2023年7月31日月曜日

哲学マップを読む。3

https://colorfl.net/
descartes-matome/
「哲学マップ」における哲学的思考図式Ⅰは、、プラトンであったが、新プラトン主義と相まって、神の概念と深く結びついている。西洋哲学の根っこにあるヘレニズムとヘブライズムの真価は、この普遍的な存在であるといえる。もちろん、ギリシアのロゴスもだが…。

さて、哲学的思考図式Ⅱはデカルトである。「主観」と「客観」の図式である。方法的懐疑による第1証明著者は、第2証明の神の存在証明については、はっきりとうさんくさいと書いている。ただ、第1証明後の世界では、主観が基底として存在する図式になっているがゆえに、神の存在が証明できたのだというわけだ。

ホッブズは、力学主義の立場から、スピノザは神を唯一の実体とする汎神論の立場から、パスカルは、デカルトの幾何学的精神を批判した。ライプニッツの力学主義と微積分の発見を元にモナドというダイナミックな世界観を示して批判した。彼らは、神を中心的位置においてデカルト批判をしている。しかし、ロックやバークリー、ヒュームと行ったイギリス経験論は、認識論的問題設定(自分が知覚したり、考えたりしてるとおりに諸物が存在しているとどうして言えるのか?)でデカルト批判を行っている。

この辺の議論は、実に面白いのだが、高校の倫理のキャパを超えているといっていい。それなりに私も理解はさせているつもりだが、限界はある。あまり詳しくやると生徒がみんな倫理を嫌いになってしまう。(笑)このへんの落とし所をどうするかが、がプロの倫理教師の力量であるといえる。(笑)

2023年7月30日日曜日

THE ALFEEのこと Ⅷ

https://myrock-site.com/thealfee-takamisawa-guitars/
THE ALFEEの高見沢のギターが570本もあるそうだ。文集オンラインで脳科学者に人生相談している記事があった。「断捨離」という語が2010年辺りから使われだして、ブームだとか。私は、この断捨離という言葉を坂崎が歌う”My Life Goes On”で初めて聞いて、音韻的な違和感を感じた。あまり関西では聞かない。(笑)断とは新たに手に入るモノを断る、捨とは家にある不要なモノを捨てる。離は、ものへの執着から離れることだという。まあ、とにかくも音韻的にあまり使わないだろう言葉である。

タカミーとしては、時代と逆行しているように感じているらしいが、相談者はリスの例を引いて、そのコレクションにリスペクトしている。まさにミュージアム級だと。

https://bunshun.jp/articles/-/63824

たしかに、レスポールだけも10本あるらしい。You Tubeでこの前、わんこそばのギターも見た。(笑)これは、いつかTHE ALFEEの活動が停止に追い込めれた時に、ミュージアム化するといいのではないか。ファンにとっては聖地となるだろう。タカミーの生地・蕨市でもいいし、明治学院大学でもいい。もちろん、坂崎のアコギ、桜井の衣装や、LIVEのグッズなども展示したら、きっと人気が出る。もちろん、様々なライブ映像も流して…。私個人としては、舞台装置の設計図や試作モデル、照明の計画書、トラックなどの展示なども入れてほしい。もちろん、タカミーのギターコレクションは、その中心になるだろう。

哲学マップを読む。2

https://www.la-comic-illust.top/plato_aristotle/
「哲学マップ」における哲学的思考図式Ⅰは、プラトンのイデア論である。著者によると極めて強力な思考法であり、混沌とした現実の全体を捉えようとする際どこかに変化しない永遠の本質をおく思考法は、その後の多くの哲学者にとって暗黙の前提となり、現在でもそれを踏襲する人は多い。

プラトンはイデアを現世の外にあって、万人がそれを目指しあるいは従うべき唯一の原理とした。各人の意見と無関係に存立する普遍的真理を立てることによって、人々の意見を調整していては達成できない改革を実現しようとしたといえる。これを修正したのがアリストテレスである。

アリストテレスは、「~とはなにか」という問いは、善や美といった抽象的な概念についてではなく、具体的な一つ一つの存在者について立てるべきだとした。ここから作用因や目的因、質料因、形相因という四原因説が出てくる。中世のオッカムなどは小2つがそれ自体において本質を持つとしたし、19世紀のロマン主義は各個人が自分の内的必然性に従うことで自己実現することを目指した。アリストテレス的であるわけだ。

ちなみに、アリストテレスは「自然学(ギリシア語でフィジカ)」を書いた後、抽象的な四原因説を論考した。全集の編集者は、自然学の次の巻という意味で、メタ(次の/~を超えた)フィジカと名付けた。形而上学の由来である。…つづく

2023年7月29日土曜日

哲学マップを読む。1

学園の図書館で、ちくま新書を1冊リクエストしたら、さっそく職員室の机上に置かれていた。ありがたいことである。ちくま新書482「哲学マップ」(貫成人著)である。ちょうど倫理の夏期講習で、西洋哲学のマッピングをしている時だったので、とりあえず速読してみた。

この新書は、かなりレベルが高いので、(帯に入門に!とあるけれど)高校生にはかなり難しいと思うが、なかなか面白い視点で書かれている。まず、西洋哲学史は、問いと答えのアーカイブ(収蔵庫)であるということ。著者は、「~とは何か」という哲学的思考図式Ⅰとしてプラトンを、「私は誰か、何を知りうるか」という哲学的思考図式Ⅱとしてデカルトを、「問いのⅠ✕Ⅱ」を哲学的思考図式Ⅲとしてカントを、「なぜそれを問うのか」としての哲学的思考図式Ⅳをニーチェで示し、現代哲学の初分析に入るとしている。なるほど。

少しずつ、この「哲学マップ」についてはエントリーしておこうと思う。まずは、来週の政経の夏期講習のプリント作成である。(笑)

