2026年1月8日木曜日

米国のベネズエラ侵攻 考Ⅳ

https://www.youtube.com/watch?v=wn0ozLIXOco
元海上自衛隊のオオカミ少佐のYouTubeは、軍事の専門家の視点でわかりやすく解説されでいて興味深い。今回は、戦争学(=平和学でもある)の視点を中心にエントリーしたい。
https://www.youtube.com/watch?v=wn0ozLIXOco

その前に、1つ重要な情報。アメリカの薬物で最大の問題になっているのは、合成麻薬フェンタニルで、主な流入ルートは中国らしい。コロンビアだけでなく、中国の製品をベネズエラがアメリカに密輸していてもおかしくはない。密輸船拿捕の様子を映したYouTubeも見たが、その中身については、コロンビア産か中国産かは不明である。

さて、国連憲章による適法な武力行使は、1.国連の武力制裁(42条) 2.個物的自衛権(51条) 3.集団的自衛権(51条) の3つである。今回のベネズエラ侵攻は、麻薬流入の問題はあるにせよ、これらに該当しない。アメリカの国内法で裁くのも、国家の主権は平等(2条)という原則に反している可能性がある。総人口3600万人のうち800万人が国外脱出、国内の人々も今日食べることさえままならぬ失敗国家の現状打破には、国際法を無視してもよいのでは、という意見もあることにオオカミ少佐は理解を示しつつ、NOと言う。

国連には、人道危機に陥っても国家がその責任を果たせない場合、国際社会が介入し保護する責任を持つ「保護する責任」(R2P:画像参照)という概念が、ルワンダのツチの虐殺事件などから生まれた。このR2P軍事介入の基準は、1.正当な理由(大規模な人名の喪失・民族浄化への介入) 2.正当な意図(介入国にその他の動機があるかに関わらず、危害を停止・回避するのが目的) 3.最終手段(非軍事的手段以外に成功の見込みがないと合理的に判断される場合のみ) 4.比例的な手段(軍事介入は必要最低限) 5.成功に対する合理的な期待(やったほうがマシと合理的に判断できる) 6.正当な権限(国連安保理の許可と常任理事国が核心的利益が関わっていない場合、大多数の支持があれば拒否権をもたない)であるが、今回のベネズエラ侵攻は、ほとんどあてはまらない。唯一「5」を満たしているかもしれないが、その帰結も不明で疑問符が付くと述べている。なぜなら、R2Pの要件を満たし、カダフィを排除したが、国家再建に失敗したNATOのリビア介入の例もあるからである。

武力の行使は慎重に、かつ大義名分をもってやるべきで、その基準が国際法である。国際法より「力」が優越するようになると、「力こそ全て」の世界が待っている。国際法は国内法と違い、強制的な装置がないためルールでしかない。とはいえ、少なくともWWⅢは起こることはなく、違法な戦争が起きたにせよ、大義名分は掲げられるようになった。ないよりは、だいぶマシなのが国際法。もし、今回の件が許されるのであれば、ロシアのウクライナ侵攻も中国の台湾侵攻も非難できなくなる。

力がなければ道理を問うせないのが国際社会の現実。力を無視せず、力を利用し、理想の社会に近づけるようにするのが、あるべき姿。結論として、マドゥロ政権が悪いこととアメリカの軍事介入が違法というのは、どちらも両立する、とオオカミ少佐は述べている。

…教材研究として、かなり重要な内容だった。国際法を守らねば、「力こそ全て」の世界にもどってしまうというのがオオカミ少佐のNOの意味である。ベネズエラに続き、イランの混乱に際し、アメリカはイスラエルと共闘しようとしている。アラブの湾岸諸国などは支援しそうだが、実態はエネルギー面で、中国の息の根を止める戦略ではあることは間違いない。だが、これはいただけない。理由は、オオカミ少佐の言う国際法体系から見て、ベネズエラ以上に正当性にかけるからである。

…日本の自衛隊は、このような国際法の学びを徹底しているからこそ、専守防衛の崇高なマインドを維持できているのだとつくづく思った次第。

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