2019年3月29日金曜日

マレーシア連邦憲法を読む 6

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マレーシア連邦憲法の考察を続けたい。
第6条は、「奴隷制および強制労働の禁止」で、日本国憲法の第18条に相当する。ただ、(2)には、「ただし、国会は法律により国家目的のための義務的奉仕を規定することができる。(原文)」という規定がある。
第7条は、法律の罰則規定ができる以前の行いや犯罪では罰せられないこと、また二重に罰せられることがないことを明示している。

第8条は、「平等」についてである。「(1)何人も法の前には平等であり、法の平等な保護を受ける資格を有する。(原文)」(2)「本憲法がはっきり認めた場合を除き、いかなる法律においても、あるいは公共のいかなる役職への任免にあたっても、あるいはまた財産の取得、保有、処分、あるいはいかなる取引、事業、専門職、職業、雇用の設立、実施等に関するいかなる法律の執行においても、単なる宗教、人種、家計なるいは出生地の理由による差別はないものとする。(原文)」(3)「いかなる州統治者の州民も、その州民であることを理由に優遇されない。(原文)」(4)「いかなる公共当局も、本連邦内における同局の管轄外の地域に何人かが住み、事業を行っているという理由では、同人に不利な差別を行わない。(原文)」これらは日本国憲法第14条とほぼ同義である。ただ、(3)(4)のマレーシアが連邦制であることなどは特徴的であるといえよう。

さて、第8条の(5)である。最初の但し書きには、「本条は次のことを無効にし、あるいは禁止するものではない。(原文)」とあり、(a)から(f)の項目が並んでいる。以下全て原文。
(a)私法を定めるいかなる規定
(b)特定宗教の業務、あるいは特定宗教を奉ずるグループの経営する機関の業務に関わる役職を、その宗教に準ずる人々に限定するためのいかなる規定、あるいは慣習。
(c)マレー半島住民の保護、福祉、進歩(土地の留保を含む)、あるいは原住民に対する公務部門の適切なポストの合理的割合の留保、などのいかなる規定
(d)選挙資格として、あるいはある州、またはその州のある地域のみを管轄する公共当局への任命資格として、その州またはその州のある地域での居住を定めるいかなる規定
(e)州憲法の規定にして、ムルデカデー直前に実施されていたもの、あるいはそれに相当するもの
(f)マレー連隊(Malay Regiment)の募集をマレー人に限定するいかなる規定。

…要するに、法の下の平等の中の除外例を示しているわけである。(a)の「私法」とは、民法・商法などを意味する。イギリス植民地下のマレーシア各地(海峡植民地・マラヤ連邦・サバとサラワク)では、かなりの民法の差異があったようだ。以下の論文に詳しい。https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20190328104801.pdf?id=ART0008317072
(c)ならびに(f)の条項は、ブミプトラ政策との関わりがある条項と思われる。これらについては、後述する機会をもうけたい。

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