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2025年9月12日金曜日

学院の体育大会 2025

実は、今日は学院の体育大会なのであるが、昨年の会場が工事とかで、かなり遠くの会場になった。生徒たちや先生方もも最寄り駅からピストンバス輸送という大変なことになった。周囲の駐車場も万博の影響で高騰しているらしい。保護者のみなさんも大変だ。ということで、管理職の先生方と相談の上、今回は見合わせた次第。

とはいえ、3年生は、男女とも体育祭のメインともいえる女子のメイポールダンス、男子はソーラン節を行うので、かなり以前から体育の時間頑張っていたのを知っている。今週の火曜日の5・6限は総合練習だったので、それぞれの練習風景を見に行った。せめて、練習風景だけでも見届けておきたいと思ったのである。

近くで見て、メイポールダンスが実際に編み込まれていく様がわかった。色取りどりの布を持った女子生徒が複雑な動きをして、ポールに編まれていくのだが、昨年は全体の上品なダンスに目が行っていたので、編み込みという重要な部分を見落としていたのだ。

男子は今年も元気である。普段は目立たない男子が頑張っていて嬉しくなった。成功を祈るばかりである。

2025年9月3日水曜日

時間がない でも合格したーい

JRのドアの広告で、以前から気になっているものがあった。個別指導塾✕某予備校の広告なのだが、「時間がない!でも合格したーい!」と女子高生がハンドメガホンで叫んでいるものである。

受験生と接することが日常である私にとって、この「時間がない」という感覚はよくわかるし、実に効果的なキャッチコピーと、それにマッチしたイラストで実に俊逸だと思っている。イラストもほどよく、ジプリ的で昭和のオジサンにも違和感がない。(笑)

ところで、受験に関するYouTubeチャンネルは、できるだけチェックしている。関西圏では特に、生徒数の減少で指定校推薦や総合型選抜・自己推薦型入試、さらには年内の学力試験で私大は囲い込みを大いに図っている。来年の国公立などの難関校一般入試を受験する方が少数派になってしまった。今や、様々な入試方法があり、ある意味、受験生も迷うところだろう。

今週も、地理の課題(HDIやアフリカの地誌)をやってもらっている間、多くの生徒と進路について雑談をしていた。関関同立よりも、近大の人気が著しく高くなっている。オープンキャンパスや各学部の教育内容がいいという声が多い。今年もまた、生徒諸君からの要望があれば、社会科学的な部分のフォローをする予定でいる。

2025年8月9日土曜日

PP 近代国家論 国民国家

近代国家論の次の視点は、国民国家である。国民国家は、日本の近代化に於いて最も早く施策されたもので、日本史組に是非確認してもらいたいと思っている。この国民国家化は国民皆兵と同義語である。富国強兵のため廃藩置県を強行した西郷やその背後にいた勝海舟と、戊辰戦争を途中で抜けヨーロッパの軍隊を視察して国民皆兵の重要性を認識して帰国した山縣有朋についてはイラスト・名前なしで示した。見栄えもそうだが、授業では日本史組に質問したいところ。山縣はちょっと難しいかもしれない。

この国民国家=国民皆兵は今も徴兵制に繋がっている。徴兵制を今も継続している地図を見せたうえで各国の事情(特にスイスやスウェーデン、フィンランドなどの、中立国の立場とロシアとの関係性)についても伝えたいと考えている。スウェーデン、フィンランドのNATO加盟にも関係してくるからである。

国民国家化を阻止した黒歴史は、ベルギーの恣意的民族分断(ツチとフツ)やフランスの少数派優遇などがある。こういう現在裕福で力を持っているヨーロッパの黒歴史という事実は生徒に伝えておきたい。ちなみに、ルワンダの虐殺については、映画のポスターのみで陰惨な画像は使わなかった。

国民国家と民族の関係、ヨーロッパの引いた国境の無意味さを見事に表しているアフリカの地図を発見した。世界史組には、この国境線引きを決めた会議の名を質問してベルリン会議という回答を引き出したい。これはおそらく大丈夫だと思う。

国民国家の最後は、多民族国家のアメリカ・カナダ・オーストラリアの移民帰化時の「宣誓」を英文で紹介したPPも作っておいた。この三カ国の宣言の違いも興味深いと思う。

…地理総合(空間的把握)という科目の中で、世界史、日本史、政治・経済のコアな部分を語りながら、国民国家とは何かを語れればと思う。

2025年8月7日木曜日

PP 4つの罠(後半)

「HDIと4つの罠」のPPの作成経過の後半。内陸国の罠については、ウガンダとスイスという対極的な内陸国の姿を中心にスピルオーバーの相違を示してみた。(ルワンダについては微妙なので✗はつけていない。笑)

さて、劣悪なガバナンスの罠。ガバナンスという語彙を高校生に理解させるのは難しい。具体的な内容と劣悪なガバナンスのデメリットを示してみた。

H高校では運動部の男子が多かったし、デモクレージーをワークショップ的に理解させてきた。しかし、学院は元女子校だし、男子もやさしい生徒が多いので、デモクレイジーの「悪意」を連想させるのは実に難しい。そこで、PPで構造的に解説することにした。

