2016年10月30日日曜日

久々のネット・オークション落札

レッツノートのスイッチ
http://www.pcdock24.com/blog/?p=13606
このところ、学校で使っているパソコンのスイッチを入れるのに苦労している。パナソニックのレッツノートは、マレーシアに来てから高電圧でハードディスクを入れ替えたりして、トラブルも色々とあったのだが、気に入っている。だが、なかなかスイッチが入らないというストレスは大きい。(WEBで調べると、このトラブルはかなり多いらしい。)

一時帰国するのに合わせて、日本でパソコンを購入することにした。PCをこちらで買うことも十分可能で、日本語変換も問題ないのだが、細かなPCのコメントは全て英語になってしまう。これはツライ。で、日本帰国時に、となったわけだ。

レッツノートの最大の良さは軽いことと、円形のタッチパッドがの周囲が盛り上がっていていることである。私のタイピングに問題があるのかもしれないが、フツーのPCだと、タッチパッドについつい触れてしまい、カーソルが移動してストレスが高まるのである。

そこで、またレッツノートにしようと考えていたのだが、同じように軽めで、IBMのトラックポイントのPCでもいいかなと思い始めた。そもそもIBM使用歴の長い私は、IBMのトラックポイント(キーボードの中央にある赤いぽっちり)は、実に使いやすいのだ。当然、不如意にカーソルが移動したりなどしない。

X220はこんなPCです。
結局、またまた中古の、X220という機種にしようと決めた。いろいろ調べていると、最近はHDDからSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)に変わりつつあるらしい。静かだし、熱を発しないし、起動が早い、という評判である。問題はHDDより容量が少ないこと。ビデオなんぞを入れない私にとっては、あまり問題ではない。どうせならSSDにしたいと、思った。

で、いろいろ探してみたのだが、新品のSSD256Gを装着したX220を見つけた。(128GのSSDのものが多い。)まだHDDの増設が可能で、2テラまで増設できるらしい。(凄いな。)メモリは4Gである。OSはWin10。(Win7の方が使いやすいと私は思うのだが、Win7のリカバリーディスクも付属しているので安心。)外観もなかなか綺麗で、欠損なし。

最後の決め手になったのは、ATOK2009が入っていることだ。不要なら消してくださいとあるが、なんのなんの、大変ありがたい。ATOKは、一太郎の日本語入力システムである。私はWORD派だがIMEよりこちらの方が日本語入力システムとしては優れているという実感がある。(昔の教員間では、WORD派と一太郎派が対立しつつ共存していたので、両方入れておかないと文書の共有時の読み取りに困った.。それでWORDと一太郎を両方PCに入れていたのだ。)

と、いうわけで、先ほどオークションで落札して、支払いを済ませた次第。出品者の方に帰国時に配送していただく約束ができている。新しいPCとの出会いが楽しみである。

2016年10月29日土曜日

マレーシアの花火合戦考

我が住処は高台のさらに高層階なので花火を見下ろすことになるのです。
タマンデサの我が住処には、昨夜から今晩にかけて花火の音がバンバンというか、ドッカン・ドッカン鳴り響いている。あちこちから鳴り響いてくるので大変だ。

インド系の人々にとってはめでたいインド歴の新年である。先日のマレー系のイスラム歴の新年は静かなものだったのだが、マレー系の人々もラマダン(断食月)の間には、夜になると散発的に花火を打ち上げていた。ラマダンは期間が長いので、いくら打ち上げても「ああ、また打ち上げているなあ。」くらいにしか感じなかったのだが、その回数はかなり多かったように思う。ほぼ毎日だったからだ。それに対し、インド系はかなり短期集中型である。深夜まで続くので、正直なところ寝不足になる。

妻とそういうことを話していたら、ふと気がついた。残る華人の旧正月はどうなるのだろう。花火というか、火薬といえば中国が本家本元である。どんなことになるのか恐ろしい。今日の補習で聞いてみたら、チャイニーズの生徒たちが、ニヤリと不気味な笑いを浮かべたのだった。

多文化共生をしながらも、マレーシアでは、花火の打ち上げに関しては、それぞれの民族がかなり張り合っているような感じだ。

IBTの話(50) 土曜日補習(3)

https://www.amazon.com/Lafayette-American
-Revolution-Russell-Freedman/dp/0823421821
土曜日補習も3週目になった。今日はフランス革命からナポレオンの話である。フランス革命は、さらっと流して教えても、言葉の羅列で全く面白くはない。

まずは、その原因。財政の問題。イギリスとの植民地獲得戦争の話からである。フレンチ=インディアン戦争を始め、世界各地で英仏は戦っていた。当然戦費がかさむが、同時に絶対主義でルイ13世・14世と豪奢な生活が続く。ルイ16世自身は鍵つくりが趣味という人物だが、奥さんのマリー=アントワネットは超のつくほどの浪費家であった。この辺の人間臭さも重要だと私は思う。

その財政問題、ユグノー戦争後、ユグノーを追い出してしまったのも大きい。ではいかに財政を立て直すか?このあたりは、経済をやっているので、国債の発行などという知恵も浮かぶのだが、当時は増税しかありえない。ここで免税特権のある三部会と関わってくるのだ。

バスチーユ監獄で火薬を得るのは、当時の銃が先込め式であることも重要だと思うし。人権宣言を起草した自由貴族のラファイエットは、国王を敵に回したくないという意思が強かったことを三色旗(パリの市旗にブルボン王家のカラー・白を加えた。)で教えたりする。ちなみに、マレーシアのスルタンのシンボルカラーも中国王朝と同じ黄色であるそうな。

その後は、社会類型と自由な個人は軍事担当であることを確認しながら、制限選挙から普通選挙の道筋を教える。ここが、フランス革命最大のポイントである。対仏同盟に対抗するため、普通選挙で選ばれたジャコバン派は、農民に土地を与えたうえで徴兵令を出す。ここに、それまでの社会ではありえなかった貴族と傭兵以外の軍事組織・国民皆兵=国民国家の基礎が生まれるわけだ。これをさらにうまく使ったのがナポレオンというわけである。

そもそも私が世界史をきちんとやるようになったのは、前任校くらいからである。それまでは地理と倫理が専門だった。前任校の5年間が今、生きているのだ。本来なら3~4時間かかる内容を、コンパクトに、しかも寓話もいれながら90分で語れるようになった。政治経済は、IBTに来てから、特に経済分野を改めて勉強し直してきた。教師としてのスキルアップを毎日しているわけで、これを忘れたら教師としてダメになるような気がする。

2016年10月28日金曜日

IBTの話(49) 金曜補習最終日

http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/~front-a/images/2012tokyo/ohyama.jpg
EJUが近くなってきたので、金曜日のアフリカ開発経済学の講義も今日を最終日ということにした。最後は、文化人類学の話で、京大の大山先生のゴミを撒く人々の話である。アフリカに学ぶというコンセプトで、教材を精選するならば、最後にふさわしい話だ。ニジェールのサヘル地帯のハウサの人々の話である。最後まで、みんな楽しく聞いてくれたように思う。

ところで、金曜日は授業がない日なので、ひたすら修了試験の問題をつくっていた。国費生だけの最後の試験である。EJUは、4択問題が主だが、これは記述式でお願いします、と言われている。しかも思考を鍛えるような、IBTの課程終了にふさわしいもの、というのがそのコンセプトだ。なかなか難しい課題である。じっくりと吟味しながらつくっていた。地歴はほぼ完成した。

試験日は12月中旬。少し早いが、地歴と公民2科目作る必要があるし、何度も推敲を重ねて、いい試験問題にしたいと思っている。

2016年10月26日水曜日

IBTの話(48) 大阪人の宿痾

http://kansai-lovers.com/osaka/osaka-aruaru
EJU(日本留学試験)がどんどん近づいている。土曜補習も入ってきて、宿題も多いし、生徒の疲労も濃くなってきた。Aクラスは、私費生を中心に華人の生徒が多いクラスで、シーンとしていて、カリカリカリカリと私の講義をメモする音だけがするような静かなクラスである。そんな中で国費生のN君は、授業を盛り上げようと、常に考えてくれている。彼はもちろんマレー系だが、華人の生徒とも仲良くやっている。非常にありがたい存在である。

