2023年9月30日土曜日

「長州5」と「薩摩19」

https://www.facebook.com/uclofficial/?ref=page_internal
長州ファイブは、苦難の航海の後、UCL(ユニバシティ・カレッジ・ロンドン)に聴講生として入学する。当時のオックスフォード、ケンブリッジ両大学は、英国国教会徒しか入学は許されていなかった。功利主義哲学者ベンサムの提唱で外国人ににも門戸が開かれた大学があったことは、実にラッキーであった。ここのウィリアムソンという教授の世話になる。教授は分析化学が専門で、理系故に英語にハンディがあってもよかったこともラッキーだった。教授宅に、伊藤俊輔と井上勝、遠藤謹助の3人、UCL近くの風俗画家・クーパー氏宅に井上聞多と山尾康三の2人に分かれる。とりわけ、伊藤と井上勝が絆を深めたことは、後の日本の鉄道の発展に寄与した。

半年後に、井上聞多と伊藤俊輔は、長州藩の攘夷活動を止めるため(といっても間に合ったのは休戦協定時だが)帰国する。この辺は良く知っている。高杉晋作の通訳をし、井上聞多は攘夷派に切られ瀕死の重症を負うところだ。

さて、2人が帰国した後、「薩摩ナイティーン」と出会う。薩摩藩も19人の留学生を送り込んでいた。だいぶ以前に文庫本で読んだ記憶がある。(2010年12月30日付ブログ参照)3人は彼らと合う。蛤御門の変で薩長は相対し、宿敵同士である。本国の薩長連合の8ヶ月以前の話である。五代才助や森有礼らと、同じ目的で学んでいることを確認し打ち解けたようだ。その後、造幣局の父となる遠藤謹助が肺の病気が理由で帰国。井上勝と山尾康三だけになる。山尾康三は、UCLをやめ、グラスゴーで造船の勉強を本格的にしたいと言い出す。この時、薩摩19は、資金の乏しい彼に、彼に1ポンドずつハランべー(スワヒリ語で助けあい)する。薩摩の留学生は長州より遥かに金銭的に恵まれていた。薩摩藩は20万両を支出している。流石は琉球密貿易の成果というところだろう。

「長州ファイブ」を読む。

「長州ファイブ」(桜井俊彰/集英社文庫)を読んだ。長州ファイブと言われて浮かぶのは、伊藤博文(俊輔)と井上馨(聞多)だが、この本は、井上勝を主軸に書かれている。やはり幕末モノは面白い。

正直なところ、私は幕末における長州の志士たちはあまり好きではない。しかし、この本の著者は彼らの業績をかなりリスペクトしている。UCL(ユニバシティ・カレッジ・ロンドン)の大先輩にあたる故かと思う。

いくつか印象に残った話をエントリーしていこうと思う。この長州藩のイギリス留学生に選ばれたのは、井上勝と山尾康三であった。両者とも洋学の徒であり、当時の最先端技術である操船術・航海術を学んでいた期待の人材だった。開明派の「大攘夷」を論じていた周布政之助が決めたらしい。当時の過激な攘夷には、井上勝は無縁だったが、沿海州に行ったこともある山尾康三は英国公使館焼き討ちに関係している。ここに強引にねじ込んできたのが最年長となる藩主の覚えが良かった元小姓役・井上薫である。ここに家禄が最も高い洋学志向の遠藤謹助を山尾康三が誘う。この時点で4人。さらに井上聞多が伊藤俊輔を誘う。桂小五郎の元で動いていた伊藤はなかなかウンとは言わなかったが、大攘夷のために承諾する。ボスの桂は壮挙として認めたが、藩サイドでは4人。伊藤は事後承諾であった。

当初の渡航費用は、井上勝と山尾康三、井上聞多の3人分600両。しかし江戸の藩邸には、アメリカからの武器調達の為の資金1万両があった。アメリカが南北戦争となり商売不成立となっていた金である。最低でも5000両は必要と考えていた彼らは、この藩の金を担保に貿易商伊豆倉から5000両を借りることにした。これを承諾したのは、村田蔵六、のちの大村益次郎である。これにはちょっと驚いた。なかなか度量が大きい。


2023年9月28日木曜日

本土の中国人の格率

「値段から世界が見える」(柳沢有紀夫偏/朝日新書)に、中国の二重価格の話が出ている。経済格差の激しい中国でも二重価格であるようだ。今回のエントリーでは、本土の中国人(こう表記したのは、私の知るマレーシアの中国人とは、少し違うような気がするからである。)の格率についての内容を記しておこうと思う。

中国の富裕層(年収520万円以上/全人口の0.8%)の中で、18歳から44際が80%(日本:19%、アメリカ30%)もいる。不動産バブルでひと財産を築いた者もいるが、起業する者が多い。もちろん失敗も多いが、失敗したら撤退してまた次の会社を作るまで。なんとも凄いバイタリティーであるが、職人は育たない。1つのところでじっと耐えて修行するという習慣がない。会社でもレストランでも、なにか自分が覚えたと思ったら独立する。しかし実は中途半端な技術しか習得しておらず、専門知識は貧弱なまま。マンションは欠陥住宅になり、買ったものはすぐ壊れる。レストランはおいしくない。またサービスが悪いため長続きしない。これは賃金が安いからかもしれない。自分で経営すれば何十倍にもなる。今の(この本の発行は2012年)大学生の40%は卒業後起業したいと考えている。また、一つの会社への愛着はなく、給料が良ければすぐ転職する。これも職人やプロフェッショナルが育たない理由である。

仕事に対する格率は、日本とは180度違う気がする。マレーシアのPBTで、私は中華系の多いクラスの担任を2回したが、最初のF38は、拝金志向が比較的強かった。日本に留学して金儲けのスキルを身に着けたいと、信州大学や滋賀大学の経済学部を志望した生徒もいた。カネカネ金金という貪欲さをマレーシアの中国系生徒はもっているのだと思っていたが、次のF40は、そういう感覚がかなり薄かった。経済学部や経営学部への志望者はほとんどいなかった。おそらく、マレーシアの中国系は、中国本土とは、全体的に拝金主義の濃度差があるのだろう。ただし、在馬の日本企業の友人に聞くと、やはり給料が高いところへの転職は常らしい。

私などは、カネのために教師をしているわけではないという武士道的な美学があるので、この辺は理解し難いのだが、中国本土の政治リスク、不動産バブル崩壊の金融リスクなどから、日本企業の撤退が相次いでいると聞く。日本企業としては、相容れない部分があるような気がする。日本に来る外国人労働者には、じっくりとプロフェッショナルを目指してほしいものだ。それが日本の共通善なのだから。

2023年9月27日水曜日

ドバイの二重価格

https://tabichannel.com/article/574/dubai
「値段から世界が見える」(柳沢有紀夫偏/朝日新書)を読んだ。この本は、世界中に居住するフリーライターが滞在国の様々なものの値段について書いたレポート集である。今回は、その中からUAEのドバイの話をエントリーしたい。UAEのドバイは、アブダビ首長国ほど石油の埋蔵量はなく、早くから転換を図り成功した。人口の8割から9割が外国人労働者という物流拠点・ハブ都市である。

ドバイの外国人労働者は、高給取りから単純作業労働者まで様々。最低賃金は約108000円ほど。ただし住宅が会社から敷きうされている場合39000円ほどになる。生活する分には問題もなく、母国に送金することも可能である。何故なら、ドバイには二重価格があって、同じ商品でも、高価だが高級志向を満足させるものと庶民的な価格で高級ではないがきちんとしたものがある。たとえば、紅茶。街角のお茶屋なら21円くらいからある。高級店なら400円ほどと大きな差がある。食事も、カレーやインド風ピラフ、ケバブなどの店なら325円くらい。ホワイトカラーが行く店なら1500円くらい。

外国人労働者は3人で3ベッドのコンパウンドを共用する場合が多いらしい。ホームシックを防げるし団結力も生まれるので、長期雇用につなげることができる。同じコンセプトで夫婦での雇用も多い。面白いのは、国際電話の使用である。電話会社は、ビジネスの休日、特定の国への使用に限って大幅割引を適用している。外国人労働者への手厚いサポートである。

しかし、唯一、二重価格ではないものがある罰金である。スピード違反は最低でも13000円。車のランプが切れていたり駐車違反は4200円。ちなみに駐車料金は2時間42円だから、100倍のお仕置きとなる。こうした違反は証拠写真を撮られコンピュータで管理されており、支払いしないと利息がつくし、年1回の車検の更新ができなくなり、悪質なら出国できなくなる。