…1枚1枚、考えに考えてPPを構成するのは時間はかかるが、楽しい。以外にいい出来だなと思うのが、デモクレイジーの基盤ともなる情の経済のPP。

2025年8月4日月曜日

教材研究 近代国家論/国民国家

https://blog.goo.ne.jp/reachoutschoolofenglish/e/3fafdbf36d00bb9e52696e958edbc67a
猛暑の日々が続いている。引き続き自宅にこもって教材研究の日々を送っている。本日のテーマは、国民国家である。民族や氏族を超えて、自分はこの国の国民であるという意識が国民国家であるわけだ。本年度の地理総合は、他の社会科目との関連を重視しているので、まずは日本の近代化から話を進めることにした。

日本近代史の最初の大ポイントは廃藩置県と学制だと私は考えている。薩摩や長州、水戸や会津といった藩中心の所属意識を変革したのだが、この裏面史は、富国強兵のため、学制による国民皆兵への準備である。「ハト・マメ・マス」という小学校1年生の国語の教科書は、東北地方の方言矯正を目的として書かれている。単なる方言矯正ではなく、軍での伝達をスムーズにする意図がある。当時の世界は、戦争行為は政治の延長であり、「権利」と考えられていた。傭兵から国民皆兵への変革は当時の列強の常識となっており、日本もそれにのったわけで、このことを単純に批判すべきではないと私は考えている。

現在も国民皆兵=徴兵制を取る国は64カ国ある。男女とも徴兵というのは5カ国。イスラエル、エリトリア、北朝鮮、そしてノルウェーとスウェーデンである。この2カ国に加えHDI上位国のスイス、デンマーク、フィンランドも徴兵制を取っている。このあたりは各国の歴史的背景があるので、授業では簡単に触れておこうかと思う。BRICSでは、ブラジル、ロシア、中国の3カ国。ASEANでは、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポール、カンボジア、ミャンマー、ラオス。さらに韓国やトルコ、メキシコもである。

反対に軍隊を保有しない国もある。太平洋やカリブ海の島嶼国や、バチカン、リヒテンシュタインなどのミニ国家が多い。コスタリカの憲法に「恒久制度としての軍隊廃止」とあるのは有名だが、実際には隣国ニカラグア国軍の3倍の予算をもつ警察=公安部隊がある。NATO加盟国ながら常備軍がないのはアイスランド。(米軍も撤退したままである。)国民国家=国民皆兵という視点では、こういった問題にふれることになる。

次に多民族国家と国民国家というテーマで語るつもりである。多民族国家とは、一般にはマジョリティの民族以外の少数民族が5%を超える国家と言われている。この定義だと殆どの国が多民族国家だといえるだろう。特にアフリカ諸国は、列強による国境線に苛まれており、民族やエスニック・グループの帰属意識のほうが強いのは当然である。

ベルギーは、ルワンダとブルンジで、意図的な民族分断政策を取り、ツチとフツに分けた。独立後に大虐殺事件が起こる。国民国家化の真逆だといえる。またフランスは、シリア支配の施策で、同じアラブ人ながら、スンニー派を差し置いて、少数派のアラウィー派のアサド政権をつくった。これも国民国家化の分断例である。

トルコは憲法でトルコ民族国家(=単一民族国家)と謳っているが、国土の1/3にクルド人居住区があり、1500万人/トルコの人口の19%となっている。建国の父:ケマル・パシャを侮辱すると不敬罪に問われる。複雑なところだ。

最後に多民族国家のアメリカ・カナダ・オーストラリアの国民国家について触れておこうと思う。アメリカのグリーン・カード(永住権)や参政権のある市民権について少し解説した後、帰化時に誓うアメリカの「忠誠の誓い」を紹介しようと思う。さらに、カナダ、オーストラリア(学院ではオーストラリアに姉妹校があり短期留学も毎年行われている。)の同様の誓いも紹介したい。一番上がアメリカで和訳を付けた。アメリカでは星条旗の多さに驚かされるが、なかなか荘厳な宣誓である。ちなみに「under God/神の下の」の語は、冷戦下無神論の東陣営を意識してつく加えられたものだとか。学院の生徒は英語が得意な子も多いので、ここからは和訳なしにした。二番目がカナダの「忠誠の誓い」である。カナダの君主(=UKの国王)への忠誠であるところが特徴的である。三番めのオーストラリアは、「国民としての誓い」で、一般的な、オーストラリア社会への順応を意識させるものとなっており、三者三様であるのが面白い。

I pledge allegiance to the Flag of the United States of America, and to the Republic for which it stands, one Nation under God, indivisible, with liberty and justice for all.

I swear that I will be faithful and bear true allegiance to Her Majesty Queen Elizabeth the Second, Queen of Canada, Her Heirs and Successors, and that I will faithfully observe the laws of Canada and fulfil my duties as a Canadian citizen.

I pledge my loyalty to Australia and its people, whose democratic beliefs I share, whose rights and liberties I cherish, and whose laws I will uphold.