2023年7月28日金曜日

久しぶりに眼科に行く。

https://www.doctor-map.info/dtl/10000000000000091450/
学年末の疲れがいまだに残っているのか、体調は冴えない。特にこのところ目がおかしい。どうも雑菌が入ったようである。人間、疲労がたまると、抵抗力が低くなり、弱いところからやられるらしい。先日も、倫理の資料集の細かい文字がかすんで読めなくなり困った。

普段は、ロート製薬の目を洗う薬を使っているのだが、それでは追いつかなくなったので、妻に言われて久しぶりに眼科に行ってきた。白内障の心配もあるので、余計なことは言われたくなかったのだが、空いていて、あっさりと抗菌目薬をくれて終わった。

まあ、1日中PCを見ているし、本を読んだりと目を休める機会は極めて短時間であるのも問題だと思うのだが、これだけ目がしょぼつくと、かなりヤバく感じる。齢かなあ。

大谷君の異常な活躍

https://news.biglobe.ne.jp/sports/07
28/abt_230728_9365157790.html
来週の政経の夏期講習に向けて、今日はじっくりと休息をとっている。と、大谷翔平選手が、デトロイトタイガーズとのダブルヘッターの第一試合に先発、1安打の完封試合をやってのけた。さらに第2試合では、2打席連続のホームランだと…。凄いというには、あまりに語彙力がなさすぎる。2本目は塁上を回りながら脇腹を押さえていたので、無茶心配したが、その後ケーキを平らげたらしい。

ストイックな食事で知られているが、たまに大好きなスィーツを食べたところが可笑しい。一方で大騒ぎしていた8月1日のトレード期限だが、結局エンゼルスはトレードを拒否したらしい。私などは、同じリーグならレンタル的なトレードもありだと思っていたのだが、エンゼルスは、現在の大谷効果による収益を捨てれなかったということか。

ほんと、世界的にも嫌な話ばかりだが、大谷物語はエンゼルスの地で続いていくことになった。アメリカ的なプラグマティックな金銭的効率性ゆえの話かもしれないが、大谷翔平という侍には似つかわしくはない。これで良かったのだろう。トラウトが復帰して、ワースドシリーズ優勝などという奇跡を起こす夢を持続させてくれるのも悪くないと思う、

2023年7月27日木曜日

JR お詫び=¥0


というわけで、夏期講習を終えて職員室に戻ると、秋田商業高校が2対0とリードしていた。嬉々として帰路に着いたのだが、またまたJRが神戸線や京都線でなにやらトラブルを抱えており、嫌な予感がした。その予想は当たり、尼崎駅でいつもは乗り換え可能な快速に乗れずじまいだった。1分ほど信号待ちをしていたからである。あーあ。結局10分遅れてきた次の普通電車に乗ったのだが、京橋を過ぎ、あと少しというところで完全停止した。学研都市線でもトラブルがあったようで、全線ストップ。結局1時間くらい止まっていた。3時過ぎに出て、6時すぎに最寄り駅についたのだった。

閉口したのは、車掌氏のアナウンスである。何度も何度もボリュームを上げて、ほとんど意味のない状況説明とお詫びを流している。危機に際しアドレナリンが増えているのはわかるけれど、お詫びされればされるほど、胡散臭い。お詫び=¥0より、私鉄との代替運転もできない期間だしなんらかの保証が欲しくなる。まあ、なによりもうるさい。若者言葉で言えばウザい。

ほんとJR、抜本的な改革をしろよと言いたくなる。上が無能だからか、下が無意味な頑張りを見せるので余計不愉快なのだ。たまたま、運行状況を見たら、上図の通り。無茶苦茶である。

秋田商業高校も結局逆転負けを喫してしまった。ほんと、あーあである。O先生、選手諸君ご苦労さま、またかならず甲子園に来てください。

オリエンタリズムからの視点

https://boss.wonder-mix.com/archives/2011/03/post-1414.html
倫理の夏期講習最終日、サイードのオリエンタリズムを講じてから、ガンジー、シュヴァイツァー、キング牧師、マザーテレサといったヒューマニズムに分類される人々の話をしていた。

ガンジーはノミネートされてイたのだが、結局ノーベル平和賞を受賞していいないが、他は全員受賞者である。シュヴァイツァー、キング牧師、マザーテレサは全員が聖職者であり、シュヴァイツァーなどは、西洋世界からアフリカに身をおいた、マザーテレサは、マケドニアのアルメニア人でありながらカトリック教徒で、コルカタで献身したということになっている。両者とも見事に、サイードから見ると、西洋の広告塔である。かくいうサイードもパレスチア人のキリスト教徒であったりする。最初にサイードを講じたのは大正解のような気がする。

実際にイスラエルに行かないと、パレスチナ人のキリスト教徒の存在がわからない。また南アやアフリカを旅しないと、白人ーインド人ー黒人といった経済的ヒエラルキーに気づかないし、”カラード”という存在にも気づかない。(ガンジーの話の前半は、こういうアフリカの事情について説明した。)公民権運動も意外に誤解されている。単なる人種差別撤廃運動ではない、民主主義の根幹にかかわる話なのだ。当然ながらアメリカでの黒人差別を見聞きした経験も語った。

〆として、ノーベル平和賞受賞者の中から、教科書や資料集にはないマンデラについても話した。私の感覚だが、マザーテレサのような批判のある人物よりもマンデラの方が倫理の教科書にはふさわしいと思うのだ。アパルトヘイトもかなり誤解されているところがあって、今回はきっちりと整理して話したつもりである。

2023年7月26日水曜日

井上尚弥フルトン戦勝利

https://hochi.news/articles/20230725-OHT1T51114.html
井上尚弥選手が、予想通りフルトンを8回TKOで倒して、チャンピオンになった。私はボクシングには詳しくないが、大方の予想どおり、スピードとパンチ力で勝る”モンスター”の勝利だったわけだ。