この外国人労働者を厚くサポートする反面、厳罰は必要不可欠で、多様な国籍の人達が、それぞれの常識や文化的背景から、いろいろな法解釈をしたり、自分勝手なマナーを適用したりしていけば、国全体の治安が危ぶまれる。交通違反だけでなく、もっと重大な罪を犯すと国外退去処分となる。こういう飴と鞭を使い分けながら、必要な外国人労働者と共存しているのがドバイなのである。

…日本でも外国人労働者を受け入れる政策が進められているが、このような発想はあるのだろうか、と思う。ついつい、PBTの教え子たちをイメージするのだが、彼らは日本語が堪能で日本文化にも造詣が深く日本人といってもいいくらいであるが、そうでない外国人労働者も多いだろう。治安が乱れるなどというのは論外である。日本の場合、日本特有の共通善=空気を理解してもらうことが重要だと思うのだ。ドバイの二重価格から、そんなことを考えていた。

暑さ寒さも彼岸まで?

https://www.google.com/search?q=%E6%9E%9A%E6%96%B9%E5%B8%82+%E5%A4%A9%E6%B0%97&rlz=1C1QABZ_jaJP1003JP1003&oq=&gs_lcrp=EgZjaHJvbWUqCQgAECMYJxjqAjIJCAAQIxgnGOoCMgkIARAjGCcY6gIyCQgCECMYJxjqAjIJCAMQIxgnGOoCMgkIBBAjGCcY6gIyCQgFECMYJxjqAjIJCAYQIxgnGOoCMgkIBxAjGCcY6gLSAQkyMzM3ajBqMTWoAgiwAgE&sourceid=chrome&ie=UTF-8

今年の夏は猛暑だった。毎日枚方市から、外出を控えるようにとの警報が出ていた。とはいえ、暑さ寒さも彼岸までということで、23日を過ぎれば、秋がやってくるはず。確かに秋の雲もでているのだが、相変わらずの入道雲も発生していたりして、今年ばかりは、このことわざも外れてしまった。

ちなみに、マレーシアは一年中夏だが、過ごしやすさではマレーシアのほうがいい。気温は上がっても32℃くらい。(ただ今年はそれ以上上がったと聞いている。猛暑は世界的なものなのだろうか。)

学園では、早くも来週から中間考査が始まる。すでに試験も出来て、解答も完成した。中間は昨年同様、体育大会の関係や模試の関係で範囲は少ない。できれば、秋を感じながらの採点であってほしいものだが…。

2023年9月25日月曜日

「高校公共」の金融政策 考

https://www.findai.com/yogo001/0052y01.html
「高校公民」の政経分野のマクロ経済で最も重要なのは、金融政策の理解だと私は思っている。他にも重要な学習内容はあるが、インフレ・デフレに対する金融政策の理解は高校生にはなかなか難しい。経済用語はかなり抽象的であるし、興味がなければなかなかとっつきにくい。できるだけ平易に、また具体的に教えることを心がけている。

私があみだした教え方は、インフレ・デフレをまず人体の血の巡りに例えることである。インフレは血の巡りが良すぎて鼻血が出るような状態、デフレはその反対で血の巡りが悪い状態。もちろんこの血とは市場における通貨量を例えている。ホワイトボードの左端に、インフレ君、デフレちゃんの図を最後まで描いておいておく。

次に、マネーストック(古い言い方だとマネーサプライ)を教える。現金は意外に少なく、預金通貨が多いこと、国際などの債権も通貨に変わる存在故、マネーストックに入ること。だいたい帯グラフにしてこれもずっとホワイトボードに残しておく。

さらに信用創造を教える。これは全員が理解するまで何度も教える。通帳に書かれた数字がどんどん増えていく様はわかりにくいのだ。信用創造のシステムが理解できれば、ここが金融政策のヤマである。

ここで登場するのが、金融政策の第1である。政策金利。預金通貨は、金利が低いと企業が融資を受けやすくなり、預金通貨量が増加すること。金利が高いと、預金は増えるが信用創造が低調になること。金利による信用創造の増減が、と預金通貨の増減と関係し、マネーストックが増減することを理解させる。インフレのときは、金利が高い方がいいことを理解させつつ、何度も人体の例に戻る。血が多いので血を減らす=マネーストックの減少となるわけだ。デフレのときは輸血である。

金融政策第2は、公開市場操作(売りオペ・買いオペ)であるが、理解のポイントは、主語が日銀であることである。買いオペは、日銀が市中銀行から国債を買うこと=市中銀行にはその代金が入ってくる。マネーストックの増大に繋がることを理解させる。売りオペはその反対だから、市場からお金が日銀に吸われるわけで、これも人体の血の巡りに戻って理解させるわけだ。

今回の「公共」では、インフレ・デフレ対策として表で整理した。ポイント1:人体の血の巡り。ポイント2:マネーストックの増減を最上位において表を作った。政策金利と公開市場操作の後には、日本では1991年頃から変化していないが第3の金融政策の預金準備率、政府が行う再税政策のうちの景気対策、公共事業と、減税・増税。受験の政経とは違い、「公共」では、細かな話より、大きく理解したほうがいいと思う次第である。

2023年9月24日日曜日

「高校倫理」の生命倫理 考

https://www.irasutoya.com/
2018/08/blog-post_456.html
倫理と公共の試験も出来て、2学期・後半の準備に入っている。これまで長年「倫理」の授業をやってきたけれど、生命倫理の分野など、読めばわかるので講じてこなかった。今年はかなりのスピードで授業を進めてきたので、余裕があり、ついに触れることになった。生命倫理は、生と死の問題に大きく分離できる。

生の問題は、インフォームド・コンセントや代理出産、出生遺伝子診断、クローン技術、リプロダクティヴ・ヘルス/ライフ問題など。死の問題は、末期医療、延命治療とSOLとQOL(生命の尊厳か、生命の質かという問題)、具体的には安楽死と尊厳死、脳死と臓器移植の問題などである。まあ、受験のスキルとしては、どうしても理解云々よりも用語を暗記するといった内容になる。

死の問題に関しては、自死のことが省かれている。青年期の生徒たちにわざわざ教えないほうがよい、というプラグマティックな理由だと私は考えている。ただ、生命倫理と銘打つならば、自死をどう捉えるかというのは、甚だ重要であって、異文化的な側面から今回は講じようかと思っている。

キリスト教世界においては、宗教的に大きな罪とされている。創造神によって得た命であるという大前提があるからだ。ダンテの「神曲」においては、自死した者は、当然地獄行きで、それも第7圏の第2円に落とされる。かなり下層である。「神曲」はフィクションではあるが、およそカトリックの世界観はつかめる。イスラム教世界でも、自死は地獄に通ずるとクルアーンにある。なお復古主義の過激派が自爆テロに及んだとして、ジハードならば天国行き、民間人を巻き込むと地獄行きらしい。

仏教においては、基本的に罪悪視しない。自死はすべきではないし、見過ごすことも良くない、しかしその決断が自己の誇りある決断なら認めている。悪意でも過失でも弱さでも愚かでさもない、という立場である。日本の武士の切腹という文化は、創造神による得た命という前提がないゆえに存在する。昔から、究極の修行というか、苦行で、民衆の苦悩を救うという大願のもと、即身仏になった僧侶も何人もいるし、南ベトナムの僧侶が政府の姿勢に反対して焼身自殺したのも有名である。東洋と西洋は当然ながら大きく生死観が異なる。

すこし、倫理という概念からは離れるが、法的な側面も見てみたい。日本では、自死は、民事が絡む場合を除いて、法には触れない。だが、幇助は犯罪とされている。このスタンスは、世界的に見てスタンダードのようである。自死した本人も幇助した者も違法である国もイスラム圏を中心に多いが、17カ国ほど。両者無罪の国や州もある。ドイツ、ベネルクス三国、スペイン、カナダ、コロンビア、西オーストラリア州、アメリカでは、ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州といった民主党の強いリベラルな州と、なぜか共和党の強いモンタナ州、どっちつかずのコロラド州が合法としている。

自死などしないにこしたことはないが、こういった地域によるスタンスの違いも、生命倫理という側面から見たほうが良いのではないだろうかと私などは思うのだが…。

2023年9月22日金曜日

追憶:ロスの思い出

https://blog.his-j.com/losangeles/2020/11/union-station-c3c3.html
You Tubeの「しげ旅」は、ラスベガスからロサンゼルスに入った。というわけで、今日はロスの思い出をエントリーしておこうかと思う。と、言っても私は、ロスには泊まったこともないし、観光したこともないのである。

