2019年2月17日日曜日

佐藤優 サバイバル宗教論8

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いよいよ、最終のエントリー。ファシズムについて。その元祖はムッソリーニだが、佐藤優氏の説明は次のようになる。

1人ひとりがばらばらになっているところで、高度な産業化が進み、金融志向が出てくると、構造的に貧しい下層階級は上に這い上がれなくなる。そうすると社会は弱体化する。その処方箋のひとつに共産主義があるけれど、性善説故にだめだとムッソリーニは考えた。人間は本質において性悪な存在だから、物があると1人で全部持っていきたくなる。人が見ていないと怠ける、人の上に立ちたがる、人を支配したくなる。これは人間の本性であり、共産主義になっても人間の心は変わらないというわけだ。そこで、悪を持って悪を制す、と考えた。国家は悪である。この国家をもって資本主義を制すると、労働者は怠けることがあるので、雇用は確保するが、ストライキは禁止する。国家が間に立つことで全体の調和をして、国を束ねる。この束ねるのが、イタリア語の『ファシオ』。日本語に訳すると『絆(きづな)』になる。日本人を束ねていくということは、反動的に外側を必ず作り出す。非国民をつくるということでもある。ムッソリーニは、ユダヤ人は全く問題なかった。ジェンダー的にも男が威張りすぎていると考えていて、婦人参政権を主張したし、軍で女性将校も登用した。パレートという社会福祉理論の根本を提唱したローザンヌ学派の人物がムッソリーニの師である。彼の経済思想の影響下、戦闘的な福祉国家をつくろうとしたわけだ。

アメリカでも日本でも、ロシアでも知らず知らずのうちに国家、官僚が中心になって、バラバラになった国民を束ねようという発想が出てくる。たしかに社会の矛盾の一部を解決することができるが、一方で必ず非国民を生み出し、官僚支配になる。そして、官僚は社会から収奪することで存在している以上そういう発想から抜け出すことが出来ない。このシステムの抵抗の拠点になるのが、「中間組織」である、というわけだ。

…この本は、臨済宗の僧の研修会での講演をまとめてある。宗教団体は『中間団体』の最たるもので、以前京都の古都税反対に立ち上がったこともある。佐藤優氏は、ファシズムを防ぐひとつの砦が宗教であると結論づけているわけだ。

このファシズム理論の説明は平易でわかりやすいし、モンテスキューの民主主義への警告にある「中間団体」という理論もなるほどと思う。このところ、政治学や国際関係学、社会学を志すF40の学生諸君に向けて、筆がつい進んでしまうのだが、今日のエントリーも参考になるかと思う次第。

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