会堂 会議室
http://www.dososhin.com/event/32.html

2011年11月18日金曜日

『金言』 南スーダンは危険か?

久しぶりに毎日新聞のコラムについて書こうと思う。今日は金曜日なので、『金言』。西川恵専門編集委員の署名コラムである。西川委員は、南スーダンの首都ジュバを訪問していて、「見るべきものを見る」と題して書いている。
「各国の援助団体やNGOが競うように活動。流入する膨大な資金は援助特需を生み、町中に活気があふれている。ただ、一方で厳しい現実がある。統治の根拠となる法律がまだない。あらゆる政策の基礎となる統計・データがない。各官庁に幹部はいるが、政策を練り上げる官僚・行政官がいない。首都の道路の総延長700kmに対して舗装されているのは約60km。識字率はわずか15%前後…。」
なかなか生々しい報告だ。独立直後の状況がよく表されている。
「現在、南スーダンのPKOに参加する陸上自衛隊の第3次調査団が来ているが、感じるのはPKO派遣をめぐる日本国内の議論と現地の乖離(かいり)である。」
JICAのジュバ事務所が開設されたのは、CPA(包括平和協定)が結ばれた2005年であるそうだ。ナイル川のジュバ桟橋の建設、職業訓練センター、農村生計向上事業、首都の道路交通網マスタープランづくり、水道事業など多彩なプロジェクトが行われてきた。日本人専門家は30人以上滞在しているという。ストリートチルドレン支援のNGO活動している女性活動家もいる。と現地報告は続いている。
ナイル川のジュバ桟橋
「こんな実態を知れば、自衛隊が行って危険ではないかといった議論自体が的外れだ。日本の民間人が丸腰で入って援助活動をして6年。一方で自衛隊派遣はPKO5原則に適合するのかの議論が続く。戯画にも似たこの対照、PKO5原則が現実に合わなくなっていると私は思う。」
日本のTV局がジュバに暮らす日本人に、ジュバは危険だという方向で発言して欲しいと求めたという話を交え、マスコミの責任の大きさを『見るべきものをきちんと見ることが問われている。』と結論付けている。最近、私はマスコミへの不信感を持っているが、こういうコラムを読むと、ちょっとホッとするのだった。

2011年11月17日木曜日

週刊ダイヤモンド最新号を見る

先日電車の吊り広告で、「週刊ダイヤモンド」がエアラインとエアポートの特集を組んでいることを知った。ヒコーキ大好きな私としては、面白そうなので買ってみた。(東洋経済とか、ダイヤモンドとか、硬派な週刊誌はめったに買わないので、自分で言うのもなんだが、珍しい。)
プロローグは、「B-787とLCCで変わる空の戦い」と題されている。そうなのだ。B-787。メード・ウィズ・ジャパン。35%が日本製の機体である。燃費で約20%削減できるのも凄いが、客室の気圧を高くできることが凄い。湿度も15%まで上げられるのも凄い。変なことが書いてあった。そもそも、B-787は、「7E7」という名前だったらしい。ところが、中国の航空会社6社が大量注文して、「8」は縁起がいい数字なので、名称変更を要求したのだそうだ。ちょっと納得。(笑)早く乗ってみたいと思う。LCCも、一気に増えた。ついに1万円台で海外に行ける時代に突入した。先日、妻が「ソウルで本格的な韓国料理を食べに行こうか。」と言うので調べたら、関空からチュジュ航空というLCC利用なら滅茶苦茶安かった。もちろん、仁川空港ではなく金浦空港発着だった。私としては、豪州のジェットスターで台北やケアンズあたりに飛びたいところ。いやいや、機体のカラーリングからは、ANAと香港資本が提携したピーチかな。などと、記事を読み進めた次第である。

さて、この雑誌を買った最大の理由は、エアラインのユーザー評価ランキングである。総合ランキングでは、1:シンガポール航空 2:エミレーツ航空 3:アシアナ航空 4:キャセイパシフィック航空 5:ヴァージナトランティック航空 6:ANA 7:大韓航空 8:マレーシア航空 9:カタール航空 10:JAL となっている。私の好きなルフトハンザ・ドイツ航空は、おしくも11位でベストテンには入っていない。
エミレーツは息子のお勧めであるが、乗ったことがない。ヴァージンアトランティックは成田しか飛んでいないし、イギリスに行った事がないので噂には聞いているくらいである。大韓航空もマレーシア航空もカタール航空も計画では考えたことがあるが、乗っていない。これらは評価のしようがないのだが、シンガポールがNo1なのは納得である。全てに文句なしである。と、同時にアシアナ航空が3位で嬉しく思った。出来れば、二度と乗りたくないのが16位のKLMと17位のエールフランスである。座席が狭かったり、アテンダントに苛立ったり…。私がこれまで最もよく利用したのは、断然ユナイテッド航空なのだが、ベスト20にも入らない。アエロフロートより下だ。(笑)…まあ、そうだよなあ。

空港のランキングも出ていた。1:シンガポール チャンギ 2:羽田 3.成田 4.香港 チェクラップコック 5:ソウル仁川 6:アムステルダム スキポール 7:ロンドン ヒースロー 8:バンコク スワンナブーム 9:ドバイ 10:関空・ミュンヘン(同点)となっている。なるほど。私は香港とロンドン、ドバイ、ミュンヘンは知らないので、これまた評価不能だが、たしかにスキポールはいい空港だったと思う。異常に高い男性用のトイレに、的用に虫の絵が描かれていて大笑いした思い出がある。チャンギは、夜遅くに着いたので店があまり開いていなかったのでよくわからない。野外の喫煙上で蒸し暑い熱帯の夜を、同じく南アに向かう英語を解さない中国人青年と漢字で対話した思い出がある。(笑)一方、ワーストでは、1:成田、2:ヒースロー 3:パリ シャルル・ド・ゴール 4:NY JFK 5:ロスアンジェルス となっている。大笑いした。たしかに成田から東京駅へ帰ったことがあるが、遠い。でも私は喫煙場所のある成田は好き。パリのシャルル・ド・ゴールは、場内表示が分かりにくい、広くて移動に時間がかかるとある。全く同感。わたしもエライ目にあったぞ。JFKは混雑して入国に時間がかかる。なるほど。でも私は世界の中心地に着いたと興奮していたのでそういう印象はない。ロスは、たしかに最悪だった。(笑)シカゴ・オヘア空港も大変だったぞ。うーん、D.C.のダレス空港も何度も利用したがややこしい。…アメリカのエアラインも空港も、日本人にはなかなか評判が悪いんだ。(笑)

