2025年9月10日水曜日

アンチクリストの現代語訳 2

ニーチェの『アンチクリスト』の現代語訳『キリスト教は邪宗です!』(講談社+a文庫/適菜収訳)の書評。とにかく、この現代語訳は、辛辣という表現では足りないほどのキリスト教への罵詈雑言がつまった一冊である。カトリックの学校である学院の図書館においてある事自体がホント不思議である。

膨大な付箋をつけながら読んでいるのだが、まずニーチェがキリスト教の問題点を5点にまとめ上げている部分を取り上げておこう。

1:神・霊魂・自我・精神・自由意志などといった、ありもしないものに対して本当に存在するかのような言葉を与えたこと。2:罪・救い・神の恵み・罰・罪の許しなどといった空想的な物語を作ったこと。3:神・精霊・霊魂などありもしないものをでっちあげたこと。4:自然科学をゆがめたこと(彼らの世界観はいつでも人間中心で、自然というものを少しも理解していなかった)。5:悔い改め・良心の呵責・悪魔の誘惑・最後の審判といったお芝居の世界の話を、現実の世界に持ち込んで、心理学をゆがめたこと。

キリスト教の敵は現実である。なぜなら彼らの思い描いている世界と現実はあまりにもかけ離れているからで、現実がつらいから逃げているにすぎない。素直に現実を認めることができなくなってしまった。これが作り物の道徳や宗教の本質である。

ニーチェは、この後、自信を持っている民族は自分たちの神を持っている。神をまつるのは、自分たちの誇りのためであり、自分たちの繁栄の条件や美徳を神に投影する。感謝する相手は自分自身である。有益でもあり有害でもある。味方でもあり敵でもある。悪いことにおいても良いことにおいても神は必要とされる、それが本当の神の姿である、こういう神の持っている一面を捨ててしまって、単に善のみの神にしてしまうことはできないのである、と述べている。

…ニーチェのキリスト教批判、就中、神の存在についての核心部分でもあるのだが、ニーチェは、キリスト教における神の存在を否定しているが、他の宗教の神も一緒に否定しているわけでない。上記の記述を見ると、ニーチェの超有名なアフォリズム「神は死んだ」が出てくる『ツァラトゥストラはかく語りき』を想起できる。(ゾロアスター教の開祖のドイツ語名がツァラトゥストラである。)ゾロアスター教は善神アフラ・マズダと悪神アンラ・マンユの二神教であり、上記の記述と一致するからである。

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