ロサンゼルスは、私がアメリカへの、いや海外への第一歩を記した場所である。市教育委員会の研修の時、かの悪名高きノースウェスト航空でLAX(ロサンゼルス国際空港)に着いた。たしかにえげつなくサービスは悪かった。(笑)メキシコ系の女性が奇妙な英語「Here me! Here me!」と叫んでいたし、再開した恋人同士だろうか、白昼大衆の眼前でハグしてキスしている光景にも度肝を抜かれた。ロスの空港は、かなりくたびれていて華やかさはなかったのが印象的。(ちなみに、アメリカの空港は10箇所ほどか知っているけど、でかさや華やかさで圧倒されたのはデンバー空港かな。シカゴオヘア空港も、かなりでかいけど。)

タイ航空でもLAXに着いたことがある。(他は、主にユナイテッド航空なので、SFX:サンフランシスコの方が多い。)この時は、地球の歩き方に絶対だめと書かれていた地下鉄に乗ってダウンタウンにあるユニオンステーション(画像参照)に向かった。ここでニシキヘビを首に巻いた黒人青年に出会うという経験をしている。私の滑らない話の1つである。たしかに、ロスの地下鉄は治安の悪いところも走っている。だけど、今回しげ旅で視た地下鉄のクレージーさには驚いた。大音響のラジカセはともかくも、かなりラリっている人が多い。ロスの治安は、私が旅した頃よりもかなり悪化している。

ユニオンステーションで、二階建てのアムトラックに乗り換えてサンディエゴに向かったのだが、恐ろしい駅だった。サンディエゴ行きの列車が、どのホームに着くか2~3分前にならないとわからないのだ。同じくサンディエゴに向かうというオバサンと一緒にいたので、2人で走った記憶がある。(笑)

ロスは、大都会と言うより、大都市圏と言ったほうがいい。関西で言えば、西は神戸、北は京都、ダウンタウンが大阪、南は和歌山といった距離感がある。午前中は(北部の)ハリウッド、午後からは(西武の)サンタモニカなんて観光の計画を立てると移動だけで凄い時間がかかる。車があれば4車線や6車線のフリーウェイを走って可能かもしれないけれど、こんな道をスムーズに移動するのは、簡単ではない。だから私はロスには泊まる気がなかったし、観光する気も起こらなかった。サンディエゴに止まり、レンタカーを借りて、レゴランド近くに泊まり、ロス市内を避けて郊外のフリーウェイ経由で、ラスベガスに向かったのだった。…ロスは私にとって鬼門なのだ。(笑)

2023年9月21日木曜日

BRICS+の不協和音

http://blog.livedoor.jp/pacco303/archives/85082404.html
BRICSはもともと、新興経済国を語呂よく合わせたもので、グローバルサウスの代表的な色合いはあるものの確固とした共通の理念があるわけではない。これに6カ国が加盟したわけだが、どうも不協和音が耐えない。今回の国連総会では、南アとブラジルが、ウクライナの主張にある程度賛同しており、反ロシア都までは行かないものの、ロシアべったりではないことが顕になった。インドも自国開催のG20での中国との軋轢が強まっている。BRICSのうち、ロシアと中国は、ある程度協調関係にあるものの、他の3カ国は微妙なスタンスである。

親アメリカから一気にBRICSに接近したサウジは、最大のアメリカの武器輸入国であり、安全保障面からアメリカの軛からそう簡単に離脱できない。一気にロシア製や中国製の武器に転換することは不可能だからだ。今回のBRICS加盟は、現米国民主党政権への面当て的な戦略ではないかとの見方が優勢である。さらに、10月にはアルゼンチンの大統領選挙があり、それによってはアルゼンチンの早速の離脱ということも想定されている。

BRICSの国際基本通貨が、BRICSの通貨の国際的信用がないゆえに金本位制によらねばならない、したがって大量発行は不可能という苦境もあって、華々しい話題であったが尻すぼみに終わりそうな気配である。中国の金融危機もいよいよ正念場という感じだし…。

2023年9月20日水曜日

フランスの黙示録 ニジェール

https://twitter.com/S4R4C3N/status/1675434716281831424
ニジェールのクーデターが、マリやブルキナファソを巻き込んで大規模な戦闘になる恐れがあるようだ。西アフリカの元フランス植民地の国々では、西アフリカ中央銀行が発行する共通通貨セーファーフランが使われている。(ちなみにチャドからガボン、コンゴにかけては中央アフリカ諸国中央銀行発行のセーファーフラン)これらの国では、未だフランスの影響力が強い。この共通通貨はフランスの影響下にあるだけでなく、ユーロと同じで経済力の弱い国は、実質的に通貨高になり輸出であまり稼ぐことが出来ない。これらの国で未だに産業が育っていないのは、このセーファーフランのせいだという主張がある。

フランスとイギリスの植民地支配の方法は違う。イギリスは、植民地の中に協力者をつくり、育てて間接支配してきたが、フランスは直接支配中心だった。今でもフランスは、これら旧植民地との貿易で赤字にならないようにしている。

ニジェールは、ウラン産出国として有名である。原発立国であるフランスにとっては重要な国(1/4がニジェール産)である。他の国からも様々な鉱物資源がフランスに流れている。2021年にマリで軍事クーデターが起こり、フランス軍を追い出した。このサポートを行ったのがロシアのワグネルで、2022年にはブルキナファソでも同様の軍事クーデターが起こった。そして2023年7月26日のニジェールでもクーデターが起こったのである。

前政権側は、セーファーフランを使う西アフリカ経済共同体の連合軍(セネガルやギニアビサウ、コートジボワール、ペナン、トーゴ)を巻き込んで政権を奪還しようとしている。マリとブルキナファソは、ニジェールとともに対抗するかまえで、8月28日フランスのマクロン大統領は、連合軍を全面的にサポートすると姿勢を示した。反仏のクーデター・ドミノに対し、フランスとしてもそうせざるを得ないのだろうが、連合軍側の政権はフランスとズブズブの関係にあるので協力せざるを得ない。

アフリカ開発経済的に見れば、「資源の罠が、紛争の罠を生み、内陸国の罠にハマっている世界最貧国で、ロシアを巻き込んで泥沼化する」という状況である。イギリスなどはフランスの苦境をお手内拝見といった冷たい目で見ているようで、西側諸国を巻き込むことになりそうにないと言われている。

私としては、セーファーフラン使用国同士の争いなど起こってはならないと思っている。ブルキナで流れてたTVの音楽番組にはセネガルやマリ、コートジボワールなんかのバンドが出ていた。文化圏として国境を超えた共通基盤があるのだ。誰のために血を流すのか?フランスとズブズブの各国の一握りの権力者のためである。
ブルキナの首都ワガドゥグでSONYという電機店に入った時、最新のプレイステーションが売っていた。価格はおそらく一般の人々の10年分以上の収入だったと思う。誰が買うのか?買える一握りの者がいるからだ。そんな者たちのために死ぬのはやめてほしい。
…ONE PIECEの頂上戦争で叫んだ、コビーのような思いである。

2023年9月19日火曜日

追憶:夕闇のラスベガス

しげ旅というYou Tubeのチャンネルがあって、今年に入ってからは南米、中米を回ってついにアメリカに到達した。アメリカ最初の訪問地は意外にもラスベガス。しげ氏は、美食と酒を愛する人で、観光は景色主体といった、およそ私とは対極にある旅をするチャンネルなのだが、地理の勉強のために更新されると、毎回いそいそと観ている。

ラスベガスには、私も足を運んでいる。レンタカーでカリフォルニアからネヴァダへ、フーバーダム経由で走った。砂漠の道で、とんでもないルートだった。なによりガソリンスタンドが少ない。英語版のアメリカの州別の道路地図・Road Atlasが頼りだった。そしてかねてからの希望通り、夕闇が迫る頃に、ラスベガス近郊に到着した。砂漠の中に突如としてまばゆい光の塊が現出する。それがラスベガスである。大通りであるストリップをライトを付けて走った。すでに陽は落ち、有名なホテル群のライトアップが私を迎えてくれた。まあ、人工美の極致だと思う。

だが、私が泊まったのは、8だったか6だったかのモーテル。有名ホテルが所狭しと並んでいるので裏道にあり、場末感満載である。ラスベガスは、カジノで儲かるので、一流ホテルは意外に安いのだが、私は泊まるところは安ければ安いほど良い主義である。まあそんなモーテル(かなり小さな街にもあるような全米のチェーン店)にも、スロットマシンがあったのが、さすがはラスベガスである。(笑)

