2021年12月10日金曜日

受験の世界史B 研鑽ー7

http://medival.seesaa.net/article/460013007.html
中世のヨーロッパ史とくれば、ローマ教皇権力と世俗権力の変化が最も面白い。特に、ピピンの寄進、レオ3世時のフランク王国のカール大帝への戴冠、ヨハネス12世時の神聖ローマ帝国の成立(前述)、正教会との分離(前述)、グレゴリウス7世時の叙任権闘争とハインリヒ4世のカノッサの屈辱(前述)、そしてウルバヌス2世時の第1回十字軍、最盛期の「教皇権は太陽、皇帝権は月で有名なインノケンティウス3世時と、教皇権力は右肩上がりなのだが、その後衰退する。H高校で世界史Bを教えていた時、この辺は十分に研鑽済みだし、きちんと講じた記憶がある。十字軍については、7回あるのだが、勝利したのは第1回のみなので、後は詳しく講じなかった。今日の研鑽は、十字軍について詳しく研鑽しようと思う。

第1回十字軍(1096-99)セルジューク朝トルコの侵攻に対してビザンツ帝国の救援要請に答える形で召集された。1071年、マラズギルトの戦いでロマヌス4世が捕虜となり、アナトリアの支配権を失ったアレクシオス1世は、1095年傭兵の覇権を期待して、ウルバヌス2世に援助を求めた。教皇は、クレルモン教会会議を開催、カトリック世界によるイェルサレム奪還いう解釈で、武器を取って異教徒から聖地を奪還するよう訴え、群衆は興奮しこれに答えた、というのが、十字軍前段階の詳細。傭兵の派遣ですむどころか、人々は男女・貧富・老若を問わず、真摯な宗教心から富への渇望まで様々な理由から十字軍に参加した。

イスラーム勢力の分裂により十字軍は勢いを増し98年にアンティオキアを占領、エデッサ伯領やアンティオキア公領、トリポリ伯国(リビアでのトリポリではない)、小アルメニア王国、キプロス王国を樹立(十字軍諸国家)、99年にはイェルサレムを占領、イェルサレム王国(1099ー1291)を建てた。ロレーヌ公ゴドフロアが王位についた。第1回十字軍の指導者たちは、奪った封土として家臣に与えた。多くの十字軍参加者が帰国後、残った支配者は現地の人と共存し、貿易による商業活動も行ったが、主な関心は軍事で、ヨーロッパから騎士を雇った。

新しい戦闘的な修道会(騎士修道会)も生まれ、イェルサレムのユダヤ神殿跡近くに本拠を置いたテンプル騎士団(フランス:1119年承認)などが有名である。彼らは清貧と貞潔の誓を立てた修道士だが祈りよりも軍事に従事した。パレスチナに向かう巡礼の保護が第一の任務だったが、十字軍国家に守備隊を送りヨーロッパから聖地に金銭を輸送するなど任務が多様化し、莫大な富を蓄え、ヨーロッパにまたがる銀行支店網を展開した。

テンプル騎士団を含む三大騎士団が成立したのこもこの頃で、最も早く(1113年)認められたヨハネ騎士団は、イェルサレムのヨハネ修道院に病院を建て医療に従事するとともに、2つの要塞と140の砦を守っていた。当時はホスピタル騎士団とも呼ばれていた。イェルサレム陥落後は、トリポリやアッコン(現アッコー:地中海沿いの美しい街である。)を死守していたが、陥落後は、キプロス島へ逃れ、さらにビザンツ帝国のロドス島を奪い、本拠を移し、ロドス騎士団となる。1312年にテンプル騎士団が解散させられ、その財産が没収された時、多くこのがヨハネ(ロドス)騎士団に与えられた。イスラームと戦う唯一の騎士団(実態は海賊行為)故に多額の寄進も集まった。ちなみに、後1444年マルムーク朝、1480年にオスマントルコの襲撃を受けたが撃破。しかし1522年、スレイマン大帝の20万の兵には勝てず(ロドスは7000の兵)、シチリアに撤退した。教皇クレメンス7世と神聖ローマ皇帝のカール5世の斡旋でマルタ島に移動。賃貸料はシチリア王への「マルタの鷹1羽」であった。マルタ騎士団となってからも、イスラームやヴェネツィアのユダヤ人への海賊行為を続ける。1565年に再度オスマン軍の襲撃があるが、スペインの救援とスレイマンの死でかろうじて防衛した。ナポレオンがマルタを占領した際は、正教会のロシアを頼った(総団長の座を皇帝に献上)が、1803年にはカトリックに戻る。現在は、ローマに本拠を置く国土を有さない主権実体で110か国と外交関係を持ち、120か国で医療活動を行う。国際赤十字やIOCと同様の非政府国際団体として国連のオブザーバーの地位にある。

もう一つの騎士団はドイツ騎士団である。聖地巡礼を護衛、医療活動を行う目的で設立され、1198に公認されたが、主に1266年以降、プロイセンへの布教・開拓を主任務とし大規模な東方移民を推進し、ドイツ騎士団領を形成した。

一気に第7回十字軍まで研鑽するつもりだったのだが、騎士修道会、特にヨハネ騎士団がマルタ騎士団に繋がることが面白くて、ついつい長くなった。…つづく。

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