2011年7月20日水曜日

US、ソマリアをついに支援?

モガディシュの戦いを描いた映画 Black Hark Down
東アフリカの干ばつによる食料危機に対して、アメリカが重い腰をあげたようだ。これで、外交が閉塞状態にある日本政府も動かざるを得まい。うーん、喜ばしいような喜ばしくないような。
記事の内容については、WEB版の毎日新聞を参照されたい。
http://mainichi.jp/select/world/news/20110721k0000m030011000c.html

ここからは、高校生に現代史の授業をしているつもりで書きたい。
干ばつの被害が最もひどいのが、「アフリカの角」と呼ばれるソマリアだが、ソマリアは、まさにアメリカにとって鬼門のような国だ。

ソマリアは、アフリカでも数少ない単一民族(ソマリ人)国家である。紅海沿いの旧イギリス植民地と、インド洋側の旧イタリア植民地に分かれていたが統一国家となった。クーデターで政権を握ったバーレが大統領となり、大ソマリ民族主義を煽った故に、エチオピア在住のソマリ人が反乱を起こし、エチオピアと戦争になってしまう。これがソマリアの悲劇の始まりである。ソマリアはこの戦争に敗れ、経済がひっ迫するのであるが、南部出身のバーレは、北部の資源(バナナや動物)で得た外貨を南部の自部族のために運用し延命を図った。で、北部(ソマリランド)の離反を招くわけだ。で、バーレは失脚したが、ここからは権力闘争で内戦となり、無茶苦茶になる。1992年、国連は、PKOを実施し内戦を抑えにかかるのだ。その主力が、冷戦終了直後で「世界の警察」を自負するアメリカだった。ところが、このPKOで大問題が起こる。モガディシュ(首都名)の戦いである。この時、アメリカ軍のヘリが墜落して死亡した兵士が裸にされ住民に引きずりまわされるという映像が全世界に流れた。アメリカの”ママ”たちが、「なぜ、アメリカが関係のないアフリカに行き、息子たちがあのような目に逢わねばならないのか?」と叫びだしたのだ。この事件以来、アメリカは国益にからむ自国の戦争以外に兵隊を送れなくなったし、それ以上に兵士が死ぬことに極めて敏感になった。イラク戦争でアホほどトマホークを打ちまくったのも、その影響だ。

ソマリア内戦は、その後国際世界から見放される。「世界の警察」アメリカが抜けて、国連も手が出せなくなったのだ。とはいえ、周辺国は、この影響を受けている。隣国ケニアの治安が悪化したのもソマリアからの武器流入が大きい。何度も内戦解決に向けて会議がもたれたが、今やイスラム原理主義が台頭してきて、さらに話はややこしくなっている。イスラム原理主義はアメリカの最大の敵である。今回の干ばつに対しても、支援は受けないと頑として撥ねつけていたのだ。この5日にやっと、支援を受け入れると表明したので、国連が大きく動いたのだった。

アメリカにとって、ソマリアは鬼門というのは、そういう2つの事情があるからだ。だが、やはりアメリカが動かなければ世界が動かない。おそらく、政府部内には、イスラム原理主義への外交戦略がこの支援の奥に潜んでいることは当然だろうが、アメリカの世論は、極めて単純な人道主義と正義感で動くところがある。(私は、アメリカのそういうところが好きでもある。)まあ、いい。理由はどうあれ、飢えている子供たちを一刻も早くなんとかしてあげて欲しい。アホほど食料をばらまいて、周辺国に広がる異常な穀物高騰を抑えて、”市場を飼いならして”欲しいものだ。本格的な支援については、BOPビジネスに任せて、とにかく、先進国政府には外科治療的な支援をお願いしたい。

ただひとつ残念なのは、今回も日本がイニシャチヴをとれなかったことだ。

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