井上サイドにしても、クレバーな戦いだったという。パンチ力のない判定狙いのフルトンをうまく導いて、一瞬のすきを逃さずにTKO。凄いな。今年中にも2団体をさらに統一できるのではないかという話である。

ほんと、日本の明るい話題は、井上尚弥と大谷翔平のみ。

2023年7月25日火曜日

秋田商業高校決勝進出

https://akisho.ed.jp/5498/
学園野球部が兵庫大会でベスト16で敗退し、大阪でもH高校も惜しくも敗退した。私が応援している高校で残っているのは、秋田商業高校だけになった。久々の決勝(27日13:00)に進出だ。監督は、ヤクルトの石川と高校大学とバッテリーを組んでいた旧知のO先生がまだ頑張っておられることを確認した。

甲子園に出たら応援に行くというO先生との約束はまだ生きている。ぜひとも頑張って欲しい。今年は、特に秋田は豪雨で大変だった。”がんばろう秋田”の思いも込めて、是非古豪の活躍を見たいものだ。残念ながら、試合の同時刻に夏期講習が入っているので、LIVEで応援はできないが、”私を甲子園に連れてって”という思いである。

ようこそ心理学部へ(同大編)

 「謎解き 聖書物語」と共に、「ようこそ、心理学部へ」(同志社大学心理学部編/ちくまプリマー新書397)は、学園の図書館から借りたもう1冊である。読み終えたのはだいぶ前だが、エントリーしておきたい。

昔から女子生徒を中心に「心理学」を志望する生徒は多い。正直なところ、入るのに難しく、出てから厳しい、という印象が強いので、毎回反対する。(笑)この本は、まさしく心理学とはどういう学問かを紹介してくれている稀有な本である。

認知心理学、臨床心理学、感情心理学、犯罪心理学、生理心理学、行動分析学などが、講義形式で紹介されており、心理学を志望する高校生には是非一読させたい本である。

2023年7月24日月曜日

謎解き 聖書物語 2

http://www.revive.co.jp/magokoro/scrap_and_build/history-babel-exsits/
このところ、ブログの更新が滞っていた。酷い体調不良が原因である。この間、学園の野球部は残念ながらベスト16で敗退した。最後の最後まで食らいついていたのだが、高校野球は紙一重の差で勝敗が左右される。文武両道の学園生は一気に切り替えて受験戦争に参戦していく。青春は残酷であり、また夢を追いかけるサバイバルゲームでもある。今日から私の倫理の夏期講習も始まり、長距離通勤も再開である。いつまでも体調不良だと弱音を吐いてもいられない。

さて、久しぶりに「謎解き 聖書物語」の書評を再開したい。今日は、イヴの話から。アダムが土なら、イヴはヘブライ語では、「ハヴァー」で意味は「命」だそうだ。ところで、このアダムトイヴの話に矛盾があるのは周知の通り。神(エローヒーム)を主語にしている部分とヤハウェが主語になっている部分があり、どうやら2つあった伝承を融合させないままにしているようだ。

これは、ノアの箱舟も同様。以前エントリーしたことがあるJ資料(ヤハウェが主語になっており、神が人間のように性格を持つ存在として描かれている。)とP資料(Pは祭儀を意味し、系図や細かな年代、儀式へのこだわりが特徴)が併存している。ちなみに、ユリウス・ヴェルハウゼンという独の研究者によれは、創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記はJ資料、P資料と、あと2つ別の資料が使われているとしている。ちなみに、この洪水の物語は、古代西アジアの『アトラ・ハシース』『ギルガメッシュ叙事詩』などにも見られることもよく知られている。

バベルの塔のバベルは、ヘブライ語の「バラル」(混乱させたの意味)のダジャレらしい。言うまでもなく、言語を混乱させたところから来ている。また、新バビロニア時代にマルドゥクと呼ばれる神の神殿があり、ジックラトという90mを超えるレンガ造りの建物があったらしい。これがモデルかもしれない。

2023年7月20日木曜日

謎解き 聖書物語

先週、職員室で、学園図書館の司書の方が、ちくま新書・ちくまプリマー新書の解説目録を配っておられた。学園の図書館はかなり充実しているし、さらに教職員からのリクエストで蔵書を増やそうと考えておられるらしい。帰路この目録を一読して、興味を引かれた本にチェックを入れておいた。もちろん、私のことだから、ほとんどが哲学宗教学にまつわるものである。(笑)次の日、図書館に出向いて司書の方と話したら、プリマー新書(プリマー=入門書)のほうは、全巻蔵書に入れられたそうだ。ということは、すぐに読めるということなので、さっそく2冊見つけ出した。今回のエントリーは、そのうちの1冊「謎解き 聖書物語」(長谷川修一/ちくまプリマー新書313)についてである。読み終えたのはだいぶ前なのだが、体調不良でエントリーできなかった次第。

まずは、本書の全体像についての感想である。聖書は文字通り聖なる書であり信仰の対象であるが、本書では、歴史的な経過を踏まえながら、その成り立ちを地域的な伝承等とも比較しながら、あくまでも「物語」として論じている。記紀のような感覚といっていい。もちろん、著者はハイデルベルグ大学、テルアビブ大学の進学部博士課程に学び、旧約聖書学、オリエント史、西アジア考古学などの専門家である。

第1章はアダムとイブの話である。アダムの名の由来は、土で、アーダーマーであるそうだ。そもそも神は土から人間を作ったわけで、アーダーマーが、アーダーム(人)となった。このアーダームは、定冠詞がつくので一般名詞であるらしい。アダムと訳されているが、固有名詞のアダムではなく、人と訳すのが正しいとのこと。

