2011年11月26日土曜日

南部アフリカの「レジリアンス」

マラウイのメイズ畑
南部アフリカの気候変動が、メイズ耕作にかなり影響を与えそうだと、24日のロイター電が伝えている。WEBの記事では、マラウイの農業組合の代表がこう言っている。「降雨パターンがむちゃくちゃになっている。」「農民は作付け計画を立案できなくってきており、農業システムの大きな問題になりつつある。」
ちょっと、時事通信社の和訳がヘンだ。おそらくこういうことだろう。要するに、雨季の時期がずれているらしい。農家は、毎年、雨季の直前にメイズ(トウモロコシ)の種をまき、天水で栽培している。メイズは800mmほどの降雨が必要だ。このタイミングがずれると、大変なのである。農業システムの大きな問題とは、この天水に頼る農法自体を指しているのだと思う。これからは灌漑を行わざるをえないという意味だろう。
http://www.jiji.com/jc/rt?k=2011112500364r
アフリカの農法は、そもそも、エコでしかも出来るだけ労力を使わないようにしている自給農業だった。土地自体がそんなに良くないし、半永久的に農地を使うという考えがあまりない。土地生産性も労働生産性も低いわけだ。だめになったら移動すればいいというのが伝統だった。ところが、最近は政府の方針や補助金など、様々な近代的な農政が入り込んできている。メイズも商品作物化している。各農家とも、生産性をあげることが必要になりつつある。

で、ちょっと調べてみた。東大・大学院農学生命科学研究科の川島准教授の「水資源と農業生産」というレポートが面白かった。川島先生の資料によると、南アフリカ地域の灌漑面積/全耕地面積の割合は13%である。おそらく、そのほとんどが南ア共和国だと思われるので、マラウイやザンビア、ジンバブエなどは、よくて東アフリカの6%、もしかしたら西アフリカと中央アフリカの1%に近いと思われる。南アフリカ地域の水資源は、797立方km、中央アフリカや西アフリカよりはるかに少ないが、ヨーロッパより多い。南アフリカ地域の取水率は5%とある。20%を超えるヨーロッパに比べ、はるかに灌漑する余地があるといえるだろう。
http://www.jiid.or.jp/files/04public/02ardec/ardec38/key_note1.htm

南部アフリカの農業の未来は灌漑にかかっているように思われるのだが、一方で、こんな研究もある。天水農業に依存する人々の生活は、環境変動に対して脆弱である。この変動に対して、人間社会および生態系が環境変動の影響から速やかに回復すること(レジリアンス)がカギとなるので社会・生態系のシステムのレジリアンスを高めることが必要だというものである。なんと、公開講座で教えを受けた京大の島田修平先生が関わっておられる。
http://www.chikyu.ac.jp/archive/brochure/2011/yoran2011j_44-47.pdf
ただ単に、灌漑を推進するだけでなく、天水農法の脆弱さを補うカタチで、地域にあった生産活動を行う事がどうやらいいようだ。

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