2012年8月11日土曜日

イスラエル考現学 IDF

【イスラエル-(超)多文化共生(強制)の地を覗く-その6】
エレサレム旧市街ユダヤ人地区にて
イスラエル考現学その4は、『IDF』(イスラエル国防軍)の話である。イスラエルは常に戦争の危険にさらされている。というより、戦争状態が普通だといったほうがいい。エレサレム市内でも、銃を持った兵士が普通に歩いている。平和日本からやってきた旅行者にはあまりに刺激的な光景である。観光土産店には、IDFのTシャツやキャップが普通に置いてあるし、ティベリアのガリラヤ湖畔の夜店では、ウジ軽機関銃やヘリコプターのおもちゃが並べられていて、『軍』が極めて身近な存在となっている。イスラエルは、男女ともに徴兵制を取っており、高校卒業後男子は3年間、女子は2年間兵役に服することになっている。

この18歳での徴兵というシステムについて考えてみたい。息子が面白い統計の話をしてくれた。「国内の学力テストの、成績順に言うと、1位:キリスト教徒のアラブ人、2位:ドゥルーズ派、3位:ユダヤ人、4位イスラム教徒のアラブ人という結果だったらしい。」かの優秀で知られたユダヤ人が3位とは驚きだが、徴兵制が大きな影を落としているらしい。息子のところの大家さんの奥さんが高校で音楽を教えているとのこと。彼女は初対面の時、私に「日本の高校生は静かに授業を聞いているか?」と真顔で質問してきた。彼女によると、ユダヤ人の高校生は、かなり学業に不真面目らしいのだ。どうせ勉強しても、3年間は兵役につく。大学に行くのはその後。なにより兵役中に戦死するかもしれない。少なくともその可能性はある。と、いうわけで、心の深層に、そういう虚無感があるらしいのだ。だから、高校時代は青春を大いに楽しむことに費やされるらしい。アッコーのB&Bに宿泊した際、斜め前の家でパーティーが開かれていたようで、大音響のラップが聞こえてきた。静かな住宅街だったので、びっくりしたのだが、高校生らしき青年が集まっていた。また、ティベリアではヒッチハイクで旅する高校生を何人も見た。彼らのそういう行動は、日本の高校教師にも十分理解できる。

一方で、女性もこの兵役で一人前のイスラエル女性になるらしい。大家さんがこんなことを言っていた。「奥さんは兵役年齢を超えてからグルジアから移民してきた関係で、兵士の経験がない。だからいいんだ。イスラエルの女性は気が強すぎる。」(笑)これも徴兵制というシステムが生む問題?かもしれない。

ヘブライ大学のカフェテリア前のモニュメント
ところで、今日の毎日新聞朝刊に、レバノンのヒズボラから大量の爆発物を運び込んだアラブ系イスラエル人を今月8日に逮捕したというニュースが書かれていた。7月中旬にナザレの街に保管していらしい。おいおい、私たちは、ナザレにも行ったぞ。数時間やばい爆発物の近くにいたわけだ。息子が通うヘブライ大学にも、テロのモニュメントがある。それは、カフェテリアの前にある。爆風で曲がってしまった木をそのまま植えてあるのだ。幸い、私たちの滞在期間中は何事もなかったけれども、イスラエルは常にそういう危機にさらされているわけだ。様々な犠牲を払いながらもイスラエルにとって『IDF』の重要性はかわらないようだ。

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