2025年8月3日日曜日

教材研究 近代国家論/民主主義

https://japolandball.miraheze.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%84%E3%83%AF%E3%83%8A
教材研究を引き続き進めている。ポール・コリアーの4つの罠で、劣悪なガバナンスの罠が最後であるので、関連性が強い政治体制について話を進めることにした。と、なれば近代国家論になる。近代国家論は、言い換えればウェストファリア条約に期限を持つ領域国民国家論である。「領域」(国土)とアイデンティティが統一された「国民」意識、そして「国家」として独立した主権の三要素を持つわけだ。まあ、made in 欧米の枠組みであるのだが、地理総合としての視点としては有効である。

まずは、主権に関わって、民主主義という観点から 語ることにした。我々日本人がすでに空気のように感じている民主主義は、欧米人が戦って勝ち取ったものであり、自由・平等といった人権や、人の支配を覆して法の支配(法治主義)をほとんど暴力で得たということは確認しておいたほうが良いと思う。自由を享受する基盤にはそういった歴史があるわけだ。チャーチルの民主主義に関する箴言も伝えたい。民主主義は決して絶対的な正義ではなく、他の専制政治や独裁政治よりまだマシな政治制度であること。

さて、この民主主義を世界的に見ると、調査した組織により差はあるが、およそ世界人口の30%くらいの人々がこの政治体制化で暮らしている。当然HDIや腐敗認識指数が少ない上位国となる。

ここで、アフリカの国の中で、民主国家として高い評価を受けている国を紹介したい。セーシェルのガバナンスはいいことは、イコール民主国家であるのだが、あまりおもしろい話はない。ここでは、ボツワナとモーリシャスを選んでみた。

ボツワナは、イギリス植民地時代から、ツワナというエスニック・グループが多数派(79%:南アの方が居住者は多いらしい。)で、そのツワナ人の有力氏族の王位継承者であったセレツェ・カーマを抜きには語れない。彼は南アの寄宿舎の学校・大学で学んだ後、オックスフォード大学に留学する。そこでイギリス人女性と知り合い結婚する。隣国のアパルトヘイト国家・南アは激怒し、国内でも日本で言う皇室典範を無視したことで大問題になる。仲介者のイギリスは困り、ロンドンに呼び戻し、結局王位を捨てるのである。1956年に一市民として帰国し、1962年から自らの氏族中心の政党を組織し、独立運動を開始し、最初の議会選挙で全国政党化し圧勝。1966年の独立と共に初代大統領に就任。翌年、ダイヤモンドの世界的鉱脈が発見され、デビアス社と契約を結ぶが、このレントを、初等教育、医療、インフラなどに振り向け、汚職を許さず政府職員のアフリカ系化をあえて進めず、外国人官僚を使って良好なガバナンスを維持した。天然資源の罠やガバナンスの罠を見事にクリアしたのである。しかもボツワナは内陸国。現在は、デビアズ社と政府が合弁して、ダイヤモンドの研磨や流通にも関わり6次産業化も進んでいる。内陸国の罠については、輸出額の90%を占めるダイヤモンドは、航空貨物によるものであるので、最小限に抑えられている。

モーリシャスは、フランス支配からイギリス支配へと代わったインド洋の島嶼国。サトウキビ・プランテーション地域だったが、奴隷解放時にインド系の人々が移民してきた。現在の多数派(68%:他にアフリカ系と白人のクレオール27%、中華系3%、フランス系2%)となっている。モーリシャスの国民議会は70議席で、62議席分は定数3の選挙区で直接選挙が行われる。面白いのは、「最良の敗者」と呼ばれる残り8議席である。人口比に対し当選者の少なかった政党に配分され、各民族の発言権を確保、民族融和をもたらしている。モーリシャスは、香港などから安価な労働力として縫製の仕事を受けており、安定した経済と雇用状況を維持している。観光業でもかなり利益を挙げている。

…モーリシャスは、小学校高学年が中学の低学年の頃、ある月刊少年誌で特集が組まれていたこともあって深く印象に残った国である。子供ながら4つの肌の色が違う人々が協力して国を盛り上げていることに言いしれぬ感動があった。シンガポールからヨハネスブルグに夜間飛行した際にその灯火を見たが、もう行くこともないだろうなあ、とため息をつくのであった。

2025年8月2日土曜日

教材研究 HDIと4つの罠

https://globalnewsview.org/archives/987494368
教材研究を進めている。HDIのランキングを記す提出課題を元に、次にポール・コリアーの「最底辺の10億人」にある4つの罠(紛争の罠・天然資源の罠・内陸国の罠・劣悪なガバナンスの罠)と対比しながら進めていくことにした。

紛争の罠については最新の世界紛争地図をパワーポイントに示しながら解説しようと思う。ただ、深入りすると莫大な時間を要するのでプリントでは最小限の記述に止めた。紛争の原因は、民族問題、エスニックグループの勢力争いや、特にイスラム復古主義の武装組織などによる宗教対立も多いが、根底には経済格差問題と次に述べる資源の罠による利権も絡んでいることが多い。

…これはあくまで私の感じ方であるが、独立後内戦に陥るのには、少し宗主国の法則性のようなものがあるのではないかと思う。イギリスの間接統治は、独立戦争(インドやケニアのマウマウ団など)以外では、それなりに独立後の移行はうまくいったといえる。フランスの直接同化政策よりはマシだった。ひどいのはポルトガルで、アンゴラもモザンビークも東ティモールも悲惨だったと思う。まあ、こんな話を授業ではしないと思うが…。

