2024年12月29日日曜日

人類史上最もやっかいな問題7

https://note.com/hkmr777/n/nd152b2cbb7c9
「イスラエルー人類史上最もやっかいな問題ー」(ダニエル・ソカッチ著/NHK出版)の書評、第7.5回目。この書は、イスラエル独立度のスエズ紛争(第二次中東戦争)、第三次中東戦争(六日戦争)、第四次中東戦争(ヨム・キブール戦争)そしてオスロ合意とラビン暗殺と続いていく。その根幹にあるのは、イスラエルの右派の和平を潰す歴史と、パレスチナも同様に過激派のテロが和平を拒んできた歴史である。これらは様々な他の書で読んでいるので、かなり詳細に記されているものの、あえて割愛したい。

今回のエントリーは、学院の図書館で、この本を手にとってパラパラめくっていた際に見つけた、第22章「中心地の赤い雌牛」のイラストに由来する。この赤い雌牛とは、民数記19章に記されている第三神殿を建設する清めに必要な「完全な赤い雌牛5頭」のことで、第三神殿の建設地に灰にして撒き、清めるための生贄である。2000年間完全な赤い雌牛は現れなかったのだが、テキサス州の福音派キリスト教徒がイスラエルに送ってきたものである。ただし、実際にはイスラエルで生まれたものである必要があるらしく、この雌牛たちから生まれた子牛が生贄にされるというのが正しそうだ。(上記画像参照:ラビが赤い雌牛の確認をしている様子)

この22章に記されていたことで、まず最も興味深かった記述は、少数の非主流派ではあるがユダヤ教の急進的原理主義者は、第三神殿の外観を再現し、民数記に書かれた生贄の儀式の本番に備えた練習をしている、ということである。当然ながら第三神殿を建てるとしたら、現在はヨルダンが管理しているイスラム教第三の聖地・岩のドームの場所である。現在のところ、イスラエル生まれの完全な赤い雌牛が揃ったという情報はないので安心だが、揃ったとしたらかなりヤバイことになるのは間違いない。

さて、22章の主役はアメリカの人口の1/4を占めるという福音派のことである。ユダヤ民族とイスラエルは、彼らにとって神学の中心的要素である。前トランプ政権の副大統領のマイク・ペンス、国務長官のマイク・ポンペオは共に福音派である。現在の福音派は、アメリカ最大の親イスラエル団体AIPACより大きく影響力を持つ「イスラエルのためのキリスト教徒連合」(CUFI)となって、ネタニヤフの領土的極大主義構想を支持している。共和党支援の岩盤組織であるわけだ。

彼らの天啓史観は、19世紀イギリスのダービーが起源であり、今の時代が終わると「携挙」(けいきょ)が訪れ、真のキリスト者は天に移される。次に反キリスト者が台頭し、「艱難(かんなん)の時代」、ゴグとマゴグ(旧約聖書のエゼキエル書と新約聖書のヨハネの黙示録にある。ゴグは人名、マゴグはゴグのいる地名、ちなみにクルアーンの洞窟の章にも記述がある。)の戦いがあり、その後ハルマゲドンの大決戦があり、その時にイエスが地上に再臨し、イスラエル北部の平原で反キリスト者の軍を破る。これが「御国の時代」の幕開けで、善にある利した後「最後の審判」があり、「千年王国」が訪れるというものである。この史観の基礎的な問題として、ユダヤ人がエルサレムなどの聖地に戻る必要がある。そこから終末時計が時を刻み始めるからだ。なお、この史観では、終末が訪れてユダヤ人の役割が終れば、1/3がキリスト教に改心して救われる一方、その他のユダヤ教徒は未来永劫呪われるという。

22章には、こんな興味深い記述もあった。トランプ大統領は、古代ペルシャのキュロス大王(バビロン捕囚からユダヤ人を開放した)に例えられる。実際、ネタノヤフは、アメリカ大使館のエルサレム移転に際して、「ユダヤ人がキュロス大王を記憶するように、イスラエルはトランプを記憶するだろう。」と述べている。

…再選したトランプは、イスラエルの拡大戦略をさらに支持するだろうと私は思う。はたまた第三神殿再建のゆくえは…。

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