2016年10月25日火曜日

日本はソマリランドを承認すべき

また、ケニアのマンデラ県・ソマリア国境の町で、アルシャバブによるテロが起こり、12人が死亡したそうだ。アルシャバブは、ラジオで「イスラム戦士が異端を追い詰めている。」と警告したという。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016102500520&g=int

ところで、IBTでは、私費生も国費生も、進学指導が大詰めを迎えている。私費生は自由に日本の国公立大学や私立大学を選んでの受験が可能だが、国費生は、EJUの成績と本人の希望をもとに、日本の文科省が入学する国立大学を振り分けるシステムである。国費生にとって、「学部の志望動機」を仕上げることは、なかなか重要かつ大変である。なぜ、経済をやりたいのか?なぜ国際関係なのか?なぜ社会学なのか?各人が懸命に考え、文章を仕上げている。安易な文章にならないよう、その前に立ちはだかっているのが、日本語のS先生である。時々、私も相談に乗ることがある。

今日は、国際関係に進みたいA君とS先生が職員室で激論をかわしていた。平和構築につてである。たまたま、A君が例に出したのが、カシミール問題だった。武力を使わず、あくまで話し合いで、という理想論をA君は訴えるのだが、果たして可能なのか?というS先生の反駁。指導のあと、少し私もアドバイスした。これまで様々な講義をしてきた歴史・政治・経済・宗教・文化などの知識を統合させるのが狙いである。結論は、かなり難しいということになった。国費生であるから、当然A君は敬虔なムスリムである。日本の生徒より、はるかにアイデンティティは堅牢である。一神教の神は戦争を否定していない。とはいえ、私から学んだ多くの社会科学的な知識を駆使して、今も原稿用紙に向かって思索しているはずだ。

ソマリアの問題を、私も今、A君に負けず考えようと思う。WEBの記事には、このテロ被害にあった県知事のコメントも載っていた。「これで投資も熟練労働者もわが県に来ない。」なんとも情けないコメントのように読めるが、ここに真実があると私は思う。知事は、県民の経済的な豊かさ、すなわち「開発」を心底願っているのだ。

私はアルシャバブのイスラム復古主義が、欧米的な領域国民国家内での経済的幸福など願っていないことを知っている。だが、彼らとて生身の人間である。アメリカ独立宣言的な幸福追求の正義を100%否定はできまい。テロに走るのは、宗教的情熱もあると思うが、絶対的貧困のなせるところでもある。

ソマリアの元英国領だったソマリランドは、比較的治安もいい。経済も成立している。ちょうど、先日荒熊さんのブログでも紹介されていた(http://cacaochemise.blogspot.my/)が、高野秀行氏の「謎の独立国家ソマリランド」を以前私も興味深く読ませてもらった。同じソマリアで、世界に国家承認され、分離独立して豊かになっていく地域が存在すれば、彼らの意識も少しは変わるのではないか。

と、いうわけで、私はソマリランドの国家承認を行うことが、アルシャバブには極めて有効だと思う。調べてみると、国家承認をしている国は未だゼロであるが、9か国(エチオピア・ジブチ・ケニア・南ア・米国・フランス・イタリア・スウェーデン・英国)が自国に駐在員事務所を置いている。また現地首都には、エチオピアとデンマークの在外公館があるらしい。日本は、ソマリランドを国家承認するべきだ。すぐには無理でも、日本に連絡事務所を置き、国際協力していくべきだと私は思う。世界各国がソマリランドを応援することで、アルシャバブへの強い否定のメッセージを送るべきなのだ。

アフリカ各国は、(自国内に民族問題を抱えている国が多い故)分離独立の先鞭をつけることを危惧しているようだが、領域国民国家の最大のリスクは、アルシャバブやボゴハラムであると認識するならば、ここは妥協してもいいのではないか。世界が、ソマリランドを国家承認していくことで、大きくアフリカの角は変わっていくように思う。これこそ、武力を使わない「知」の平和学のような気がするが…。さて、A君、どうだろうか?また議論しょう。

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