今日の授業で、挨拶をした後、そのN君のリードで、ほとんどの生徒が私に向かって、手をピストルのようにして、「バーン」と声をあげた。これは、先日Aクラスの授業で話した大阪人の宿痾(しゅくあ)ともいうべき習慣である。ほとんどの大阪人(注:大阪在住の東京人など、大阪になじんでいない人は絶対やらない。)が、「やられた…」という反応を示してしまう。当然、私も鋭く反応してしまい、大爆笑になった。美しい日本語を話すことをモットーにしているIBTからすれば、極めて憂慮に堪えない事態ではあるが、まあ、関西地方の大学に進学する生徒もいることだし、日本の地方文化理解ということで、許しを請うしかない。(笑)

こんなことをやりたいという思いを鑑みると、みんなEJUが近いという緊張感がかなりあるのだろうと思う。その発露である、と私は心理学的に考察するのだった。さてさて、この大爆笑による授業開始で、過去問の解答と解説という、長い長いトンネルのような授業も、幾分盛り上がったのだった。N君の機転に感謝したいと思う。

こういう人間的なつながりが、マレーシアの生徒と十分出来てきたことを嬉しく思う次第。

2016年10月25日火曜日

日本はソマリランドを承認すべき

また、ケニアのマンデラ県・ソマリア国境の町で、アルシャバブによるテロが起こり、12人が死亡したそうだ。アルシャバブは、ラジオで「イスラム戦士が異端を追い詰めている。」と警告したという。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016102500520&g=int

ところで、IBTでは、私費生も国費生も、進学指導が大詰めを迎えている。私費生は自由に日本の国公立大学や私立大学を選んでの受験が可能だが、国費生は、EJUの成績と本人の希望をもとに、日本の文科省が入学する国立大学を振り分けるシステムである。国費生にとって、「学部の志望動機」を仕上げることは、なかなか重要かつ大変である。なぜ、経済をやりたいのか?なぜ国際関係なのか?なぜ社会学なのか?各人が懸命に考え、文章を仕上げている。安易な文章にならないよう、その前に立ちはだかっているのが、日本語のS先生である。時々、私も相談に乗ることがある。

今日は、国際関係に進みたいA君とS先生が職員室で激論をかわしていた。平和構築につてである。たまたま、A君が例に出したのが、カシミール問題だった。武力を使わず、あくまで話し合いで、という理想論をA君は訴えるのだが、果たして可能なのか?というS先生の反駁。指導のあと、少し私もアドバイスした。これまで様々な講義をしてきた歴史・政治・経済・宗教・文化などの知識を統合させるのが狙いである。結論は、かなり難しいということになった。国費生であるから、当然A君は敬虔なムスリムである。日本の生徒より、はるかにアイデンティティは堅牢である。一神教の神は戦争を否定していない。とはいえ、私から学んだ多くの社会科学的な知識を駆使して、今も原稿用紙に向かって思索しているはずだ。

ソマリアの問題を、私も今、A君に負けず考えようと思う。WEBの記事には、このテロ被害にあった県知事のコメントも載っていた。「これで投資も熟練労働者もわが県に来ない。」なんとも情けないコメントのように読めるが、ここに真実があると私は思う。知事は、県民の経済的な豊かさ、すなわち「開発」を心底願っているのだ。

私はアルシャバブのイスラム復古主義が、欧米的な領域国民国家内での経済的幸福など願っていないことを知っている。だが、彼らとて生身の人間である。アメリカ独立宣言的な幸福追求の正義を100%否定はできまい。テロに走るのは、宗教的情熱もあると思うが、絶対的貧困のなせるところでもある。

ソマリアの元英国領だったソマリランドは、比較的治安もいい。経済も成立している。ちょうど、先日荒熊さんのブログでも紹介されていた(http://cacaochemise.blogspot.my/)が、高野秀行氏の「謎の独立国家ソマリランド」を以前私も興味深く読ませてもらった。同じソマリアで、世界に国家承認され、分離独立して豊かになっていく地域が存在すれば、彼らの意識も少しは変わるのではないか。

と、いうわけで、私はソマリランドの国家承認を行うことが、アルシャバブには極めて有効だと思う。調べてみると、国家承認をしている国は未だゼロであるが、9か国(エチオピア・ジブチ・ケニア・南ア・米国・フランス・イタリア・スウェーデン・英国)が自国に駐在員事務所を置いている。また現地首都には、エチオピアとデンマークの在外公館があるらしい。日本は、ソマリランドを国家承認するべきだ。すぐには無理でも、日本に連絡事務所を置き、国際協力していくべきだと私は思う。世界各国がソマリランドを応援することで、アルシャバブへの強い否定のメッセージを送るべきなのだ。

アフリカ各国は、(自国内に民族問題を抱えている国が多い故)分離独立の先鞭をつけることを危惧しているようだが、領域国民国家の最大のリスクは、アルシャバブやボゴハラムであると認識するならば、ここは妥協してもいいのではないか。世界が、ソマリランドを国家承認していくことで、大きくアフリカの角は変わっていくように思う。これこそ、武力を使わない「知」の平和学のような気がするが…。さて、A君、どうだろうか?また議論しょう。

2016年10月24日月曜日

内田樹 生前退位について

https://www.youtube.com/watch?v=ge2tN6vH_7U
WEBで内田樹氏の研究室を久しぶりに見た。例の大阪府警の差別発言問題について何か書かれていないかな、と思ったのだ。内田樹氏の意見は、常に触発されるところが大だからである。残念ながらこの件については、ブログでは掲載されていなかったが、天皇陛下の生前退位についての論が実に示唆に富んでいた。少し私的なニュアンスを加味して紹介したい。

参議院選挙を終えて、改憲論議が高まる中での陛下のお言葉を、各国メディアは「首相に改憲を思いとどまるようにとのシグナルを送った。」との解釈した。内田氏も常識的な解釈だと同意を示している。現在の日本の公人で憲法尊重擁護義務を天皇ほど遵守されている方はいない。

自民党の改憲草案第1条では、天皇は象徴ではなく、日本国の元首となっている。また国事行為に対して「内閣の助言(現行)」から「内閣の進言(草案)」に変化している。内閣の承認がなくとも、国会の解散や招集が可能になるような解釈の余地を残すものであると、内田氏は指摘。まさしく戦前の上奏を行い、超憲法的な権威を揮う仕組みをつくろうとしているのではないか、というわけである。天皇は、全身全霊をもって平和旅を実践してこられた。これは「日本国の象徴としての行為」を果たすべきだという「新しい象徴天皇像」を示されており、これは、「威光だけを政治利用」されることへの「否(ノン)」の意思表示であると、内田氏は主張する。

2014年の「主権回復・国際社会復帰記念する式典」で、陛下の退場時、首相をはじめとする国会議員たちが予定になかった「天皇陛下万歳」と三唱したことに、怪訝な表情を浮かべられた。「天皇陛下万歳」という呪文を功利的に利用しようという下心を感じ取られたのではないか、というわけだ。

…この後、さらに内田氏の考察は続くのだけれど割愛する。私は少なくとも陛下の「象徴天皇としてのお立場」を強く支持したい。権力の構造の一装置としての天皇制には「否(ノン)」を唱えたいと思う。なんだか、EJUが終わったら、マレーシアの生徒たちにフーコー(今日の画像)を講じようかなと思ったのであった。

内田樹の研究室 http://blog.tatsuru.com/2016/09/10_0832.php

2016年10月23日日曜日

イギリスと北朝鮮の I💛MY

http://flyteam.jp/news/article/54009
昨夜、WEBのニュースを見ていると、英空軍のタイフーン戦闘機4機が三沢基地に飛来したという。米軍機は、日頃から見慣れているが、英空軍機は実に珍しい。なんでも、空自のF2と模擬空中戦などの訓練をするらしい。

このタイフーン、ユーロファイターとしてイギリス、ドイツ、イタリア、スペインの共同開発機。航空ファンの間では、米軍のF22の次に強いとの評判である。日本のF2が何処までやれるか、という感じである。

ところで、北朝鮮と米国の非公式な会談が、クアラルンプールのホテルでで昨日一昨日と行われていたらしい。調べてみると、マレーシアは北朝鮮と国交があるだけでなく、ビザなしで行ける最初で唯一の国らしい。もちろん、互いに大使館をおいているし、経済関係もあるし、クアラルンプールには北朝鮮政府直営のレストランまであるそうな。実に意外である。