ところで、2年生が修学旅行中故に、いつもなら2年生の授業がある5時間目、3年生のオーラルコミュニケーションという英会話の授業に参加させてもらった。JICAセミナーに連れていく本校生の英会話力はそれくらいか?という興味本位からである。授業内容は、ALTのライアン先生に、面白い場所を紹介するというアクティビティだった。担当のY先生に頼まれて、私も久しぶりにサバイバル・イングリッシュ炸裂で、アフリカのプレゼンテーションをした。案外、生徒は喜んで聞いてくれた。地球市民として、どんどん海外へ出て行って欲しいもんだ。

2011年11月16日水曜日

五木寛之「百寺巡礼」ブータン

ちょうどブータンのワンチュク国王が来日されている。天皇陛下が気管支炎で入院されているので、お会いになれなかったようだ。陛下のご回復を祈らずにおれないところだ。実に残念である。ブータン国王には、陛下に是非とも会っていただきたかったと私は思っている。

と、いうわけで今日はブータンの話である。先日書いた(10月31日付ブログ参照)が、未読だった五木寛之の「百寺巡礼 ブータン」(講談社文庫)を読み終えた。あまりに面白いので、今朝の通勤時に放出駅を乗り過ごしてしまったくらいだ。ブータンについては、それなりの知識はある。チベット密教についてもそれなりの知識もある。だが、この本は面白かった。その理由は何か考えてみた。五木寛之は、最初ブータンの人々や風景(棚田や森)に懐かしさを感じ、後に違和感を感じたと最初に何度も繰り返しているからだ。その違和感とは何か?私は気になって仕方がなかったのである。

水力で回るマニ車(WEBから借用)
そんな中で、水力発電でインドに電力を送っているブータンの現実に笑えた。いや、それよりも、水力でマニ車を回しているという話に感激した。(マニ車というのは、中に経典などが入っていて、1回時計回りに回すと、その経典を1回唱えたことになるというものである。手に持つタイプのモノを以前、香港で見つけて教材用に購入し、私は社会科教室に保管している。)この水力で動かすマニ車、WEBで調べると、マニ車の祠というか、それぞれ建物に入っているらしい。(上の画像参照)風にたなびくダルシン(経文を書いた赤や黄や青、緑といったカラフルな布で、ひもで結びついている。これも民博で教材用に購入した。同じく社会科教室に保管中。)同様、人々だけでなく、ブータンの自然までもが、信仰を支えているわけだ。面白いよなあ。

五木寛之の違和感は、結局のところ、極彩色の呪術性にあったようだ。似て非なる密教のヒンドゥーとの結合に、日本的な感性が悲鳴をあげたようだ。この本の最大の面白さは、その違和感をブータン研究所所長のカルマ・ウラ氏(オックスフォードで社会学博士の称号を得たブータンのオピニオンリーダー)にぶつけるところである。このカルマ・ウラ氏は日本にも9カ月暮らした経験があり、共に日本とブータンという異文化を理解しようと努めている対話となる。

この対話は極めて示唆的である。カルマ・ウラ氏は、「日本人の行動パターンは非常に自制がきいている。見えない規制が社会にある。決めつけすぎの社会である。」と言う。ブータンは、まったく異なる。ゆるやかな感覚が支配する。カルマ・ウラ氏は、「日本の規制の必然性を経済大国をつくるという一点に結論づけた。近代的な組織をつくり、その一部となってきた。故に個人の充足感や自然、人間関係などを犠牲にしてきたのではないか。」「日本はハード面は成功したが、ソフト面は置き去りにしてきたのではないか。」と語る。「目に見えないものの価値を忘れてはならない。」とも。

ブータン国王
五木寛之は、彼との対話の中で、ブータンのソフト面を、縁起、輪廻という側面から分析する。また「死の質」という面からも論じる。これもなかなか面白い。極めて要約的にい言えば、ブータンの人々は、輪廻を信じるがゆえに、墓も作らないし、動植物を殺さない。自己の幸福は他者や自然の幸福であるという縁起的な構造の中で生きていると言えよう。ブータンに花屋がないことには感激した。花もまた命ある存在なのである。個人から全てを見るのではなく、花からも自分を見れる縁起的構造は凄い。さらにブータンと言えば、GNH(国民総幸福量)である。これにも当然触れている。この本は、ブータンから見た幸福論であり、日本論でもある。

天皇にブータン国王にお会いしていただきたかったと私が最初に書いたのは、天皇が無私を極めた人格だからだ。縁起的構造の化身である国王と無私の天皇。コトバではおそらく表現できない出会いが実現できなかったのは残念である。…「目に見えないものの価値を忘れてはならない。」

2011年11月15日火曜日

2年生は修学旅行中なのだ。

日曜日から、2年生が修学旅行に行っている。私にも付き添いの声がかかったのだが、女性教員が少ないし、メタボでマリンスポーツが出来ないという理由(?)で、外れたようである。(笑)修学旅行先は、長崎県の壱岐島である。本校の修学旅行は、島に行くことが多い。現3年生は屋久島、その前は沖縄の離島だったという。理由はよくわからないが、担任になったら”SHIMADAS”を読んで研究しようと思っている。ちょうど今日は、壱岐でマリンスポーツをしているはずだ。バナナボートに乗ったり、カヤックを漕いだり…。面白そうだが、寒そうである。きっと私が付き添いに行っても、チーム・ブーフーウー(6月24日付ブログ参照)のウー先生と、生徒のはしゃいでいる姿を、震えながら見ているだけだったろうと思う。(笑)

と、いうわけで今日から本校は学校再開だが、2年生はいない。なんとなくけだるい雰囲気である。本校でも毎朝、職員朝礼がある。全員が起立して校長に挨拶をするのに最初驚いた。職員朝礼もなかなかピリッとした体育会系である。主席から先日の体験入学のお礼、教務から修学旅行不参加生徒の連絡があった後、意外な連絡があった。1つは、大阪日日新聞の『大阪日日新聞元気大賞2011』というのがあって、インターハイと国体優勝の本校のなぎなた部(8月20日付+10月11日付ブログ参照)がエントリー(No12)されているらしい。是非とも応援して下さいとの連絡だった。さっそくインターネットで応募しておいた。(読者のみなさん、よろしければ応援してください。抽選でなんか当たるみたいです。)
http://www.nnn.co.jp/dainichi/genkitaisho/

もう1つの連絡も普段ないような連絡だった。特別棟の裏で、季節外れのひまわりが咲いているとの話だった。なんか、シャレで種を撒いたら、咲いてしまったらしい。思わず私は歌ってしまった。『誰のために咲いたの~』周囲の先生方は知らなかった。伊藤咲子の「ひまわり娘」(1974年発売)である。そうか…古いか。<今日の画像参照>

