2011年8月29日月曜日

アフリカ連合の逡巡

リビア情勢が、カダフィ政権の敗北、国民評議会が新政権樹立を行うようである。私が注目するのは、少しずつ報道されているアフリカ連合諸国のの動きだ。以下8月28日付の共同通信の報道である。

【ベンガジ共同】事実上崩壊したリビアのカダフィ政権と関係の深かったアフリカ各国が、リビア反体制派への対応をめぐり割れている。アフリカ連合(AU)には反体制派承認を見送り、カダフィ大佐側への支持を続ける国も。一方で反体制派支持に回る国も続出している。 「アフリカの盟主」を自任したカダフィ大佐はAU創設を主導。同政権は石油マネーを背景に毎年、AU予算の15%を拠出し、一部貧困国の負担金も肩代わりしてきた。アフリカ統一を目指す大佐が掲げた「アフリカ合衆国」構想への支持取り付けのため、各国への資金援助も推進してきた。AUはリビア内戦開始後、大佐側と反体制派の対話を通じた政治的解決の必要性を主張。AUの調停役を務めた南アフリカは、カダフィ政権時代に凍結された資産の解除に関し、国連安全保障理事会の場で「国連やAUは反体制派を承認していない」として一時、反対を表明した。AUの姿勢の背景には、リビアへの空爆を続けた欧米諸国に対する反発と警戒心がある。植民地時代の記憶が強く残るアフリカでは、欧米の軍事介入には反対論が圧倒的。支持を表明したアフリカの首脳は、国際社会の傍観が批判された1994年のルワンダ大虐殺を経験した同国のカガメ大統領ぐらいだった。反欧米でカダフィ政権と一致してきたジンバブエのムガベ政権は、反体制派にくら替えした同国駐在のリビア大使の追放を検討しているという。 一方でAU当局者によると、これまでに反体制派「国民評議会」をリビアの正統な代表として承認したアフリカの国は、エチオピアなど20カ国に上る。カダフィ政権の経済協力を受けてきたブルキナファソは同評議会を承認した上で、大佐の亡命を受け入れることが可能と申し出た。


AU諸国のリビア観、なかなか微妙なのである。リビアはAUの中で大きな位置を占めており、経済的にも大きな影響力をもっていたこと、それに恩を感じている国もある。またリビア同様の独裁政権と五十歩百歩の国(たとえばジンバブエ)もある。アフリカ諸国の多くが持つ、NATOが介入したことへの違和感。(ルワンダのカガメ大統領がそれを支持した事は、先進国の無関心こそがアフリカを悪化させるという信念だというのも、十分理解できる。)ブルキナの微妙な発言も面白いと感じる。ブルキナは台湾承認国である。わざと他の国との微妙な差異をつくりだすというスタンスをとっているのかな、と思う。
私は、今回の英仏伊を中心とした反政府勢力への軍事支援については懐疑的だ。カダフィが中東の狂犬と忌み嫌われてきた歴史は厳然としてある。しかし最近はそういう過激なスタンスも消えて、豊かな石油産出国に変化しつつあったのだ。石油利権をめぐる再編成を目指したものと邪推されても仕方がないのではないか。中国やロシアは出遅れ、投資の回収が危ぶまれている。そういう側面については、AU諸国は敏感だ。このリビア情勢、カダフィが拘束されないかぎり、まだまだどう転ぶかわからないと思っているのではないか。もっといえば、憲法さえない、他部族のこの国をどうやってまとめていくのか。また内乱になるのではないか。AU諸国はそういう事例を幾度となく身近に見ている。態度を決めかねるのも大いに頷けるのである。さてさて、どうなりますことやら。私はイラクのような混乱の予感がするのだが…。

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