2019年2月1日金曜日

私家的パラ水泳選手権大会 考

イスラエルの国交関係 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB 
IPC(国際パラリンピック委員会)が、2019世界パラ水泳選手権大会(サラワク州・クチン市で7月29日~8月4日)開催権をマレーシアから剥奪したという報道が流れた。マレーシア政府が、イスラエルのパラ水泳選手に対しビザの発給を拒んだことが原因であるらしい。IPCは、2月11日までに他の候補地を募集するらしい。

この報道に関して、どう考えるべきか?という質問メールが来た。国際関係や社会科学系志望の学生も多いので、思索の参考になればと思い、ブログにエントリーする事にした。

この問題の本質は、イスラム教を国教とするマレーシアの「スタンス」の問題であると思われる。周知の通り、イスラエルによるパレスチナ問題で、アラブ諸国(サウジ・UAEなど湾岸諸国、シリア・レバノン・イラク・イエメン・リビア・アルジェリアなど)、非アラブだがイスラム教国(イランは以前は国交があったが現在ない。この件は後日エントリーしたい。アフガニスタン・パキスタン・バングラディシュ・スーダン・ソマリア・インドネシア、そしてマレーシア)などと国交がない。イスラム圏で国交があるのは、エジプトとトルコとヨルダンのみである。

WEBで調べたところ、アジア競技大会では、1962年のジャカルタ大会くらいから、イスラエルの排除問題が起こり、少なくとも新設されたアジアオリンピック評議会(OCA)はイスラエルを排除したままである。UAEで開催されているサッカーのアジアカップにはイスラエルは参加していないが、これはイスラエルが、ヨーロッパサッカー連盟に加盟しているからのようだ(1960年代は参加していたようだが、排除されたのか、自ら引いたのか…。)。要するに、イスラエルの国際スポーツ大会への参加は、極めて微妙な政治的な問題を孕んでいるわけだ。以上は、国際的な観点からのイスラエル選手団の位置づけである。

では、マレーシアは、そういうイスラエルを排除すべしというイスラム諸国との関係から、今回のビザ発行を行わなかったのか?そういう外圧的な理由は一応考えられないことはない。ちなみに今回の世界パラ水泳選手権大会のマレーシア開催決定時期は、WEBで調べたが、はっきりしない。しかし他の大会の開催情報から、昨年5月以降に決定したとは考えにくい。少なくともナジブ政権下での話であるようだ。

私は、今回の件は、対外的な問題ではなく、新政権下での国内的なイスラム教政党ならびにその支持者への配慮ではないかと考えている。その理由となっている依書は、マハティール政権の政治勢力の状況を的確に分析している以下の中村正志氏の論考である。
こういう論文が、政治学や社会科学の優れた論文である、という代表のようなものなので、J君始め関係する学生には是非読んで欲しい。大学では、こういう論文を読み、書くことになるのだ。(笑)日本という第三者から見た、忌憚のない昨年のマレーシア総選挙の分析である。
https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Analysis/2018/ISQ201810_001.html

この論考によると、マハティール政権は様々な与党の微妙なバランスの上に、カリスマ性を与しつつ存在(組閣時の各党のバランスなど凄い。)していることがわかる。民族横断的なPKR、中華系・インド系が主力のDAPは、イスラム的な正義には遠い。マハティール氏のPPBMとイスラム政党を標榜するAMANAHは、野党であるPASほどではないが、イスラム教を重視するはずだ。野党の旧政権党だったUMNOも同様である。
あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」の批准状況 
未批准国はかなり少ない(ウィキより)
マハティール氏自身がどう考えているかは当然わかならないが、先日の国連の「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」の批准問題で、マレー系の人々の反発が予想以上に強く(PKRやDAPの立場から見て)批准を諦めた。今回は、その第二弾であろうと私は思っている。しかも大会の会場となる予定だったサラワク州の政治的な立場も、現政権から見れば微妙で、マレーシアはあくまでも連邦国家なのだと実感させられる。サラワク州への配慮でもあったのではないか。いずれにせよ、今回の件は、微妙なバランスの上に立つ政府が、国内向けの配慮を行った結果と私は見ている。

以上、説明不足、資料不足はいがめないが、質問への私の解答である。

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