天然資源の罠については、いくつかの視点で語る。まずはモノカルチャー経済の危険性。顕著な例はザンビアの銅生産で、国際価格の変化で大きな影響を受けること。2点目は、内戦や腐敗が進むこと。ここでは、特にコンゴ民主共和国を取り囲む国々が関わる、タンタルなどの紛争鉱物について語ることにした。3点目は、植民地時代の影響。途上国の鉱業のレンティアはの多くは搾取されていること。ただ、うまく国策会社に移行した例も挙げておくことにした。サウジやUAE、マレーシアもそうで、ノルウェーのような政府系ファンドで儲けている場合も紹介しておきたい。さらに、政治経済の学習との関連で、オランダ病についても述べることにした。

内陸国の罠については、ジェフリーサックスのスピルオーバー(隣国の経済が1%成長するとその隣国は0.4%成長するが、内陸国は0.7%も成長する。)の論理を使う。高校のレベルを少し超えるが、これもまた私の授業らしいところ。(笑)ウガンダとスイスの状況を比較しておきたい。

劣悪なガバナンスの罠については、まず「ガバナンス」という高校生には聞き慣れない語句の解説から。パワーポイントでは、国際NGO/Transparency Internationalによる世界腐敗認識指数の地図を見せ、次にガバナンスが悪いと、インフラや企業の設備投資の資金が海外から入らない。そのためには、金融面と法的整備が必要であること。しかしながら、デモクレイジー(ポール・コリアーのデモクラシーをもじった造語)が行われ、専制的・独裁的な政府が生まれていること、さらに「情の経済」で血縁・地縁重視の官僚主義が腐敗を高めることを説く。

https://www.afpbb.com/articles/-/2521113
次のプリントでは、世界腐敗認識指数の上位国と下位国の表をつくってみた。またまたこの表にHDIの順位を入れていく作業を入れたいと思っている。面白いのは、下位(腐敗度がひどい)の国は、HDIの順位に近い。南スーダン、ソマリアが最下位2カ国であるのはHDIと同じ。ここに赤道ギニアやエリトリア、トルクメニスタン、タジキスタンといった独裁国家が顔を出してくる。意外なのは、上位国にウルグアイ(13位)とブータン(18位)セーシェル(同18位)といった国が日本(20位)より上位にあることだ。

…ウルグアイは、バスク系のホセ・ムヒカ元大統領(報酬を財団に寄付して月$1000強で生活していた世界一貧しい大統領と呼ばれた人物。)の伝統が生きているようだ。ブータンも文化や価値観から決して意外ではない。セーシェルは、アフリカで、モーリシャスを抑えてHDIの順位が最も高い国。1993年以降、複数政党制をとり、大統領も直接選挙で選ばれるガバナンスも良好である。こういった発見を生徒諸君にもして欲しいな、と思う。

2025年8月1日金曜日

教材研究 HDI理解

8月に入った。教材研究も進めなければと、HDIのランキングの提出課題後の授業プリントを作り出した。まずは、HDIの基礎的な知識を確認。1人あたりのGNI(国民総所得)について、GDP+海外からの所得であること確認。健康や教育の指標が入る理由がアマルティア・センの貧困の定義と潜在能力の話は外せない。

提出課題には、HDIの順位の1位から193位まで記入するようにしてある。まずは、先進国の確認。先進国の定義としては、一応OECDの加盟国というのがあるので、プリントにOECD加盟国を以下のテリトリーにわけて、順位の番号に◯をつけて、確認してもらうことにした。1990年までのEU加盟国、1990年以降のEU加盟国、EU非加盟の欧州諸国(イギリス・スイス・ノルウェー・アイスランド)、その他のOECDに90年代以前加盟国(日本・アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・トルコ)、その他のOECDに90年代以後の加盟国(メキシコ・韓国・チリ・イスラエル・コロンビア・コスタリカ)。HDIの上位は当然先進国となるのが一目瞭然である。

プリントには、新たに名目GNIのランキングを、1位アメリカから17位のオランダと、20位スイス・107位アイスランド(HDIでは両国ともかなり上位)、HDI最下位の152位ソマリア・168位南スーダン、アフリカで最もHDI順位の高いセ-シェル、GNI最下位・213位のツバル(最低額のGNI=91✕百万USドル)を表にした。この表では、GNIと人口の対比が重要である。対比してその分母(人口)が多いと1人あたりGNIの数値が下がることを実際の数値を見て確認してもらおうという魂胆である。なお、この表に、ジニ係数も記入しておいた。

この表の右端の欄に、HDIの順位を提出課題から入れ込むので確認しやすいかと思う。また、提出課題の順位の一部を後々重要視したいので太字にしてある。それはアフリカ諸国である。さらに次のプリントでいよいよ、ポール・コリアーの4つの罠の内容に入るので、HDIの161位以下のアフリカ以外の国を書き出す内容も入れた。HDI162位のシリア、166位のハイチ、168位のパキスタン、181位のアフガニスタン、184位のイエメンである。共通しているのは、紛争地域である。(ハイチは、内戦や紛争というカテゴリーに入らないかもしれないが、まるで「北斗の拳」のようなギャングが支配する無政府状態に陥っている。)これは、紛争の罠に関連してのことである。