タイフーンの話にもどるが、このタイフーン4機は空中給油機に給油を受けながら、中東を経てマレーシアでも訓練をしてから日本に向かったらしい。うーん、これまた意外な話である。

イギリスも北朝鮮も「 I💛MY(I love Malaysia)」であることは間違いない。

2016年10月22日土曜日

パパイアとドラゴンフルーツ

今更ながら、マレーシアの食生活で、日本よりいいよなあ、と思うのがフルーツ事情。私の大好物は、なんといっても「パパイア」である。パパイアなんて、日本では高価で食べたことがなかった。今日、買ったパパイアは、かなり熟れているので安かった。RM4.43(kgいくら、という感じで売っている。)だから、日本円に直せば120円くらい。

妻が来るまでは、包丁がなかったので(あっても私はリンゴの皮もむけない。笑)、買うこともなかったのだが、このところ食べる機会も増えてきた。ほんとは、マンゴーも大好きである。妻があまりマンゴーの食感が好きではないので、こちらは食べる機会がない。(笑)妻が好きなのは、ドラゴンフルーツ。便秘にいいそうだ。こちらは、切ってあるパックでRM2。50円以下だ。

こちらに来て、ことさら贅沢はしていない。今のところ、車も買う予定もないし、RM80くらいかかるカラオケや、土日でRM300というゴルフにも行かない。(というか、私はゴルフをやったこともない。)ほとんど、遊びにも行かないので、エンゲル係数はかなり高い。(笑)妻は今、どれくらい生活費がかかって、どう家計をやりくりするか、研究中らしい。

本当は、マラッカや、イポーとかにも出かけたいのだが、出かけるのは、そういう算段がしっかりしてから、ということらしい。というわけで、マレーシアをもっと知る旅は、EJUが終わって以降、来年からになりそうだ。老いては、何事も、しっかり者の妻に従え、である。

先日、その妻に扶養家族ビザがおりた。これで、観光ビザではなくなったので、別に3か月以内に国外に出なくても済むわけで、まあ、一安心である。申請料はRM1000弱。事前に、M先生に、それくらい費用がかかることを聞いていた。知らなかったら、きっとゲゲゲッとなっていたと思う。(笑)

IBTの話(47) 土曜日補習(2)

https://www.haikudeck.com/glorious-revolution-education-presentation-wbrkPj5riW
EJU直前の土曜日補習第2回目である。先週に引き続き、今日は近世のルネサンス、大航海時代、宗教革命、そして以前授業でも話したイギリス国教会成立にまつわるハプスブルグ家(神聖ローマ皇帝などオーストリア、そしてスペイン王家)とイギリス王室の関係=英国教会の成立と怨念、さらにピューリタン革命・名誉革命などを一気に90分で2コマやったわけだ。

イタリアの商業資本から、スペイン・ポルトガルへ、そしてオランダ、イギリスへと覇権が移るさまを講じたわけだ。マレーシアの高校生は、かなり世界史を断片的に習っているようだ。まあ、日本でも同様かもしれないけれど…。こうして歴史を関連付けて通史で習ったのは、マレー系も中国系も始めてらしい。だから、ルネサンスと宗教改革の関連性や、スペイン王室とイギリスの関係債などが無茶苦茶面白い、と言っていた。EJUで高得点を取ってほしいのは当然だが、こういう学習は、彼らの教養にとって極めて重要だと思っている。

さて、名誉革命の話のあと、こんな質問が出た。「ピューリタン革命」は確かに革命らしい革命(政治体制が、王政から共和制へと変化したことを意味する。)ですが、名誉革命は、ただ単に王が後継ぎができて逃げただけなのに、なぜ革命なのでしょうか?」実にいい質問だった。こういう質問が出るという事自体がうれしい。名誉革命は、その後の権利の章典やオランダからウィレム夫妻を国王に向かい入れ、王室の絶対主義性を排したところに意味がある。だから市民革命なのだ。てなことを語っていたのだった。

なんだか、マレーシアの歴史教育に一石を投じたような我田引水感がある。

2016年10月20日木曜日

南アで「命を救う日本の塗料」

日経ONLINEに、こんなニュースが載っていた。
大阪の塗料メーカー関西ペイントが、南アの病院で「命を救う塗料」で大きな貢献をしている。ヨハネスブルグの近郊の終末医療を施す病院の壁に、関西ペイントの特殊な塗料が使われている。日本の漆喰(しっくい)に使われる消石灰成分が含まれていて、表面の無数の孔ができる。この孔は高アルカリ性でウィルスを不活性化させるし、細菌、カビなども吸収して殺してしまうらしい。したがって、通常の塗料に比べて、劇的に細菌やウィルスを少なくできるわけだ。

この塗料の壁に守られたエイズ患者の女性は、そのおかげで、大きく回復した。科学的な論証はまだのようだが、この塗料に対する期待は大きい。関西ペイントの社長は、10年くらいは赤字覚悟でアフリカに根をはった展開をする覚悟のようだ。

…実に素晴らしい話ではないか。単に利益を得る以上のメリットを関西ペイントという企業はつかめるはずだ。それは、アフリカの人々の命を救ったという「名誉」である。頑張って欲しい、と心底思う次第。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/101700463/

2016年10月19日水曜日

マレーシア新国王決定のニュース

http://www.kelantan.com/
隣国タイのプミポン国王が亡くなられて、タイ国民は悲しみにくれているという。まさしく精神的支柱としてタイを支えていた方である。遅ればせながら、私も哀悼の意を表したい。

ところで、マレーシアにも国王がおられる。郵便局などに行くと、写真が飾られている。マレーシアは、タイのように王国は名乗っていないが、れっきとした国王がおられるのだ。ただし、国王は全13州のうちスルタンのおられる9州の中で輪番制で互選することになっている。任期は5年である。比べてはいけないかもしれないけれど、神聖ローマの皇帝みたいなシステムである。輪番制というのが、実に特徴的である。当然、政治的には、日本の天皇陛下のように、極めて象徴的な存在である。

ケランタン州のスルタン、ムハンマド5世が次期国王(第15代)に統治者会議(9州のスルタンの会議)で決まったらしい。(今日配布された日本語・フリーペーパーの南国新聞一面記事による。)

ケランタン州は、タイと国境を接する東海岸にある。州都はコタバル。日本軍がWWⅡの時攻め込んだ街だ。現在は、最もイスラム色が強い州らしい。意外なことに、この州だけは国政レベルでは野党のマレーシア・イスラム党(PAS)がずっと政権を握っている州であるそうな。

就任式は12月13日と決まったらしい。マレーシア在住の日本人としては、この日が祝日になるのかどうか、気になるところである。(ウィークデーである。)オリンピックの時、金メダル獲得で祝日、という噂が流れたのだから、きっと祝日になるのではないか、とまさに野次馬的な立場の私は思っているのだが…。

2016年10月18日火曜日

IBTの話(46) 違憲立法審査権

https://www.youtube.com/watch?v=7bfH1j6udR8
EJU対策の授業をしている。過去問の解説も重要である。出題の傾向がよく見えてくるからだ。よく出題される過去問から意外なことに気づくこともある。世界史や政経で分けて教えていると見えないが、EJUの範囲は地理・歴史・経済・政治などが、近代国家論を軸にコンパクトにまとめられているので、見えてくるのだ。

例えば、政治分野での三権分立、各国の政治体制みたいな部分と、近現代史を重ねていくと、違憲立法審査権が面白い。EJUでは、アメリカの政治体制がよく出題される。ジェファーソンの作った政治システムは、実によくできている。裁判所の違憲立法審査権と議会の大統領弾劾、議会の解散権はないが大統領には拒否権があることなど、何度も確認するのだが、なかなか面白い。

日本は、イギリス式の議院内閣制とプロイセン的な大日本帝国憲法をもっていたが、アメリカはこの政治ステムを自国をモデルに改正したようだ。その最たるものが違憲立法審査権である。ところで同じ議院内閣制なのに、イギリスには、この違憲立法審査権はない。

