2025年12月23日火曜日

佐藤優 哲学入門 備忘録22

佐藤優氏の『哲学入門』(角川書店/2022年)の付箋をつけた箇所の備忘録エントリーの第22 回目。本日のエントリーは、いよいよカントに関する内容。

カントはケーニヒスベルグ(現在のカリーニングラード)で生まれ生涯、この街から全く出なかったが、世界地理を教えていた。(笑)几帳面でリゴリスティック(厳格主義的)だったようだが、彼が書いた手紙の中には、女のストッキングは黒い(黒のストッキングは当時は売春婦しか履かなかった。)ほうがいいという記述もある。女性には凄くモテて、スポンサーが複数いた。大学からの給料だけではなく、(ライプニッツと同様に)貴族の女性の家に行って色々な話をして小遣いを得ていた。(P298)

デカルトもライプニッツもかんとも、自然科学ではなく自然哲学によってアプローチした。シェリングもヘーゲルも同じで、実験で出たデータから法則を提示するのではなく、データを考察するという視座であった。(P302)

カントは常に問題を二律背反(antinomia)のカタチにおいて捉え、それを解決することで彼自身の思想を発展させてきた。このアンティノミアは、ノモス(=法)相互間の背反と淡野氏のテキストにある。佐藤氏は、アンティノミアを、日韓の歴史問題(日韓併合)を例に取っている。事実問題としては争いはなく、権利問題としての争いだ、と。(P304-5)

カントの『地震に関する三つの論文』(1756年)について。前年の11月1日の万聖節(すべての聖人と殉教者を記念する祝日/ハロウィンの翌日/カトリックや英国国教会では日本のお盆的な祝日)に起こったリスボン大地震(M8~9)で死者数が、5~6万人も出た。なぜこの時に、またキリスト教国として海外布教もしているポルトガルで大地震が起こったのか、と大問題になった。当時、地震は自然現象ではなく神罰であったからである。これに対し、カントは地震は自然現象(自然科学的でない故にその理屈は現代では笑止だが…。)であるから悪や罪とは関係がないと主張した。(P307-8)

「私は信仰に場所をあけるために、知識を取り覗かねばならなかった。」というカントの言葉は有名である。この「場所」の外側に(実践理性が機能する)「物自体」の世界があるわけで、それは神と言い換えても一緒である、ただしそれは動的な神ではない。と佐藤氏。(P320)

…カントは私にとっては、高校時代から馴染みの深い哲学者であるのだが、意外な話が多かった。確認の意味を込めて調べてみたら、地理を教えていたのは、1765年からケーニヒスベルグ大学においてである。論理学・形而上学の教授となるのは1770年だった。ちなみにカントは、ルター派敬虔主義の両親のもとに生まれており、ルター派らしく反ユダヤ主義の人だったようだ。

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