2010年5月12日水曜日

銭形警部と少林サッカーを語る


 地理Aで気候の話をしている。ケッペンの気候区分で温帯はCの記号で始まる。Cs、Cw、Cfa、Cfbと4つの気候区がある。温帯とは、最寒月の平均気温が、18℃以下-3度の気候をいう。あとは降水量の季節的変化である。Csは地中海性気候である。小文字がSなので、夏乾燥するという気候である。Cwは、小文字がWなので冬乾燥するのである。こんな風にただ記号の意味を言うだけなら社会科教師はいらない。面白い話を50分にぎゅうぎゅう詰めにするのである。今日のブログでは、まずCwの話をひとつ。一番わかりやすいのは、Cwは香港の気候だと理解させることである。昔は、香港映画が頑張っていた。私の高校時代はブルース・リー全盛であった。最近の生徒は、あまり香港映画といってもわからないらしい。ただ「コートを着たりする香港映画はないよな。」という私の呼びかけには頷いてみせる。だいたいが開襟シャツ姿であり、スーツのビジネスマンはいても、コートまでは着ていることはあまりない。唯一の例外が、「少林サッカー」の兄弟子である。これは何度かTV上映されたので、案外見ている生徒もいる。要するにそういう気候なのだ。昔香港に夏行ったことがあり、200mも屋外を歩くとムッ~とするほどの湿気である。今年の1年生には帰国子女枠で、タイから帰国した日本人男子と、タイに長くいた韓国籍の男子がいる。彼らには、すこぶる判り易かったようだ。大笑いしていた。(タイのバンコクあたりはCwではないが…。)
 実は一番教えにくいのが、CfaとCfbの相違である。fの記号は、1年中雨がフルフルである。3文字目のaとbは、最暖月の平均気温が22℃を越えるとa、未満だとbになる。無味乾燥な説明だと”以上”なのである。まずCwと同様、代表的地域を教えてしまう。Cfaはわれらが大阪。Cfbは、ロンドンやパリである。どう違うのか?実はかなり違うのである。私は、これをいつも「トレンチコート」で説明しする。あの”銭形警部”のトレンチコートというと生徒はすぐ頷く。アニメ大国日本である。
 黒板に”銭形警部”をちょっと真剣に描く。笑いが起こる。トレンチとは、「塹壕」の意味で、WWⅠ(第一次世界大戦をいつも私はこう省略する。)の時、機関銃の登場で硬直した戦いになり、長い溝を掘ったことに由来する。この塹壕で兵隊が着ていたのがトレンチコートなのである。ちょいとばかし、このコートの着こなしについて語る。ベルトは結ばなければならないとか、そしてこれが重要なのだが、傘をさしてはいけないとか…。Cfbの雨は、Cfaのように”ザーザー”降る雨はすくない。霧雨と言うか、”ショボショボ”降るのである。だからCfb生まれのトレンチコートは帽子が付属する。日本で雨の日に、これを着るということは大変なのである。傘をさしてはいけないのだ。雨の違い、かなりステレオタイプの説明だが、気候区の違いの本質である。また、両方とも桜が咲くのであるが、Cfb・イギリスの桜は、花びらが散るのではなく、花を単位としてボトッと落下する。同じ桜でも種類が違うのか風情がないのである。(林望センセイのイギリス本にちゃんと書いてある。)
 
 絶え間ない広範囲な教材研究こそ、社会科教師の生命線である。と、今日は少々高慢に終わってみる。

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