チェクインした後、脇目も振らず、近くのハードロックカフェ系列のハードロックホテルに向かった。(当時はラスベガスとバリ島くらいにしかなかったと思う。マレーシアのペナンにも出来たが、結局行っていない。今は全世界で10カ所くらいあるようだ。)もちろん、グッズを手に入れるためである。(ハードロックカフェ系のコレクションには金を惜しまない主義でもある。)せっかくなので、ホテル内のカジノにも寄った。ルーレットは意外に作法が難しいのはカナダで経験済みなので、$10ほどのキャッシュをチップに変えた。チップは当然ハードロック様式でコレクション扱い。結局少しだけスロットマシンをやったが、勝てるハズもなくすぐやめた。実は私はギャンブルは好きではない。昔父親のボートレース好きに母親が心労を重ねていたこともトラウマとしてあるし、何より負けた時の無駄金を使ったという「後悔」が嫌なのだ。だからパチンコで1000円以上負けたこともないし、誘われた競馬では勝ち逃げで終わっている。

そんなこんなのラスベガス1泊であった。この後、旅の目的地・アリゾナのR66のキングマン・セリグマンを目指して走ったのだった。

2023年9月18日月曜日

ダンテの神曲を読む。

https://ameblo.jp/kosmosskene-biosparodos/entry-12295914951.html
図書館で、ダンテの神曲を借りてきた。いわゆる本編(地獄編・煉獄篇)と阿刀田高の「やさしいダンテ神曲」の三冊である。天国篇は借りなかった。そもそも、ダンテの神曲を読もうと思ったのは、現在の天竜人(Dと呼ばれているので、ONE PIECEと正反対だ。笑)の多くはキリスト教徒であると思われるので、彼らは死後どのようになるのだろうかと夢想するためである。私はブディストであるので、この神曲はおろか天国や煉獄、地獄の存在を信じてはないし、このダンテの神曲はフィクションであるので、仮想の道標に過ぎないのだが…。

ダンテは、ギリシアの詩人ウェルギウスの案内で、地獄、煉獄、天国の順に訪ねていく。いきなり本編はキツイ。阿刀田高も借りておいてよかった。(笑)キリスト教の地獄は、ブディストから見て、かなり異文化である。地獄の最初リンポには、何も悪いことはしていないのだが、洗礼を受けていない、キリスト教成立以前の人々がため息をついている場所のようだ。ウェルギウスもここの住人である。アダムもアベルもノア、モーセ、アブラハム、ダヴィデ、ヤコブなどは、そもそもここにいたが、偉大なお方(イエス=キリスト)が現れて救い出したらしい。なるほど…。カインはアベルを殺したので救ってもらえていないのか…。(カインは近親の殺人を犯したので最下層にいる。)ホメロスやソクラテス、プラトン、アリストテレスやキケロなどもここの住人らしい。異教徒に対するスタンスは強烈である。

第2層は、愛欲にふけった者がたどりつく場所で、クレオパトラやスパルタの王妃ヘレネなどがいる。第3層は暴食の罪を犯した者、第4層は金を溜め込んだ者と費い過ぎた者と続いている。第5層は怒り狂った者。実は、この辺から、読んでいて退屈してきた。フィレンツェ出身で政争にまきもれたダンテの知人がやたら登場してくる。なんだか、地獄にいることになっている政争相手にウサをはらしているような感じなのだ。これは最後まで続く。読んでいてかなり疲れるのである。

第6層は異端の者、第7層は暴力を用いた者で他人に対してが第1円に自分に対してが第2円に神と自然に対してが第3円となっている。第8層は、欺瞞の罪を働いた者で、驚いたのはムハンマドが登場してきたことだ。この部分は十分イスラム教に対する冒涜に値すると思われるし、ブディストである私としても、詳しく書きたくない。極めてカトリック的な部分で、時代を考えてみると当然かも知れないが…。ちなみに、その下がまだあって、第9層は裏切りを働いた者で、第1円が肉親を裏切った者、第2円が祖国を裏切った者、第3円が客人を裏切った者、第4円が恩人を裏切った者となっている。

で、現在の天竜人たちは、どこに行くのだろうか。それぞれ罪状は違うだろう。自分の所有する島でどんでもない犯罪を繰り返し犯したDは第2層では決してすまないだろう。軽くても第7層。息子が次々と捕まってるDは、間違いなく第9層の第2円ですな。パンデミックの脚本家や演出家は第8層以下は間違いなし。書き出したらきりがないのだが、Dの面々こそ是非ダンテの神曲を読み直して欲しいところだ。悔い改めよ。天竜人というところか…。

ところで、ONE PIECEのインペルダウンの監獄は、まちがいなく神曲・地獄編をモデルにしている。神曲には、ニューカマーランドなんかは出てこないけれど。(笑)

2023年9月17日日曜日

イギリスの黙示録

https://sustainablejapan.jp/2019/02/18/hornsea-one/37401
アメリカも中国もおかしいが、イギリスもおかしい。イギリスの電力事情は、クリーンエネルギー(特に風力発電)の依存度が大きく、不安定であることはよく知られている。環境問題への配慮であるのだが、自動車の脱石油化とEV化を法令で推し進めている。

ちなみに、四国にいる時、風力発電は身近な存在だったが、デメリットについても、地元の方から様々な声を聞いた。思っているほど経済効率は良くないし、住民の評判はよくない。

ロンドンなどでは、EV以外の車が入る場合、料金が必要な地域があり、これを全市域に拡大するという施策が先日延期された。理由は市長選挙が近いからだそうで、環境重視派は今更なんだと怒っているそうだ。

たしかに環境問題は重要だとは思うが、経済を無視した施策であると私は思う。このEV以外は料金を取るというシステム、その地域に住んでいたらたまったものではない。毎日料金を払わねばならないし、EVに買い替える資金がなければさらに悲惨だ。トラックなどのディーゼル車もコストがかかり、流通面からもコスト・プッシュ・インフレが起こる。そもそも、EVは電力で走行するが、その電力事情も悪い。ガソリン車がなくなり、EVばかりになったらなったで、電力事情はは破綻するだろう。こんなことは中学生レベルでもシミュレーションできる話だ。

イギリスは、今やかなり国力も落ちている。そういうかつての大英帝国的リーダーとしてのプライドのみで、環境問題に突っ走っているわけで、先日読んだカルト的な匂いさえしてくる。このままいくと、イギリスは環境問題で破綻しかねないと思うのだが‥。

2023年9月16日土曜日

中国の黙示録2 内モンゴル

https://plaza.rakuten.co.jp/ezorisuhokkaido/diary/202309100001/
内モンゴル自治区の石炭露天掘り鉱山から、莫大な放射能が漏れているという話がSNS上で話題になっている。またもや、中国共産党は隠蔽しているようだが、国家主席は現場に近い北京から逃げ出しているようでホント最低である。各国の大使館員の避難が行われているという情報もある。コロナの発生を隠蔽し、全世界に蔓延させた中国はさらに信用を失うことは必定。日本にも偏西風で飛来する可能性もある。

当然ながら隠蔽されているので詳細は不明。黄海で中国海軍の原潜が爆発したという情報もあり、フクシマ原発の放水への批判は、まるで漫画のような伏線になっている感がある。易姓革命は近いのかもしれない。

日本列島が、ひよっこりひょうたん島のように移動できればと、これまた漫画のような希望を抱いているのは私だけではあるまい。全くいい加減にしてほしいものだ。読者の皆さん、雨が降ったら、”黒い雨”の可能性もありうるので注意されたし。

2023年9月15日金曜日

岡田阪神18年ぶりの優勝

https://www.sankei.com/article/20230914-E43BZ4EUFBNMLGTVNGOSTHZBL4/
私は、虎キチではないが、関西人なので阪神ファンの端くれである。大阪市立の桜宮高校出身の矢野監督に大いに期待していたのだが、今春から岡田監督になった。実は岡田監督は私と同学年である。高校1年生の時、TVで甲子園を視ていたら、大阪代表の北陽高校(現・関大北陽高)のライトに1年生が出ていて驚いたものだ。当時は1年生がレギュラーで出ているなのどというのは、極めて稀であったのでよく覚えている。それが岡田監督である。それ以後はあまり知らなかったのだが、早稲田大を経て阪神に入り、掛布・バーストと共にクリーンナップを努め、伝説の巨人戦での3連発でも有名だ。