西アジアの古代の文学作品においても、神々が人間を作る描写がある。その目的は明確で、神々の苦しい労働を代わりに行うためと、はっきりと書かれている。聖書の創世記においては、「うめよ、ふえよ、地に満ちて、これをしたがわせよ」と書かれており、地上で数を増やし、大地をしたがわせることが、人間を作った目的が違う。この大地をしたがわせるとは、灌漑などによる「支配」と捉えることが容易だが、エデンの園の追放時には、土につかえさせたという記述が見られ「世話をする」と捉えることもできる。すでに矛盾があるわけだが、古代メソポタミアにおいてすでに自然破壊(塩害)が起こっていたことと結びつくっそうだ。

2023年7月19日水曜日

学園野球部ベスト16進出

ヴァーチャルの実況で、本日も学園の野球部を応援していた。最初、2点を取られてヤバイ雰囲気だったのだけれど、1点返した後、また1点追加されて、さらにヤバイと感じていた。6回表、クりーンナップの3連続長打で2点返して同点、スクイズでついに逆転。8回表は、またもツーアウトから、満塁にしてうえで、走者一掃の3点追加。その後もピンチを凌ぎきり見事な逆転勝利を見せてくれた。

いやあ、さすが古豪である。私の体調不良も少しずつ良くなってきた。彼らの元気をもらっているおかげかと思う。

2023年7月18日火曜日

夏期講習に備える。

https://management-accounting.biz/history-of-western-philosophy/
あの熱中症(?)以来、とんでもなく体調が悪い。妻がいろいろと配慮してくれてだいぶマシになったのだが、昨夜はまた何度も両足がつって大変だった。さすがに、熱はないのだが、張り詰めていたものがプツンと切れて一気に崩れた感じだ。と、いうのも今週は、マレーシアで言うスクールホリデーのような状況で、来週から始まる倫理と政経の夏期講習までは自宅待機である。というわけで、頭の中は倫理の講習内容のことばかり。

今年度は、ほんと長い教師生活で最強の倫理の授業ができたと自負している。超難関校を目指している生徒もたくさんいて、ハードルもかなり上げたが、よくついてきてくれた。とはいえ、まだ教えなければならない西洋哲学者も残っている。2学期からは、演習的にと思っていたが、まずはそこをフォローするつもり。具体的には、プラグマティズム(これは最後の授業ですでにアメリカ学を交えて教えた。)、ロールズ、マッキンタイア、サンデル、そしてローティといったアメリカの政治哲学。さらに超難解な現象学のフッサールを避けることは出来ない。レヴィナスに繋げ、アーレントに繋げなければならない。なんだかこの2人は今、高校教科書で注目されているようで外せない。そしてセンもはずせない。

夏期講習では、これらの哲学者以外の思想を解説する予定。系統的に孤立しているベルグソン、科学哲学のクーン、ポパーなどとともに、ピーター・シンガー、ザイードなどである。

共通テストは、各出版社が出している教科書をもとに作成される。学園で使っている教科書に載っていなくても出題される可能性は十分ある。どこまでやればいいのかわからないところはあるのだが、ベストを尽くそうと思う。

熟慮を重ねていて、夏期講習の4日間の前半は、西洋哲学マップを生徒に書いてもらうことにした。繋がりを復習しながら、ギリシア哲学、キリスト教神学、ルネサンス、啓蒙主義、大陸合理論、イギリス経験論、現代哲学の哲学者名を書き込んでもらう。なかなかいいアイデアだと思っている。

2023年7月16日日曜日

バーチャルで学園野球部を応援

さきほど、明石の球場で行われていた学園野球部の3回戦が勝利に終わった。最初、このバーチャル高校野球にうまくアクセスできなくて、結局、学園専用のGoogleを起動したら見ることが出来た。その時点では、なんと2点を先取されていて、ちょっと驚いた。

しかし、4回裏の攻撃は、まさに野球は2アウトからというジンクスどおりの逆転。その後も加点しながら、エースも守備陣も踏ん張って5-2で勝利したのだった。さすが古豪である。今日は、M君がヒットを打ったのが見れた。授業ではよくいじっている(関西弁でよく相手にするの意味)生徒なので、実に嬉しい。

熱中症になった。

https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000312462.html
先週は、超多忙だった。授業で試験を返し点数の修正(意外に多かった)、野球部の応援、成績入力、さらに授業。5日連続の長距離通勤で足がエコノミー症候群的に痛い、気苦労も多かったので、まさに”ボロ雑巾”のように疲れていた。

昨日は、さすがに午睡した。毎日5時起きだったし、30分だけと思って扇風機もかけぬまま4時間も寝てしまった。もちろん山沿いの我が家にはクーラーはない。で、起きたら、体中が痛くてうまく動かない。こんなことは初めてだ。階段の上り下りができないくらいだった。

妻はこういう時、実に頼りになる人で、医学にめちゃくちゃ詳しい。水を飲まされ、マグネシウムを足に欠けられ、筋肉を解してくれた。(絶叫するほど痛かった。)すると大分ましになった。体温を測ると37.8℃あった。実に珍しい。発熱なんて何年ぶりだろう。

妻によれば、おそらく熱中症だろうということで、少し様子を見ようということになった。

2023年7月14日金曜日

「防衛庁に告ぐ」を読む。

香田洋二元海将の「防衛省に告ぐ」ー元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態ーを市立図書館で借りて読んだ。シビリアン・コントロール(文民統制)の重要性は言うまでもないのだが、日本の場合、その弊害が酷すぎる、ということが、この本を読んでわかる。