2011年11月14日月曜日

せっかくの休日なので奈良へ行く

妻は奈良が好きだ。特にこの紅葉の季節になると、「奈良、奈良!」とうるさい。(笑)土日の奈良市内はアホほど混むが、今日は代休の月曜日。博物館や美術館は休館日だが、そんなところよりドライブして、道の駅に行きたいと言う。道の駅には各地の名産や新鮮な農作物が安く販売されている。妻の目当てはそれらしい。
と、いうわけで、アッシーとして駆り出されることになった。まあ、そう言いながらも妻とどこかへ行くのは嫌いではない。久々の遠出である。交野の山を南下し、163号線を突っ切って、ならまち通りという高級住宅街の道をを西へ。なつかしの廃園になったドリームランドを右に見て奈良市内へ。さらに奈良教育大の南から、一気に田舎道に突入する。ススキである。秋の景色である。車も少ない。今年は特に紅葉が遅いようだ。で、『針』の道の駅まで走った。ここは、大きな道の駅で、ちょっとした街の風情である。いつも、たこやきとソフトクリームを食する。今日の店はフィリピン人の女性がやっていた。ちょっと訛ったニホンゴ。うーん、グローバリゼーション。
妻は、野菜や岩塩や果物を買い込んでいた。(笑)服や宝石ではないのがすくいである。料理人を自称する妻は、贅沢品には興味がない。ただ、最近は、共に食したレストランでの食事など、やたら自前のデジカメ(一番安い8000円くらいのバカチョン)で撮っている。ブログに使うらしい。まあ、ブログも無料だし、まあいいか。
帰りは、柳生から笠置経由で帰宅した。今日の写真は、結局ススキを撮れなかったので柳生から笠置へ抜ける道でとったもの。こういう道、たまに走るのはいいもんである。
妻は、今日買った野菜などを並べて写真を撮っていた。(笑)今日のブログは、”収穫祭”がテーマなんだそうだ。

ガーナを蝕むデジタル機器の墓場

土曜日の体験入学の代休日である。と、いうわけで、朝早くのブログ更新をさせていただくのである。
ガーナに理数科教育のシニア・ボランティアとして派遣されている”教授”からメールが先日届いた。ピーター会の金沢のT先生や静岡のM先生が、ニューズウィーク(日本版)に載っていたガーナの記事について、質問したことに回答したものだ。その内容は、日本のテレビでも放映されたらしい。
『ガーナをむしばむデジタル機器の墓場』と題されたこの記事。首都アクラの郊外のスラムに、先進諸国からの援助で送られたパソコンなどのデジタル機器が廃棄され、住民が有害物質にさらされながらもこれを燃やして「宝探し」している、という内容だ。

”教授”の返信には、次のようにある。「ガーナの日本人の間でも、このテレビについては話題になっています。現地で暮らしている者にとって、これは信じられない内容です。ガーナの多くの人が貧しい生活をしているのは事実です。しかし物がないための貧しさであり、生活が苦しいので子どもを働かせることはありません。ガーナ人の働き方はのんびりしており、過酷な労働を強いる習慣はありません。食べ物に困ることもほとんどありません。バナナ、オレンジ、パパイア、アボガドなどがいたるところに植えられ、一年中収穫ができます。タンパク質が不足しがちですが、デンプン質はふんだんに摂ることができます。普通のガーナ人はかなり太っています。これはデンプン質とパーム油の摂りすぎだと思います。ガーナは平和な時期が長く続いているので、人々は明日のことを信じ、今日を楽しく過ごしています。」

と、いうわけで、ガーナ在住日本人を代表しての全面否定である。うーん。ではこのニューズウィークの記事はなんなんだ?ということになる。小さな話を大きく誇張したのだろうか?

TPP報道では、農林省の自給率の大ウソや膨大な税金の無駄使いに全くふれず、マスコミが騒いでいる。全くアホかと私は思う。最近マスコミ不信になってきた。
<ニューズウィークの記事は、拡大できます。是非読んでみてください。>

2011年11月13日日曜日

ツェツェ蠅の危険地域拡大?

先日、こんなWEBニュースを見た。ツェツェ蠅の危険地域が拡大していると言うのである。ツェツェ蠅というのは、アフリカの東部から中央部、ギニア湾沿岸に広がる危険な蠅で、「眠り病」を引き起こすことで有名だ。特に家畜(牛)に被害が出るが、人間にもうつる。マラリアと同じように、寄生虫が、その正体である。このツェツェ蠅、地球温暖化で活動する地域が変わるのではないか、とアメリカの疾病研究所がコンピュータで解析したらしい。

この際と思い、ちょっと調べてみた。まだまだ完全な治療薬は確立しておらず、脳に後遺症も残ることも多いようだ。刺されないようにするのが一番だという。アフリカの風土病の中でもエボラ出血熱とともに、かなりヤバい病気である。この分布が、温暖化で南部にも拡大する可能性があるということらしい。これもまた乗り越えなくてはならないアフリカの現実である。

http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2839891/8057666?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics

2011年11月12日土曜日

体験入学なのだ。

サッカー部・ラグビー部 体験入学
土曜日なのだが、今日は出勤だった。体験入学の日である。授業を3時間した後、清掃、12:30から中学生の来校受付。13:30から講堂で学校紹介、その後、これが本校らしいのだが、各クラブの体験が中心という日程だった。
私にとって最大の問題は、授業だった。月曜日の5・6・7限目の授業だったので、なんと3連発。それも、世界史Bで仏教の、ちょうど山場のような授業だった。仏教の「法」を、四諦・四法印・十二縁起などという視点から解説し、それらを論理的に結び付けるという授業だ。私の倫理の授業を受けたことのある教え子なら、「ああ、あれ!」と思うはずだ。30年近く教えている。本校では初なので、どれくらいの理解力があるかと、気合いが入る。大汗をかいて3時間頑張った。もう、くたくたである。終了後、急いで、校外に出て喫煙。(笑)それから清掃の監督。朝からローソンに寄って購入していた昼食をもって、講堂の放送室へ。計画書によれば、講堂では、学校紹介が始まる前にビデオを上映することになっていた。実は私の今日の仕事はそれと、学校紹介の時にもビデオを上映することだったのだ。まあ、要するにビデオ係である。(笑)よって、誰よりも早く講堂に駆けつけ、昼食をとりながらビデオを流したのだった。NHKの夕方の番組や関西では有名な”ちちんぷいぷい”という番組で、本校が紹介されたものと、文化祭・体育祭の記録ビデオ3本を、流した。初めて見たのもあったが、なかなか面白い。前任校でも、全国唯一の国語科が番組化されたことがあった。本校でも、全国的に珍しい武道科が中心になって紹介されていた。特になぎなた部の紹介が中心だ。