2025年7月16日水曜日

HDIランキングから始める

https://hdr.undp.org/data-center/country-insights#/ranks
2学期の地理総合は、UNDP(国連開発計画)が毎年作成する豊かさを表すHDI(人間開発指数)のランキングから始めることにした。すでに提出用紙は作成済みである。残念ながら、この表には指数(1が最も良く、0がもっとも悪い)のみ書かれている。この指数がどうして計算されるかは、実に重要なのでプリントで説明するとして、まずは世界中の国の豊かさの順を作業しながら感じ取ってもらうことから始めようと思っている。

なぜアイスランドやノルウェイ、あるいはスイスが豊かなのか?ちなみにアメリカは17位、日本は23位、中国は78位、インドは130位である。当然ながら下位の国にも注目して欲しいと思っている。

下位10カ国では、内戦下のイエメンが184位で、後はすべてサブサハラ・アフリカである。ここから、先日の難民キャンプの話と重ねていこうと思っているところ。

先週の土曜日に、枚方市駅に通院で出かけた折、ついにウガンダでの京大農学部を出たばかりの青年のノンフィクションを手に入れた。これがなかなかすごい話なので、この内容も加味できればと思っている。

2025年7月13日日曜日

PP 世界価値観調査の日本2

次に「自己表現・多様な価値観を認める」が、この位置にあることについての考察。これには、日本の価値観のオリジナル化という視点と、和辻哲郎の「間柄的存在」という視点で解説した。

日本文化の重層性と仏教・儒教のオリジナル化を説いた(ここには大分時間がかかる。笑)後、使った画像は大谷選手の高校時代の曼荼羅。朱子学的な理気二元論と林家の上下定分の理が見事に昇華しているといえる。これは、生徒諸君にとっても理解しやすそうであった。その他東京駅の新幹線の7分間の清掃と出発時のお辞儀の話や、スーパーやコンピ二の店員さんのプロフェッショナリズムの話も加える。

そして最後に、私が鉄板的に使う川端康成のノーベル賞受賞講演「美しい日本の私」で、間柄的存在をまとめた。現在売られているものは無味乾燥な表紙になってしまったが、以前の講談社新書の方がはるかに良いと思う。(笑)

いわゆるキリスト教社会の欧米諸国の個人主義とは一線を画す故にこの位置にあると、言えるのだった。

PP 世界価値観調査の日本1

期末考査度の授業は全クラス・2コマ。時間の関係で期末考査の範囲で解説できなかった「日本の位置の考察」を行っている。まずは、日本が世界で最も「非宗教的・理性的価値を重視」が高数値である理由について、私なりの解説。

ブログで前述したISSP国際比較調査/宗教2008のデータをもとに、アメリカの大学が行った価値観調査であるから、無宗教49.4%という数値がかなり重視されていると思える。

しかし、日本の宗教観は、一神教世界とは事情が異なる。日本人の思い浮かべる「神」は一神教の神と八百万の神の両方である。

八百万の神の説明には、「千と千尋の神隠し」の画像を使った。知らない生徒もいたのに驚いた。これも今の高校生にはあまり知られていないのだが、「聖☆おにいさん」の紹介もした。世界的にも評価されているし、学院の宗教科のI先生にも読んでいただき、「面白いですね。」と言っていただいたので安心して紹介した。(笑)このような独自の宗教観をもつが、日本の無宗教層であるわけだ。

2025年7月8日火曜日

学院の人権学習について 2

https://www.y-history.net/appendix/wh1703-092.html
学院の人権学習・本番の日である。S先生からサポートを頼まれていたので、かなり登壇者と接する機会があった。1コマ目は、前回話題にしたユニクロの”届けよう 服のチカラ”であった。H高校でのハランべー・プロジェクトから10年。出前授業も、昔JICA大阪で学んだ「難民のアクティビティ」も取り入れられていた。もしあなかたが難民となった時、何を持っていくか?というものである。JICAの高校生セミナーでは、時間経過とともに持って行けるものが、どんどん減っていき、精神的にもしんどいものだったが、今回はいくつかから1つ選ぶという簡素化されたものだった。パワーポイントの途中、難民になる原因の1つが「人種」となっていたのだが、高校地理の学習では、人種という概念がすでに消えていることを伝えておいた。「民族」の方がはるかに適切だと思うとも…。

さて、2コマ目は、近くのカトリック教会で難民の支援を行っている方が、実際の難民申請中の方を連れて来られた。クルディスタンの男性であった。あまり細かなことは個人情報なので書かないほうが良いと思うが、私にとっても初めてのクルディスタンとの邂逅となった。貴重な経験である。ちなみに私の「地球市民の記憶」(ブログの常設ページ)は109カ国・地域になった。

日本の難民申請は先進国の中でも極めて厳しい。私は、ただ単に批判する立場にはない。日本語という言語の学習が、共存の鍵だと思っている。そんな話を講演後に応接室でしていた。彼は独学で日本語を学んでいるらしい。難民申請中故に日本語学校にも行けないようだ。マレーシアでの日本語学校での経験と照らし合わせても、日本語の習得はそう簡単なことではない。

