2025年9月15日月曜日

教材研究 工業と金融の周縁化考

https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1574570.html
教材研究のエントリーの続きである。グローバリゼーション下では、自由貿易体制の工業は周縁化している。前回のエントリーで示したように、途上国はサプライチェーンに入っているか否かで、経済発展の可能性大きく違う。一方、先進国の中でも、先進的な技術を持つ国が優位である。その例を少しばかり語ろうと思っている。

設計開発能力:IT(半導体などのハード面とOSなどのソフト面)や航空機、自動車などの設計開発能力(開発資金も含む)をもつ国が最も優位。これは、アメリカ、日本、ドイツ、フランス、イギリスなどになる。中国は、(かなり穏やかに言うと)リーバース・エンジニアリングを行い他国の開発能力を再現することに長けている。今のアメリカの対中強行経済戦略の原因でもあるわけで、このことも少し話しておこうかと思う。

高度な材質:半導体を例に取ると、必要なシリコン加工には、日本の信越化学(世界シェアが40%)とSUMCO(同20%)といった世界を牽引する企業が存在する。純度が高いので、他の追随を許さないようだ。凄いぞ、JAPANという話。

高度な生産設備:日本企業が作った純度の高いシリコン・ウエハースに回路を露光する装置・設備は、オランダのASMLが圧倒的シェア(95%)を占めている。(本日の画像はASMLからインテルへ装置を貨物航空機で運ぶ様子)昔はNIKONやCANONも参入していたようだが撤退したという。ちなみに、隣国の半導体はおろか、自動車などの機械工業の工作機械はほとんどが日本製で、以前感情的に不買運動を頑張っていたが、工作機械も破棄・不買したらよかったのに、と思う。

高度な部品生産:自動車では、最も生産が難しいのは、トランスミッション装置だそうで、日本企業は、アイシン(シェア20%)を筆頭に多くの企業が生産しており、極めて優秀だそうだ。これも同じく凄いぞ、JAPANという話。

先進的ではないが、どこでも作れるわけではない技術として、機械部品に使われる合金鋼がある。粗鋼ではなく、ニッケルやクロム。モリブデンなどを加えた強度・耐摩耗性・耐熱性が優れた素材で、中国やインド、マレーシアなどで生産されている。このあたりは先進国を中核とすれは、その周囲に広がるサプライチェーン国である。

その周縁に前述のサプライチェーンに入れない国々=経済構造の変化という「梯子」を外された国があるわけだ。

ところで、先進国の強みは工業だけではない。第三次産業で最大の収益を上げる金融のことに触れておかねばならない。ネットで、金融立国のランキングがあったので整理してみた。1位はアメリカ、2位はイギリス、3位はルクセンブルグ、4位はシンガポール、5位はドイツ、6位フランス、7位アイルランド、8位香港、9位スイス、10位はオランダ、11位カナダ、12位日本、13位イタリア、14位ベルギーと続いている。かの政府系ファンドのノルウェーは意外に22位だった。金融センターのランキングは、ニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポール、サンフランシスコ、シカゴ、ロサンゼルスの順となっている。

…グローバリゼーションのモノ・カネの話をしたので、最後に人についても語っておきたいと考えている。少子高齢化が進む先進国では、外国人労働者の増加という問題を抱えている。ヨーロッパでは、旧植民地からの流入に始まり、EU統合後、旧社会主義国からの流入、さらにシリア難民などのイスラム教徒が流入したという経過が有る。移民国家アメリカでは、中南米からの不法移民を巡って、民主党と共和党の政治的な問題から分断の危機さえ言われている。

…2024年の移民人口ランキングを見つけたので表にしてみた。1位はアメリカ。2位はドイツで、伝統的にトルコ系が多いが、シリア難民を多く受け入れて苦悩している。3位は、アラブ諸国からの労働者の多いサウジ。4位イギリス、5位フランスと旧植民地からの移民の多い国が続き、6位スペイン、7位カナダ、8位はUAE(サウジと同じアラブ系労働者が多い)、9位オーストラリア、10位は意外でロシア、11位はトルコ(シリア難民が多い)、12位はヨルダン(こちらはパレスチナ人)、14位はこれも意外だがウクライナ、15位はインド、16位はパキスタン、17位はイラン。この辺は良くわからない。(笑)18位はマレーシア(インドネシアやバングラディシュなどイスラム系アジア人が多いのは経験上知っている。)そして19位に日本となっている。少しずつ解説する時間があればいいなと思っている次第。

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