今日、生徒に質問してみた。すると、両クラスとも的確な答えをする生徒がいるのだ。「イギリスには憲法がありません。」そうなのだ。マグナカルタや権利の章典以来の不文法・慣習法である。だから、違憲という概念はないわけだ。近代史をやりつつ、政治分野もやるからこそ気づけるかもしれない。EJUの総合科目の学習は、こういう知識の統合が可能なので、なかなか面白いのである。

ちなみに、この「憲法がないから」というのは大正解なのだが、より具体的には現在のイギリスでは、欧州人権条約がそのかわりをなす存在になっているようだ。だが、やはりクイーンズ・イングリッシュには違憲立法審査権という語彙は存在しない、とのこと。

2016年10月17日月曜日

大森実「ヒトラー」を再読す。(3)

ミュンヘン一揆(映画の1シーン)
http://www.br.de/themen/bayern/hitler-vor-gericht104.html
ミュンヘン一揆は、ヒトラーを合法的な政権奪取に向かわせたというくらいで、世界史の授業でも十分に触れることはないし、その背景もなかなか難しい。その理由のひとつにSA(突撃隊)のスタンスが極めて微妙な問題であることがあげられる。SAは、失業中の若者たちが多く参加していた。ベルサイユ条約で制限された軍にとって、SAの存在は目障りでもあり、同時に事あれば編入可能な予備軍でもあり、微妙な存在だった。ヒトラーは政権を握ってからもこのレーム指揮するもろ刃の剣に最後まで悩まされる。ミュンヘン一揆も、このSAに突き上げられた感がぬぐえないようだ。何といってもムッソリーニのローマ進軍の11か月後の話である。全くもって無謀な一揆とは言えない面がある。

意外な話は、ヒトラーは60Km離れた友人の別荘宅で負傷の手当てを受けてから自首するが、これも負傷したゲーリングは近くのユダヤ人銀行家で応急手当てを受け、その主人に助けられ国境を越えてオーストリアに潜入、インスブルッグの病院に入院したことだ。その後のユダヤ人迫害を考えると信じられない。ヒトラーの秘書だったルドルフ・ヘスもオーストリアに逃亡する。しかし、ルドルフ・ヘスは、その後自首し、ヒトラーの監獄でマイン・カンプ(我が闘争)の口述相手になる。

ところで、この監獄生活ではヒトラーは牢名主的存在となる。監房にはアポロンの霊木・月桂樹が飾られ、自ら受難の使徒であることを気取り、食堂の壁にはハーケンクロイツがかかげられていたという。ピアノ製造業者の夫人がヒトラーの義母と偽り面会に通ってきた。「可愛いヴォルフちゃん」とマザコンのヒトラーを呼んだらしい。ヴォルフはオオカミの意味である。
ヒトラーが総統になって、フォルクスワーゲンの本社のある街をヴォルクスブルグ(オオカミの城)と命名させたことは有名である。ヒトラーは監獄で、国中にフォルクスワーゲンの高速道路網をつくることを夢想した。アウトバーンである。塗装は22Cmもある。戦闘機が発着できた。戦略目的と失業対策の一石二鳥の代物であった。

出獄したクリスマスイブの夜、ヒトラーは、ミュンヘンの画商ハンフシュテンゲルという人物の家に泊まった。トリスタンとイゾルデのピアノ曲を所望し髪をかきむしったという。愛の水を飲んでしまった男女の悲劇を歌ったワグナーの曲である。
このハンフシュテンゲルは、ハーバード出身。当時の米国の国務長官がスポンサーで、どうやらアメリカのスパイだった可能性が高い、と大森実は言う。ヒトラーは気前のよいパトロンゆえに疑っていなかったようだが、この時点でアメリカは、ボルシェビキに対する対抗馬としてヒトラーを飼育する方針をとっていたと推測している。

…なかなか現代史は複雑怪奇。それを実感するハナシである。

2016年10月16日日曜日

猫の布団

黒猫チューチューを昨年の今頃、トライアルで飼っていた。猫の様々なグッズを揃えて頑張ったけど、結局飼うことをあきらめた。今思えば、マレーシアに来ることができたのは、チューチューを飼わなかったという決断も大きい。チューチューをそのまま飼っていたら、彼をおいてマレーシアには来なかったと思うのだ。そういう不思議な「縁起」(縁りて起こること。:因果と同意)を思ったりする。チューチューは、今新しい飼い主と幸せに過ごしているかなあ。

チューチューとは縁がなかったけれど、夫婦ともども猫は大好き。妻が、面白いWEBを発見したといって教えてくれた。猫の布団。
http://www.nekobu.com/blog/2015/09/post-706.html

これは、超可愛い。猫がいれば絶対買ってしまう。(笑)

教え子の結婚式の日に。

今日、妻と訪れたインビ界隈
http://hotelyoyaku.worldhot
elsreservation.com/?p=39398
先日エントリー(9月18日付ブログ参照)した教え子の結婚式の日である。お祝いのメッセージをすでに送らせてもらった。祝電という形で披露していただける、とのことである。

もし、私が今マレーシアにいなければ当然出席しただろうと思う。昨日、妻に「お父さんは、半年くらいマレーシアにいるけど、日本に帰りたいと思ったことはないのん?」と突然聞かれた。実は、日本に帰りたいと思ったことは一度もないのである。正確には5月に一時帰国したが、Tシャツが5枚しかなくて困っていたし、本が読みたかったので、そういう荷物を取りに帰りたいという希望はあったが、日本に帰りたいという感情は全くといってないのである。

たしかに、マレーシアは暑い。これには閉口するし、コトバが通じず銀行などまともな英語を使えない故に不便を感じることはある。だが、日本に帰りたいとは思わない。

私は愚痴を言うのがきらいだ。自分を取り巻く環境が悪ければ悪いで、自分の努力で良い環境にすべきだというアクティブ思考で、これまでやってきた。3回転勤し4校を経験したけれど、常に新しい職場には、メリットとデメリットがあった。「良きトコロ、良きトコロ」と自分に言い聞かせ、常に前向きにやってきた。だからこそ、私を助けてくれる良き仲間を得ることができたし、幸せな時間を過ごしてこれたと思っている。IBTでもその経験は生きている。多くの先生方に助けてもらいながら、これまでの4校と同じように幸せな時間を過ごさせてもらっている。

マレーシアも、まさに「良きトコロ」なのである。だから、帰りたいと今も思わない。妻が来てくれて、生活は大幅に改善されたし、なにより、今教えているマレーシアの生徒が素晴らしい。結局それがすべてなのかもしれない。(笑)

今日、新婦となったHちゃん、そして祝福に集まってくれたOGたちに。
…家庭も職場も、「良きトコロ、良きトコロ」でいこうね。

2016年10月15日土曜日

IBTの話(45) 土曜補習始まる

http://www.vianostra.at/scriptorium/politik/politik-reich-1.htm カノッサの屈辱
EJU(日本留学試験)まで1か月をきった。IBTでは、教科(総合科目・数学・物理・化学)の常時の補習に加えて、土曜日も補習が入るのが恒例らしい。私は、文系数学のA先生と交互に午前中90分2コマの補習をやることになった。いつものクラスではなく、数学の能力別クラス編成でなかなか新鮮だ。

土曜日は、歴史の補足をやることにした。全4回の講義である。私が4月にIBTに来る前の部分。具体的には、イギリスのピューリタン革命・名誉革命とアメリカ独立革命、フランス革命とナポレオンの時代である。EJUの総合科目の世界史の範囲は、近代国家論そのものなので、民主主義の成立からスタートする。来年から名誉革命とピューリタン革命は範囲外となるようだが、いずれにせよ、前提がわからなければきちんとした理解がムツカシイ。

そこで、古代・中世・近世を社会類型をもとに講義することにした。世界史の教科書では、重要なポイントが抜けていて、雑然とした知識の羅列になってしまうことが多いと私は思う。「自由な個人」と「不自由な共同体」というヨーロッパ古代からの社会類型(2011年10月から11月にかけてのブログ「武器としての社会類型論Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」参照)を元に解くのが一番わかりやすい。古代ではローマ市民、中世では封建領主と聖職者が「自由な個人」として支配する側にある。彼らは、富と自由、政治参加の権利を持っていたが、同時に自前で軍事を担当していた。このことがわからなければ、十字軍で没落する領主の存在や、傭兵で戦争を繰り返した近世の絶対君主が商業資本を取り入れて君臨した事がわからない。

