2025年1月24日金曜日

ハーバーマス カバラ的無神論

佐藤優氏の「ゼロからわかるキリスト教」(新潮社)の書評第14回目。マルクスの宗教批判の論理破綻をうまくカバーしているのが、ハーバーマスである。「自然主義と宗教の間」という著書の中で、「二つの相反する傾向が現代の精神的状況を特徴づけているーすなわち、自然主義的な世界像の拡大と宗教的正統主義の増大する政治状況である。」と言っている。この自然主義とは、生物発生学、脳研究、ロボット工学などの成果で、自然科学的に客観化して自己を把握する流れで、哲学においては、(マッハやアベナリウスなどの)科学主義的な自然主義の挑戦である。

ハーバーマスは、この自然主義的なものが影響力を持っているのは、ヨーロッパと北米だけで、それ以外のところでは、伝統的で宗教的ないわゆる原理主義みたいな考え方が力を持ちヨーロッパの脅威となることを見抜いていたようだ、と佐藤優氏は述べている。彼は、凄く頭がいいけれど性格が悪い。京都賞を受賞したときも、「こういう理性とか啓蒙とかが、ヨーロッパ・北米以外で理解されていることを大変喜ばしく思う。」と挨拶した。日本人をサルだと思っていたのか、と佐藤優氏は反発する。

この逆方向の知的傾向は、国内においても世界においても分裂し、やがて爆発するというハーバーマスの危機感は、ユダヤ教のカバラ(神秘主義)的であると、佐藤優氏は指摘する。宗教の内在的論理を理解し、自分たちの考え方を、合理的な用語で、具体性・実証性・客観性に基づいて説明する努力をする必要である。結局、ハーバーマスは、宗教的な人間のうち合理的な考え方ができる者を近代の側に引っ張ってきて、原理主義的な連中を封じ込めようと考えているわけで、ヨーロッパの白人の安定した豊かな社会をこれから先も維持する方途を真面目に考えているとのこと。そういう哲学者なのだ。

⋯今回、共通テストで、ハーバーマスが出題されたが、私はハーバーマスがそもそも嫌いなのだが、その嫌度はこの書でさらに増幅したと思っている。

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