今年就任したばかりで、早速優勝。出来杉君だが、やはり名将なのだろう。18年ぶり。今回も道頓堀に飛びこんだ虎キチがいたらしい。(笑)学園の職員室で、朝、T先生やW先生と優勝の話題で盛り上がった。やはり関西人なので阪神ファンであった。(関西人の中にも巨人ファンも存在することも事実だ。)甲子園で、それも巨人戦で優勝胴上げ。実にあっぱれである。

2023年9月14日木曜日

魔女とカルトのドイツ史

「魔女とカルトのドイツ史」(浜本隆志著/講談社現代新書)を読んでいる。著者の分析によると、ナチスは20世紀最大のカルト集団であるという。その背景をドイツ史のカルト事件を追うことによって明らかにしようとする本である。倫理では、フランクフルト学派やアーレントが哲学的・心理学的に明らかにしようとしているが、まさに違うベクトルからのアプローチである。今日1日の通勤時に60%ほど読んだ時点での書評&備忘録であるが…。

中世からドイツには、奇妙な集団による集団妄想症候群とも言うべき行動が頻発している。1284年のハーメルンの笛吹き男伝説=130人の子供の失踪事件、子供十字軍、異端審問、舞踏病、(ペスト流行時の)鞭打ち苦行、死の舞踏への熱狂などは、規模はともかく典型的なカルトの特徴を持っている。14世紀のペスト蔓延時のユダヤ人大量虐殺、16-17世紀の魔女狩り(最も少なく見積もって2万人)では、ドイツが最も群を抜いている。

これらの極めて特異な現象は、一見すると個別に発生しているように見えるが、解明の手がかりとして、ベートーヴェン、ヴァーグナー、ニーチェなどの音楽や哲学に典型的に認められる。悪魔的・超自然的(デモーニッシュ)なドイツ的内面性や非合理主義に注目してみると、ゲルマンの基層文化にさかのぼり、北方の厳しい自然風土が生み出した荒々しいゲルマンの神々とつながる。他方、ドイツ人は生真面目な国民性を持ち、法的規範をきちんと遵守するし、また合理的・論理的思考に基づいて行動する。この対象的な二極性が内在している。ドイツ精神史では、この二極性は特徴的で、近現代の思想史・文学史に限定しても、唯物論と観念論、合理主義と非合理主義、啓蒙主義とシュtゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)、リアリズムとロマン主義、自然主義と反自然主義などの対立する極が相互に現れるという得意な現象が見られる。

これは拡大すれば、北方民族であるドイツ人の内省的性格と、明るい南欧のラテン文化へのあこがれという相対立する局面であり、ドイツ精神史は、二極性の矛盾と葛藤を常にはらみながら思弁を重ねてきた。このバランスが崩れた時、例えば天候不順、飢餓、戦争、ペスト、宗教的政治的対立などに直面した時、パニック現象が発生して、それが集団妄想やカルトの発生に密接に関わることになる、というわけだ。

…なるほど面白い論説だと私は思っている。道具的理性や大衆の心をつかもうとするプロパガンダという視点を超えた、もっと深みを感じる論説である。

BRICS通貨とアルゼンチン

https://twitter.com/new_hayonero/status/1231217653613617152/photo/1
BRICSプラスのドルに代わる国際通貨については、金本位になるようだ。BRICS各国の通貨の信用では国際通貨足りえないようで、結局金本位で発行するしかないということらしい。金本位制ということになれば、保有する金を超えて通貨を発行する事はできないので、はっきり言って大した通貨量にはならないだろう。BRICSの国際通貨発行は、事実上無理があると言わざるを得ない。ただ、世界的なドル決済は崩れ、ドルの威信は少なからず低下したことは間違いない。

さて、BRICSプラスに参加したアルゼンチンの動向が怪しくなってきている。このBRICS加盟については、ラテンアメリカが現在左派政権が多いという裏付けがある。この10月に大統領選挙があるのだが、アルゼンチンのインフレは凄まじく、政策金利をさらに上げているがどうしようもない状況で、ペソは暴落し続けている。こういう状況下、親米派の候補が、予備選挙で1位になった。本選挙はまだだが、ジンバブエのようにペソを捨て米ドルを導入するといった思い切った政策を打ち出している。まさにBRICSに加盟した直後に、アルゼンチンが離脱ということになれば、大騒ぎである。ただし、政治的には大事件だが、経済的にはあまり影響はなさそうだが…。まさに混迷深まる世界情勢。モロッコの地震やリビアの洪水被害も気になるところである。

ところで今日は学園の体育大会。3年生の仮装を中心に見に行ってきた。前述のヒジャブも渡せたし、今回はマレーシアの地味な衣装で私もちょっと仮装。(笑)2度目なので、写真を撮る機会がわかり、たくさん生徒の写真を撮ってきた。また何人か保護者のご挨拶も受けた。実に恐縮である。3年生は一切のイベントが無くなり、明日以後、受験のみの日々になる。がんばれー。

2023年9月13日水曜日

ポポーを久しぶりに食す。

https://foodslink.jp/syokuzaih
yakka/syun/fruit/pawpaw.htm
愛媛の大洲市が名産のポポー。あまり日持ちしないので関西では食べられないと思っていた。今日、妻と八幡市にある「旬の駅」に柿を買いに行ったら、なんとポポーが売られていた。奈良県産らしい。久しぶりに食べてみた。なんとなくドリアンのような食感とちょっと苦目のマンゴーのような複雑な味である。妻と語り合った結論は、「愛媛を通り越して、マレーシアを連想させる」味だった。

2023年9月12日火曜日

中国の黙示録

https://www.youtube.com/watch?v=9kSzqpcHIlU&ab_channel=%E3%80%90%E4%B8%96%E7%95%8C%E7%B5%8C%E6%B8%88%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%80%91%E3%83%A2%E3%83%8FP%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB
中国の不動産バブルが弾けて、第二のリーマンショックになるのではないか?という懸念が大きな話題になっている。外交面でBRICSをリードし存在感を高めているが、中国国内では、恒大集団を始めとした不動産セクターが、需要を無視した不動産供給を行った結果、未完成のマンションが各地に乱立している。中国では完成前に購入することが常で、購入者は銀行にローンを抱えている。不動産所有がなによりも資産と見なされてきた中国で、莫大な不良債権があからさまになってきた。ローンの利子を払えない購入者は爆発寸前である。しかも若者の失業率は20%を超えており、コロナ禍時のゼロ・コロナ政策が景気減速を演出した故である。中国共産党の天竜人には経世済民の思いなど全くない。絶対必要な治水対策などより、軍備増強に血税をを使い、新帝国主義的な一帯一路の海外でのインフラ投資に狂奔しているのが現状だと言える。…さて、その中国にも、アメリカ同様、7つのラッパが次々と吹き鳴らされている。

中国のバブル崩壊による金融危機は、基本的に国内の問題になりそうだ。中国への海外投資はかなり減っており、特に不動産バブルを予測して、海外の金融機関のドル建て債務(=社債など)は、$8000億(=120兆円/海外の中国企業の債務が中心、うち不動産関係が$2070億)あるが、海外投資家はあまり購入していない。なぜなら、たとえば今話題になっているカントリーガーデン社の格付はCCCで、リスクが高すぎるからである。日本の機関投資家の代表である国民年金を運用するGPIFは、25%を外国債券に投資しているが、こういうリスクのある債権には投資できず、していたとしても、せいぜい全体の0.5%ほどではないかといわれている。証券化商品(ローンを束ねた金融商品/リーマンショックの原因になった)も国内向け(海外投資家はさらにリスクが高いので手を出さない。)であるし、CDS(債権がデフォルトした時の保険)は、ドイツ銀行や英のHSBCなどが発行しているらしいが、それほど多くの取引がないのではないか(情報は開示されていない)とされている。なぜなら、中国の不動産セクターの債権に対して、リスクが高すぎて、CDSが高価となり、リターンが殆ど残らない。よってニーズがないし、リスク管理面から大量発行もされないというわけである。つまり、中国の金融危機は世界的なものにならないということである。ただし、中国経済の崩壊は、それなりに世界に下圧力となるのは間違いない。最も影響が大きいのは、韓国。さらに東南アジア、先進国ではドイツという予想が上がっている。…さてさて日本は、どうだろうか。

H君の来訪とヒジャブの話

昨年の体育大会:仮装の様子
東京のK大学に行ったH君が、私の空き時間を確認してまでして、来訪してくれた。いやあ、嬉しい。現在もリーダー塾に関わっていて、PBTの大秀才で、I大学4回生のマレー人のA君とも毎日のようにあっているのだという。充実した学生生活を送っているとのこと。また私の倫理の授業が役立っているとのこと。こう言ってもらえると実に嬉しい、教師冥利である。