一方で、中世にかけてのキリスト教の影響を十分に教えておかなければ、わからないことも多い。聖職者は、妻帯が禁じられていたので、跡取りは生まれない。故に封建諸侯の次男や三男が供給源だった。封建領主=貴族と聖職者は同じ穴のムジナなのだ。このことがわからないと、フランス革命の三部会の第一身分(聖職者)、第二身分(貴族)がわかからない。歴史であるから、当然繋がってくるわけだ。

今日は、中世までで終わった。(今日の画像は、カノッサの屈辱:教皇権と世俗権力の二重構造とそのバランスも中世の歴史そのものである。当然教えた。)来週は近世のルネサンス、大航海時代、宗教改革をやって、イギリスのヘンリー8世の話になる。スペインに代わって、エリザベス1世からイギリスの時代が始まる。ピューリタン革命は、彼女の死後である。この辺から歴史は大きく動いていく。

こういう大局観から見た世界史学習は、近現代史を読み解くための世界史を教える総合科目の歴史分野としては意外に重要だと思う。

2016年10月14日金曜日

ディーワーリーの装飾 in MV

先日、M先生に、ミッドバレーのモールのセンターコートに、インドの綺麗な装飾がされているということを教えていただいた。ヒンドゥー教のお祭り(ディーワリーというらしい。)が近いんだそうで、お米に色付したものを砂絵のようにして文様を作っているとのこと。

IBTでは任意の1時間の休憩時間が設定されている。金曜日は授業がない(今日は臨時で5限目と補習があったけれど…)ので、11時に妻と待ち合わせてランチタイムをとることにした。せっかくなので、妻にも見せたかったのだ。制限時間1時間。(笑)

期待通りの美しさだった。砂絵と言えば、チベットの曼陀羅を連想する我が夫婦なのだが、かなりの規模なのである。面白かったのは、すでにディーワリーの祭りを記念してまたまたセールが行われていることだ。マレーシアは、何かの記念日ごとにセールが行われる。(笑)

この祭り、ヒンドゥー教の新年だそうだ。インド歴も太陰暦だそうで、その7番目の月の初日らしい。別名、光の祭典。ラクシュミーの女神にお祈りするらしい。ということは、ビシュヌ系だ。(ビシュヌ神は、シバ神と並ぶ人気の神である。)ヒンドゥー教は、日本の神道みたいな感じなので、別にビシュヌ派とシバ派といっても、維持神、破壊神という違いはあるが、どちらかというと好き嫌いの問題でそんなに違いはない。10月29日がマレーシアのディーワリー。国全体の祝日だが、土曜日なので、IBTには関係がない。と、いうよりEJUの前で土曜日は補習が入っている。

とにもかくにも、少数派のインド系のヒンドゥー教のお祭りも、イスラム教が国教の国民国家・マレーシアは祝日としているわけだ。M先生によれば、クリスマスも盛り上がるんだとか…。うーん。ある意味、凄いなと思う。

2016年10月13日木曜日

風に吹かれて・風が吹くとき

ボブ・ディランが本日、ノーベル文学賞を受賞したというのは、我々の世代にとっては、衝撃的なニュースであった。70年代に青春を過ごしたフォーク世代にとって、ボブ・ディランは時代の象徴的存在である。ロックにおける時代の象徴はやはりビートルズだが、フォークという最も身近な音楽シーンをつくったのは、間違いなくボブ・ディランだ。

フォーク・ギターひとつあれば、誰でも詩人になれる。そんな時代だった。日本のフォークソングの歌詞の中にも、ボブディランはかなりの数登場する。みんな影響を受けたのだ。特に「風に吹かれて」は、曲もさることながらその詩が大きな意味を持っていた。以来、詩が重要性を帯びていく。私は「拓郎派」だったが、詩では超現実主義的な「陽水」にはかなわないと今でも思っている。あまりメジャーではなかったが、加川良や斎藤哲夫には詩(うた)があった。そして、なんか自分にも作れそうな気分を与えてくれた。(私はそんな詩人でないことが後でよくわかったけれど…。)

そんな話を妻としていたら、「そういえば、”風に吹かれて”って言うアニメ映画があったよねえ。核戦争になって、おじいさんとおばあさんが何処にかくれようか、相談するやつ。」と言う。そう言われれば、なんとなく、妻と見に行った記憶がうっすらとある。雪だるまのアニメと同時上映していたアニメだ。調べてみたら、「風が吹くとき」というタイトルだった。(笑)

戦争の無意味さを訴えている点では、共通点はあるけれど…。機会があれば、改めて見てみたいな、と思った次第。

2016年10月12日水曜日

IBTの話(44) 世界国勢図会

先日K書店に注文した新しい問題集が到着した。なかなかいい。これは使える、と、同じ総合科目担当のT先生と喜んでいたのだった。演習問題を作るのに、過去問はその傾向を知るのに極めて有効である。一方、EJUの過去問を調べていると、その資料として最も使われているのは、世界国勢図絵であることがよくわかった。これも、9月にT先生が一時帰国された時に日本で買ってきてもらった。(もちろんその支払いはIBT持ちである。)

このデータブックは、極めて有用だ。問題作成のヒントにもなる。何より、統計資料が数値だけでなく、様々なグラフになっていて、これだけで問題が作れそうな気になる。どんな方がEJUの問題を作っておられるのかは知らないが、なるほど、このデータブックを見ているだけでも創作意欲が湧いてくるというほどのスグレモノである。

新しい問題集とこの世界国勢図絵の最新版をもとに、私ならこんなEJUの問題をつくるけどなあ、というオリジナル問題集を作成するつもりだ。仕事なのだけれど、なかなか楽しい。

2016年10月11日火曜日

イスタンブールの猫

https://www.change.org/p/kad%C4%B1k%C3%B6y-ziverbey-e-tombili-nin-heykeli-yap%C4%B1ls%C4%B1n-kadikoybelediye
トルコのイスタンブールで、肥満ながら人気だった猫が亡くなり、その銅像ができたというWEBニュースを見つけた。生前の写真と比べると、ちょっと違うような気もするが、とにかくイスラム圏では猫は愛されている。

https://www.change.org/p/kad%C4%B1k%C3%B6y-ziverbey-e-tombili-nin-heykeli-yap%C4%B1ls%C4%B1n-kadikoybelediye/responses/36179

ムハンマドが非常に猫を愛していたという記述がハディース(ムハンマドの言行録)にあるそうだ。かわいがっていた猫のムエザが彼の礼拝服の上で寝ていたので、起こさないように服の袖を切ったというような伝承が伝わっている。

それに対して、犬は不幸である。イスラム教徒にとって、犬は豚と並んで不浄なものなので触らない、そうな。確かに、ここマレーシアでは、華人の人々が犬を連れて散歩しているのは見たことはあるが、マレー系の人が犬を連れているのは見たことがない。

こういう微妙なことも生活してみてわかることなんだと思う。ところで、タマンデサの私の住処の界隈には、野良犬の集団がいる。こう書くと、なにやら恐ろしげだが、実におとなしい。吠えないし、見事に人や車を避けていく。これは、きっとイスラム圏に住むが故の遠慮か?と思いを巡らすのだった。
もちろん、野良猫もいるけれど、犬に比べてずっと奔放だ。(笑)

2016年10月10日月曜日

IBTの話(43) 新しい問題集

総合科目の演習には、練習問題は欠かせない。これまでの実際のEJUの試験を参考にいろいろと問題を作成しているところである。EJUにはEJUの傾向と対策が必要だ。受験対策には、どうしてもこういうスキルが必要である。これもまたプロ教師としての資質である。

これまで、近代国家論や経済学史などおよそ総合科目の内容を構造的に詳しく講じてきた。ここからは、まさに予備校的な授業にならざるを得ない。何よりも問題集は参考になる。日本から、高校の政経や現社の問題集を持参してきたが、やはりEJUのものが一番である。

そんな中、困るのがIBTにあった過去問題集は古いことだ。これはIBTが悪いのではなく、長く出版されなかったことが大きい。長く出版されていない間に、統計資料や国際収支の問題など、今では通用しない問題もあったりするのだ。

