2025年12月29日月曜日

今年この1冊 2025

https://x.com/Osaka_Shin_Ai/status/2002961293293064605
年末恒例の「今年この1冊」のエントリーである。学院図書館(画像参照)や市立図書館で借りた本は、今年という修飾語に合わないので、佐藤優氏の『哲学入門』『ゼロからわかるキリスト教』などは、残念ながらまず省いた。というわけで、候補に残ったのは、次の5冊である。新書ばかりで、しかも全て違う出版社になった。(笑)

神なき時代の終末論(佐伯啓思著/PHP新書)
経済で読み解く世界史(宇山卓栄著/扶桑社新書)
伝授!哲学の極意(竹田青嗣・苫野一徳著/河出新書)
誤読と暴走の日本思想(鈴木隆美/光文社新書)
荒野に果実が実るまで(田端勇樹/集英社新書)

”アフリカ留魂録”という我がブログのタイトルからして、京大農学部の新卒の青年がウガンダでの国際協力の実態を描いた稀有なノンフィクションである『荒野に果実が実るまで』が最も妥当に思えるのだが…。

倫理の教師としては、『伝授!哲学の極意』と『誤読と暴走の日本思想』の両書は実に示唆に富んだ内容で、有為であった。『伝授!哲学の極意』は、プラトンの善のイデアから始まる哲学の王道を学んだし、『誤読と暴走の日本思想』は、儒家や仏教思想にいかに西洋哲学を接ぎ木したかがわかる。もし、倫理を教えているならば、この両書は格好の題材として使えたと思う。全国の同業者に是非一読を勧めたい新書である。

『経済で読み解く世界史』は名著であり、教材研究の宝庫であった。受験科目として暗記するだけの世界史ではなく、繋がりを理解・重視する世界史の教養は、社会科教育の中で、ある意味最も重要だと私は考えている。これも全国の同業者だけでなく、全ての読書人に是非勧めたい。

しかし、現在、地理総合という科目を教えている身からすれば、”今年この1冊”は、『神なき時代の終末論』に落ち着く。その最大の理由は、本年度の地理総合の授業を、この書にある”世界を四層に分けるて見る”という社会思想的な視点をもとに授業を構成したからである。

1学期は、基層となる風土(地形や気候などの自然環境)と、深層となる無意識のうちに人々の思考形式の型を与えると文化・歴史的経験と宗教を、世界価値観調査の図をもとに講じた。2学期は、中層となる現実的な国営機・勢力圏や生存権、同盟・敵対関係、戦争などを、HDIのランキングをもとに、構造的暴力などの国際理解教育・途上国理解の視点を交えて講じた。さらに表層、ある種の理念や価値の高い理想ということで、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ロシア・南ア・オランダといった国々の国是を中心に講じた。
この四層に分けた構成は、3年生で受験科目ではない地理総合という非常に珍しい学院のカリキュラムでは、世界史・日本史・政経・倫理などの他の社会科科目の復習と関連してしても講じれるので、かなり有効だと思われる。

というわけで、今年も多くの良書に恵まれた1年であった。

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