野球部と陸上部
ちょうど、開会直前に3本のビデオが上映し終わった。計算したわけではないが、うまくいった。学校説明会でのビデオ(新作)もばっちり上映した。製作したS先生、ご苦労様である。ふと、会場を見ると満員である。700人以上の中3生と保護者がクラブ別に座っていた。最も人数が多いのはやはり野球部だった。100人近い。凄いよなあ。みんなユニフォームや体操服に着替えて、この後本校生と共にクラブ活動である。運動場は、凄い人出だった。思わずG12で激写したのだった。

空手道部
改めて、本校の生徒はクラブをやりに来てるのだと再認識した。中学生に比べて、現役生はやっぱり成長していることも再認識した。肉体的に鍛えられているのは当然だし、礼儀や判断力等、当たり前だがかなり違う。クラブで鍛えられるということは、大事なんだ、と改めて感心してしまった。

授業ですっかり精力を使い果たしたうえで、時間との戦いをして、かなり疲れたらしい。帰りの電車で爆睡してしまった。まったく…私も歳をとったものだ。

2011年11月11日金曜日

「世界130カ国自転車旅行」

「世界130カ国自転車旅行」(文春文庫 中西大輔著11月20日発行)を読んだ。このところ読書が進む。ようやく気候的にも秋なのだなあと思うのである。この本は、なんと2日間で読破である。まあ、薄い文庫本であるからだが、こういう気楽に読める本もいい。中西氏は、11年3か月かけて世界を2周した人だ。こういう紀行文は、時間を軸に空間を描くというカタチで書かれていくことが多いのだが、あまりの長旅故か、いくつかのキーワードでくくって記述されている。
第1章は、世界へ出る前の自分史である。岡崎氏の飾り気のない人柄が理解できる。11年も自転車で回っていたというと、かなり変わった人間のようにみえるが、フツーの謙虚で忍耐強い人なのだった。
第2章は、意外なキーワード「警察」である。案外、警察は自転車旅行者にやさしいという話が主である。これは意外。途上国はガバナンスが一応に悪いが、その代表的な存在が警察と軍である。ところが、岡崎氏の感覚では南米を中心に非常によい。不思議な話だった。
第3章は、「自転車旅の魅力」と題され、自転車旅ならではの話が書かれている。風の影響を大いに受けて、上り坂なのに自転車が止まらないといった考えられない話もでてくる。なかなか面白い。
第4章は、様々な親切に出会った話が主である。特に南米、チリとウルグアイの話は俊逸である。岡崎氏はここで長く居候することになるのだ。これだけで1冊の紀行文ができるだろう。一方、北欧では、極めて冷たいという感覚を持ったようだ。カトリック的ないいかげんさとゆとり。プロテスタント的な合理性と冷たさみたいなものを感じる。私は、北欧も南米も行った事がないが…。
第5章は、「自転車旅の事件簿」と題して、野生生物との関わりやマラリア、ナミビアでの転倒などと共に、ルーマニアでのロマ(ジプシー)の家で盗難に逢う話など、なかなか面白い。
さらに、第6章以降も有名人と会った話や、恋の話など、最後まで、岡崎氏の人柄が素直に出ている。

自転車で、世界を回るというのは、たしかに冒険だ。北海道でも多くのミツバチ族(バイクで旅する人々)よりも、自転車で回る人のほうが、やっぱり凄いと、いつも車で回る私は思う。苦労の度合いの問題である。だからこそ、世界中の人々に尊敬され、親切にされるのだろう。特に日本の裏側の南米では…。

ところで、ナミビアのナミブ砂漠の近く、長い坂道で岡崎氏は転倒するのだが、私も砂漠の近くで死にかけたことがある。アメリカのアリゾナ州。ユマというメキシコ国境に近い街から、R8を西へ向かっていた。砂丘があったので、レンタカーを停めてちょっと一休み。写真をとって、さあ、行こうと四車線のハイウェイR8上の橋となっている車道に進んだ時だった。砂丘の砂が車道にあったのだろう。激しいスピンをした。360度のスピン。R8の真上である。レンタカーも傷つかず、無事だったのだが、もしR8に落下していれば、今頃ブログなど書けていないだろうと思う。車でさえ、イロイロあるのだから、自転車ならなおさらである。うん、うん。

2011年11月10日木曜日

「日本は世界第5位の農業大国」

今さらながら、「日本は世界第5位の農業大国 大嘘だらけの食糧自給率」(浅川芳裕著 講談社+αー文庫)を読んでいる。TPP参加問題が、工業と農業の対立の構造で語られることがやはり多い。私は、TPP参加は大筋必要だと考えている。アフリカの農業に関しては、何冊か読んだのだが、日本の農業については、不勉強で、この本を読んでいかに農林省がインチキな政策を実行し、税金を無駄にしているかを実感することになった。

私も農林省やマスコミの定説、日本の食糧自給率は低く、食糧の安全保障という観点から農業を考えなくてはいけないという”大ウソ”を信じていた一人である。あー、情けない。農林省はまさに、自分たちの利益だけを考えて日本の農政を歪めている。

もし、私がこのブログでそれを紹介しようとすると、莫大な引用になってしまう。2010年2月発行で、私の購入したものは第8刷である。WEB上の書評の中から、私の引用したかった部分を書いているものがあるので、以下の2つにアクセスしてみて欲しい。

http://d.hatena.ne.jp/oguogu/20100607/1275899449
http://saya.txt-nifty.com/syohyou/2010/07/5-46d7.html

どうやら、民主党の中には、農林省の官僚や組合に完全に牛耳られている議員も多そうだ。野党にもいるみたい。必要なのは、TPPに関わらず、日本の農政の抜本的改革である。あの、大いに騒がれた民主党の「仕分け」ってなんだったんだろうと思ってしまう。

この農政の無駄金を、震災復興や今話題の戦後最大になったと言われる生活保護費に回せばいいと思うのは私だけではないと思う。

大阪はW選で大騒ぎだが、都構想なんか実行したら、日本で一番幸福度が低い大阪(朝日新聞に載っていた。まあ、日本の都道府県別GNHみたいなものらしい。)の中で、生活保護受給者の多い区は、真っ先に悲鳴をあげるはずだ。そうなれば、ハシズムは、こんどは生活保護受給者をやり玉にあげるだろうけど…。

そんなに、やり玉をあげたいのなら、農林省を狙え、農林省を。

2011年11月9日水曜日

毎日と朝日のハシズム批判

このところ日経と朝日と毎日の3新聞を読み比べする日々が続いている。ちょっと贅沢だ。日経はモーニングで、朝日は学校で、毎日は自宅で、である。いよいよ大阪知事選告示とあって、朝日と毎日で、かの大阪の教育を破壊する教育条例関係の記事があった。

