2019年4月6日土曜日

マレーシア連邦憲法を読む 16

マレーシア警察博物館
第10部は、<公務>である。132条から148条まで、軍務、司法・法務、警察、教職などの公務員規定が詳細に載っているが、割愛。

第11部は<破壊活動、組織暴力、および大衆に有害な行動と犯罪に対処する特別権限と非常事態権限>という、日本国憲法には見られない規定である。以下その要旨である。
第149条は、<破壊活動、公共秩序に有害な行動に対処する立法>、第150条<非常事態の布告>第151条<予防拘禁に関する制限>と続く。この中で、第150条について、すこし見ていきたい。非常事態布告は最高元首が、発生を認めれば発生前でも宣言できる。(1)(2)。この非常事態に最高元首は『勅令』を発することができ、これは国会法と同等の強制力をもつ。(2ABC)。この勅令は国会に上程され、国会が決議により無効とすることで効力は停止される(3)。非常事態時の行政権は州法権内のいずれの事項にも及ぶ(4)。非常事態時の国会は必要な法律を作ることができる(5)。非常事態時の勅令・国会で決議した法のいかなる規定も連邦憲法・サラワク憲法と矛盾していても無効とはならない。(7)非常事態布告かが効力を失う日から6か月を経れば、勅令や国会で決議した法は効力を失う。
さらに、こんな規定が目にとまった。「(6)(5)は、イスラム教やマレー人の慣習のいかなる事項、もしくはサバ州・サラワク州における原住民の法や慣習のいかなる事項に関しても国会の権限を拡大するものではない。」

ちなみに日本の非常事態宣言に類似する制度としては、災害対策基本法に基づく災害緊急事態の布告と警察法に基づく緊急事態の布告がある。いずれも内閣総理大臣が発する。

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