ところで学園は、体育大会間近である。3年生はクラスごとに仮装(これは個人単位)をしてダンスを披露する伝統である。3年制の理系のD君が、昼休みに来て、ヒジャブはありませんか?と聞かれた。マレーシアでは、モスクによく行ったので、妻が自分専用のヒジャブを購入していた。モスクに入るのに、非イスラム教徒は頭からかぶるベールを借りたりして、髪の毛や手足の露出をしてはいけないので、女性は大変なのだ。(笑)なんでも、仮装のために女性の服装とヒジャブも注文し、ヒジャブ以外は到着したらしいのだが、肝心のヒジャブがまだなのだと言う。妻にその場で連絡したら、あるということなので、当日渡すことになった。D君は理系ながら、一神教に興味を持っている生徒で、いろいろなことを質問に来る生徒だ。授業は教えていないのだが、こういう繋がりも大事にしたい。

2023年9月10日日曜日

現実世界とかぶる ONE PIECE

https://toolboxes5757.com/expected-gorosei-ability/
ONE PIECE を見ていて、現実世界とかぶるような気がしてならない。もちろん海賊などいないし、悪魔の実もないのだけれど、世界政府=天竜人の支配構造というのは現実にも存在しているような気がする。これは都市伝説ではなくて、一般の人々のことなど気にかけない権力者の存在をたしかに感じるからだ。

ONE PIECE の世界政府(=天竜人)は自己の支配を続けるために、情報を隠そうとしている。(ちなみに、ONE PIECEの新聞社主は、モルガンという名前で、もしアイロニーなら最高傑作だ。)歴史的不都合な情報を隠すためには手段を選ばない。明日は、9.11だけれど、この大事件も”天竜人”が画策したものではないかという疑念が以前からある。あのワールドトレードセンターの崩れ方、何故か周囲のビルも垂直に崩れ落ちたり、ペンタゴンへの航空機のツッコミもどうも怪しい。大昔の月面着陸さえ、どこかで作られた映像という話もある。先日、社会科残酷物語というエントリーで、嘘を本当のように語らされている、という疑念について述べたが、今の世界は、天竜人の意図する人口削減、管理社会という方向にズルズルと動かされているような気持ち悪さがあるのである。全ては書かないが、これ以外にもいくつもある。支配されているという感覚…。日本にいる私達は、ONE PICE の世界の奴隷的支配とまでは行かないが、いよいよ…。

2023年9月8日金曜日

L君のサクラサク

D大4回生に在学しているPBTの教え子、L君が今日、K大学の大学院に合格したという連絡を受けた。いやあ、嬉しい。F40の私のクラスのエースの一人ながら、唯一浪人することになった教え子である。その後D大の入試対策をして合格したものの、コロナ禍で来日が果たせないいまま、3回生になってやっと来日できた。彼の日本語能力は、この5年間でさらに伸びた。もともとPBTでもトップクラスだったが、卒論の計画書などを見せてもらったが、実に大したものであった。下宿はそのままで、あと2年は京都で過ごせることも嬉しい。いずれ、マレーシアの大学で学究となると信じている。

海賊といえば ONE PIECE 2

https://ja.wikipedia.org/wiki/ONE_PIECE%E3%81%AE%E5%9C%B0%E7%90%86
あまり詳しくないけれど、ONE PIECE 全体の考察を試みていきたい。ONE PIECE の世界観についてである。まずは地理的な世界観だが、レッドラインと呼ばれる大陸がこの世界(惑星)を南北に一周するように存在する。赤道付近には、グランドライン(後半は新世界)と呼ばれる海域が東西に一周して存在しており、その南北にグランドラインに入ることを阻む、凪の海(風が吹かず、巨大な海中生物が襲ってくる)がある。このレッドライン大陸とグランドライン+凪の海に区切られた海域が、それぞれイーストブルー、ウェストブルー、ノースブルー、サウスブルーと呼ばれる4つの海域である。なお、レッドラインに、リバースマウンテン運河があり、ここからグランドラインに入れる。この地理的な構想もまた興味深い。

歴史的な構想も、最終章に差し掛かり、ほぼ全体像が見えてきている。以前月に住んでいただろう、ある王国が、この世界にやってきて高度な文明を形成していたが、空白の100年にネイティヴの20の王国がこれを覆し、世界政府を形成。この社会構造が今も続いている。この20の王国の子孫が天竜人となり、一般の人々を奴隷的に支配している。海軍(わざわざマリーン=海兵隊と呼ばれているのが不思議だ。)という組織は、この社会の治安を維持する暴力装置である。この世界からはみ出した存在が海賊であり、革命軍である。実際、天竜人であることをやめた王族もいれば、そこに住みたくないとした王族もいるし、そもそも世界政府に参加していない王国(ワノ国など)、参加を認められない王国(魚人族)、海賊が支配している王国もある。この社会構造は、極めて政治優先(天竜人の支配の継続)の経済の発展を無視したものである、といえる。

主人公は、海賊王になるという志をもつルフィーだが、彼の海賊という立場は、略奪を行う犯罪者というイメージではない。少なくとも私は、ルフィーと麦わらの一味が略奪を働いているシーンを知らない。世界政府に属さず、自由に生きようと思えば、海賊か革命軍に属することになる社会のようだ。もちろん、海賊の中には犯罪を起こすことを常とする者もいるだろうが、麦わらの一味にそういう影がない。反対に不幸に沈んでいる島を訪れては、様々な問題を解決する正義の味方的存在になっている。

このまま物語が進めば、ルフィ達が、おそらく奴隷的支配を行う世界政府をひっくり返すというのが大筋で、いわば革命譚になるに違いない。ただし、様々な要素が絡み合っている。それは、まず「強さ」という問題である。ものすごい数の登場人物がいて、悪魔の実を食べた者の能力(ジョジョの奇妙な冒険のスダンドをさらに複雑にしたような能力)、覇気(覇王色・武装色・見聞色)といった各個人の非悪魔の実的能力と、さらに各個人の戦いの方法が組み合わされている。もちろん修業によってこの強さは変化する。海賊内には、四皇、今は無くなったが王下七武海といった格が存在し、これらは賞金額でその強さが数値化されている。ちなみに、海軍では、階級(大将・中将など)が強さを示している。海賊側の賞金額もあって同じく数値化されている。ドラゴンボールの(スカウターで判明する)戦闘力のようなものだ。

あまりに、複雑で膨大な人物が登場するので、覚えるのが大変。まさにロシア文学。(笑)しかも、前述したような伏線があり、読者を引き込んでいく。たしかに、コミックという枠組みを超えた存在だ。

2023年9月7日木曜日

海賊といえば ONE PIECE 1

https://www.suruga-ya.jp/product/detail/860013111
このところ、女王陛下の海賊のエントリーが続いた。海賊といえば、少年ジャンプに連載され、いよいよ最終章に入った”ONE PIECE”である。昭和の人間である私などは、少年漫画雑誌といえば、サンデーやマガジンで、ジャンプは小5のころに創刊された新参者で、永井豪のハレンチ学園のイメージが強い。しかし、友情・努力・勝利というキーワードで数々の名作漫画を送り出してきた。”ONE PIECE”もまた、そのキーワードそのものの大長編の名作である。

私自身は、ジャンプも買わないし、単行本も買わない。マレーシアにいくまでは日曜日朝のアニメ放送を見ていただけで、今から振り返ると、シャボンディ諸島編で一味が各地に飛ばされ離散した頃から、ハンコックの島、インペルダウン、頂上戦争、魚人島、パンクハザード、ドレスローザ、傘下に大船団が出来たところぐらいまで視た。以後は全く視ていないのだが、You Tubeなどで断片的にアニメ画像を視たり、様々な考察をしているチャンネルがあったりして、間接的に楽しんでいる状態である。

これらのYou Tubeを視ていて、作者の尾田氏は、台詞やら作画、さらに扉絵やら、単行本での質問コーナーやらで、様々な「謎」と「伏線」を張り巡らしていることがわかった。”ONE PIECE”の考察YouTuberは、この単行本が100冊をゆうに超えている長い物語の、興味ある謎について、以前の内容を読み返しながら、様々な伏線を発見、それをかなり論理的に、言語表現まで細かく「分析哲学」的に考察している。かなりマニアックである。もちろん、各YouTuberの考察はそれそれ違うのだが、実に面白い。