朝日の方は、校長公募への批判であった。そもそも、校長や教頭になりたいという教員が減少していること。中には一般教員への格下げを希望する教員が増加していること。それだけ教育現場が締め付けられ、管理職になることに魅力がないこと。精神的・肉体的負担が大きいこと。そんな中で、府で校長公募制を実施してみたが、ふさわしい応募者は極めて少ないこと。今回の教育条例が、いかに思いつき的で、単に聞こえが良いだけのモノであること。見事に論理的に条例案のイカサマを暴いていた。

毎日の方は、『異論・反論』というコラムで、雨宮処凛という作家が、『ハジズムで誰が得をする?』と題して論じている。少し、引用してみる。
「大阪都構想。教育基本条例。既得権益バッシング。H氏の主張は極めて明確だ。諸悪の根源はここだ!と敵を名指しし、そこさえ突破すればバラ色の未来が待っているような錯覚を与える。これまで、市や府の職員などが槍玉にあげられてきた。そうして現在、大阪維新の会が提案する教育基本条例は、”勝ち組じゃない先生/子ども”にターゲットを絞っているように見える。様々な問題点が指摘されているこの条例だが、やはり特筆したいのは、”知事が設定した教育目標を達成しない教育委員は罷免””3年連続定員割れの府立高校は統廃合””2年連続最低評価の教員は分限処分”辺りだろう。ここに貫かれているのは競争原理だ。(中略)おそらく成績下位の生徒たちは切り捨てられる。最低評価を受けたら処分されるのだから先生だって必死だ。一方で目先の評価を気にする先生ばかりになれば、生徒や保護者の人気取りに走る状況も生まれるだろう。”あの先生、恐くて大嫌いだったけど、実はすごく大事なことを教えてくれたな”と数年後に気付くような先生は過去のものになっていくのかもしれない。」

全くそのとおりである。この教育条例は、大阪の教育を破壊するもの以外の何物でもない。彼女の結論をさらに引用する。

「H氏の手法は、ファシズムにかけて”ハシズム”といわれている。次々と敵を名指しするやり方には爽快感を覚える人もいるかもしれない。公務員などH氏が既得権と名指す人とそれ以外の人が対立したところで、結果的に得をするのは誰だろう。少なくとも、あなたではないはずだ。社会は決して一発逆転では変わらない。長い閉塞の中、多くの人の鬱屈を一時的に晴らしてくれるハジズムに、何かこの社会の病理を見る思いがする。」

全く、全くそのとうりである。このままでは、大阪の教育に希望を抱く教員志望の学生も、講師としてふんばる若手も、遅くまで学力保障に頑張る教師も、部活動で365日生徒と共戦する顧問も、学校に最後まで残って戸締りをする教頭も、自分の教育観を語る、たたき上げの校長も、みんな毒草と刈り取られてしまう。ハシズムの後には、ペンペン草のような教員しか残らない。10年後、20年後が心配だ。大阪府民、大阪市民の良識を信じたい。

2011年11月8日火曜日

「翔べ海上自衛隊航空学生」

先日J堂書店に妻と行った時、「世界最悪の鉄道旅行」(11月2日付ブログ参照)と「世界名列車の旅」(11月3日付ブログ参照)と共に、『翔べ海上自衛隊航空学生』(光人社NF文庫2011年11月21日発行)という文庫本も購入した。岡崎拓生という元パイロットの自衛官(退官時は第201教育航空隊司令)が書いた本である。ふと、目にとまり、一緒に購入したのだ。岡崎氏は、航空学生出身である。つまり、高校卒業後、海上自衛隊に航空学生として入隊した”叩き上げ”なワケだ。

ヒコーキ大好き人間としては、海上自衛隊の固定翼機といえば、対潜哨戒機のP3C、その前のP2VやP2Jのネプチューンが連想される。目次にそんな名前が載っていたので、おおっと買ってしまったのだった。かなり詳細にヒコーキの操縦の難しさや機体のクセのことなどが載っていて面白かった。

P2V ネプチューン
基本操縦課程後期で岡崎氏が乗ったSNJという練習機(空軍名はT-6で、こっちの名前の方が有名である。)のところ、かなり面白い。ちょっと引用してみる。『シートに座ると首から上だけが外にのぞく程度で、メンター(前期基本操縦課程で使った練習機)が「たらい」なら、こちらは「五右衛門風呂」である。おまけにこのSNJは、プロペラ軸を中心にシリンダーをぐるりと円形に配置した星型エンジンなので、頭でっかちである。尾輪式のため、地上では仰向いていることもあって、ちょうど小山に眼前をふさがれてな具合である。(中略)飛行機が並んでいる列線を出るまでは、前が見えないので左右同時に横目を使うという離れ業が必要である。エプロンを出て誘導路に入ると、前方を確認するため浅いジグザグを描きながら進む。(中略)この飛行機の場合は、方向舵とブレーキだけで方向管制をしなければならない。』と、こういった感じで、P2Vや、P3Cの特徴も描かれているわけだ。かなりマニア向けだが、ワクワクしてくる。どんくさい私などには到底およびもつかない世界だ。パイロットは大変だなあと思いつつ、憧れだけがつのるのであった。
SNJ(Tー6)練習機

ところで、今月末に妻と、久しぶりに遠出することになっている。航空自衛隊岐阜基地の航空ショーのツアーチケットが取れて、初めて参加するのだ。思わず笑みがこぼれてしまう。ブルーインパルスのアクロバットや、C-1輸送機から陸上自衛隊の空てい団が降下したり、F-15やF-4、Tー2などが異種機編隊飛行もするらしい。思わず、うひゃひゃひゃと笑って喜ぶ変な夫婦だったりするのだ。うん、実に楽しみである。

コンゴ民主共和国の火山噴火

ナショナルジオグラフィックニュースで、コンゴ民主共和国の東部、マウンティンゴリラやチンパンジーの生息地として知られるヴィルンガ国立公園内にあるニムラギラ火山が噴火したと報じられている。
今のところ、人間やマウンテンゴリラやチンパンジーに直接被害はないとのことだが、この噴火だいぶ続くようである。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=2011110801&expand&source=gnews

意外に火山噴火による環境破壊は、甚大である。アフリカの様々なところに被害が及ばないか心配しているところ。地図で確認したら、国立公園の近くの街の名が「カタコンベ」だった。こんな時になんだが、笑ってしまった。(カタコンベとは、ローマ時代の地下墳墓のことである。)

2011年11月7日月曜日

ギリシアのガバナンスに想う

日本経済新聞を今朝も読んでいた。ギリシアと言う国は、EUの一員とは思えない国なんだと感じるのは私だけではないだろう。脱税王国なのだ。プールのある大豪邸に住む金持ちも脱税し放題らしい。プール設置には固定資産税がかかるらしいが、航空機で調査したところ10%くらいしか納税していないkとが判明したとか。プロテスタントの多い国からしたら、信じられない事実だろう。笑えるのは、ポルシェの1人当たり所有率でトップなのは、ギリシアらしい。

