2017年9月10日日曜日

中国の若者の「喪の文化」

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ロイターのWEBページに「焦点:中国のミレニアル世代に蔓延する自虐的喪の文化」という記事があった。社会学的な視点から、ミレニアル世代(18歳~35歳くらい/3億8000万人)の悲哀を綴っている。
http://jp.reuters.com/article/china-congress-millennials-idJPKCN1BJ0S0

北京に「喪茶」というチェーン店があるそうだ。「何も達成できないブラックティー」「元彼(女)の方がいい生活をしているフルーツティー」などの冗談半分の名の付いたお茶がメニューらしい。ミレニアル世代にとって、今後のキャリアや結婚の見通しは暗い。希望を失った彼らは、ソーシャルメディア上で「喪」という態度を示しているとの事。皮肉に満ちた敗北主義を楽しむのが「喪」の文化だという。「喪」の文化を代表するネット著名人のある日の投稿。「今日は社会主義のために戦いたいと思っていたけれど、あまりに寒いのでベッドに寝転がって携帯電話をいじっている。」

この背景にあるのは世代の格差である。この上の世代は、(資本主義化の波が到来したために)思いもよらない機会に恵まれたが、この世代にはそのような希望がない。大学卒や留学生の希少価値は下がりつつあり、それが初任給に如実に現れている。住宅価格の高騰や晩婚化なども大きなストレスになっている。彼らの不満がネットに沈滞するわけだ。当然、政府はこのような動きを座視するわけがない。人民日報にも、これへの批判記事が載ったそうだ。

…現代中国の抱える社会的な病巣のひとつだといえそうな「喪」の文化。だがこれは、先進国と共通するものであるだろうと思う。そうか、言論や表現の自由度が低い中国でも、押さえがたいペシミズムを若者は共有し発信しているのかというのが私の感想だ。私自身は、教育者として、ペシミズムの対蹠点にある存在である。だが、若者は本来的にそういうペシミズムを抱え込んでいるものだ。それが、「喪」という漢字で表現される中国の凄みを感じるが、決して新しい動きではないと私は思うのである。

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