2019年4月6日土曜日

マレーシア連邦憲法を読む 15

 連邦裁判所/アイアンモスクの近くにある
これでやっと第9部<司法>までやってきた。第121条から131条まであるのだが、なかなか解りにくい。ここは、「2017マレーシアハンドブック(マレーシア日本人商工会議所)」やJETROの資料を参考に記した方がよいと判断した。
まず、司法権の問題、特に違憲立法審査権にあたる条項は第128条にある。「(1)連邦裁判所は、権限の行使を規定する法定原則に従い、次の事項を決定する権限を持つ。なおかかる権限は他のいかなる裁判所にも認められない。(a)国会あるいは場合により州立法府が、自己に立法権のない事項に関する規定を定めることを理由に、同規定を盛り込む法律をつくることが無効であるかどうかを問う問題および、(b)州と州の間との、その他あらゆる問題に関する紛争。(原文)」ここでいう『連邦裁判所』とは、第121条(2)に規定されている日本の最高裁判所にあたるもので、「連邦中で完全な強制力と効力をもつもの」という表現がある。違憲立法審査権は、日本や米国と違い、この連邦裁判所のみが保持しているといえる。
憲法に記されている裁判所は上級裁判所のみである。①連邦裁判所(Federal Court)②上訴(Court of Appeal 京大の原文では控訴と訳されている:下級裁判所にも控訴裁判所が存在するので、ハンドブックの訳を当てはめることにする。)裁判所③高等裁判所(High Court)の3種で、ヒエラルキーがある。(周知のとおり、日本では、最高裁のみが上級裁判所である。)連邦裁判所と上訴裁判所はプトラジャヤにある。高等裁判所は、半島部のマラヤ高等裁判所と、サバ・サラワク州の高等裁判所があり2つ存在する。(と憲法にはあるが、裁判件数の増加で現在20か所にあるそうだ。ちなみに死刑を課す可能性のある刑事裁判の第一審は高等裁判所。)

憲法にはないが、下級裁判所については重要なので、ハンドブックを参考に記しておく。下級裁判所には①控訴裁判所(Sessions Court)②治安判事裁判所(Magistrates Court)、③18歳未満のものを扱う少年審判所(juvenile Court)がある。また、サバ・サラワク州には、原住民の法律・慣習に関する事案を扱う原住民裁判所(Native Court)がある。

したがって、死刑の可能性のある刑事裁判でも、高等、上訴、連邦の三審制が成立すると推測される。下級裁判所にも高等裁判所まで三審制のように上げることは可能なようである。と、いうより高等裁判所には上訴管轄権があり、下級裁判所の審理を取り上げてもよいようだ。マレーシアの司法制度はヒエラルキーが明確である。

この憲法ならびに連邦法による司法体系とは別に、イスラム教の家族法に依る訴訟を管轄するシャリーア法廷(Syariah Court)が各州の統治者の下に置かれている。
さらに、統治者に関する訴訟を扱う特別裁判所(Special Court)が設置される。

JETROの以下の資料は、裁判所名の日本語訳が異なるがかなり詳細で有為なものだと思う。イギリスの裁判所制度を基礎に、いかに歴史的変遷をしてきたかも記されている。
file:///C:/Users/User/Downloads/KKC019800_009.pdf

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