長く、自衛隊は1%枠をハメられ、防衛省(庁)の支配下に甘んじてきた。現場の制服組の想いがわかるような優秀な官僚であれば問題なのであろうが、なかなか難しい。

まるで、現場の学校と教育委員会のような感じだ。もちろん教育委員会にも現場から指導主事として出向しているのだが、官の方が強い。官が向いている方向性と現場が向いている方向性は明らかに違うので、そのあたりの違和感はよく理解できる。

問題は、さらに国会議員である。シビリアン・コントロールの要は首相であるが、国会がその中心的な存在であることは明白である。国会議員の多くは、軍事的な知識にあまりに無知なようだ。昔「非同盟中立」などという主張もあったが、多くの議員は自衛隊に対してリスペクトしているとは思えないし、真剣に国防論議をしているとも思えない。そういう事例がこれでもかというくらい書かれている。

私は、意を決して本書を執筆した著者に拍手を送りたいと思う。

2023年7月12日水曜日

学園の野球部を応援に行く。

学園の野球部は、以前甲子園にも出場した経験もある古豪なのだが、最近はサッカー部のほうが有名になっている。部員数もサッカー部よりはるかに少ない。これまで、硬式野球部のある学校に勤めていた時は、必ず夏の大会予選は応援に行ってきた。I工業高、M高校、そしてH高校…。昭和の教師としては、野球部は学校の顔であり、応援に行くことは半ば義務、愛校心の発露のような気がしている。(他の部活には申し訳ないのだけれど…。)

というわけで、今日は野球部の試合を応援に行ってきた。学園はシード校であるので学園に近い球場で行われるとのこと。兵庫県は広いので、明石だとか洲本だとかで行われると応援に行くのが大変なのだが、今回はなんとか行くことができたわけだ。13:00開始と聞いていたのだが、少し早めに行くつもりで駅に着いた。(WEBで調べてもなかなかわからなかった)バス路線は1時間に1本ほどしかなく、歩くとダラダラ坂を30分と聞いていたので、遅れていかんとタクシーで向かった。それがよかったのだ。前の試合が早く終わったらしく、12:30に開始。ドンピシャ間に合った。学園は先攻で、ポンポンと2点を入れた。その後も得点を重ねていく。さすが、シード校。ピッチャーのY君も見事に零封に押さえていく。危ない場面もあったのだが、難しいキャッチャーフライを取ったT君のお陰で流れを相手に渡さない。4回には、一挙7点も入れた。あわやランニングホームランという場面もあって、応援席は沸き立った。
コールド勝ちになるのが、ほぼ確定の5回の裏は、エースにかわり、二番手・三番手のピッチャーが登板したのが、エンゼルスみたいな展開で2点を返された。だが、結局13対2という圧勝に終わったのだった。コールド勝ちで、校歌を聞くのは何年ぶりだろう。

印象に残ったことを2つ。学園のバッターは、相手チームのキャッチャーがマスクを取って動いた時、ホーム付近に落ちていたマスクを必ず拾い、土をはたいてから渡してあげていた。こういう相手をリスペクトする姿勢、実に素晴らしい。学園の顔としてちゃんと育てられていると思った次第。もうひとつは、入場料の話。65歳から700円が400円に割引されていた。嬉しいような、嬉しくないような…。(笑)

2023年7月9日日曜日

7.11は運命の日になるのか

https://www.sonymusic.co.jp/artist/yokoono/info/539022
以前から戦争屋と呼ばれている国務次官のビクトリア・ヌーランドが、7.11に第三次世界大戦云々と言っていたが、それはNATO首脳会議に関わるような話らしい。まだ未確認なのだが、トルコのエルドアンがウクライナのNATO加盟を支持しているとか。(ホントかなあ。)アメリカは、クラスター爆弾をウクライナに供与するとの情報も出てきている。なにより、アメリカ・カナダの全土に軍が配置についているという情報もある。

全くの他人事に感じているのが我が平和ニッポンである。増税してウクライナ支援に資金を供出していることも他人事で、超お人好しの平和ボケの国だ。ほんと、頭の中がお花畑だ、といってよい。

安倍首相が暗殺されてちょうど1年目。故人が良いといは言わないが、少なくとも今のような状況にはなっていなかったのではないか、と思う。今は完全に、NOと言えない日本に成り下がっている。

老い先短い私などはいいが、未来ある教え子たちのために、平和を祈ろう。

2023年7月8日土曜日

採点地獄(後半)を乗り切る

https://www.smarky.jp/
「公共」の試験が昨日あって、今日集中して採点地獄を乗り切った。先日のエントリー同様、たこ焼き採点である。(笑)まあ、昔から採点ミスはあるもので、答案返しの際に生徒諸君がスミマセンと謝りながら来るのだが、いつも「謝らんでいい。これは私のミスだから。申し訳ないねえ。」とこちらから謝る。例えば、点数が上がって89点とかになったら、「もう1点分ないのか?」と言ったりして、生徒が「残念ながら」と笑う。こういうコミュニケーションもあるので、生徒が一所懸命に勉強している故に、こちらもしんどいけれど、老眼を駆使してたこ焼きする事には意味があると思っている。

さて、そんな採点地獄なのだが、学園では昨年はマークシートを使った解答用紙で対応される先生もおられてびっくりした。共通テストやマーク模試に合わせておられるわけだ。今年は、PCで対応されている先生が多く見られる。仲のいい先生にお聞きすると、SMARKYというアプリらしい。答案をスキャンしたうえで、記号問題なら一気に○✕がつくらしい。記述問題もその部分だけ全員の回答が見れるようになっていて、○✕をPC上で操作できるようだ。凄いアプリが登場したもんだ。