放漫財政だけではない。ガバナンスも国民の経済意識も凄いのだ。タクシー運転手の話が載っていた。莫大な資金を捻出してタクシー運転手となった。それが、一気に少ない資金で参入できることに断固反対している。既得権の意識も凄い。これにデモやストが盛んとくれば、独・仏もヤレヤレである。なんとか、与野党合意、連立内閣の樹立で、EUの支援を受けるようだが、国民投票云々の一連の騒動で、莫大なマネーが消えていったはずだ。

投資マネーの一部は、我々の年金や生命保険なども入っているはず。決して投資家だけが損をしているわけではない。経済のダイナミズムという面から見れば、こういう金融市場は全くの悪ではない。しかし、グローバリゼーションによる市場動向は、実にアナーキーだ。

ギリシアは、民主政、衆愚政治の世界的先駆者でもあるが、個人の利益よりポリス優先の伝統もある国だ。今、世界が求めているのは、個人の利益を優先しないライフスタイルであり、スタンスではないか。それは、地球市民という賢人思想だと私は急に人文的に論じてしまうのだった。

2011年11月6日日曜日

SONYのCMを厳しく批判する

最近のSONYのブルーレイだかなんかのCMは、非常に不愉快である。私はSONYという企業を尊敬しているので、余計いら立つ。子供が、父親に詰問するように、頼んだビデオをうまく取ってくれなかったと言うCMだ。何故、父親が子供にそんな事をいわれなければならないのか。父親の権威が失われ、エディプスの三角形がいびつになり、社会性を失う子供が出来るのだ。自分でやれ、自分で。子供に難しい操作なら、我慢しろ、と言いたい。

SONYのCMの狙いは、SONYの製品ならこんなことを言われませんよということなんだろうが、およそ企業イメージを損なうCMだ。電通か博報堂の誰の企画だか知らないが、「小皇帝」の言いなりになってどうする。こういう積み重ねがサブリミナル効果になっていくのだ。

少し、昨日の「渚会」での話の続きを書こうかと思う。それは、教育現場の危機的状況の事例である。昨日のブログでも書いたが、共にアメリカ研修旅行に行った先生方は、ほとんどリタイアされている。
ある小学校の先生(もちろんリタイアされている)は、今教務主任をされているらしい。「?」以前、女性教員が懐妊されてその代りに何カ月か勤務されていたらしい。その後、違う学校からお呼びがあり、様々な期間勤務するということが続いたとか。で、今は「教務主任」だとか。教務主任は学校の要である。授業の時間割や日程、その他学校の実務をコントロールする重責である。いくらベテランだといっても、その代役とは…と私が思っていると、「その学校の教務主任さんが、急遽教頭になりはったらしいんねん。」…ということは、誰か教頭がやめたか休職したことになる。「よくあることやで。」と小学校の先生方。「私もやめよと何度も思った。」とのこと。

ある中学校の先生は、若い教員について「信じられへん。」と怒っておられた。煙草すってる生徒を前に、「君たち、やめなさい。体に悪いよ。」という弱々しい指導が精一杯らしい。この話への反応については、とてもブログで書けるような内容ではないので割愛するが、こんな教育が、わけのわからない権利ばかり主張する人間を再生産するのである。ダメなモノはダメ。ルールはルール。児童や生徒の顔色を見てばかりでは、教育は成立しない。案外子供は、純粋で正直である。教師を見抜く。自信を持って対することができるか否かにかかっているのだ。

幸い、高校は義務教育ではない。本校の生徒は、自転車から降りて挨拶するよう躾けられている。かならず敬語で対応する。そういう礼儀を守れてこそ、自己の主張が認められる。それが社会のルールである。甘えを助長するだけの教育は日本を危うくする。CMを見て、そういう感想を持つのは私だけだろうか。

2011年11月5日土曜日

ハロウィン in Milwaukee

ミルウォーキーにて
もう20年近く前に、大阪市の教員研修でアメリカに行った。小中高の先生方で15名。10万円拠出したが、事実上はかなり豪華な研修旅行だった。財政難の今から見れば、全く”今は昔”である。
様々なアメリカ・カナダの学校を視察した。10月中旬から11月上旬で、ハロウィンの季節だった。今でこそ日本でもメジャーになったが、その頃はまだまだマイナーな存在だった。とにかくカボチャである。ボルチモアでもオタワでも、カボチャだらけだった。いよいよ、今日はハロウィンの当日という日、私たちは、ウィスコンシン州ミルウォーキーのキングス高校にいた。ウィスコンシン州は、アメリカでも有数の教育州で州都ミルウォーキーの中でも名門進学校だった。

ところが、そんな私たちを迎えてくれた女性の教頭先生の格好は真っ黒なマント姿だった。校長室にいくと、校長の胸にはドラキュラの人形が付けられていた。社会科の教室に向かう時、魔女の格好をしてホウキに乗った生徒とすれ違った。教室の先生は、髑髏(ドクロ)のお面をかぶって迎えてくれた。生徒も完全にハロウィンモード。乳牛の衣装の子もいた。ラオス出身だった。<今日の画像参照>(ちなみに、ウィスコンシン州は「酪農州」のニックネームを持つ。公共バスで、ホルスタイン(乳牛)の柄のものまであって、大笑いした。)なかなか強烈なハロウィンだった。だから、前任校でALTが、ハロウィンの時にいろんな扮装をしたりするのには全く驚かなかった。本場はホント凄いのだ。

実は今日、この研修旅行に行った先生方の同窓会(渚会と命名されている。みんなのお気に入りだった添乗員さんの名前を冠している。)だった。もうすでに、ほとんどの先生方はリタイアされている。この研修旅行、管理職の登竜門的な意味合いがあり、ほとんどの方が校長まで務められている。小学校の先生方は、今も様々な小学校で放課後の小学生の勉強や遊び相手になる仕事をされている。中学校の先生方は、新任教員の教育係の仕事をされていたりする。健康に気をつけながら、リタイア後も様々な形で教育に携わっておられる。。

ハロウィンは、ケルト人の1年の終わり。…現役の私にすれば、リタイア後の話など、かなり先の話なのだが、そろそろ無視できなくなってきている。今、決めているのは、妻とピースボートで世界一周することだけ。(笑)

追記:読者のhigary君へ。ハロウィンの本場・アイルランドへ行くのかあ?

