2011年8月9日火曜日

『南スーダンにPKO派遣を』考

一昨日のブログ、『ソマリアの「アルシャバブ」考』に対して「反駁したい」というリアクションが2つ入っていました。全くリアクションがないより、はるかに嬉しいのですが、その理由は何だろうか?と、いろいろ考えてみました。私の原理主義を敵視しない中立的な立場なのでしょうか?反対にイスラム原理主義に対する理解が未熟だという批判なのでしょうか?是非ともコメントをいただきたいところです。古いエントリーでも、このBloggerは、作成者のダッシュボードに、コメントがすぐ表示されるようになっていますので、スパムと判断されない限り、コメントを見逃すことはありません。是非よろしくお願いします。楽しみにしています。

さて、今日は、またまた反駁される可能性の高いこと書こうと思う次第です。朝、モーニングで日本経済新聞を読んでいると、「社説」に、「南スーダンにPKOを派遣を」というのがありました。国連事務総長の要請を受けての話らしいのです。社説としては、かなり素早い反応のように思いました。帰宅してWEBを調べてみると、7月13日に、毎日新聞と読売新聞がすでに同様の社説を書いていることがわかりました。
日本経済新聞社説:
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE1E1E5E5E3EAE0E2E2EBE2EAE0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D
毎日新聞社説:
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20110713ddm005070029000c.html
読売新聞社説(すでに消去されているので、掲載したブログ参照):
http://darfur-tribune.seesaa.net/article/213056782.html

私は、正直に言うと、この日本経済新聞社説に、意外な感を受けました。自衛隊の「PKO・国際貢献」は非常に難しい問題だと思います。私はアフリカ大好き人間ですので、南スーダンの人々のためになるのなら、素直に賛意を示したいところなのですが…。うーん、と考え込んでしまいました。

今読んでいる石破茂の「国防」では、以前イラク・サマワへ自衛隊がPKO任務に行った事に関して、ずばっと書いてあります。要約すると「日本が石油の90%を依存する中東の安定のため、日本がPKOに参加することは国益に値する。しかも、イラク人のアンケートでは日本に来てほしいという回答が他の国を抑え最も多かった。ただ、国内的には、自衛隊に対する”無理解”が存在するため、様々な法的な問題をシミュレーションする必要があった。」となります。(あくまで個人的な要約ですが…。)

私は、自衛隊は違憲な存在であるという自衛隊の存在否定の意見には賛成できません。第9条は改正すべきだというのも賛成できません。そのスタンスに立ち、現在の自衛隊の意義、自衛隊の能力をきちんと理解する必要があると思っています。(軍事を理解できないと、平和学は理解できないと思っているのです。)なんか、ものすごい玉虫色の表現になってしまうのですが、この問題は、そういう問題であると思うのです。おおまか、自衛隊や国防問題に対する正確な理解が必要という点、自衛を貫くという日本のスタンスを守る上で必要な法的問題を解決すべきだという石破茂の視点には、私自身は、共感するところが多いと言っていいと思います。

日本経済新聞の社説では、大震災への格好の恩返しであること、ハイチでの活動が大きく評価されていることなどを挙げています。私は、この点については大賛成です。ただ、「今回のPKOがアメリカ主導であり、日米の同盟の絆を深める上でも重要だ。」とあるのには、日本の経済界の意思というか、今の政府のミスリードで失った信頼関係を一刻も早く修正しようとする意図を感じます。もうひとつ、「震災対応で人材確保が難しいならハイチから撤退すべし。」というのは、絶対おかしいのではないかと思っています。

石破茂の「国防」の中で、こんなことも書いています。これも私なりの要約ですが…。「自衛隊の主たる任務は、防衛であるから、国際貢献はその上で可能か否か、様々な国益上の問題を踏まえたうえで判断しなければならない。」「国はみんなで守るものである。それが民主国家である。万一の場合、自衛隊は防衛に全力を注ぐべきでる。その他の副次的な任務は、警察や消防に任せすべきである。そのために手薄になった警察や消防の任務は国民がみんなで負担しなければならない。」

大震災の復興に割かれている自衛隊の人員を、国民で負担する、その覚悟が出来ているから、危険かもしれないが、南スーダンでPKOを精一杯行ってくれというのが、筋なのではないでしょうか。無責任に、これまで真剣に自衛隊が取り組んできたハイチの任務を放り出せというのは、マスコミの傲慢ではないか、と私は思ってしまうのです。国民にとって自衛隊とは何なのでしょうか。御都合主義に過ぎると私は思うのです。

御都合主義の今の政府もマスコミも、自衛隊抜きの震災復興の覚悟を国民に迫ることはできまい、と私は思うのです。南スーダンの人々のために、日本人の力を貸すことは大切です。じっくりと論議し、答えを出すべきだと思うのですが…。

2 件のコメント:

  1. 「アルシャバブ」考については知識が足りず、コメントもできませんが、自衛隊の存在については、先生と同じ立場です。自衛隊の存在否定にも9条改正にも否定的な立場です。9条の範囲内で自衛隊の存在は認められるように思います。また9条を活かした外交も可能なような気がします。ただ自衛隊の存在を認めた上でですが…。憲法学としてはどうかわかりませんが、伊勢崎賢治さんのような立場に近いのかもしれません。伊勢崎賢治『紛争屋の外交論―ニッポンの出口戦略』 (NHK出版新書)。「国防」は気になっていたものの、まだ読んでいません。明日の学校の帰りにでも書店を除いてみます。

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  2. 非常勤講師さん、コメントありがとうございます。自衛隊についてのコメントは難しいですよねえ。そろそろ彼らの努力と月見草のような立場を、正しく認識しつつ、考えなければならないと思うんですよね。

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