私はというと、やはりこれからも、たこ焼きで行こうと思っている。最大の理由はデジタルデバイド故なのだが、昭和世代の教師として、何となく違和感があるのだった。

2023年7月7日金曜日

ブレメンタール氏の安保理証言

https://www.bitchute.com/video/JpnCBJ0ZF9lc/
アメリカは、ロックの抵抗権の認識が元になって、代表なくして課税なしと、イギリス本国からの課税に対して意義を唱え、独立戦争になった。そもそもイギリスは課税については、マグナカルタ以来の重要事項と認識されている。

今回のエントリーは、及川氏の「国連安保理で参考人として呼ばれたジャーナリストが証言した、梅田政権が儲かる仕組みを暴いた内容が、ツィートで数百万回も再生されている。」というYou Tubeの紹介である。今朝これを見てアメリカの民主主義は完全に終わったと痛感した。

https://www.youtube.com/watch?v=tIM25wcC0PU&t=924s&ab_channel=%E5%8F%8A%E5%B7%9D%E5%B9%B8%E4%B9%85THEWISDOMCHANNEL

このグレイゾーンというWEBサイトを運営しているマックス・ブレメンタール氏は凄いジャーナリストだ。梅田政権・国防省は、ウクライナ支援で6月12日に3億2500万ドル、6月28日に5億ドルを支出している。国内のインフラ整備などを置いておいて、ネオコンが無制限の資金提供を優先し、増税し、税金を奪い取っている。この代理戦争の真の勝者は軍事産業や高官であり、たとえばブリンケン国務長官は小浜政権の高官らとD.C.にコンサルティング会社をつくっており、オースチン国防長官は。レイセオンの元取締役で、退任後は違うコンサルティング会社にいく予定。こういうコンサルティング会社に軍需産業から莫大な利益が流れ込んでおり、退任後彼らは装画ぅ1500億ドルもの資金援助から想像を絶する報酬を得ることになっている。梅田政権はウクライナ支援の資金の監査を行っていない。そこでグレメンタール氏はグレイゾーンで2022年2023年の会計年度分を監査をした。すると、(無関係な)社会保険庁からウクライナ政府へ448万ドル、ウクライナ国際返済に国際開発庁から45億ドル、さらに資金の行き先として、カナダのテレビ局、ポーランドのシンクタンク、グルジアの公開株、ウクライナの個人事業家、ケニアの農村農家などが上がってきた。人道援助も30%ほどしか渡っていないし、武器援助も世界中に拡散してしまいインターポールが監視している。梅田は、ウクライナは自由と民主主義のために戦ってくれており、資金援助に反対する者は民主主義の養護に対する反対だと言っている。以上及川氏のチャンネルより。

なんと国民の40%が貧困に苦しでいるとされる米国民の税金が、このような使われ方をしているとは…。独立時を再認識し立ち上がったとしても私は決して驚かない。以下、及川氏以上に詳しい日本語訳付きの国連での証言のURL。

https://www.bitchute.com/video/JpnCBJ0ZF9lc/

2023年7月6日木曜日

採点地獄(前半)を乗り切る

期末考査である。昨日倫理の試験が終わった。昔は8クラスなどという無茶苦茶な採点地獄の時代もあったのだけれど、(共通テスト的に)4択問題を中心に数字で回答する方式は変わらない。よくできる答案は、たこ焼きのように丸をつけていく。1人ずつ採点する先生方も多いけれど、私は1クラスずつ、解答欄にしたがって自分の解答と合わせ、めくりながらやっていく。この方が間違いが少ないのだ。

とりあえず採点が終わり、成績をエクセルに記録した後、試験の解説と講評をワードでつくる。学園に来てから必要に迫られて作っている。模擬試験などでは、ただ点数を出し、偏差値と現状の合否判断を出すだけではなく、出題意図や解法を丁寧に記した冊子が配られる。定期考査であっても、間違ったところを確認する必要があるし、そこが受験勉強の要でもあるからだ。

倫理という教科は、実に立場が微妙である。旧帝大クラスの大学を目指す生徒は、公民分野は、倫理政経で受験するので必須である。倫理1教科だけで受験が可能な大学もお多く倫理1教科で受験する生徒もいるのだが、政経1教科で受験する生徒もいる。(これは旧カリキュラムの今年の3年生までの話。)共通テストを受けない私大受験組は、受験教科ではない。様々な立場の生徒が存在するわけで、意欲にもどうしても差ができてしまう。また今回は日本思想史だったので、日本史B選択組に大いに有利だった。(前回は世界史B選択者が有利だったので、おあいこである。笑)

1学期中間試験も、今回も、むちゃくちゃハードルを上げた。共通テストでは学校ごとに選択している教科書に含まれない出題(各出版社の教科書の記述に少しずつ相違がある。)もありうるので、様々な教科書に対応している資料集をひたすら読み込むように生徒を追い込んだ。これはなかなか大変であるが、共通テスト受験科目である倫理は、旧帝大受験組に合わさざるを得ないからである。彼らは、かなりハードルを上げても90点以上を楽々と超えてくる。(プロとしてはさすがに100点は取らせない。超難問の地雷をいくつか潜ませている。笑)だが、私大組や政経受験組はそこまで力を入れない。授業を楽しく真面目に聞いてくれるが、同じ日に試験のある英語や数学の方に時間を費やすのだろう。それはそれでいい。人間は自由の刑に処せられている。だから私はとやかく言うつもりはない。こちらとしては、最善の方法だと思える手立てをうつのみだ。

