2011年7月23日土曜日

マラウイのカメレオン民主主義

マラウイで、大統領退陣を要求したデモが起こり、死傷者が出ているようだ。WEBニュースをいくつか読んだが、その理由の詳細(物価高騰やガソリンの高騰、あるいは経済政策の失敗など)や死傷者の数に違いがあるので、とにかく代表的なロイターの記事を挙げておきたい。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK896131720110722

今日は土曜日である。WEBでアフリカの研究をする日だ。ニュースを受け、マラウイの政治状況について調べてみた。今日の教材は、JICA研究所の客員研究員の中山嘉人氏の「キャパシティ・ディベロップメントから見た教育マネジメント支援」という報告書。この第3部に、マラウイの政治状況についての論説が載っている。この報告書の内容自体が凄い。かなり勉強になるのだが、主題の教育行政マネジメントについては今回はふれないでおこうと思う。興味のある方は、以下を参照されたい。
http://www.jica.go.jp/jica-ri/publication/archives/jica/cd/200703_aid.html

さて、マラウイだけでなくサブ=サハラ・アフリカ諸国の国家モデルを「ネオ家産国家」というそうである。かのM・ウェーバーの概念である「家産国家」(絶対君主制のようなパトロン=クライアント関係/権力者の支配と側近の国家運営 を通じた統治)の応用版で、”ネオ”がつく。旧来の「家産国家」との違いは2点挙げられるそうだ。近代国家の官僚制度や行政制度、法体制が存在するのだが、国民に国家の富がいきわたらないことが第1点。さらに、表の政治システムとは別のパトロン=クライアントでの裏の取引で政治的決定がなされるのが第2点だという。
さらに、アフリカ地域全般で特徴的な問題として「ビッグマン症候群」を挙げている。植民地からの独立闘争を戦った権力者が、長期政権を期待し、その周囲も依存してきた状況をいうらしい。

そしてマラウイの政治状況では、この「ビッグマン」の典型として64年から94年まで大統領だったバンダが挙げられる。冷戦終結後、マラウイでも複数政党制が導入され、ムルジ大統領が生まれたが、マラウイの政治家の特徴として、野党であっても、それまでの政策や主張を変え権力に近付き何らかのポストを得ようとするらしい。要するに選挙時だけ複数政党選挙の態をなすのだ。これを『カメレオン民主主義』と揶揄するらしい。なかなか面白いネーミングだ。日本でも使えるかもしれない。さて、2004年、ムルジの後継となった現ムタリカ大統領、院政をひこうとしたムルジと対立しているらしい。どっちも「ビッグマン症候群」なのだろうな。

マラウイ湖と女性
今回の事件、さてその本質は、「ネオ家産国家」としてのガバナンスの悪さに、ついに国民がしびれをきらしたのか。「ビッグマン症候群」の大統領の圧政にノーを突きつけたのか。「カメレオン民主主義」に嫌気がさして、大統領の政党の事務所を襲ったのか。はたまた、前大統領ムルジが、現大統領ムタリカを揺さぶっているのか。日本にいる私などは推測とも言えない推測をするばかりである。どうあるにせよ、マラウイの人々の「人間の安全保障」だけは守ってもらいたいものだ。赤道の北では干ばつ被害、南ではデモで死傷者。アフリカを愛する者としては暗澹たる気持ちになるのである。

追記1:前任校英語科のオーストラリア研修旅行、無事帰国したそうです。U先生からメールをもらいました。無事がなにより。彼らにとってがここからが分水嶺。希望の進路へ走り出して欲しいな。
追記2:今日の朝刊で、秋田商業高校野球部がベスト4で敗退したことを知りました。O先生、ご苦労様でした。この夏、大阪で宴会は出来なかったけど、来春こそ甲子園へ来てください。楽しみにしています。

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