2018年11月3日土曜日

在馬インド人の視点を探る 8

http://www.murc.jp/thinktank/economy/analysis/research/report_170907.pdf
「多民族国家マレーシアの国民統合-インド人の周辺化問題」の書評エントリー、いよいよ完結編である。5.13事件以降、マレーシアは、ブミプトラ政策(NEP:新経済政策)を推進する。

MICからは「隠された不公平の20年間」と表され、インド系の人々は、中華系の人々と非ブミプトラとして一括りにされた。その結果、インド系だけが、社会経済的にはわりをくったと見れる。雇用機会が減り、特に専門・技術職や行政管理職などの分野で大きな喪失をしている。また、インド人の資本占有率も1995年の資料では1.5%。(マレー系20.6%/中華系51.7%/外国人27.7%)と、人口比に遠く及ばない。エステートのインド人は、貧困に喘ぎ、都市でスクオッター(不法占拠者住宅)化している。その結果、犯罪率だけは上昇しており、殺人件数では1/3がインド系であると言われている。本書が書かれた時点では、まさに、エステートから都市にやってきたインド系の人々がマレーシア社会の底辺で蠢いているのが推測される。

…さて、その後はどうなのかが気になる。今日の画像は、2017年の三菱UFJ銀行のシンクタンクの資料である。本書で示された時点(1990年)は、グラフの左から2番目に近い。その後、インド系は少し持ち直したものの、2009年(最後のグラフ)では、指数で示されているように、ブミプトラとほぼ並んでいるわけだ。

…本書は、このグラフの推移の原因を解説してくれている。私の周囲にいるインド系の人々は、KLで比較的裕福な人々である。またインド系が多かったエステートでの労働は、あまり目にする機会もないので実感できない。要するに、まだまだわからない、のである。それが重要である気がする。まだまだ、定説を学んだに過ぎない。

…最後に、著者は、アジアを中心とした開発教育の大先輩であり、早稲田大学の社会科学総合学術院長である。国際関係論、国際協力論、平和構築論の専門家である。私はアフリカ関係の先生方については比較的詳しく知っているつもりだが、アジア系の山田満先生の著書に触れたことも大きな収穫だと思う。

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