2019年4月3日水曜日

マレーシア連邦憲法を読む 7

http://sakurajadehouse.com/?p=44094
マレーシア連邦憲法のエントリーを続ける。第9条は<追放の禁止および移動の自由>についてである。詳細については割愛する。次の第10条は<言論・集会・および結社の自由>で、日本国憲法の第21条に相当する。この連邦憲法の中でもかなり重要位置にあるので詳細にエントリーしたい。

「第10条(1)本条の(2)、(3)および(4)を条件として(a)あらゆる市民は言論・表現の自由に対する権利を有する。(b)すべての市民は平和的にかつ武器を持たずに集合する権利を有する。(c)すべての市民は結社の権利を有する。(原文)」

…この(2)(3)(4)の各項の条件であるが、(2)は前述の「治安・他国との友好関係・公共秩序・道徳等」のいわゆる日本で言われる『公共の福祉』である。(3)は、結社の権利に関して「労働あるいは教育に関係するいかなる法律によっても、制限をかすことができる。(原文)」と記されてある。ということは、労働組合や国の意に反した教育活動に制限をかけることが可能なわけである。
さて、最大の論点は(4)である。これは、以前エントリーした『マレーシアの社会再編と種族問題ーブミプトラ政策20年の帰結ー』(堀井健三編:研究双書/1989年)に、1971年3月3日に国会で決議された改正によるものである。
「第10条(4)(2)の(a)にもとづき、連邦あるいはそのいずれかの地域の治安あるいは公共の秩序を守るため制限を課すにあたり、国会は、本憲法の第3部、あるいは第152条、第153条あるいは181条の規定により確立され、あるいは保護された、いずれかの事項、権利、身分、地位、特権、宗主権、あるいは大権等について、法律に指定されるそれらの履行に関する以外の面で疑問を呈することを禁ずる法律を議決することができる。(原文)
…この条文の中の、第三部とは、市民権。第152条はマレー語の国語としての地位。第153条はマレー人の特権。第181条はスルタンの権威と地位をそれぞれさしている。これらを『敏感問題』(sensitive issues)として議会と国民の批判の対象から除外し、公開での議論が禁止されたわけだ。
…したがって、マレーシアの言論・表現・集会・結社の自由は、欧米的な尺度から見ると極めて制限されたものに見える。だが、3年もマレーシアに住んでいると、この第10条が、少なくとも平和的多民族共生を支えていると思えるのだ。

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