主人公のルフィは、祖父ガープが海軍中将(実力は大将以上だが、天竜人の直属となるのがが嫌で中将に℃止まっている)、父親ドラゴンが革命軍の司令官という設定。幼少期に義兄弟の契りを結んだ、長兄エースは、ワンピースを見つけた大海賊ロジャーの息子で、白ひげ海賊団の二番隊隊長(前任者は、元ロジャー海賊団、ワノ国のおでんだったらしい。)だが、頂上戦争でルフィの目前で故人となってしまった。エースは左腕にタトゥーをASCEと入れていおり、Sにはバツがついている。私はスペルの間違いを訂正したと思っていたが、実は「Sにバツ」は、次兄のサボの海賊旗のシンボル(実際には小さなボートにあるホント細かい描写にすぎない。)だったのだ。サボは、天竜人にボートに砲撃され殺された。エースは常にサボとともに生きていたのだ。(画像参照)しかしこのサボは、革命軍に救われ、生きていた。長らく記憶喪失だったが、頂上戦争でのエースの死を知り記憶を戻し、今はNo2の参謀総長となっている。ドレスローザで、サボは、弟ルフィーの元に現れ、エースの食べていた悪魔の実を手に入れ、その能力を手に入れる。このタトゥーの件も「伏線」から導かれた考察である。

この”ONE PIECE”、実に壮大な物語であり、様々な伏線があって面白い。登場人物や島の名前にも、出自にも、これでもかと張り巡らされた謎と伏線があって、罪と罰の主人公・ラスコーリニコフ(分離派の信徒を意味する)の名前の伏線など比肩できない。漫画という枠組みを超えたドストエフスキー的存在だと感じる。今更ながら、こりゃあ確かにハマるなあと思った次第。

2023年9月6日水曜日

女王陛下の東インド会社

https://www.meisterdrucke.jp/fine-art-prints/William-Holland/1160534/%E3%80%8C%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%82%BA-%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC-%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%80%81%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3%E3%80%8D%E3%80%811798-%E5%B9%B4%E3%80%811947-%E5%B9%B4%E3%80%82.html

「世界史を作った海賊」(竹田いさみ/ちくま新書)の書評、最終回。商業資本隆盛の大航海時代、スパイス、砂糖、コーヒー、茶といった変遷はあるのだが、全て薬品として珍重されていた。近代医学成立以前だから当然といえば当然だが、それぞれ最初は高価故に上流階級が、その後安価になると一般庶民にも広がっていく。胡椒などのスパイスは、肉類保存のためと、小学校か中学校で教えられたが、完全なる嘘である。いくら安価になったとしても、そうはならなかったらしい。まあ冷静に考えれば、おかしな話ではある。

さて、女王陛下のの海賊は、私掠船や海軍、はたまた奴隷貿易でも活躍し、国富を蓄積したが、たがて東インド会社としてさらなる国富追求に活躍する。ただし、その前段階として、ヴェネツィア商人と組んだレヴァント会社という東地中海を本拠とした女王陛下の特許状をもった貿易会社が存在した。(他にもたくさんあったが、業績で言えば比肩できない。)これに対して、東インド会社の貿易独占範囲は、喜望峰を西端とし、マゼラン海峡が東端、半円を描くように日本の長崎を北端として半円状の海洋であった。インド洋、太平洋、紅海、ペルシャ湾、南シナ海、東シナ海、東南アジアのすべての海域など広範囲に及んでいる。

エリザベス1世に始まる東インド会社は270年間活動し、世界史上の様々な問題(インドと心を結ぶアヘン貿易やアメリカ独立戦争に関わる茶条例など)を起こしているが、東インド会社自体、海賊または海賊の末裔による経営であった。さもありなん、である。

モカから輸出されるコーヒー貿易が盛んになった(とはいえまだ上流階級のもので、オランダ東インド会社が後にジャワやセイロンから安価なコーヒーが入り一般化する。)頃、コーヒーハウスが生まれ、かのロイズ保険会社は、ロイズ・コーヒーハウス(画像参照)から生まれている。このロイス・コーヒーハウスでは、ビジネス環境を整えるとともに、常時5人の店員を待機(ウェイト)させていた。ここからウェイター、ウェイトレスという職業名が生まれたという。やがて、東インド会社と一体化し会員制になっていく。

アベンの密輸による清との三角貿易はあまりに有名だが、コーヒーに代わって「緑茶」が輸入された。ちょうど、名誉革命直前の頃らしい。紅茶になるのは、その後で、上流階級は「緑茶」を飲み、紅茶の一般人との差別化を図っていたらしい。紅茶全盛時代になっても、トワイニングとリプトンの階級差が生まれていくのがイギリスの流儀である。

イギリス史は、海賊の歴史でもあると言われるが、まさに近世から近代にかけて極めて重要な事実である。産業革命も、この時代の国富の蓄積がなければありえなかったわけで、改めて、この新書を読んだ意義を感じるところである。

2023年9月5日火曜日

女王陛下の奴隷貿易

https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=AB_MqmUF3q0&ab_channel=%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BCch
「世界史を作った海賊」(竹田いさみ/ちくま新書)の書評、第5回。エリザベス1世は、国民に密輸を固く禁じていたが、自身は海賊と組んで、国民の目が届かない遥か彼方の大西洋上で、西アフリカとカリブ海を結び、奴隷の密輸を推し進めた。当時の奴隷貿易は、教皇の引いたトルデシリャス条約の関係で、アフリカを占有するポルトガルが独占していた。よって、奴隷の価格は高額で取引されており、スペインは砂糖キビ栽培のため、安価で大量の奴隷を欲していた。これに目をつけたのが、イングランドの海賊である。ポルトガルの奴隷運搬船を襲い、カリブ海のスペイン植民地に密売するわけだ。まだ無敵艦隊との海戦前の話である。当時、砂糖は万能薬として珍重されていた。

ちなみに、砂糖生産を推し進めたのは、ジェノヴァの商人や金融業者で、14世紀後半にはヴェネチアとの覇権争いに破れた後、生き残りをかけてポルトガルに賭けた。ちなみに、ポルトガルとスペインをまたにかけて活躍したコロンブスはジェノヴァの出身である。ポルトガルは、ジェノヴァの支援を受けながら地中海で栽培されていたものを、モロッコ沖や西アフリカ、さらにブラジルで砂糖栽培を行い、砂糖ビジネスを独占していたが、スペインが、そこに参入。カリブ海でも栽培を始めたのである。イングランドは、その隙間を狙ったわけだ。

やがて、有名な三角貿易(リバプールから銃、火薬、金属製品、織物を西アフリカ黒人王国に販売し、物々交換で黒人奴隷を獲得、これをカリブ海のスペイン植民地に販売、さrに物々交換で砂糖、糖蜜、タバコを得て本国で高額で販売する)をすることになる。後に、イングランドは、苦労の末、ジャマイカを植民地にする。ラスタ運動(8月29日付ブログ参照)の始点は、ジャマイカである。歴史の皮肉というべきであろうか。

ところで、今日の倫理の授業、進度の関係で2クラス違う内容だった。まずアマルティア=センを教えていたら、経済学部志望の生徒から大学では開発経済学を中心課題にするつもりです、という話を聞いた。嬉しい限りである。また、もう一つのクラスで、社会哲学のマッキンタイヤーの共通善の話から、日本に来る外国人労働者の話題になった。日本人の異文化理解とともに、日本の共通善を理解ししてもらうことの重要性を話したら、商学部志望の生徒から、ゆくゆくは外交人労働者の雇用に関わりたいそうで、実に参考になったとお礼を言われた。まさに教師冥利に尽きる話である。

2023年9月4日月曜日

無敵艦隊の真実

https://www.worldfolksong.com/national-anthem/topics/spanish-armada.html
「世界史を作った海賊」(竹田いさみ/ちくま新書)の書評、第4回。スペインの無敵艦隊との戦いについて。海戦は1回だったような印象が強いが、1588年、1596年、1597年、1599年、1601年と5回あり、スペインは一度も勝利していないが、海戦そのもので大敗北したこともない。制御不能な強風という自然の猛威に翻弄され自滅したと表現するのが真実に近いと著者は記している。ちなみに、両国は1604年に平和条約を結んでようやく長い戦争に終止符を打った。前年にエリザベス1世が逝去し、国王はスコットランドの国王でもあるジェームズ1世が即位したからである。

