2016年6月19日日曜日

中田・橋爪「クルアーンを読む」10

http://ssmcintl.com/news/industry-trend-analysis
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湾岸諸国をめぐる二人の対話は実に面白い。中田氏は、ナショナリズムがなくても国民意識などなくても国の安全は守れると、湾岸諸国の軍人・警察がみんな外国人であることを引き合いに出す。
これに対して湾岸諸国に否定的な橋爪氏は、なぜうまくいっているのか、という補助線として部族制・イスラム・外国人たちを市民権のないただの永住者としている点を挙げて反論する。

中田氏は、国家は他の国の国際的システムによって承認されるから存在しうる。その理由は先進国の利益になるからであると述べる。最終的にイランはアメリカとの外交戦争に勝ち抜いたと考える中田氏は、その間、スンニー派諸国はひたすら支配者たちが自分たちの利権を守り私利私欲を追求する政権だけがいて、バラバラなままだった、ジリ貧状態にあるけれど、もうジリ貧では済まなくなりつつある、と述べている。

日本の近代化とイスラムの構造を比較しつつ、批判を加える橋爪氏に、中田氏は「ひとつには外国支配の問題がやはり大きい。イスラエルもそうだが、敵は外にあるという論理をずっと言い続けている。それで、内部の改革に向かえないというのが大きくある。」と述べた後、インパクトのある発言が出る。「みんなイスラエルを敵だって言ってるけど、それを言っていれば角が立たないから、言っているだけで、本当はどうでもいいんです。真面目に戦っている人はいません。内輪の問題の方が大変なので、パレスチナ人くらいなものです。でも口先では、やはりイスラエルが敵だと言っています。そうすると、内部の問題から目をそらされてしまう。」

「本来のイスラムの意味での改革に戻そうと思うと、やはりカリフ制とシャリーアという話になってきます。」これは西欧的な民主主義とは対立するので、内部の改革運動として出てくるイスラム改革運動は2つの方向から排斥される。アラブの独裁政権から。同時に欧米の民主主義を受け入れた者たちから。この両方の権力から抑えられてきたのが現状である。しかし、議論せざるをえない状況をつくったのがISである。ISが出てきたのは、スンニー派政権がおかしくなって、その隙に乗じてシーア派が出てきたからで、そのことに対する危機感を一番先鋭に感じて、スンニー派の本来の栄光というか、統一性と法の支配を取り戻そうとしてISが出てきた、というのが中田氏の主張である。このISの捉え方は、橋爪氏も読者の私も大いに納得のいくところである。

両者、ガップリ四つに組んで湾岸諸国について自論を展開したところで、やっと第三章「クルアーンでわかる世界史」が終了する。第四章は、イスラムの歴史観から始まる。

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