2025年5月24日土曜日

イスラームからお金を考えるⅥ

https://globe.asahi.com/article/15341885
「イスラームからお金を考える」の書評の続きである。利子が禁止されているイスラームにおける「無利子銀行」についてである。利子の禁止を守りながら、利子に代わる儲けがきちんと手に入る方法として、近代以前のムスリム商人たちが使っていた「ムダーラバ」という方法がある。これは、お金を持っている人が、借りたい人と協力(情報をあたえたり、知友を紹介したりといった間接的な協力)して商売を行い、あらかじめ決めた比率で儲けを分け合うシステムである。もし、儲けがなかったら、お金は帰ってこない。

「無利子銀行」は、借りたい人とムダーラバ同様の関係を持ちつつ、元本が減ることを想定しない預金者ともムダーラバの関係を持つ。「無利子銀行」が黒字であれば、預金者の元本は保証されるという二重のムダーラバ関係を結び、成立しているわけである。

そもそも、この「無利子銀行」の構想は、1941年にパキスタンのマウドゥーディーが、ヨーロッパの利子を取る金貸しによって貧しいムスリムが苦しんでいることを憂い、利子のない社会の実現を訴えたのがきっかけである。1960年代になって、我がマレーシアで、メッカ巡礼に行きたい人のための「無利子銀行」タブン・ハッジ(上記の画像は現在の本社)が設立された。預金者は毎月少しずつ預金し巡礼資金を貯め、その預金をムダーラバで増やし、巡礼資金を増やす道を開いたのである。1970年代には、UAEのドバイ・イスラーム銀行が設立され、それまで銀行嫌いで、金などの貴金属に財産を変えていた信心深いムスリムが大挙して押し寄せた。

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こんな中、私の尊敬してやまないマハティール首相は、資本主義の問題点を十分に理解していたので、ビジョン2020の牽引役として「無利子銀行」に期待を寄せた。これによって新しく作られた「無利子銀行」もあったが、既存の銀行の多くが「無利子銀行」のサービスを始めた。(左の画像は、マレーシアにある普通の金利システムとイスラムの無利子システムの併用されたATM)マレーシアではムスリムではない中華系やインド系の人々もこの「無利子銀行」の利用者が多く、中東とともに「無利子銀行」の二大拠点になっている。成功するはずがないと冷ややかに見ていた欧米諸国の銀行も参入し、現在50カ国・600行に広がっている。

ちなみに、2023年現在の「無利子銀行」の各国の比率は、サウジが75%、ブルネイが67%、クウェートが51%、マレーシアが31%、カタールが29%ほど。その他、バングラディシュ、ジブチ、UAE、パキスタン、ヨルダン、パレスチナ、オマーン、バーレーンなどが続く。

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