1588年7月末(前回、前述したように、カトリック歴とプロテスタント歴は10日ほどズレがある。)ドーバー海峡を挟んだ仏・カレー沖で、す終え員の無敵艦隊とイングランド海軍(ほとんど海賊だが…)は本格的に戦火を交えた。最新式の大型帆船(ガリオン船)を中心に約130隻で編成された精鋭艦隊を送り込んできた。イングランドの方は、四方八方から寄せ集めたガラクタ帆船で、海賊がスペイン・ポルトガルから奪ったまともな帆船も海軍に編入していたとはいえ、到底太刀打ちできるとは思えなかった。イギリス海軍の勝利は騎士道精神をぶっ飛ばした卑怯な作戦(ゲリラ戦)を挑んだ。

ドーバー海峡は年間を通じて、強い風が吹く。タイミングさえつかめば風上が有利である。無敵艦隊は、海が荒れてきた故に、カレー沖で三日月型の陣形を取り、しかもその陣形を崩さないためにロープで結びつけていた。日没を待って、イングランド側は8席の中型帆船に爆薬や可燃物(バターやオイル)を満載し、乗船員が帆船に放火した後、海に飛び込み無人となった帆船が風に乗って突っ込むという作戦(=焼き討ち船/火炎攻撃)を行った。スペイン側は大混乱となり、錨を上げる間もなく、錨のロープと他船と結びつけているロープを切り、四方八方に逃げた。翌朝、体制を立て直したが、イングランド側は小回りがきく小型・中型の帆船で包囲しながら攻撃を続け、陣形が崩れた無敵艦隊の指揮系統は乱れに乱れた。カレーに避難しようにも逆風で、スコットランド方面へ向かい、さらにアイルランド沖経由で本国に帰還した。この間挫傷する帆船が続出、帰還できたのは86隻であったが、実際にイングランド海軍の餌食になったのはわずか9隻であった。非常に有名で、イギリス海軍の名を挙げた戦いではあったが、実際のところは、このような状況であったわけだ。まあ、勝てば官軍、歴史は勝者によってつくられるのが常。

2023年9月3日日曜日

女王陛下の私掠船

https://haruhina05.com/?p=9826
「世界史を作った海賊」(竹田いさみ/ちくま新書)の書評、第3回。海賊マネーでエリザベス1世時代のイングランドは、海賊の活躍によって、徐々に富を増やし、やがてスペインを凌駕することになるのだが、本日は、その女王陛下の海賊たちについて興味深いところを記していこうと思う。タイトルにある私掠船とはprivateersと呼ばれる王室が関与した海賊船のことである。ところで、海賊行為の定義は国連海洋法条約(1982)で、「公海その他いずれの国の管轄にも服さない場所において、私有の船舶または航空機の乗組員または旅客が私的目的のために行うすべての不法な暴力行為、抑留または略奪行為」とされている。…航空機の語彙が含まれているので、「天空の城ラピュタ」に出てくる飛行船のドーラー家も海賊になるのか確認するとウィキでは「空中海賊」になっている。脱線してしまった。(笑)

またかなりの蘊蓄の部類になるが、16世紀当時のヨーロッパではカトリックの暦とプロテスタントの暦が10日間ほどズレていて、事件発生日などがスペイン側とイギリス側では記述が異なっているそうだ。

女王陛下の海賊として、最も有名なのはフランシス・ドレークである。彼は、世界一周を初めて成し遂げた船長(マゼランはフィリピンで死亡している故)である。彼の研究では、およそ60万ポンド(女王はその半分を懐に入れたらしい。)をもたらしたとされる。当時の国家予算は20万ポンドであるので、その3倍の海賊マネーである。女王は、アントワープの金融業者に宮廷費の借金返済と、後に発展する海外貿易会社への出資にあてらしい。ナイトの称号も受けている。ドレークは、プリマスを本拠とする親戚のホーキンズ一族という、ヘンリー8世の時代から王室御用達の海賊に預けられ航海術をマスターした。

ドレークが主に狙ったのは、現ボリビアのポトシ→(太平洋岸の)アリカ港→パナマ港(ラマでカリブ海側へ運ぶ)→現キューバの難攻不落の要塞であったハバナ港→護送船団に守られてスペインに運ばれていた銀である。ドレークも情報戦に長けていて、警備の薄い太平洋岸で輸送船を襲った記録が残っている。もちろんカリブ海についても熟知していたようだ。

2023年9月2日土曜日

女王陛下のインテリジェンス

https://www.youtube.com/watch?v=InlEjkRuMx0&ab_channel=InternationalSpyMuseum
「世界史を作った海賊」(竹田いさみ/ちくま新書)では、エリザベス1世時の細かな史実が描かれていて、実に興味深い。昨日記したように、エリザベス1世とくれば、英国国教会と無敵艦隊撃破が思い浮かぶのだが、海賊の存在とともに、側近・フランシス・ウォールシンガムという秘書長官・枢密顧問官の役割が重きをなしている。彼は、在フランス大使であった時、ユグノーの虐殺を目の当たりにし、カトリックに対して恐怖と憎悪を持つことになったようだ。言わば、有名な英国情報部(秘密情報収集・工作活動のMI6が有名だが、暗号・暗号解読のMI1、極東から南北アメリカ、ロシア、中東などの担当のMI2、東欧・バルト三国担当のMI3、地図作成のMI4、防諜のMI5など)の元祖であるといえる。

ウォールシンガムは、国内に100人以上のスパイを配置するとともに、フランスの12箇所、ドイツに9箇所、スペインに4箇所、イタリアに4箇所、オランダに3箇所など少なくともヨーロッパに71人の腕利きのスパイを主要都市・港湾に常駐させていた。ケンブリッジの出身で、そのネットワークを使い、スペイン、フランスなどカトリック諸国の情報を集め、またプロテスタント(カルヴァン派の仏のユグノーや蘭のゴイセンなど)への支援も行っていたらしい。最初は予算などなかったが、無敵艦隊との決戦の年にはには、国家予算の15%を使用できるまでになっている。とはいえ、組織を私費で賄った時期もあり、それは女王とともに海賊への共同出資、さらには港湾の管理責任者としての利権もあり、女王との素早いコミュニケーションや各地のの素早い連絡を図るために、90頭近い馬を保有していたという。ドレイクやホーキンズら海賊も彼ら独自の情報網を持っており、彼に連携・協力した。

スペインとの戦争における最重要課題は、無敵艦隊(実はスペインだけでhなく、地中海沿岸のカトリック国からも派遣される多国籍軍)がいつ進撃してくるかであった。ウォールシンガム配下のスパイたちは、イタリアでは、ローマ法王の動きやジェノヴァの金融機関での軍資金の動きをつかみ、さらに無敵艦隊がオランダに配置されているネーデルランド総督パルマ公指揮の3万人の精鋭部隊を運んでイギリスへの上陸作戦を企んでいることもつかんでいた。

さらに、レバントの開戦(対オスマン帝国)で無敵艦隊が勝利していらい、楽観論に立ちっており、海軍提督のサンタ・クルス公が急死した後、フェリペ2世は、陸軍出身で名門貴族でのメディナ・シドニア公を司令官に据えたこともつかんでいた。10の地域からなる言葉も通じない多民族の大艦隊(130隻/兵士2万、船員8000、ガレー船を漕ぐ奴隷2000)を上手く指揮できるはずがない。実は対イギリスの戦争の主役は無敵艦隊ではなく、オランダにいる精鋭部隊であることがわかってくる。しかも上陸作戦が始まると、スコットランドのカトリック勢力が決起することもつかんでいた。イギリス側は、この精鋭部隊を上陸させないことが勝利のポイントだと見抜いていたわけだ。

…インテリジェンスの重要性は、今更言うまでもないが、このイギリスの情報戦の成功が世界史を動かしたことは間違いない。近世から近代へ。スペイン/ポルトガルから、オランダ/イギリスの時代へと、世界の覇権の分水嶺となったのである。

2023年9月1日金曜日

「世界史をつくった海賊」

「世界史をつくった海賊」(竹田いさみ/ちくま新書)を読んでいる。ずいぶんと誇張されたタイトルのようだが、羊毛と毛織物くらいしか産業がなかったヨーロッパの田舎であったイギリス(より正確にはイングランド)が、世界史に登場してくる背景には、エリザベス1世時代の海賊政策があり、当時の覇者・スペイン、ポルトガルから略奪した富で、貧乏国から這い上がるといった歴史の研究書である。

この裏には、ヘンリー8世からの宗教改革があり、カトリックとの対立もあるし、フランスとの緊張関係もある。またスコットランドとの関係もある。エリザベス1世となれば、高校の世界史では、結局英国国教会を守った女王であり、スペインとの確執を無敵艦隊撃破というカタチで勝利した女王というイメージなのだが、したたかな女王である。まだ全部読んでいないが、興味深い内容をまた書き連ねていこうかと思う。…つづく