とはいえ、来年からは倫理という教科は、選択科目化してしまい、さらに立場が弱くなっていく。うーん。

2023年7月4日火曜日

アバンギャルディは凄いぞ。

採点地獄が迫っている先日の土日に、休息をとり、ゆったりとYou Tubeを見ていたら、アバンギャルディというダンスチームに出くわした。最初はアメリカのTV番組ゴッドタレントでのシンデレラハネムーンを見た。コロッケの顔指導をうけての凄いダンスだった。アメリカでは、東洋人はみんな同じ顔に見えるらしく、それを逆手に取って同じ髪型で、これだけの人数が完璧なシンクロするのだから、バカウケだったのだ、という解説したYou Tubeもあった。…なるほど。

https://www.youtube.com/watch?v=tW05Y6sJIGo&ab_channel=America%27sGotTalent

さらに、日本のTV番組(イギリスやアメリカの真似番組)での、かもめが翔んだ日。私はこのサビの振り付け(画像参照)も大好き。ダンスDAYでの迷い道も凄い。

https://www.youtube.com/watchv=Mq0aaOopi0g&ab_channel=%E3%83%90%E3%82%B8%E3%83%AB

そのれもそはず、彼女たちは、かの登美ヶ丘高校OGが中心のダンスチームなのだった。これからも、昭和の曲を使ったパフォーマンスを発表していってほしい。きっと、彼女らの後ろを追いかける高校のダンス部がたくさんいて、さらに底上げをしてくはずだ。

2023年7月3日月曜日

フランスの共通善

https://www.kanaloco.jp/news/international/article-1000910.html
フランスが今、大変なことになっている。マルローが移民をどんどん入れて、スラムが膨らみ、新植民地主義的な搾取が行われている故に、これまでの醜悪な旧植民地主義と相まって因果応報といえばそれまでなのだが、このところの我がブログの話題となっている「共通善」とも関係していると思われる。

フランスには、ブルキナファソに行く際にパリに1泊した。エッフェル塔の下でガボンの人々があまり売れないだろうオミヤゲを売り歩いていたのを思い出す。希望に燃えて旧宗主国に来てもなかなか這い上がれない現実がそこにあった。アルジェリアやモロッコの移民から、この内乱にちかい騒動が起こったらしい。彼らムスリムとしての共通善は、フランスの共通善である政教分離と対蹠している。これまでにもいろいろあったけれど、それらの鬱積が爆発したことは想像に難くない。

一部には、この騒動の後でさらに監視を強めるための方策だという見方も出ている。世界はますます変な方向に向かっていることが露わになってきたように思う。アフリカ・ウォチャーの私としては、どう見てもフランスに非があるとしか見えない。

なお、オランダ国王が、フランスの状況を見て、これまでの植民地支配を公式に謝罪した。自国への広がりを恐れてのことだと容易に推測できる。さすが商人の国であるが、あまり褒められた話ではない。アメリカだけでなく、ヨーロッパの崩壊が加速しているようだ。

2023年7月2日日曜日

コミュタリアニズムと共通善

https://partiallyexaminedlife.com/
product/ep-59-alasdair-macin
tyre-on-moral-justifications/
ロールズの政治哲学から続くアメリカ哲学についてエントリーしたい。ロールズへの批判はおよそ3方面から起こっている。まずは、ロールズの経済的平等に完全と立ち向かうリバタリアニズムである。代表的な思想家はノージック。まあ、共和党の党是とほぼ同じ(=二律背反)なのでわかりやすいし、割愛。もうひとつはケアの倫理で、キティなどという猫の名前のような女性思想家に『愛の労働者あるいは依存とケアの正義論』という著書があり、幼児、病人、高齢者、障害者などのケアの提供に依存する人々を取り上げており、自律的な成員からなる平等な社会理念(=ロールズ)は虚構だと批判している。経済格差是正とともに政治的自由を求める立場である。

今回のエントリーのタイトル「コミュタリアニズム」(共同体主義)は、ロールズ批判第3の立場、マッキンタイアやサンデルである。日本では、サンデルのほうがTV講義などで遥かに有名だ。マッキンタイアは、共同体を基盤とした「共通善」という概念を重視する。サンデルは、共同体の価値から切り離された「負荷なき自己」などありえないとし、ロールズの中立的な正義を批判している。

この共同体における「共通善」という考えは、よく理解できるところである。カナダのテイラーなどは、文化によって異なる共通善を承認する立場(=多文化的コミュタリアニズム)だが、移民国家のカナダと日本ではかなり、状況は異なる。これからの日本社会が移民を多く受けいれることになるだろうことは想像に難くない。日本語を学び、日本的な価値観を受けいれ、日本の共通善を十分認識した移民なら問題はないとは思うが、共通善を学ぼうともしない輩は、ペルソナ・ノン・グラータである。先日も、LGBTのデモで、日本語で天皇制反対と書かれ、さらにハングルで何か書かれたのプラカードを持っている輩がいたそうだ。

テイラーの主張は、日本にはあてはまらない。「世界が称賛する日本の文化」の破壊の一端になりうる。移民増加の経済的メリットより、文化を守るメリットの方がはるかに重要である。少なくとも、近隣国のような嘘をつくことを悪としない習慣や、ルールを守らないことが当然といった国民性が日本に輸入されないことを望みたい。日本では責任ある行動・他者を思いやり、約束を守る=「義」が重視される。これが崩壊すれば、日本は日本でなくなる。

移民が来れられるのは結構。だが、この「共通善」と言う概念、これからの若い人々に教えておくことは実に重要かもしれない。

共通テストはロールズがお好き

https://weekly-economist.
mainichi.jp/articles/202011
03/se1/00m/020/016000c
倫理の共通テストで、よく出題される思想家にロールズがいる。社会契約論を現代的に再構築したアメリカ人である。ロールズは、社会契約論的な原初状態では、無知のヴェールに覆われているとする。すべての人が合意する原理が公正な分配をもたらすと考えるが、人々は自分についての情報が全て遮断され、階級や資産、能力などがわからない状態を意味している。よって、無知のヴェールに覆われた人々は、自分にとって境遇を良くすることだけを考える。たとえば、労働者なら勤務時間を減らしてほしいとか、時給を$2上げてほしいとかである。この状況では、不平等がより大きくなるルールを許容することになってしまう。