クルディスタンの難民申請中の彼は、まさに「民族」的な問題で日本に来たのである。ナイスガイなので、是非難民申請が通って欲しいものだ。3年生には、民族問題でクルディスタンについても授業で話している。彼の地域のクルド語の文字はアラビックであるとのことだった。こんなことを3年生に質問してほしかったが、2階席だったので皆臆してしまい残念。(笑)

2025年7月5日土曜日

学院の人権学習について

https://www.kyoiku-press.com/post-205454/
火曜日に、学院では中高で人権学習が組まれている。主担はS先生で、懇意にさせてもらっている。私はこの日授業はないのだが、成績処理のため登校することを生徒諸君にはクラスルームというGoogleのアプリで伝えてある。

というのも、1コマ目は、ユニクロの”届けよう、服のチカラ”プロジェクトで、S先生にお話を伺って、懐かしさが込み上げてきた。2013年というから、10年前、奈良教育大学のユネスコスクールの大会時に知ったこのプロジェクト、H高校で”ハランべー(スワヒリ語で助け合い)プロジェクト”として立ち上げたものだからである。(本ブログの右側のラベルを見てもらうと13回エントリーしていることがわかる。興味のある方は是非見て下さい。)

問題は、”子供の服”を集めることである。高校生は意識は高いが、子供服を集めるとなると大変で、たくさん段ボールを送ってもらったのだが、なかなか難しかった。学院には、幸い小学校から幼稚園、保育園まであるので、協力してもらえればかなり集められるのではないかと思う。送られる先は、難民キャンプなので、地理総合の授業でも少し後押ししていこうと思っている。

期末考査と1学期の評価 考

https://www.hira2.jp/quiz/quiz-gaidai-20151022.html
期末考査の採点と1学期の評価が、昨日今日でほぼ終了した。昨日は、同僚のO先生と前々から約束していた京橋での懇談の日で、久しぶりにアルコールを注入した。(笑)O先生の話は、非常に独創的で勉強になる。

ところで、最近の受験事情については、二分化する傾向にあって、年明け(共通テストや一般入試)まで頑張る受験生と、指定校推薦や自己推薦入試などで年内に合格を決めたい受験生である。

1学期の評価は、後者にとっては実に死活問題である。特に指定校推薦を希望する生徒にとって校内の競争がある故に熾烈である。

受験における選択肢を論じるつもりはないし、各人各様に成長してくれればそれでいいのである。K外大(本日の画像参照)のチェコの留学生がLHRで3年生に伝えてくれた「勉強は未来への自分へのプレゼント」というテーゼは実に正しいと思う。(6月27日付ブログ参照)

2025年6月27日金曜日

チェコ・ウクライナの留学生

学院にK外大からインターンとして、チェコとウクライナの留学生が来ていて、是非話をしたいと思っていたが、今日の朝礼で最終日であることがわかった。忙しくてなかなか会えなかったのだが、うまく2限目が空いていたので、会話することが出来た。

担当のA先生から、すでに2人は無宗教だと聞かされていたので、まずはそれを確認。チェコは、フスの宗教革命以来、宗教的には複雑な歴史を持つし、ウクライナは、西からカトリック、ウクライナの正教会、ロシアの正教会など分裂傾向にある。2人とも、地図帳で出身地を示してもらったが、それぞれ東部の出身だった。社会主義時代の反ロシア的意識は強かった。色んな話をしたが、6限目の3年生全体のLHRで、プレゼンをするとのことだったので、見に行く約束をしたのだった。

チェコの留学生は、モチベーションについて、なかなか凝ったパワーポイントで日本語で語ってくれた。結論は、「勉強は未来への自分へのプレゼント」というものであった。ウクライナの留学生は、英語で(U先生の通訳つき)ウクライナ戦争の体験を語ってくれた。両方とも、生徒諸君にとって実に有意義なものであったと思う。

さて、残る時間はQ&Aであった。驚いたのは、司会のA先生が、質問はありませんか?と聞かれた時、近くにいた生徒たちが一斉に私の方を見たことである。生徒1人、先生2人が質問をしたのであるが、地理の授業で、海外の人と様々な会話を繰り広げている話もしており、期待に答える必要があると思い、残り5分というところで、「One Question!」と声を上げた。(このフレーズは、ゴルゴ13で、記者に扮したゴルゴ13が言う台詞である。正直、インパクトがあり、見事に決まったのだった。笑)

「Please teach us, Thank you,and Good bye, in Czech, in Ukraianian.」生徒諸君に、チェコ語・ウクライナ語で”ありがとう”と”さよなら”を教えて欲しいと言ったつもりである。お得意のサバイバル・イングリッシュであるが十分通じたようだ。

それぞれ教えてくれて、生徒諸君は復唱していた。最後の締めとして良き質問だったと思う。司会のA先生も実に喜んでくれたのだった。最後に、2人に私が(K外大のある)枚方在住であることも事前に言っていたので、「See you、in Hrakata.」と言ったら大受けしたのだった。(笑)