そんな中、本年8月に出版された問題集をWEBで発見、マレーシア・クアラルンプールのK屋書店にさっそく注文した。(日本の書店なのだが、WEBでの通販は全て英語で、英語に堪能なT先生の力がなければとても注文できなかった。なんでやねん、と言いたくなる。)もちろん、日本よりかなり高くなるが、一刻も早く手に入れたいと思ったのだ。今日、メールが入って発送した、とのこと。近日中に手に入りそうだ。いやあ、うれしい。演習問題作りに気合が入るのである。

2016年10月9日日曜日

大森実「ヒトラー」を再読す。(2)

大森実の人物現代史「ヒトラー」の再読中である。最初に読んだ頃からだいぶ知識は重層的になってはいると思うが、再読して改めて気づくこともある。そんなことをエントリーしておこうと思う。

今回は、ヒトラーの十八番(おはこ)であるユダヤ国際金融資本への批判の話。これが実際のところ真実だったのかどうか、である。フランクフルトのロスチャイルド家のことは、後年広瀬隆の「赤い盾」を完読した(広瀬隆の本は内容は興味深いが、極めて読みにくい文章である。今でもよく完読したと思う。)ので割愛するとして、ベルリンには、メンデルスゾーン家も数か国にまたがる金融網をしいていた。特にロシアの工業開発に大きく投資していた。(WWⅠ前のロシアの工業投資は9割が外国資本だった。)ロスチャイルドのロンドン駐在員だったサミュエル・ブライクローダーは自立してドイツで銀行を始めた。息子はビスマルクの信任を得て普墺戦争の軍資金を賄った。ハンブルグのヴァーブルグ家の三兄弟は、ドイツの海外貿易、特に英米との為替業務で伸びたユダヤ資本。この本が書かれた1978年現在の三大銀行、ドイツ銀行、ドレスナー銀行、コメルツ銀行は全てユダヤ資本であり、当時から証券業務も行っていたドイツの金融資本は、株式や社債面で大企業も中小企業を牛耳っていたという。WWⅠ後のドイツ銀行、ライヒスバンク、ドレスナー銀行、ダナート銀行、プロイセン不動産銀行などの大銀行はほとんど全てといってよいほどユダヤ資本が支配していた。これは事実。敗戦後、エーベルト政権はこのユダヤ資本の代弁者となり異常にして衝撃的なほど多くのユダヤ人を政府内に入れた。これも事実。

フランスとベルギーのルール占領で、マルクが大暴落するが、これは製鉄用コークスの4/5を失った衝撃で、ドイツの将来に希望を失ったユダヤ系国際資本がドイツを見捨てたことを意味している。これは経済法則から見ても自然現象であったことは否定できないが、暴落の仕方が異常であり、国際金融資本のマルク売りの人為的な操作があったことは疑う余地がない、と大森実は書いている。中小のユダヤ系高利貸しもドイツ経済の先行きを危険とみて、抵当物件(工場や不動産)を手に入れようとたし、大資本は安定したドルやポンドを買いあさり、国外の安全圏に資金を逃避させてマルクをダンピングした。

…と、いうわけで、WWⅠ後のドイツ経済は、大きく揺れ動くが、ユダヤ資本が儲けたという批判は決して、事実を捻じ曲げたウソてはいないわけだ。

…さらに、ロシアのコーカサスの石油開発にもユダヤ国際資本(デンボ・カガン社)が関わっている。パイプラインの敷設は彼らの手による。コーカサスの鉄道建設にもロスチャイルド家が大きく関わっているし、ロンドンのユダヤ人マルカス・サミュエルは、ロスチャイルドの協力を得てシェル石油を起こした。この辺の独占資本主義的な貪欲さは、凄い。あながち、ヒトラーの指摘は的外れではなかったという事実を再確認した次第。

ハイチのマタイ受難曲

http://blog.goo.ne.jp/gyp-vision/e/52
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昔々、私がまだ中学生だった頃、春休みを利用して東京の親戚の家に遊びに行ったことがある。当時、私はクラシック音楽に凝っていたのだが、早稲田の院生だったご長男もクラッシク好きでコンサートに連れて行ってもらった。それがバッハの「マタイ受難曲」だったか「ヨハネ受難曲」だったか、今は記憶が定かではないのだが、とにかくバッハの受難曲(福音書を元にイエスが十字架刑に処せられる様子を描いた歌曲)だった。中学生の私には、そういう教養は遥か彼方のもので、爆睡しただけだったと思う。

ハイチにハリケーンの「マシュー」が大きな被害をもたらしたというニュースが流れている。アメリカでは、公的な気象機関があらかじめアルファベット順に名前を決めていて、今回のハリケーンは、Mの番だった故に、マシューになったようだ。この、マシューという名前は私の前々任校の仲の良かったALTと同じ名前である。ヘブライ語に直すと「マタイ」になる。彼は、ちなみに無神論者で、自分の名前を気に入っていなかったのたが…。

ハイチは、西半球の最貧国である。後発開発途上国中の後発途上国であるといっていい。人間の安全保障をいかに行うかが開発のポイントと、されている。特に、保健医療の分野や教育の分野がそれが顕著である。MDGsでもまだまだ目標に届いていないのが現状である。そこに、先年大地震が発生し、日本も震災の経験を生かそうとハイチへの国際協力に大きく乗り出している。詳細は、外務省のHPにある「国別データブック」「国別援助方針」に載っている。(こういう開発に関わって詳細な資料が必要なとき、日本の公式見解が載っているので重宝する。)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/region/latin/haiti/index.html

今回の「マシュー」による被害は800人を既に超えているようだ。そもそもガバナンスが極めて脆弱な国なので被害者数はかなりいい加減にならざるを得ない。ここに、コレラが蔓延する可能性を多くの識者が指摘している。さらに被害が拡大することは必至だ。ハイチは、まともな水を利用できる人口比率が国連の最新資料では57.7%。これがコレラの危惧の主因である。おそらく飲料水インフラが大きな被害を受けるだろうし、下水でかなり汚染されるだろう。それを冷静に判断するための初等教育の就学率(57.2%)が、かなり低いからだ。

このハイチの度重なる受難を、異教徒の私は、イエスの受難に結び付ける気など、さらさらないのだが、まずは旧宗主国フランスの責任をやはり問いたい。他の先進国にも、アフリカ同様、ハイチのこのような人間の安全保障を置き去りにしてきた責任を問いたい。先進国の一員として日本が関わるのも当然。先進国はいつまでもポンテオ=ピラト(注:イエスの裁判に関わったローマ帝国のユダヤ属州総督で、ローマ法とユダヤ人の極刑論の中で揺れた人物。)のような中途半端な立場ではいられないはずだ。

2016年10月8日土曜日

IBTの話(42) 補習で熱く語る。

http://naruhodo.jp.net/malaysia-reverse-culture-shock/
昨日は、放課後の補習の日だった。補習は、EJUとは全く関係のない「アフリカ開発経済学」をオリジナルのテキストをピックアップしながら進めている。経済学的な視点、政治学的な視点をほぼ終えて、文化人類学的な視点に入った。ここで、スイス航空の雑誌広告の話が出てくる。これまで、このスイス航空の話は、2度エントリーしている。2010年12月15日付と2015年1月11日付である。

スイス航空は、なぜアフリカの17カ国へ飛んでいるのでしょう。
それは、ここには石油、禁、ダイヤモンド、銅、鉄、プラチナ、木材、ココア、ナッツ、ゴム、タバコ、スパイス、果物、コーヒー、綿花、それに珍しい動物やすばらしい砂浜があるからなのです。
…デア・シュピーゲル誌の広告(1972年) アフリカの選択/マイケル・B・ブラウンから引用。

これを、マレーシアの生徒にぶつけてみた。もし、君たちがマレーシア航空のCMを考えるとして、どんな内容を入れるか?すると、ドリアン、マレー料理、中華料理、インド料理などと、美しい自然や世界遺産が次々と挙がった。なるほど。で、私が日本のCMならということで、四季の変化に富んだ美しい自然、日本固有の文化遺産などを挙げた後、おもてなしの心、治安の良さと快適な生活様式などを私は、一番見てもらいたいと思っていると話した。人、文化、それこそが重要だと。どう?マレーシアの文化や人間の良さはどこにある?と質問してみた。