ロールズは『正義論』の中で、無知のヴェールをはぎ、議論すると、次のような公正としての正義の原理が承認され、契約されると考えた。第1原理は、すべての人々が他者の自由と両立できる限り、できるだけ広い範囲の基本的自由と平等を保つ。第2原理は、社会的経済的不平等は、次の2つの条件を満たすものでなければならない。①公正な機会均等的原理:公正な機会の均等を確保した上で生じる不平等であること。②格差原理:不平等がない時よりあった時のほうが最も不遇な人々の立場がよりましになる場合にのみ不平等を認めること。…端的に表現すると、アファーマティブ・アクションである。

ちなみに、つい先日、米連邦最高裁はハーバード大の人種優遇入試制度に憲法違反の判決を下した。これは、アジア系が差別され、アフリカ系が優遇されていると学生のNPOが訴えたものらしい。JFK以来のアファーマティブ・アクション原則が崩れるのだろうか。

2023年7月1日土曜日

英国黒歴史 名誉革命の真実

「夫婦で行く意外とおいしいイギリス」(清水義範/集英社文庫)を通勤電車で読んでいて、前半部のスコットランド紀行を1日で読み終えた。なかなか面白い。スコットランドは、エジンバラなどのローランドと北部の山岳地帯のハイランドでかなり文化が違う。ハイランド・フォート・ウィリアムから南に進んだところに、グレンコーの谷がある。ツアーのバスが停車して、「大虐殺のあった場所だ」とガイドが言ったそうだ。(下の画像参照)

これには名誉革命が関わっている。ハイランドの氏族はカトリックが多く、ジェームズ2世を支持するジャコバイト派の全氏族長や指導者たちにウィリアム王への忠誠を誓う宣誓書を期限(1691年末)までに提出、従わない場合は武力報復という命令がでた。グレンコーのマクドナルド氏族長は期限ギリギリまで遅らせ、直前に着いたが署名場所が変更になり、冬の厳しい気候もあって1月6日に署名した。2月1日に徴税のためと称し、キャンベル氏族軍20名がやってきた。2週間歓待された後、キャンベル氏族軍に攻撃命令が出て、氏族全員が虐殺、逃げ出した者も凍死し皆殺しにされた事件である。これは、国務長官ステア卿と王の命令であった。

で、ここからが今日のエントリーの本題である。高校世界史Bには、名誉革命について、(ジェームズ2世の娘)メアリ2世オレンジ公ウィリアムは、ともに王位につき、権利の章典を受け入れたことだけが記されている。まあ、亡命したジェームズ1世よりはるかにイメージが良いわけだ。清水義範は、このウィリアム王について深堀しているのである。

17世紀のオランダは海洋貿易で大躍進した。しかしイギリスとフランスがオランダを潰さんとする。1672年イギリス艦隊がオランダの商船を襲い海戦が始まる。すると、フランスはオランダに進軍した。この事態を打開するために当時22歳のオラニエ公ウィレムが統領(連邦最高司令官)に指名される。彼は奇策を用いる。イギリスのジェームズ2世はカトリックで、ルイ14世と親密である。だが、イギリス国民はカトリックを悪魔の宗教だというぐらい嫌っている。ルイ14世にイギリスが抱き込まれることを懸念している。私の妻はジェームズ2世の娘であるから義理の息子にあたる。ならば、ジェームズ2世をイギリスから追い出し、自分が国王になれば、オランダの危険は一気に薄らぐ、というわけだ。

というわけで、1672年11月、ウィレム3世は、オランダ艦隊を率いてイギリスに向かう。艦隊は500隻、上陸用兵力は15000人。このイギリス上陸作戦は見事に成功し、イギリス人はオランダ軍の侵略を呆然と見ていただけであった。要するに、イギリスがオランダに乗っ取られたのが名誉革命である、というわけだ。

…裏付けを取ってみる。1688年6月30日、ジェ-ムズ2世にできないと信じられていた世継ぎができた。この時、イギリスの7人の貴族がウィレムに招請状を出している。ウィレムは、ドイツの諸侯にいざという時の援軍提供の約束を取り付け、フランスの再侵攻に備えた。ルイ14世はライン川方面に侵攻したのでオランダへの即時侵攻はないと判断、ホラント州議会でのイギリス遠征を承認してもらう。イギリス国民の権利回復を求める趣旨のパンフレットを大量に印刷、11月15日に上陸した後、印刷物を配布しその主張を訴えた。イギリス軍内部でもカトリックの士官への不服従があったり、ウィレムのいとこに当たる司令官がオランダ軍に寝返ったり、常備軍の司令官が脱走したりと、ジェームズ2世の人望がまるでなく、ウィレムがロンドンに入るのである。名誉革命の真実は、ウィレムのイギリス”国盗り物語”といった方が正確である。ちなみに、ジェームズ2世=カトリック側も、アイルランドやスコットランドで、フランスと同盟して反革命闘争を行っている。グレンコーの谷の事件は、この延長線上にあるわけで、なんともウィレム、恐るべしである。

https://mirandalovestravelling.com/ja/%E4%BB%8A%E3%8
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なお、ウィキでは、次のような記述がある。『なお、オランダ主導によるイギリス侵略という側面を強調する歴史解釈もあり、現在では、名誉革命は内乱と外国の侵略が併存した革命であり、イギリス人の誇り及び介入したオランダ政府の政治的思惑などから、外国の介入の要素が意図的に無視されてきた、とされている。』

…まあ、大英帝国にとっては名誉革命は50%が黒歴史であるわけだ。日本の教科書もそれに従っているわけだ。今の今まで、こういう真実を日本の教科書も参考書も無視してきた故に私もはじめて知ったわけで、こういう史実はまだまだあるに違いない。それがちょっと悔しいのである。