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1948年に、イスラエルに逗まった15万6000人のアラブ人には市民権が与えられた。と、いうのもイスラエルは建国宣言の中で民主国家を目指しているからである。同時にユダヤ人国家を標榜しており、このジレンマもやっかいな問題である。アラブ系人口を多く抱える地域には戒厳令がひかれ、解除されたのは1966年のことで、さらにヨルダン川西岸のアラブ人は国民ではなく、投票権もなく、イスラエルの軍法下に置かれている。現在イスラエル国籍を持つアラブ人の人口は190万人。全人口の20%を占める。
彼らは、公式には平等であるが、別々の社会圏で、別々の学校制度を持つ。最貧の自治体の多くはアラブ系で、兵役につかないために、イスラエルの基幹作業であるハイテク系への就職の機会がないからである。(この事に関しては、米山伸郎著「知立国家イスラエル」に詳しい。)しかも人種差別的な扱いは、テロの頻発やインティファーダの歴史から日常茶飯事である。
2011年の「予算団体法」は別名ナクバ法と呼ばれ、独立記念日をナクバ(大惨事)として哀悼記念日とする学校や自治体などの組織は国家からの資金を失うことになった。また同年の「転入委員会法」は、転入希望者がコミュニティの社会的文化的にふさわしいかどうかの委員会を設置する法律で、宗教や民族差別を禁じて入るものの、アラブ人を歓迎しないコミュニティが締め出すことを可能にした法律であるとされている。
最も懸念されているのは、2018年の「国民国家法」である。成文憲法のないイスラエルでは、14の基本法が同等の価値を持ち、改定には議会の圧倒的多数が必要となる。国民国家方は最も新しい基本法で、ある種のユダヤ至上主義的を謳っており、アラブ系に対して彼らがイスラエルに属していないことを知らしめる排外的な内容である。当時の大統領であったルーヴェン・リヴリンは、右派リクードに属していたが、職務として法の成立に最終的に関わったが、不賛成の意を込めてアラビア文字のみで署名したという。右派政権は、独立当時の民主国家とユダヤ人国家のジレンマを捨て去ったのである。
…このイスラエルのアラブ系国民、軍法下におかれたヨルダン川西岸のアラブ人の問題も実に厄介な問題である。多民族国家マレーシア在住時に、マレー系と中華系、インド系といった微妙な感覚に触れたが、はるかに強圧的な構造である。「選民」と「土地の子(=ブミプトラ)」では、天と地の差があるような気がする。
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