実は、彼らは、こういう時、自国に対して自信に欠けるきらいがある。それは、国民国家でありながら、マレー系として、あるいは華人としての微妙な機微があるからのようだ。多民族国家故の機微であると私はこの半年の経験で承知している。あまりに文化的基盤の差異が大きいのだ。ほんと、いろいろあるはずなのだが、とにもかくにもうまく共生しているのである。その多文化共生がうまくいっていることを、私なら何より大事にしたい、と訴えたのだ。そんな例をいくつも話した。

これには、彼らも大いに納得してくれた。で、アフリカである。スイス航空の広告には、人も文化も出てこない。この上から目線では、アフリカを理解し、共生は不可能なのだ。そういう話を語ったのだ。アフリカを学ぶ者は、アフリカから学ぼうとし、自らの反省材料にするとは、峯先生の名言である。まずは、文化人類学的なスタンスを熱く語ったわけだ。

講義が終わった後、教室にはなんともいえない充実感が満ちていた。いい授業ができたと思う。早期退職までしてマレーシアに来て、彼らと出会えて本当によかったと思うのだ。

2016年10月7日金曜日

バス・ホリデー?

http://www.keyword-suggestions.com/cmFwaWRrbCBidXMgc2NoZWR1bGU/
クアラルンプールは、早朝から、凄い雷雨であった。今朝もいつもの時間に住処近くのバス停に立った。7時15分から20分くらいだったと思う。雨脚は強く、バス停の屋根があっても傘をさしている方がいいかな、くらいであった。インド系の顔見知りのおじさんが合流して、バスを待ったが、一向に来ない。30分ぐらい待った後、「タクシーをシェアするかい?」と聞いたが、彼はKLセントラルまで行くので折り合いはつかなかった。結局、「大通りまで出て他の路線バスに乗る。」と言う。私はもう少し待つことにした。しかし一向に来ない。そうしているうちに今度は、華人の青年が合流してきた。「かれこれ45分ぐらい待っている。」と言うと驚いた様子で、「タクシーが来たらシェアするかい?」と聞くと行先はミッドバレーで一緒なので、賛同してくれた。その5分後くらいにやっと空のタクシーが来た。

雷雨の影響で大停滞だったが、さすがタクシー、抜け目なく車線変更を繰り返し、短時間でミッドバレーに着いた。メーターはRM10ジャストである。華人の彼にRM5出してもらって、私はRM6渡し、キープ・ザ・チェンジしたのだった。まあ、おつり自体は存在しないので変な英語だけど…。(笑)

で、8:30過ぎになんとか学校に着いたのだった。なんともテリブルな朝だったわけだ。タクシーの中で、重大なことに気付いた。650番だけでなく、他のバスもほとんど走っていないのだ。「バス・ホリデー?」と私が言うと、運転手も華人の青年も大笑いしたのだった。今朝のバス・ホリデー、雷雨が関係しているのは間違いないが、詳細な原因は不明のままだ。

2016年10月6日木曜日

コーラン朗唱国際大会「馬」優勝

優勝したアブドラ氏の勤める大学のロゴ
”Weekly Mtown”という日本語のフリーペーパーに、モスクワで行われた第17回コーラン朗唱国際大会(9月22日から25日)で、マレーシア代表が優勝した、というニュースが載っていた。この大会にはイスラム教国の代表が30か国参加して、コーランの全ての知識を問われた後、朗唱し競い合う大会らしい。

マレーシアの代表:スルタン・イスマイル・プトラ大学のアブドラ・ファフミ講師が優勝し、$5000の賞金を獲得。2位はイエメン、3位はバーレーン代表だったとか。

異教徒の私としては、何ともコメントしがたいハナシなのだが、アラビア語を母国語としないマレーシアの代表が、アラブの人々を抑えて優勝したというのは、なかなか凄いハナシのような気がする。もちろん、マレー系の生徒に聞くと、彼らもアラビア語が少しは読み書きできて話せるらしい。でないと、コーランの意味が解らないし、礼拝に支障が出てくるからだろうと思われる。タマンデサのモスクの横には、コーラン学校が併設されているので、おそらくイスラム教を専門に学ぶ人たちもいるはずだ。マレーシアとアラビア語は決して疎遠な関係にはない。アラビア語の看板もたくさん見ることができる。

とはいえ、やはり快挙なのだろうと思う。アザーンが毎日流れる街に住んでいて、そんなことを考えるのだった。

2016年10月5日水曜日

IBTの話(41) 経済分野のヤマ

http://iaccount-support.com/
総合科目の補足説明も経済分野のヤマ場を迎えている。金融政策と財政政策の総まとめである。このあたりは、私がIBTに来る以前に一度生徒は学んでいて、言葉は記憶に残っている。ただ、日本語の能力、特に聞き取り能力が今ほどなかったので、難解な経済用語を理解するのはかなり難しかったはずだ。それで、再度講義をしている次第。

特に金融政策と財政政策で、インフレ・デフレ対策を行っていることを理解するのは難しい。今回は、信用創造をまず理解させた。おそらく3月の時点では理解できなかったと思う。プリントに図解を示して説明した。ここでのポイントは、銀行が貸し出しをするごとに、通貨が増えていくということである。次に、マネーストック(我々の世代はマネーサプライといった方がわかりやすい。通貨供給量である。)を教える。実際には、現金通貨は実際のマネーストックから見れば割合は少ない。預金通貨と国債(今日の画像参照)などの割合が多い。

このマネーストックで日銀の金融政策を語るとわかりやすい。通貨の供給を増やしたり減らしたりすることで、インフレ・デフレ対策となる。金融政策を一言でいうと、マネーストックをいかに増減するか、ということになる。政策金利は、現在は公定歩合が金融自由化でなくなったので、コール市場の金利で誘導する。この金利の変化で、金融機関の企業への貸し出しが大きく変化する。信用創造との兼ね合いが重要だ。預金準備率は、91年以来、下げ止めて動いていないが、これも信用創造に大きくかかわり、預金通貨の増減に影響を与える。そして、残る国債の買いオペ・売りオペ(公開市場操作)である。これも皆、マネーストックから説明できる。

この日銀の金融政策を後押しする、政府の財政政策は、累進課税や社会保障という自動的なシステムと、恣意的な税の増減、さらに有効需要の問題が出てくる。これで、ポリシーミックスの完成である。

汗をかきながら、金融政策と財政政策による景気対策を講じていたら、次々と生徒の顔が赤らんでいく。かなり複雑な経済システムの謎が解けてきたらしい。経済分野のヤマを越えたわけだ。いよいよ、IBT対策も、問題演習に入っていく。

2016年10月4日火曜日

朝日 アフガンの野ざらしバス

朝日新聞のデジタル版に、日本のODAで供与された大型バスが、アフガニスタンのカブール郊外で野ざらしの状態になっているという報告がされていた。記事は途中までしか読めなかったが国際協力の在り方に示唆を与える話である。

記事によると2004年に行われた、大型バス98台と小型バス17台、バス停も含めた23億円超のプロジェクトである。それが、エンジンを始めとしたメンテナンスの調達ルートの不備と、社会主義下における公共交通として期待されながらも、その後の社会構造の変化・市場経済化の波の中で、公共財としてのバスは、民間の小型バスに完全に需要を奪われた形になったらしい。なんとも不運な話であるが、こういう国際協力で失敗したケースもまた多いのが事実なのである。

私はアフリカで、JICAの様々な国際協力の現場を見てきた。ケニアでは、日本のODAマークのついた農機具が、スクラップ同然になったのも見た。ケニアのJICAスタッフは、そういう失敗した現場も、国際協力をこれからの生徒に教えるべき高校教師の私たちに見せてくれたのだ。

国際協力は実に難しい。いくら周到な準備を重ねてもうまくいかない事もある。血税を使って行うわけであるから失敗してもよいとは言わないが、納税者もムツカシイという事実を知っておくことは重要だと私は思っている。どこかの党首が昔やっていたように、短絡的に白黒つけてハイやめましょう、というような話ではないと思うのだ。

国際協力は、地道な協力の積み重ねである。その気位を忘れては日本の未来はない。…私はそう思う。

http://www.asahi.com/articles/ASJ8Y4K7HJ8YUHBI018.html

追記:YAHOOニュースにすばらしい記事を見つけた。オバマ米大統領が紹介した、シリアの空爆に苛まれた少年を助けたいという思いのこもった6歳の米国の少年の手紙。この記事も合わせて是非読んでいただきたい。国際協力の原点は、こういうトコロにあると思う。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161004-00010005-giz-ent