本日の画像は、ポーランドボールに良いものがなかったので、チェコ語・ウクライナ語の”ありがとう”である。

2025年6月25日水曜日

続・アメリカの宗教事情のPP

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20180821/se1/00m/020/085000c
いよいよ期末考査までの最終授業が始まった。2学期の中間試験の範囲は、世界の価値観の学びの上に、経済的な話を行おうと考えている。6月4日付ブログで、「アメリカの宗教事情のPP」の話題をエントリーしたが、その最終局面は、一神教を利子から比較対象した内容だった。

これによると、カルヴァン派が最も利子に対して最も早く公式に積極的肯定をしている。すなわち、後にフランスを追われるユグノーを吸収したオランダ、さらにはスコットランドなどのカルヴァン派が資本主義をリードしていく歴史に重なる。オランダは、カトリックのスペイン・ポルトガルの覇権をひっくり返し、スコットランドは、産業革命やアダム・スミスなどの自由主義経済学誕生の地となった。

これに英国国教会のヘンリー8世自ら金利を肯定したイングランドが合体することになる。大英帝国の覇権はこういう宗教的背景があるわけだ。ところで、アメリカ植民地の南部では、最初は英国国教会のアングロ=カトリックが主であったが、北部にピューリタンのカルヴァン派が流れ込み、後の工業化の源となる。

帝国主義で植民地を拡大したフランスが、覇権を握ったと言い難いのは、ユグノー不在で財政が悪化しフランス革命を導いたものの、カルヴァン派なしで、イギリスに遅れをとってしまった故かもしれない。ドイツ北部は、ルター派が多く、遅れはしたもののプロテスタント的な姿勢が功を奏したのかもしれない。

正教会は、金利禁止を伝統的に守ったがゆえに、資本主義の発達が遅れたと見ることは可能であるし、イスラム圏の近世・近代での経済的衰退も、その無利子体制では多くの資本形成がなされなかった故と見ることができる。

この金利という視点から資本主義の形成・発達を見た時、宗教的な特徴が顔を出し、それなりに納得できる歴史の見方でできる。こんな話を最初にしてから、これら一神教世界と全く関係なく、大発展した日本の価値観について中間考査範囲の前半は考えていこうかと思う。

2025年6月2日月曜日

逆算的期末試験を作ってみた。

https://news.goo.ne.jp/picture/sports/sponichi-spngoo-20250602-0131.html
エース・山本由伸が先発したものの、ドジャーズはヤンキースに敗れてしまった。山本の体調が悪かったらしい。長い戦いである。大事にしてほしい。

さて、期末テストまでの授業コマ数の計算をしてみると、なかなか厳しい。というわけで、まず土曜日に一日がかりで早くも期末考査を作ってみた。長い教員生活で初である。逆算してみると、どう見ても一神教の解説で終わりそうだ。ユダヤ教、イスラム教、カトリックと正教会の対比、ルター派・カルヴァン派・英国教会(ハイ・チャーチとロー・チャーチ)、そのうえで、旧約にある利子の禁止を元にこれらを対比。昨年度は、2学期の中間試験のスパンだったので、インド思想や日本思想(仏教や儒教も含めて)にも触れたのだが、そこまではちょっと無理なようだ。

ここは無理をせず、じっくりとやっていこうと思っている。山本投手にもドジャーズにも言えることかもしれない。

2025年5月21日水曜日

期末の学習範囲の精選

明日が地理総合の中間試験だが、期末の学習範囲を言語や宗教に決めた以上、ある程度の準備を進めておく必要がある。採点が始まるとできない。(笑)昨年度、この範囲は2学期の中間の範囲だった。記録を見ると授業時間数は10コマから9コマというところ。本年度の1学期の期末はそれより各クラス、2コマほど少ない。ここは、学習内容を精選するしかないわけだ。

今年度も、世界価値観調査の表(英語版)を使う。言語の授業の後、2コマ目はこの表の解説(プリントに調査のもとになったアンケート問題もいれてみた。)を軽くした後で、グループならびに各国名の和訳、さらに主要な宗教の調べ学習(上記画像はその一部)をしてもらう。昨年度、どんな質問がされるかも承知しているので、そこはすでに記入したりして少し容易にしておいた。そのうえで、宗教の比較の講義を行うのだが、順番も変えた。

昨年度は、カトリックと正教会、プロテスタント、一神教の対比という順番で講義した後、最後に世界活観調査の資料を4分割して講じた。これを、先に4分割してそれぞれ考察することにした。すると、一神教(特にイスラム)、正教会、プロテスタントという順になる。この方がわかりやすそうであるし、前述したバルト三国の話など逸話も挿入していく予定。今年度は、地理をベースに、世界史・日本史・政経・倫理といった社会科的な教材も挿入すると生徒に言ってあるので、岩倉使節団の話をプリントに入れた。「精選」とは、「省略」と同意語ではない。

