2011年10月5日水曜日

『アフリカの死んだ心臓』 チャド

幻冬舎新書の新刊『世界の独裁者ー現代最凶の20人』(六辻彰二)を読んでいる。新聞で広告を見た時、サブ・サハラ=アフリカの指導者が多いだろうと予測できたが、20人中8人を占めていた。目次に従って書き留めてみると、ムガベ(ジンバブエ)、バシール(スーダン)、アフォルキ(エリトリア)、ンゲマ(赤道ギニア)、ゼナウィ(エチオピア)、デビー(チャド)、ムスワティ3世(スワジランド)、ビヤ(カメルーン)となる。
ムガベやンゲマ、ムスワティ3世の事は、このブログでも取り上げたことがあるので、今日はこの中から、「アフリカの死んだ心臓」と呼ばれるチャドのイドリス・デビーについて書かれた個所を中に紹介したい。チャドは、アラル海とともに砂漠化の進展で面積が激減したチャド湖で知られるアフリカ中央部の内陸国である。2009年のHDIは、175位/182カ国である。詳細は以下のPDFファイルをご覧いただきたい。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/10_databook/pdfs/05-29.pdf

チャドは、クーデターの内戦の連続であった。1990年までに7人の国家元首が生まれては殺害されるか亡命してきた。北部には、イスラム教徒が多く、南部にはキリスト教徒が多いという宗教分布。多彩なエスニックグループ。カダフィのリビア、スーダンのダルフールとも接し、天然資源の罠という側面から見れば、北部でウラン、南部で石油資源がある。まあ、見事に紛争の罠にはまるパターンである。ここに、宗主国フランスとの関わりも出てくる。

このようなチャドにあって、イドリス・デビーは、北東部で牛飼いの息子として生まれ、首都ンジャメナの士官学校卒業後、フランスに留学、76年にパイロットとして帰国した。出自はともかく優秀なエリートだったことは確かだ。紆余曲折があって、ある時は親リビア、ある時はスーダンに潜伏、親フランス派として石油をカメルーン経由のパイプラインで輸出すると思えば、アメリカに石油開発を開放したりして、超現実主義的に立ちふるまっているのだった。カダフィが失権し、スーダンも国際的非難を受けており、フランスもアメリカも急速に力を落としている。そうなれば毀誉褒貶の塊のような独裁者であるデビーが、どこまで権力を維持できるのか、はなはだ不安定である。

問題は、彼が失権する云々ということよりも、チャドの政府の腐敗度が世界有数であること、世界銀行等からの融資にあたって、透明性を高めるように回答しながらも、貧困撲滅のための開発にレント(石油やウランによる利益)をなかなか回さない、典型的なアフリカの悪いガバナンスであることである。まさに、ポール・コリアーの指摘する四つの罠の典型であるといってよい。選挙の状況も、デモクレイジーそのものである。

まさに暗澹となる話なのだ。『アフリカの死んだ心臓』とは、ちょっとブラックだが、アフリカ中央部に位置する独裁者デビーの国をうまく表したコピーだなと思う。チャドの罪のない人々が豊かな生活を送れるように、願わずにはおれない。

追記1:山口国体に大阪代表として出場していた柔道部のF君は団体戦中堅として頑張ってくれたようだ。3回戦まで進出したが、埼玉県に敗れたとか。大学は柔道の名門T大学に進むという。さらに夢を追いかけて欲しい。
追記2:本日、息子がイスラエルより帰国してきた。なにかと所用があるらしい。いっぺんに賑やかになった。
追記3:先日(10月1日付ブログ参照)書いた総合的学習の時間であるが、予定どおり世界地図を描いてみるというアクティヴィティをやってみた。”笑っていいとも”風に、順番に生徒の書いたヒドイ世界地図にバッテンを付けてみた。1枚だけなかなか良い地図もあって、三重丸をつけた。大いに盛り上がったのであった。(笑)

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