2011年11月24日木曜日

「在日米軍司令部」を読む

春原剛氏の「在日米軍司令部」(新潮文庫)を急いで読んだ。ちょうど、17日にオーストラリアの北部ダーウィンに米海兵隊を駐留させる方向で、米豪首脳が合意したというニュースがあった故である。数年間で2500人にまで拡大するという。中国や北朝鮮のミサイル射程から海兵隊を守るためではと言う解説も新聞に載っていた。

で、この「在日米軍司令部」という本である。よくぞここまで調べたものだというくらいの情報量である。とはいえ、結局結論的なことは、在日米軍司令部は、有事の際の米軍4軍(陸・海・空・海兵隊)の指揮権をもたないこと、米空軍の将軍(中将)が司令官だが、ワシントンの国防総省などで、その存続を含め様々な人事を巡る(海軍や陸軍が司令官の任につくこと)争いが起こっているといった、極めて生々しい内容だった。現在の在日米軍司令部は、横田基地内にあり、主として米大使館と連携しながら、日本政府ならびに自衛隊の制服組と交流し、情報交換を密に行っているというのが、アウトラインである。特に、北朝鮮のミサイル実験の際には、司令部の根回しが極めて有効だったようだ。また、東北震災時の「トモダチ」作戦でも大いに面目をほどこした。もちろん、沖縄の様々な問題の火消しにも活躍している。今日の地位協定に関するニュースが報道されたが、大きく関わっているに違いない。

さて、印象に残ったことをいくつか、記しておきたい。
この本のための取材で大きな協力をした、在日米軍司令官ライト氏は、司令官であるが、同時に空軍の現役パイロットであることだ。彼の訓練の様子もこの本では描かれている。多忙な中で三沢基地に行き、F16を操る。月に1時間ほどの訓練飛行を4回行わないと実戦パイロットとは認められないのだ。資格保持のため、ライト氏は、三沢でのフライトとともに、体に何Gもの力がかかるパイロット業務をこなすため日々の鍛錬を欠かさない。時間を見つけては現役兵士やパイロットに交じって現役の戦闘機乗りに課せられている練習メニューをこなしていたという。凄いなあ。やるよなあ。とヒコーキ大好きの私などは思ってしまう。
三沢基地のF16 尾翼にWW(野生のイタチ)とある

在韓米軍の司令官は陸軍が握っている。在日米軍との関わりの中で出てくるのだが、韓国の有事の際、韓国軍の指揮権は未だ米軍(朝鮮戦争時の国連軍:今はまだ休戦中である。)が握っているのだった。私は休戦中だということは知っていたが、少なくとも韓国軍と協力して(対等な立場で相談しながら)有事に備えるのだと思っていた。意外であった。そのうち韓国軍に指揮権は譲られるらしいが、いろいろともめている。韓国もFTAとともに対米戦略に悩んでいるよなあという感想をもった。

オーストラリアも長いこと孤立主義を貫いてきた。ところが2002年のバリ島テロで同胞200人が犠牲になった事をきっかけにして、米英とアングロサクソン同盟を結び、イラクでも共同歩調を取り始めたという事実も、今回の海兵隊駐留というニュースと繋がってくるわけだ。

国際政治をちゃんと見ようと思うと、こういう軍事的な面を避けては通れない。ちょっと疲れる文庫本だったが、勉強になった。

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