2019年4月7日日曜日

マレーシア連邦憲法を読む 18

https://polandball.cc/comic/sad-history-of-singapore/
さて、第153条である。<マレー人およびサバ州、サラワク州の原住民のための公務員、諸許可の割当の留保>というのが正式な条名である。この条は(1)~(10)計12項あるが、これは、極めて重要な条文なので、原文のまま記しておこうと思う。同じような文節が繰り返されるが、各項は微妙に違う事を規定している。そこで、重要と思われるところは太字にしてみた。
「(1)最高元首は、本条の諸規定に従い、マレー人およびサバ州とサラワク州の原住民の特別な地位、およびその他の種族の正当な利益等を守ることを、自己の責任とする。(2)最高元首は、本憲法中のいずれにもかかわらず、第40条*および本条の諸規定を条件として、本憲法および連邦法律にもとづく自己の職務を、以下の諸規定を行うために必要な方法で、遂行するものとする;マレー人およびサバ州・サラワク州の原住民の特別な地位を守ること;公務員(州の公務員は除く)の職、または連邦政府が与える奨学金学校給費、その他教育上あるいは訓練上の特権、あるいは特別の施設など、また連邦法律により何かの取引または事業の運営あるいはライセンスが必要な場合は、同法および本条の諸規定を条件として、かかる許可あるいはライセンスなどにつき、最高元首自らが、合理的と見なす割合をマレー人およびサバ州、サラワク州の原住民のために留保することを保証すること。(3)本条の(2)に従って、公務員の職、奨学金、学校給費およびその他の教育あるいは訓練上の特権、あるいは特別の施設などをマレー人およびサバ州、サラワク州の原住民にも留保することを保証するため、最高元首は、本憲法の第10部が適用されるいずれの委員会、あるいは以上のような奨学金、学校給費またはその他の教育上あるいは訓練上の特権、または特別の施設などの交付を取り扱ういずれかの当局に対しても、当該目的に必要とされるような一般指示を与えることができる。かくして同委員会あるいは当局はこの指示に正しく従うものとする。(4)最高元首は本条の(1)~(3)に従い、本憲法および連邦法律にもとづく自己の職務を遂行するに際し、何人からも、そのものが保持する公務職、あるいは同人が享受している奨学金、学校給費あるいはその他の教育上あるいは訓練上の特権、あるいは特別の施設等の継続を奪い去ることはできないものとする。(5)本条は第136条*の諸規定を損なうものではない。(6)現行連邦法律により、何らかの取引または事業の運営に許可あるいはライセンスが必要とされる場合、最高元首は自らが合理的と見なすかかる許可あるいはライセンスの割合をマレー人およびサバ州、サラワク州の原住民に留保するために、必要とされる方法で当該法律にもとづくその職務を遂行することができ、あるいは同様にして必要とされる一般指示を、かかる許可もしくはライセンスの交付を当該法律にもとづき取り扱う当局に対して、与えることができる。かくして当局はこの指示に正しく従うものとする。(7)本条におけるいかなる規定も、何人かに帰属し、また享受あるいは保持されている権利、特権、許可あるいはライセンスを剥奪し、あるいは剥奪を正当化するように作用するものではない。あるいはまたかかる許可もしくはライセンスの更新拒否を正当化したり、あるいは何人かの相続人、後継人、もしくは譲受人に対する許可もしくはライセンスの更新あるいは交付が、事の通常の成り行きからして、適切と思われるにもかかわらず、その交付拒否を正当化したりするよう作用するものではない。(8)本憲法中のいずれにもかかわらず、いずれかの連邦法律によるいずれかの許可、もしくはライセンスがいずれかの取引または事業の運営に必要とされる場合、同連邦法律はかかる許可もしくはライセンスの一定の割合をマレー人およびサバ州、サラワク州の原住民のために留保するよう規定することができる。しかし、かかる法律は、このような留保を目的とする場合ー(a)何人かにすでに帰属し、あるいは享受され、あるいは保持されている権利、特権、許可またはライセンスをも剥奪したり、またその剥奪を正当化したりはしないものとする;あるいは(b)何人に対してもかかる許可またはライセンスの更新や交付が法の他の規定に従い、事の通常な成り行きからして合理的にと思われるにもかかわらず、その許可やライセンスの更新を拒否したり、当該人の相続人、後継者または譲受人に対して許可やライセンスの交付を拒否することを認めない。あるいは何人かが自己の企業と共にその企業を運営するための譲渡可能なライセンスうを譲渡することを妨げないものとする;あるいは(c)過去になんらかの許可またはライセンスを必要となかったような取引または事業を誠実に運営していたものに対し、法律の実施後同じ取引または事業の運営のための許可またはライセンスの交付を拒否することは、認められない。あるいはその後においてかかるものに対するかかる許可またはライセンスの更新を拒否したり、あるいはかかるものの相続人、後継人、あるいは譲受人に対する許可またはライセンスの更新または交付がその法に従い、事の通常の也付きからして合理的と思われるにもかかわらず、これらの交付を拒否することは認められない。(8A)マレーシア教育証書あるいはそれに相当するもの以上の教育を授ける大学、専門学校およびその他の教育機関において、これらの学校の運営に責任を有する当局の提供する学生の定員数が、これに資格を有する入学希望者より少ない場合、最高元首が本条によりマレー人およびサバ州、サラワク州の原住民のため、自ら合理的と考える入学者数の割合を留保すべく必要とされている指示を、当局に与えることは、本憲法のいずれにもかかわらず、合法とする。かくして当局はこの指示に従って正しく従うものとする。(9)本条のいかなる規定も、マレー人およびサバ州、サラワク州の原住民に対する留保目的のためめだけに、事業あるいは取引を制限する権限を、国会に対し与えるものではない。(9A)本条において、サバ州、サラワク州に属する「原住民」という表現は161条Aに述べる意味をもつものとする。(10)統治者を有するいずれの州の州憲法も、本条の諸規定に相当する(必要な修正を加え)規定を作ることができる。

*第40条の規定:最高元首は、内閣の助言により行動すること
*第136条の規定:連邦の公務員において同格にあるものは、人種を問わず雇用の諸条件に従い、公平に扱われるものとする。
*161条Aの規定:(6)(7)に詳しい規定とエスニック名が挙げられている。

極めて長いエントリーになったが、これがマレーシアのブミプトラ政策の根幹となる:条文である。マレーシア憲法は、各条文も項目も長く複雑な故に日本のような小中高の憲法教育は無理だなと思った次第。

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