2025年1月12日日曜日

フスとチェコの宗教事情

https://mementmori-art.com/?p=7876
私がお世話になっている学院はカトリックの学校なので、あまりカトリックの悪口を言いたくはないのだが、世界史をメタに見た場合、どうしても悪口を言わざるをえない。佐藤優氏の「ゼロからわかるキリスト教」(新潮社)の書評、第3回目は、その最たる例であるチェコのフスの宗教改革の話から始めることになる。

フスの宗教改革については、2021年12月31日付ブログで、世界史B研鑽23の中で詳細を記しているので割愛するとして、関連する逸話について述べたい。フスの要求の1つに、聖体拝領時にワインを信者に飲ませることがある。前述のカトリックのサクラメント(11日付ブログ)との関連である。チェコのフス派の教会の入口には、ワイングラスが描かれているとのこと。さらにボヘミアに攻めてきた十字軍のシンボルと重なる故にフス派の教会には十字架はないとのこと。これはまさに異質である。

…フス派の十字架のない教会の画像をかなり探したが、ついに見つからなかった。その理由。チェコはフスの火刑後、2世紀の間、殆どがフス派となりフス戦争を起こしたが、その後ハプスブルグ家支配の影響でカトリック化を強要され、社会主義を経由して、現在は無宗教の人口が欧州で多い。調べてみると、統計的には様々な記述があるが、カトリック人口も少なく、フス派はもっと少ない。一説にはカトリックが10%ほど、フス派は0.4%。葬儀でも聖職者を呼ぶのは少数派で、葬儀法にしたがって葬儀社が行うという状況であった。

…それでも、フスが火刑の際に言った言葉「真実は勝つ。」は、今もチェコの大統領府の旗に刻まれ、「”宗教面に限らず”チェコ人を団結」させていると佐藤優氏は、記している。ここで、あえて”宗教面に限らず”という語が加えられていることが、私は気になる。現在のチェコが無宗教であるから、宗教面での団結ができないという意味に捉えるべきなのか、あるいは無宗教(=神の否定)が「真実は勝つ。」というフスの言葉が予言的に強烈にリンクするからなのか。キリスト者である佐藤優氏故に、前者であろうが、あえて深読みして後者と捉えられないように加えたのかもしれない。

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