2019年4月4日木曜日

マレーシア連邦憲法を読む 10

昨年5月の総選挙 http://www.malaysia-magazine.com/news/30585.html
第3章は<行政府>である。三権分立が徹底した日本国憲法に対して、マレーシア憲法は、同じ議員内閣制ながらも、旧憲法(内閣の輔弼)に近いような気がする。

第39条<連邦の行政権>「連邦の行政権は最高元首に付与され、かつ連邦法、あるいは第2付則の諸規定に従い、最高元首あるいは内閣あるいは内閣の任ずるいずれかの閣僚によって行使されるものとする。しかし国会は法律により行政機能を他のものに与えることができる。(原文)」
第40条<助言にもとづく最高元首の行動>「(1)最高元首は、(中略)別に規定される場合を除き、内閣あるいは内閣の一般的権限のもとに行動する一大臣の助言に従って行動する。(後略)」…付加された(1A)にはさらに「最高元首が助言に従い、助言にもとづき、助言を考慮して行動する。」と、くどいほど規定されている。(2)最高元首は、首相の任命、議会解散の要請に対する同意の保留、統治者らの特権、地位、爵位、および位階のみに関する統治者会議の開催要求およびかかる会議におけるあらゆる行動などに関しては自己の自由判断により行動できる。
第41条<軍の最高指揮>最高元首が連邦軍隊の最高司令官とされる。
第42条<恩赦等>これは割愛。

第43条<内閣>「(1)最高元首は、自己の職務の遂行に際し、自己に助言を与える内閣を任命する。(2)内閣は下記に従い任命される。(a)最高元首は自己の判断において、下院議会議員の過半数の信任を得そうな下院議員を、内閣を主宰する首相として任命する;また(b)最高元首は首相の助言にもとづき両院の議員のうちからその他の大臣を任命する;しかしもし国会の解散中に任命が行われる場合は解散直前の下院議員であったものが任命される。しかしこうして首相に任命されたものが、もし新しい下院議員でなく、またその他いずれの場合においても下院議員でも上院議員でもない場合は、当該人は新国会の開始後はその職を続けられないものとする。(3)内閣は国会に対して集団的に責任を負う。(4)もし、首相が下院議員の過半数の信任を失い、しかも最高元首が同首相の要請にかかわらず国会を解散しない場合、首相は内閣の辞表を提出する。(5)(4)を条件として、いずれかの大臣の任命が首相の助言にもとづき最高元首により取り消されない場合これら首相以外の閣僚は最高元首の嘉みする間、その職を保持するものとする。ただしいかなる大臣も辞職することができる。(原文)以下割愛」

…(2)にあるように、日本との大きな相違は、国会(下院)の首相の指名選挙が行われないことであろうと思う。『下院議員の過半数の信任を得そうな議員を』というあいまいな表現になっているが、最高元首には指名権はない。任命権のみである。また、日本における『内閣不信任』は同じだが、解散か総辞職かは憲法上最高元首の判断にゆだねられていると理解できる。とはいえ、前述の『輔弼』という語が蘇ってくる。

第43A条<副大臣>第43条B<政務次官>第43条C<政治秘書>は割愛。

…ところで、昨年5月の選挙で、野党のマハティール氏が、野党勝利の暁には投票日の翌日・翌々日を休日とすると宣言し、実際野党が勝利したので休日になった。日本国憲法に慣れた私としては、未だ国会で指名選挙も行われず、首相任命もされていなのに、公約が実行されたことが不思議であった。憲法を詳細に見ていくと、おそらくは、最高元首の行政権が行使されたのであろうと思われる。事実上の次期首相であるマハティール氏の助言(輔弼?)を受けたという『塩梅』(あんばい)になっていたのだと思う。これで納得できたのだった。

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