2019年3月3日日曜日

アフリカの「一帯一路」批判考

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Newsweekの記事で、「アフリカに債務危機懸念ー中国がわなをしかけたのか、批判は妥当なのか」という高橋秀一郎氏の論文が面白かった。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/03/post-11784_1.php

サブサハラアフリカ各国のバランスシートが急激に悪化しているらしい。IMFのリポートによると、累積債務は総生産比率48.5%と、2010~15年の31.0%から大きく乗している。低所得国の上限とされる40%を超え、アンゴラ・モザンビーク、ザンビアなど13ヶ国は60%に達する見込みだという。反中国の急先鋒である米国のボルトン大統領補佐官は、これを中国の「債務の罠」だと主張している。

たしかに、中国の対アフリカ融資総額は大きい。しかしながら、この論文では、アフリカ諸国が「援助から投資へ」という言葉の下、大きく転換してきたことを重視している。国際金融市場でも、アフリカへの投資が一種のブームになったことは間違いない事実だ。

…この「援助から投資へ」は、ザンビア出身のエコノミスト・ダンビサ=モヨ女史の「援助じゃアフリカは発展しない」という著作が震源である。アフリカの開発経済学を学んでいた私にとっても衝撃的な内容だった。たしかに、これからは援助(私はこの言葉が嫌いで国際協力のほうがいいと思う。)ではなく、投資だと思った。

この論文に登場するケニアのエコノミスト・アンゼッツエ・ウェア氏は、国際金融市場の視野の狭さや短期的な利益優先を指摘し、アフリカの開発には向いていないと指摘している。(すなわちアンチ・ダンビサ=モヨ的発言である。)インフラ整備が最重要なアフリカ諸国にとって、先進国の経済停滞で援助が減り、投資を呼び込むことに向かったまではよかったが、結果的に、中国の投資比率が大きくなってしまったわけだ。西側先進国のように、各国のガバナンスに人権やら民主主義やらの要求を一切出さず、開発独裁の悪いガバナンスの政府でも、借りやすいからである。「援助から投資へ」はドグマ的である。

…私などは、アフリカの開発には、投資は必要だと思っているが、そのための様々な人的支援がもっと必要だと信じている。単に資金提供しても、インフラ整備とともにビジネス環境の整備が伴わないと実利を産むことはない。PRSP(貧困削減戦略文書)の作成の意義(国際協力をする際に、自国の開発に於いて何を目的に、どんな施策を打ち、そのためにどれくらいの資金が必要かをドナー国に提出して貰い、検討してから協力するシステム)はそこにある。アフリカの開発は、資源開発だけではない、ガバナンスも含めた総合的な開発が必要である。なかんずく農業開発がまずは中心的課題なのだ。

中国の一帯一路を頭から否定する気はないが、中国の開発にはこのような(アフリカの持続可能な開発を目差すという)哲学が感じられない。この論文にあるように、中国のもつ不透明さが混乱を招いていることは事実だと思う。さてさて、やはり最大の問題はガバナンスであると、私は思う。ドナー国にとっては面倒なPRSPのシステムの再考が必要だ。日本のTICADで、今回の債務超過が語られるだろうが、もういちどアフリカの開発の原点に立ち帰り、叡智を結集するべきではないだろうか。

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