2010年5月18日火曜日

USホロコースト博物館を語る


 授業でユダヤ教の話をする時、USホロコースト博物館の話は欠かせない。ユダヤ人の凄さを語ると共に、差別されている現実を語らねばならない。ESDの人権教育的課題である。ニューヨークに行った時、このUSホロコースト博物館にアムトラックを使って、ワシントンD.C.まで日帰りで行った。駅からタクシーを飛ばし、博物館に着いたのが正午前。運よく、カウンターのボランティアのおばさんが、すぐ入れる入場券をくれた。(普通はNYSE:ニューヨーク証券取引所のように、時間指定のチケットをくれる)厳しい入場チェック。それが済んだら、やっとパスポートを手に入れることができる。そのパスポートは、ホロコーストで命を落としたユダヤ人の身分証明書である。今日はその人物と共に回るというわけだ。
 ナチスが、ユダヤ人狩りの際使った「目の色の判別板」や「鼻の計測器」などは、ここでしか見れないだろう。この博物館はアメリカには珍しく写真撮影が不可である。ノートにスケッチしておく。私は一応歴史的な理解は十分しているので、それらの展示を足早に駆け抜け、虐殺の展示階へと進む。そこには、貨物列車が行く手を阻むように展示してある。この中を通らなければ次へと進めないのである。収容所へユダヤ人を運んだ貨物車であることは一目瞭然である。中を通ると、私は霊感がない方だが、妖気が漂っているのがわかる。鬼太郎なら、妖気アンテナがビンビンであろう。収容所に入る前に没収された、ナイフや眼鏡や入れ歯や、様々なものが透明のプラスチックの柱の中に山積みされて展示されている。その数、膨大。アウシュビッツの門をくぐる。虐殺に使われた毒ガス(正確には農薬だが…)の缶。赤いラベルに髑髏のマークがある。シャワー室から焼却炉までの流れは、真っ白な模型で展示してある。
 SS(親衛隊)による人体実験のビデオなどは、子供にはショックの大きすぎるので、ちょうど井戸を囲むように子供の背丈では見れないように展示してある。大人は井戸の中を覗くようにして鑑賞することができる。収容所が解放され、多くの虐殺された遺体の処理映像など、注視に堪えない。ここに来た誰もが疲れるのであろう、椅子がある。他の人々も虚ろな目をして焦点が定まらない。それほど強烈なショックをこの博物館は我々に与えてくれる。さて、進もうと重い腰を上げる。
 最後の出口に繋がる通路の両側には、靴、クツ、くつの山である。凄い数である。ガラスで仕切られているのに凄いにおいである。最後まで我々の良心にショックを与え続ける博物館であった。<本日のの画像は、そのワシントンD.C.のワシントン記念塔のすぐ南にあるUS(日本語に意訳すれば国立であろう)ホロコースト博物館である。>これが、国立であり、首都の一等地にあることが、アメリカにおけるユダヤ人社会の強さを物語っている。私は今まで、アメリカでいろんな博物館をめぐった。だが、いつか教え子に行って欲しい博物館としては、この博物館がNo1である。授業でも、いつか自分の目で確かめて欲しいと言ってきた。詳細は、http://www.ushmm.org/までアクセスを。

6 件のコメント:

  1. 久しぶりにパソコンを開きました。
    やっぱり、先生のブログは興味深いです。
    背筋がゾクゾクするような感覚に襲われました。
    ユダヤの人々は、自分のこれからの運命を知っていて
    前に進んでいくしかなかったのですね。
    アメリカに行く機会があれば、ぜひとも行って見たいです。


    私も南京へ行った時、南京大虐殺の博物館へ行こうかと思いましたが、
    やはり怖くて歴史に目を背けてしまいました。
    私が大好きな台湾も、日本人が現地民を統治した時代があったのだと、改めて思い出しました。
    いつまでたっても無くならない争い。。
    いつになったら、人間は間違いに気付くのでしょうね。

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  2.  Yukimi君へ。
     今日TVで中国人旅行者のヴィザ発行が緩和されるというニュースあり。家電業界や百貨店業界が大きな期待感を示している。このニュースを見て、Yukimi君に伝えることを考えていたところ。中国語使いの需要がUpしている。中国人旅行者関連~就活に利用されたし。
     ところで、私なら絶対南京の博物館行くなあ。本多勝一の「中国の旅」読んでると、行かねばならないという使命感が出てくる。南京の中山陵でも銃弾の跡も見た。自分の目で確かめると言うことは重要なことだ。ウンウン。

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  3. 『世界一周恐怖航海記』、半分ほどまで来ました。
    「とにかくペシミズムあふれる本です。」納得です。
    本人は出家しなかったと言っていましたが、仏教本よりよっぽど仏教的な印象を受けました。
    佐々井上人について書かれた『破天』を思い出します。
    どちらも自分がいつも読む種の本とはタイプが異なるので面白いです。

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  4. 私には、著者の母親の影響も大きいように読み取れたのですが…。著者の奥さんは奇特な人ですね。まあ、うちの愚妻も良く似た感じです。同じように身体拭いてくれると思います。(笑)

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  5. 著者の母親の影響。まさしくその通りだと私も思います。
    P78の母のおしえが、お坊さんの説教そのものだと感じました。

    私は基本的に宗教は良く生きるためというより、死ぬための準備だと思っているのでまだ必要としていません。

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  6.  哲平さんのコメント「私は基本的に宗教は良く生きるためというより、死ぬための準備だと思っているのでまだ必要としていません。」に対する私のコメント…「生死即涅槃だと私は思っております。」

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