2018年11月25日日曜日

西オーストラリア州の農業 考

パース紀行の番外編である。今回の旅でウェーブロックへの350kmの道程が長く、またある意味最も印象的だった。私は、アメリカでアイオワ州からイリノイ州のR80の道程で、トウモロコシ畑が続く様は経験しているが、麦畑は初めてあったし、妻に至っては360度地平線を見たのは初めてだったので、かなりのインパクトがあった。

というわけで、ちょっと西オーストラリア州(といっても、オーストラリアの1/3を占め、北部の熱帯地域まで含まれる広大な州なので、とりあえずパース周辺に関わる)の農業について調べてみた。
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0809re3.pdf
思ったとおり、このあたりは、小麦ベルトになっている。2008年時点で、西オーストラリアの小麦生産は全オーストラリアの36.1%を占めている。東オーストラリアの小麦生産は早魃の可能性があるそうだ。西オーストラリア州は地中海性気候で比較的に安定しているとあるので、オーストラリア全体が、天水による乾地農法を取っている可能性が高い。とはいえ、私は、アメリカ中西部に見られるセンターピポットをパース北部で見たし、同じく北部で風力発電に使われるような風車が林立している農場も見た。いくつかは停まっており、それはすでに収穫が終わったところのようであった。(というわけで新たに地下水をくみ出す必要性がないわけだ。)すなわち乾地農法のみではないといえる。しかも収穫後の農地には、三圃式農業のセオリー通り、肉牛や羊が放牧されていた。有機的な混合農業的な農法は、ヨーロッパの伝統にしたがっている。

ところで、西オーストラリア州の穀物生産(小麦と大麦が中心らしい)は、輸出向けの割合が大きく、人口も家畜も多い東部で早魃があって需要が拡大しても、輸送コストがかかるがゆえに西から東へ供給されることはあまりないらしい。これは意外な話ではあった。
file:///C:/Users/K/Desktop/n0809re3.pdf

西オーストラリア州の農用地面積は9674万ha、耕地面積は667万haである。これでも他州に対し耕地面積は多くオーストラリアで最大である。(約9000万haは放牧地であるわけだ。)西オーストラリア州で生産される小麦の品種はAWSと呼ばれ、日本では「うどん」に使用されるものらしい。(西オーストラリア州の農業省と日本の製粉業界と20年以上かけて研究開発してきた品種だとか。ちなみにラーメン用のプライムハードと呼ばれる品種は東オーストラリア産。)一方、大麦の生産も西オーストラリア州が最大で、主に食用、また飼料作物としても栽培されている。トウモロコシを栽培するにはオーストラリアは降水量が少ないらしい。大麦は三圃式農業的に、小麦や牧草とローテーション栽培されているとのこと。したがって、私が紀行中で書いた「小麦畑」という言い方は、その語の中に大麦栽培や牧草も含まれる故に、間違ってはいないようだ。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000023/05001663.pdf
フリーマントル港 https://www.otemon.ac.jp/library/research/labo/cas/publication/pdf/38/4.pdf
小麦の輸出先は、2011年から2015年にかけての統計で、インドネシア(21%)、ベトナム(9%)、韓国(7%)、中国(7%)、日本(6%)、マレーシア(5%)、フィリピン(5%)、イエメン(4%)、イラク(4%)、タイ(3%)となっている。西オーストラリア州パース(フリーマントル港)は、これらの輸出国の絶好の玄関口になっているわけだ。(さらにその南方15kmほどににクイナナ港というのがあるらしい。こちはらはコンテナ形式ではなくバラ積み形式で船積みするらしい。)
file:///C:/Users/K/Downloads/Overview%20of%20Australian%20Wheat%20Industry%20RS%20Terry%20Enlight.pdf
https://www.otemon.ac.jp/library/research/labo/cas/publication/pdf/38/4.pdf

…ご褒美旅行だった今回のパース紀行も、やはりこうして教材研究に役立ってしまうのは、職業病かもしれない。(笑)

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