2019年4月11日木曜日

「ブルキナファソを喰う」

ブルキナファソのゴロン・ゴロンの家畜市にて
荒熊さんの「ブルキナファソを喰う!」を読み切った。意外に時間がかかったのは、さっと読むのが惜しかったからである。懐かしいブルキナファソでの食べ物について、詳しく書かれた本である。私が一番好きなのが、プレ・クスクス。もちろん荒熊さんと当時のNGOの主・Iさんと共に郊外の村で食べた。あの頃、Iさんは郊外の村で孤児院を作り、農業開発にも着手していた。そういう思い出も含めて、本当に美味かった。

練乳がたっぷり入ったネスカフェ(コーヒー)でいただくプランスパンも、実に美味である。朝の国道沿いの露店で、Iさんとともにとった最初の朝飯がこれだった。赤土の路肩。行き交う車の排気ガス。アフリカを十分に感じながら、元フランス植民地の味を堪能した。この国道では、夜、ひたすら山羊の肉を食べた記憶がある。荒熊さんとNGOの近くの露天に買いに行ったアチャケも美味かった。サヘルに向かう街でも、ソルガムを食したが、残念ながら「ト」ではなかった。全く空腹を満たせなかった記憶がある。私は、食道楽ではないので、この辺の記憶が薄い。

この本の中には、様々な西アフリカの食の紹介がある。開発経済学的に面白いと思ったのは、セネガルの米事情である。セネガルは落花生栽培に特化するという宗主国フランスの政策で、食料作物の商業化が進まず、同じフランス圏の仏領インドシナから米が流通したという。ミレットやソルガムといった雑穀は食するのに手間がかかるので、都市化の影響もあり、ますます米食が進んだようだ。現在のセネガルの米自給率は3割ほど。1人あたりの米輸入量では世界一であるが、これは粒が割れた破砕米が主流である。そもそも値段の高い全粒米はフランス本国へ送られていたことが主因だが、この破砕米のほうが、落花生のソースに合うという、荒熊さんの文化人類学的考察が面白い。

同じような開発経済学的というか、農業経済的な話に、ゴマの件を挙げたい。ブルキナファソは、日本へのゴマの輸出が盛んで、ナイジェリア・タンザニアに次ぐ第三位の輸入元である。しかし、ブルキナファソではあまりゴマを使った料理がないし、ソルガムやメイズの畑の縁にそっと植えられている程度らしい。基本的に換金作物であるという論があるのはもっともで、3リットルのトマト缶分で2500セーファーフラン(約500円)くらいだという。ただ価格変動が大きいらしい。荒熊さんの考察では、ゴマは、落花生油より香りに対して存在感が薄いから、あまり食されないのではないかとのこと。さらに、ゴマは呪術的な需要もあるそうだ。ジニ(精霊)の好物らしいのだ。本書では、実際の呪術のケースも載っていて、実に面白い。
…書評、本日はとりあえずここまで。

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