世界史を学ぶうえでは、この一神教の理解がまず必要だというのは間違いないと思う。なかでもカトリックとオーソドックスの共通点と相違も重要だし、宗教改革後のルター派、カルヴァン派、英国国教会の共通点と相違も大きい。今年度は地理総合というフィールドであったので、空間的な各国の伝統的価値観から、これらを講じたわけだが、学院の充実した図書館の力を借りて、実に有意義な読書(というより教材研究)をさせてもらった。とはいえ、まだまだ研鑽は続くと思う。
この1年で、キリスト教の見識はかなり深まったと思うが、今年この一冊となると、違う分野で強力な候補が二冊挙がってくる。中田考氏の「イスラームから見た西洋哲学」(河出新書)と、河野哲也氏の「アフリカ哲学全史」(ちくま新書)である。両者とも、イスラムとアフリカというそれぞれの視点から、西洋哲学を俯瞰しているという共通点がある。
本当は、今年この「二冊」としたいところなのだが、あえて選ぶとすれば中田考氏の「イスラームから見た西洋哲学」だと思う。まさに哲学博士号をもつ日本最高のイスラム法学者として、中田考氏は、快刀乱麻に西洋哲学を批判していく。この深さは実に驚愕に値するものだった。
「アフリカ哲学全史」の方も実に興味深い内容だったが、河野哲也氏は、この書をきっかけに、これからアフリカ哲学をさらに追い求めるというスタンスであったので、中田考氏の恐ろしいほどの重厚さがないと感じた故である。と、いうわけで、2024年の今年この一冊は、「イスラームから見た西洋哲学」としたい。
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