2016年10月3日月曜日

アワル・ムハラムの振替休日

http://penangwalking.blog.
fc2.com/blog-entry-622.html
昨日はアワル・ムハラム(アワルはマレー語で第1日という意味、ムハラムはイスラム歴の1月、要するにイスラム歴の1月1日)であった。今日はその振替休日で、土日を合わせて三連休のマレーシアである。
より具体的には、ムハンマドがメッカからメディナに迫害を逃れて移住した日である。当然イスラム歴は太陰暦なので、このアワル・ハラムも(もっと言えばイスラムにまつわる休日は全部)、来年もまた太陽暦上を移動するわけで、マレーシアのカレンダーづくりは、なかなか難しい。

というわけで、イスラムのお正月なのだが、クアラルンプールの街はいたってフツーである。お店もやっているし。ラマダーンの時みたいに花火もない。なんだがフツーの休日で拍子抜けである。

ところで最近、食事が一気に改善されてきたので、少しお腹のでっぱりが復活してきた。そこで散歩ということで、木漏れ日の中、またまたTスーパーまで歩いて行ってきた。妻が、細々とした料理道具を手に入れたいという希望があったからである。それと共に、ミネラルウォーターが安かったのでリュックに3本積んで坂道を歩くという、非常に経済的にも効果的な運動をしてきたわけだ。当然大汗をかいたので水シャワーを浴びて、スイカ(1/4でRM3=100円弱)を食べて…。そんなフツーの南国の休日である。(笑)

2016年10月2日日曜日

大森実「ヒトラー」を再読す。(1)

大森実の「人物現代史」を再読していることを先日エントリーした。第一巻のヒトラーを読んでいて、印象に残っている部分を残しておこうと思う。とはいえ、かなりマニアックな話になると思うが…。

WWⅠで、ソビエト=ロシアはドイツと講和するのだが、この時の講和条件は無茶苦茶なものであった。ポーランド、バルト三国、ウクライナ、コーカサスの主権放棄、60億マルクの賠償金、鉄道の1/3、鉄鉱生産の73%、石炭の89%の現物賠償…。トロツキーは「戦争でもない、講和でもない。」と言って席を蹴ったが、レーニンは「条件を飲もう。今にドイツでも革命が起こる。」とトロツキーを制してギャンブルを打ったという話。で、その読みが当たるのである。

…WWⅠまでは、戦争は国家の権利というのが戦争論の主軸であったわけで、ドイツの講和時の主張は、そのまま因果応報でベルサイユ条約に跳ね返る。生産性の向上による武器供給の増大と国民国家化による兵士の供給増大が可能になったが故の数字である。そういう方程式が成り立つのだが、それまでの普仏戦争などとはとはかなり趣が違う。今年は、総合科目でそういう歴史を語ったのだった。さらにWWⅠの反省から、国際連盟で集団的安全保障が語られ、WWⅡ以後は侵略戦争の否定へと戦争論は変化していく。ちなみにスエズ動乱は、英仏がスエズ運河をエジプトから取り戻すべく侵略戦争をイスラエルに行わせ、これを支援するカタチで行われた。いつもながら英仏はやることが凄い。

ドイツの戦後賠償をめぐっては、ケインズがその会議の席を蹴ったことが有名だ。ところで、ウィルソン米大統領の代表団の中に、ジョン・フォスター・ダレスがいて、ケインズの考えに同調していた。後年、WWⅡの対日講和で彼が主導権を握る(トルーマン時代は国務長官顧問・アイゼンハワー大統領時代の国務長官/ワシントンDCの空港名は彼の名を冠している。有名なCIA長官は実弟。)が、日本には賠償を課さなかった。大森実はこう書いている。「日本はベルサイユ条約とヒトラーのお陰で、肺臓や心臓部の切開手術を免れたといえよう。」

…アメリカという国は、単純明快な国なのか、複雑で巧緻にたけた国なのか未だわからないところが多い。おそらくはその両面性をもっているのだろうが、アメリカにのふところに飛び込んで最後まで対抗した大森実がそう書いているのだから、その示唆を受け入れたいと思う次第。

WWⅠでドイツが敗れた後も武装解除せず、ソ連で白色革命を戦っていた軍があった。バイエルン州のソビエト政権下にあったヒトラーたちを解放したのは、その1つでチューリンゲンの森で結成された「バイエルン義勇軍」であった。面白いのは、その中に、レーム大尉とルドルフ・ヘス少尉がいたことだ。このことを大森実は「記憶に留めておかれたい。」と書いている。

…レーム大尉は、SA(ナチの暴力装置・突撃隊)の創始者で、後にヒトラーに粛清される人物。ヘスは後のナチの副総統である。こういう「水滸伝」的なナチの主要人物の出自と邂逅も面白い。

朝からM先生ご夫妻と「飲茶」

朝から、M先生ご夫妻と飲茶に行ってきた。もちろん妻もいっしょである。香港発のチェーン店らしく、ポーレイ茶を飲みながら、美味を楽しんだ。こちらの飲茶は、アルミ製のお盆に若いお兄さんがお勧めの飲茶をもってきて、そこから選ぶのと、カラー写真付きのメニューから追加するという2方式である。台車でもってくるシステムではない。きっと店の構造(店内だけでなく、野外にもカフェ風に広がっている。)によるものだろうと思う。(画像参照)

小籠包やエビシュウマイなどの定番もいいが、ローカルっぽい飲茶もあって私は幸せな気分になった。M先生ご夫妻は佐賀のご出身だが、佐賀といっても地方で張り合っているらしい。唐津と伊万里は、それぞれ風土が違うんだとか。妻がそういうことを引き出して会話も弾んだ。

普段、住処でいることが多い妻だからこそ、こういう機会を大事にしたいものだ。M先生ご夫婦に感謝である。

2016年10月1日土曜日

マレーシアで「シンゴジラ」を見る。

先日、職員室で、映画「シンゴジラ」が話題になった。ミッドバレーのメガモールの映画館でも上映しているらしい。私はあまり映画館に行く人ではないのだが、TVもほとんど見ない生活をしているし、怪獣映画世代として是非行きたいと思ったのだ。妻も賛成してくれたので、昨日の休憩時間にM先生にお付き合い願ってチケットを購入したのだった。

シンゴジラは、映画館の15番会場で上映されていた。そんなに多くの観客が入るような場所ではなかった。(笑)実際、12:00からの上映の観客は数えれるほどだった。職員室では、いろいろな話題が出たが、私が最も興味を惹かれたのが、野村萬斎がゴジラの動きを担当したということだった。昔は、人がゴジラの着ぐるみに入っていたのだが、当然CGらしい。

あまり内容をばらすのは良くないのだが、私は今までのゴジラシリーズの中で、最もリアルなゴジラ映画だと思った。その主役は、ゴジラに対する官邸であり官僚である。もし実際にそういう事態が起こったら、まさしくそうなるだろうというリアリティがあった。私には、閣僚の立場にある人間が、まるで江戸幕府の老中のごとくあまり頼りにならないこと、日本の首相は常に人命尊重の立場で動き、だからこそシビリアンコントロールが働くことと、同時に日本へのアメリカの圧力の大きさなどなど、東日本の震災の際の当時の錯綜した状況と、どうしてもセリフが多くなり早口で語らせなければならない監督の苦労をしのびつつ面白く拝見した。

ゴジラへの自衛隊の第一次攻撃(主力は攻撃ヘリ)は、ある理由(あえて書くことを抑えたい。)から頭部と下半身に手中させている。全弾命中するが効果はなかった。このあたりのリアリティ。自衛隊の表現として、これ以上はないと思われる。第二次攻撃というかクライマックスの作戦はかなり念密なのもので、日本存続の政治的決断も含めて鬼気迫るものだった。

と、いうわけで私は大満足したのだった。ちなみに、マレーシアでの「シンゴジラ」、吹き替えはなく日本語である。字幕スーパーには、マレー語・中国語・英語が三段で出てくる。英語の会話もあるのだが、そこくらい英語を日本語にしておいて欲しかった、とはちょいと無理な注文かもしれない。