2011年11月4日金曜日

中央アフリカに福島原発の影響

中央アフリカ共和国のウラン採掘が凍結されているようだ。フランスの原子力企業アレバが、福島原発事故後、ウラン価格が低迷していることを理由に凍結しているらしい。ウランの国際価格は、IMFによれば、事故前の1ポンド=$65から約20%下落している。世界的に脱原発の機運が盛り上がっており、価格が戻るのには1~2年かかるだろうとの見られている。これに、契約違反だと中央アフリカの政府が噛みついているとのこと。
http://www.morningstar.co.jp/portal/RncNewsDetailAction.do?rncNo=555325

日本の原発事故がこのような形でアフリカにも影響を与えているわけだ。グローバリゼーションの例としても格好の事例ではあるが、中央アフリカ共和国はHDI(人間開発指数)で、179位/182カ国という、最貧国の1つである。1日$1以下で生活する人々は66.6%。経済成長率は2.2%(2008年)、このところ10%以上の経済成長率を上げているサブ=サハラアフリカ諸国が多い中で、これは厳しい。ウランやダイヤモンド、木材などの天然資源に恵まれているがゆえの「天然資源の罠」。このレント(利益)をめぐる長年の内戦による「紛争の罠」。そして貿易に不利な「内陸国の罠」。そして「悪いガバナンスの罠」。ポール・コリアーのいう最底辺の国がはまる4つの罠の全てが揃っている国だ。一時はデモクレイジーどころか、クーデターに成功したボカサによる中央アフリカ帝国樹立という時代錯誤が行われ、GDPの1/4を皇帝戴冠式に使ったとかいう話題を振りまいたが、そのボカサも放逐され、今は地道に頑張っているらしい。日本もわずかながら、人間の安全保障を守るための草の根支援を行っている。日本の原発事故で、大きな収入減になっていることは、まさに気の毒である。良きガバナンスを構築することを前提に、透明性の高い重点的ODA支援をJICAに期待したいところである。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/10_databook/pdfs/05-30.pdf

2011年11月3日木曜日

ケニアのサバンナ急行

昨日ブログで紹介した「世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ」(下川裕治)といっしょに、J堂書店で『今すぐ乗りたい!世界名列車の旅』(櫻井寛:新潮文庫)を購入した。私は別に鉄道ファンというほどではないが、こういう紀行文は大好きだ。櫻井寛の方は世界中の列車紹介といった本で、短い文章ばかりなので、まとめて書評を書くという感じの本ではない。ここに紹介されている名列車、アジア:9、ヨーロッパ:16、オセアニア:3、アメリカ11、アフリカ:6の中で、私が乗ったことがあるのは、ジャズのスタンダードで有名な「ニューヨークのAトレイン」(NY地下鉄のA列車)だけである。ほとんどが、食堂車付きの豪華な寝台車である。「名列車」だから当たり前か。(笑)

ちなみにアフリカの名列車として挙げられているのは、目次順に、南アフリカのロボスレイル、エジプトのターボトレイン、ケニアのサバンナ急行、モロッコの特急ベイダ、エジプトのエジプシャン・ワゴンリー、そして南アフリカのブルートレインである。

アフリカを白人観光客の視線で見る、豪華な鉄道の旅というのは、どうも私の趣味には合わないのだが、ケニアのサバンナ急行には是非とも乗ってみたい。正式な列車名は”Jambo Kenya Deluxe”というらしい。所用時間は14時間、週3往復で、ナイロビとモンバサを結んでいる。そうなのだ。私は、JICAの教員研修旅行でケニアに行った際、予定されていたモンバサに行けなかったのだ。沢木耕太郎的に言えば(本年2月11日付ブログ参照)心を残してきた場所の1つなのである。ナイロビに着いた夜、レストランで食事中、JICAケニア事務所の次長さんの携帯が鳴った。モンバサで爆破テロが起こったのだ。次長さんは、モンバサにいるJOCVの安否の確認を指示し、我々の接待どころでなくなったのである。で、モンバサに行く予定はぶっとんだのだった。おかげで、ケニア山や赤道通過ができたけれども、インド洋をこの目で見る機会を失ったのだった。
ケニアのサバンナ急行
櫻井寛の紀行文によれば、切符は乗車券・寝台券・食事券の3枚組らしい。どこにも号車番号や寝台番号らしきものはなく、出発前に3mはある紙が掲示板に張られるらしい。まるで合格発表みたいだという。コンピュータ全盛で、航空機のチケットさえ簡素化されているのに、面白いではないか。(そのうち、こういう趣のある儀式も無くなってしまうだろうと思うが…)50年間は走り続けている骨董列車だが、重量感があっていいらしい。もし、ケニアを再訪し、モンバサに行くことになったら、なんとしてもこの列車で行きたいものだ。野生動物目当ての白人観光客の目線でなく、地球市民の目線で、沿線にあるキベラスラムを見てみたい。

2011年11月2日水曜日

体育会系 後期生徒会 始動

本日来校した上海バレーボール団
中間考査が終わって、後期の生徒会の選挙が行われた。いろいろあったのだが、結局2年生の男子生徒が生徒会長に立候補してくれた。文化祭のセレモニー係で頑張ってくれた女子生徒も立候補してくれた。これに前期から頑張ってくれている2人の女子生徒を入れて4人の後期生徒会執行部が誕生した。(以前このブログでも書いたが、本校の生徒会は、会長とそのスタッフという構造で、定員がない。)生徒会顧問としては、ほっと一息なのである。

さっそく、後期の第1回生徒議会を今日開催した。最大の議題は、校内球技大会である。12月の期末考査後にも、球技大会をやるのである。本校はまさに体育会系である。(笑)先日の打ち合わせ会では、前期の生徒会OB・OGも交えて検討会を開いた。結局、昨年同様ドッジボールとバスケットボールをやることになった。

さて、生徒議会。まずは、球技大会をやるかやらないか。当然やることになった。生徒にしたら授業がなくなるのである。大拍手で議決した。(笑)次に種目。生徒会からの提案は上記のとおりだが、意見を求めたら、1年生からサッカーやバレーボールという声も上がった。私は後ろの3年生の近くの席で見ていたのだが、3年生のつぶやき。「俺らが1年生のころは、3年が賛成したら怖くて何も言えんかったで。」「最近の若い奴は…。」「冬はドッジとバスケやろ。やっぱり。」(笑)
採決になった。「運動場種目…。ドッジボールに賛成の方…。」3年生は大声で「賛成!」凄い拍手。2年生が顔色を見て、「賛成」「ドッジボールやあ!」結局、1年生の意見は全部かき消されてしまったのだった。本校は体育会系である。(笑)

民主主義に反するかもしれないが、3年生が半ば力で押し切るところが、なかなか面白い。

ところで、今日、本校に上海からバレーボールチームが来校した。本校のバレー部や他の市立高校のバレー部と親善交流を第二体育館で行っていた。生徒議会の後、覗きにいったが、びっくりするほど背が高くうまい。生徒たちは、真剣にそして楽しく交流していたようであった。いいよなあ、こういうスポーツ交流、と思ったのであった。(本日の画像参照)明日は、ほっと一息、休日である。

