2018年11月15日木曜日

巷談 中国近代英傑列伝を読む

陳舜臣の「巷談 中国近代英傑列伝」(集英社文庫/2006年)も先日読み終えた。長いこと、アヘン戦争以後の中国近代史を教えていないので、なかなか新鮮な話が多かった。ここで、語られているのは、周知の林則徐、李鴻章、康有為、孫文、魯迅、袁世凱など15人である。

特に印象に残っているのは、戊戌政変での梁啓超と譚嗣同の話。梁啓超は北京の日本大使館に亡命し、そこに譚嗣同が遺書を持って訪ねてくる。亡命を薦められた譚嗣同は、「君は西郷たれ。我は月照たらん。」と去って処刑された話だ。戊戌の志士たちは、いかに明治維新のことを知っていたかという好例だ。(注:西郷と尊王攘夷派の僧の月照は共に入水自殺しようとするが、西郷は生き延び維新の三傑となった。)

それと、これらの英傑は、なにかしら科挙と関わっている。当然ではあるが、郷試、挙人、会試、殿試などの言葉が本書に散らばっている。いかにこの科挙制度が人材を発掘すると同時に、失ってきたか、あるいは清の敵を作ってきたかなどの事例が満載である。

…林則徐=アヘンを燃やした、李鴻章=日清戦争時の代表などという知識は、極めて表面的であることがわかる。ところで、変法運動や戊戌政変の康有為は、かなり変わっている。万木草堂という、孔子・孟子以外に、仏教学・諸子学(おそらく、法家や墨家などの諸子百家)、宋明理学(おそらく朱子学)、西洋哲学、社会学(群学)、政治学、史学などを学ぶ当時としては破天荒な学校をつくったのだ。後、進士になれたが、西太后(と彼をバックアップした光緒帝の争い)にやぶれる。まさに波瀾万丈な人である。なんとなく佐久間象山っぽいなと感じた次第。

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