2025年9月16日火曜日

アンチクリストの現代語訳 5

https://www.meisterdrucke.jp/fine-art-prints/Antoine-Calbet/1440410/
ニーチェの『アンチクリスト』の現代語訳『キリスト教は邪宗です!』(講談社+a文庫/適菜収訳)の書評第5回目。帰宅時についに読破したので、最終回のエントリー。興味深い記述をいくつか挙げておきたい。

ニーチェは、新約聖書の中で唯一評価しているのは、ローマ総督のポンテオ・ピラト。彼は「真理」という言葉が間違って使用されているを見て、「真理とは何か」と言っている。ニーチェは、新約聖書の中でただ一つ価値を持つ言葉だといい、この言葉こそ新約聖書に対する批判だとしている。調べてみると、ヨハネの福音書18章37・38あたりのことを指しているようだ。

ドイツ人として、十字軍に参加した貴族の高貴なもの(イスラム教)への攻撃を仕掛けたことに胸が痛むと述べ、偉大な自由精神を持っていたフリードリッヒ2世の「ローマとは自刃を振るって戦え、イスラム教とは平和、友好」と語り実行したことを、賛美している。ドイツ人の場合、よほどの才能と自由精神を持っていないと難しい、とも。

さらに、反キリスト教運動であったルネサンスが、馬鹿なドイツ人によって失われてしまったと嘆いている。それがルターである。当時のローマはキリスト教という病気が克服されていた。法王の座にキリスト教はなく、「生(への意思)」が座していた。ニーチェは、チュザーレ・ボルジア(本日の画像参照)の名を出しているが、傭兵であり枢機卿であった彼のことを調べると当時の混乱がよく分かる。ルターは、法王が堕落していると思ったが、本当は全くの逆であるとニーチェは考えている。もう少しでキリスト教が滅ぶところで、ルターが教会を立て直してしまった。本当にドイツ人はろくなことをしない、と嘆いているのである。

…とにかく、最初から最後まで罵詈雑言の書であった。(笑)とはいえ、学院のシスターや洗礼を受けておられる先生方を見て、ルサンチマンをあまり感じないのも事実である。とんでもないルサンチマン集団が、外交・経済・スポーツ・芸能などであらゆる国際的非難を浴び崩壊寸前であることのほうに、これがルサンチマンの極致か、と強く感じてしまうからかもしれないが…。

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