岩倉使節団の最重要な点は、あまり仲の良くない大久保や木戸の両名が、欧米では教会が政府を支える権威となっていることに気づいた点だと思う。(生徒には、代表例としてカトリックがカール大帝の戴冠の話をして、この視点を理解してもらおうと思う。)正教会は、権威ではなく、二人三脚で政府を支えている場合が多い。ロシア正教では核兵器に祝福を与えるなどという話があるくらいである。さて、彼らは、キリスト教に代わる明治政府を支える権威を天皇制に求めた。それが軍人勅諭、教育勅語さらに、二人の間に立った後継者・伊藤博文の天皇主権の大日本帝国憲法へと昇華していくわけで、明治史の根幹に関わる問題だからである。こういう話は受験の日本史ではなかなかできないはずである。

2025年5月18日日曜日

世界の民族と言語の教材

教科書的に言えば、民族とは言語や慣習、歴史などを共有することから、共通の帰属意識をもつ集団であると言える。言語との関連性は極めて強いが、イコールではない。

世界最大の国家を持たない民族であるクルド人は、ペルシャ語系のクルド語を言語としているが、地域による方言があり、しかも興味深いと思うのだが、それぞれ方言ごとにラテン文字やキリル文字、アラビア文字が使われている。

今回は、中間試験でヨーロッパの地誌を出題している関係上、ヨーロッパ内でラテン系・ゲルマン系・スラブ系に属さない地域(バスクやフィン、マジャールなど)も紹介するつもりだ。また、バルト三国もそれぞれ違うし、UKでもイングランドの影響が強いものの、スコットランドやウェールズ、アイルランドもなど本来はケルト系の言語である。時間の関係でどこまで伝えれるかはわからないが…。

私が言語の中で最も重視しているのは、AA諸国の公用語が旧宗主国のものであることが多いことである。これは、いろいろな理由があるのだが、欧米列強が勝手に国境線を引いたため、エスニックグループ(私は”部族”という語彙を使いたくない。)が分割され、多言語なうえに国内でも意思疎通に支障をきたす故という理由が大きい。ケニアでは、スワヒリ語を小学校過程で学び、セカンダリースクール(中高)ではすべて英語での授業となる。スワヒリ語は前述の意思疎通のため、英語は高等教育では、スワヒリ語でカバーできない語彙を使わざるを得ないからだ。こういう言語能力による格差が生まれている。そんなことを伝えたいと思っている。

2025年5月6日火曜日

乾燥帯の授業 すべらない話

GWが終わり、明日から授業再開である。熱帯に続いて、乾燥帯(BW:砂漠気候・BS:ステップ気候)について語るのだが、すべらない話の続きを記しておこうと思う。乾燥帯も実に話題が多い。湿潤な日本とかけ離れているからだと思う。

砂漠というと日本では、漢字の影響もあって砂の砂漠を連想するが、実は礫砂漠や岩石砂漠のほうが多数派である。流石にアラビア語のサハラというのは広大な砂砂漠の意で、私はブルキナファソの北限、サヘルの村まで行った。サハラの砂は粒が細かすぎて、持ち帰ろうと密封したのだが、帰国後キャリーバックを開けると砂だらけになっていた。それほど細かい。礫砂漠や岩石砂漠は、アメリカのカリフォルニアからネヴァダ、アリゾナを旅したときイヤというほど見た。車を止めて喫煙していると、どこからともなくシェリフ(ポリスではない)の車が来て、サソリに注意という看板を指差し、ここは危険だぞと教えてくれた。(笑)ラスベガスに近い(といっても100kmくらい)GSでボンネットに手をついて火傷したこともある。

砂漠は、気温の日較差が年較差より大きい。サヘルで、ガイドのオマーンが宿泊費を間違え、蚊帳のかかったマットで野宿した際は、持っていた服を全部来て就寝した。夜はかなり冷える。ストロングな朝日が昇って暑くて飛び起きた。(笑)この辺は、日干しレンガで十分モスクが作れる。年に一度は泥で修復する必要があるらしいが…。

BWやBSでは、乾燥に強い羊やヤギが家畜の主流である。もっと乾燥に強い野良のラクダも見た。(笑)牛でも乾燥に強いのもいる。ちなみに、雄牛は何頭もいると喧嘩するので、早めに去勢して肉牛候補となる。京大の公開講座でアフリカで去勢に使われる木槌を見せてもらったことがある。(上記画像はマサイによる去勢)その他にもいろいろな方法があるらしいが…。ブルキナで羊とヤギの家畜市を見たが、耳がたれていたら羊、立っていたらヤギだ、ということをワガドゥグに戻ってから緑のサヘルというNGOの方に教えてもらった。

BWの年降水量は250mm以下と少ないのだが、突然の豪雨もしばしばあり、ワジという涸れ川を形成する。意外だが、砂漠での事故死は水死が最も多い。このワジに沿って隊商をしているところに鉄砲水が押し寄せてくるからである。

BWでは、基本農耕は不可能だが、外来河川やオアシス付近では可能で、私の大好物のデーツ(なつめやし)が名産品である。BSもアフリカなどでは、雨季前に種を撒き、メイズ(白いトウモロコシ)や雑穀(ミレットやソルガム)を作れる。ウクライナやアメリカのBS地域では灌漑による世界的農業地帯が形成されている。灌漑で失われたアラル海や、オガナラ帯水層とセンターピボットの話もする。最後は、前述(4月24日付ブログ参照)のニジェールの大山先生の快挙の話ででしめようかと思っている。