『世界最悪の鉄道旅行』を読む

下川裕治の「世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ」(新潮文庫11月1日発行)を読み終えた。土曜日に梅田のJ堂で買ったので、4日間で読んだことになる。通勤時間やページ数から見るとかなり早いといえる。その最大の理由は、なにより面白かったからである。私自身は、下川裕治の本をかなり読んでいる。貧乏旅行作家という凄い肩書きをもつ彼の本は独特の世界がある。

今回の旅は、バスで東京ーイスタンブール間を旅したり、格安エアラインで世界一周をしたのだから、なんとなく次は鉄道という安易な発想である。下川裕治は、以前シベリア鉄道にも乗った経験があるので、ユーラシア最東端から最西端へというルート、それも中央アジアのルートを選んだらしい。中央アジア、特にグルジアやアルメニアなどの国々のことを書いたバックパッカー系の本はあまりない。で、ついつい授業の合間などに読んでしまうのであった。

タイトルに”世界最悪”とあるが、決して誇張ではない。様々な困難が起こる。中国の公安に拘束されたり、40℃を超える炎熱の車内でクタクタになったり、ロシア国内では、前の列車が爆弾テロで破壊され、大幅な遅れが出てビザが切れたり、フランスではストライキに遭遇したりと、たいがいな旅である。下川裕治の旅はいつもそうである。ホント酔狂なのである。さて今回の本の中で印象に残った個所を挙げてみる。

昨日、前任校の中国修学旅行でお世話になった王さんからメールがきた。無茶苦茶嬉しかったのである。王さんは、もちろん漢民族なので、多少失礼かもしれないが、私は下川裕治の次の記述は正しいと思っている。ウルムチのビザオフィスでの記述。『漢民族の世界はどうしてこうも激しくなってしまうのだろうか。体から発散されるエネルギー量が多いのだ。もちろん声も大きい。これが人口圧というものかもしれない。』中国を見事に表現している。これには王さんも苦笑せざるを得ないと思う。(笑)

カザフスタンからウズベキスタンへ向かう列車で出会った朝鮮系ウズベキスタン人の女性の話。彼女の両親は朝鮮が南北に分断される前に旧ソ連に渡った。そして崩壊と同時にウズベキスタンに移ったのだという。「タシケント(ウズベキスタンの首都)には韓国系のウズベキスタン人が多いんです。」「どのくらい?」「たぶんロシア人と同じくらいいいるんじゃないかな。」私は、なるほどと膝を打った。私の好きなアシアナ航空(韓国の全日空という感じの航空会社。私はアシアナ航空でNYへ行った。安いし、アテンダントも綺麗だし、サービスも良い。)が、ウズベキスタン路線を運航している理由が、やっとわかったのだった。

中央アジアの国々の差異を、下川裕治はうまく表現している。ちょうどウズベキスタンの独立記念日(9月1日)に入国したからだが…。「中央アジアの国々の独立記念日はこのあたりに決められている。それは旧ソ連から突き付けられた最後通牒の日付でもある。いや満足な交渉すらなかったと聞くから、押しつけられた独立のようなものだった。独立ってどういうことなんだ。多くの人が状況を測りかねていたという。しかしそのうちに、ルーブルで貯めていた口座が凍結され、やがて消えた。あなたたちはゼロからスタートしなさいといわれたようなもので、独立してもいいことはなにもなかったのである。それから19年である。カザフスタンはロシアに擦り寄り、タジキスタンやキルギスの人々はロシアへの出稼ぎでしのいでいた。そんな中でなんとなく国らしくなってきたのが、このウズベキスタンだろうか。キリル文字に頼る中央アジア諸国の中で、ローマ字表記つまりラテン文字への切り替えを目指している。」

他にも、チェックした個所はたくさんあるが、この辺でおいておこうかと思う。
サハリンの最東端駅からウラジオストク、ハルピンから北京、ウルムチからアルトマイ、タシケント、アストラハン。ここで鉄道は少し途切れて、バクーからトビリシ、アルメニア国境までいって、またまた途切れてトルコ入国。イスタンブールへ。ソフィア、ベオグラード、ベネチア、ミラノ、マルセイユ、ボルドー、リスボン、最西端の地下鉄駅カスカイスまで。20962km。ホントお疲れ様である。さらなる酔狂な次回作に期待を表明しておきたい。

2011年11月1日火曜日

ローソンカードと仲間たち

月初めは、あいかわらずダリ的な気持ちになる。投稿して、アーカイブの数を増やさなければという、この強迫観念。(笑)今日は、本当は、ローソンカードの話を書くつもりだったのだ。何度かこのブログで書いているが、本校の近くにローソンがある。オーナーが本校の運動部をいつも応援してくれている、あのローソンである。天井には、野球部のユニフォームが飾ってあったりする。それも正規のものと、ビジター用の2着で、プラスチックの展示ブースみたいになっている。日曜日には、どこかのクラブの試合にオーナーが行かれているようで、選手の名前まで入った写真が展示されている。毎度のこととはいえ、有り難いことである。

文化祭前に、生徒会をつれて招待券を持っていった関係で、私が本校の教師であることは完全にバレている。(笑)特に、奥さんは、私が行くとなにかと気を使ってくれる。まあ、毎日のように行っているからだが…。というのも、「静岡茶」を買っているのだ。1リットルで、なんと105円。むちゃくちゃ安い。で、ついでに煙草を買ったり、学食の定食が気に入らない時(親子丼やハンバーグ定食は私は苦手である。)は、昼食用のパンを買ったりするのだ。

そんなローソン生活なのだが、今日、奥さんに勧められて、カード会員になった。私はこういうポイントカードは、邪魔くさいし、財布が膨らむのであまり好きではない。奥さんは、熱心に勧めてくれて、入力の世話までしてくれたのだった。で、まあいいかということで、さらに財布を膨らませることになった。

そういえば、私の財布にはなんやかんやと言いながら、カードが入っている。スマートICOKA(JRの定期券)。免許証。職員証(勤務の始めと終わりにPI!っとしなければならない。)。保険証。診察券(糖尿病の薬を貰っているNクリニック、H眼科、I耳鼻咽喉科、T病院。なぜか最も行くH城鍼灸院のはない)。K書店のポイントカード。(前任校の時さすがに購入金額が多額なので作った。)JAFの会員証。枚方市図書館貸出カード。Taspoカード。(自動販売機で煙草を買うのに必要。)そして、ユナイテッド航空のマイレージ付きVISAカードである。

久しぶりにどれくらいマイルが貯まっているのか知りたくてHPにアクセスしたら、パスワードを忘れてしまっている。メールで確認しようとしたら、古いアドレスだったことを思い出した。あちゃー。いっぺん電話してみよう。台湾くらいは行けるはずだ。(ホンマかいな。)