2011年10月26日水曜日

中所得国の罠

六本木の政策研究大学院大学
今朝モーニングで、またまた日経を読んでいて、これは資料として取っておかなくてはと思った記事があった。「経済教室」: 新興国経済の課題(上)国際資本の流出入監視を(大野健一 政策研究大学院大学教授)である。思わず、帰りにコンビニで買ってしまった。130円は安い。(笑)

カテゴリーとしては、もちろん開発経済学に入る論文である。またまた高校生にわかるように、かいつまんで説明しておこうかなと思う。ちょうどグローバリゼーションとアフリカについて語っている。昨日今日と、リーマンショックとギリシャ危機について語っていた。人、モノ(商品)が国境を容易に超えるというのも、アメリカ化が進み、伝統文化の危機が叫ばれるのもグローバリゼーションの大きな側面だが、私はカネ(特に金融資本)の国境を越えた怒涛のような流れが最も重要だと思っている。貧乏教師にとっては全く縁のない世界だし、それ以上に高校生にとって縁のない世界である。それだけ説明が難しい。しかし、この話を抜きに現在進行形の開発経済学は語れないと思うのだ。

大野先生は、こう最初に述べておられる。『工業化の道を歩み始めた新興国が順調に成長を続けるには、3つの政策を実行せねばならない。①資源や外資に依存することなく国内で価値を生み出すための生産性・革新の促進、②所得格差、環境破壊、都市問題などの成長が生みだす諸問題への対処、③国際統合がもたらす新たなマクロショックの管理の3つだ。いずれが欠けても、高所得に到達する前に失速する「中所得の罠」に陥ってしまう。』

グローバリゼーションのおかげで、世界を駆け巡る巨大資金が利潤を求めて、国益やモラルを超えた時点で自己運動している。しかも民間資本取引の自由化で、通貨・株式・債券・商品・不動産、およびそれらの金融派生商品(デリバティブ)が目まぐるしく取引されている。先進国の資本のこのような自己運動が、時として(リーマンショックやギリジャ危機のように)世界経済を大きく傷つける。途上国から見ると、この動きは自国の政策と無関係な場合も多い。まさに風が吹いて桶屋が儲かるという感じで、どこか遠くの問題が、自国の通貨を暴落させたり、投資を引き上げさせたりするのである。最近目立つのは、金融市場がある程度発達した新興国の株・債券・不動産に向かって投資を増やしていることである。新興国・途上国に入り込んだ資金は、その国の経済規模とは関係がない。利益があると思えば流れ込んでくる。工場や農園の建設にはあまり回らないで、都市部の不動産に向かうことが多い。建設ラッシュは、消費ブーム、輸入急増へと波及する。実質のない、バブル経済である。

ベトナムの最近の画像です
この典型的な例がベトナムである。同国が(社会主義国故に)国際金融から隔離されていた90年代は、アジア通貨危機の被害も軽微で、物価上昇率も1桁台だった。だが、00年代、株式市場の創設、金融自由化、域内貿易の拡大、WTO加盟などによって、対外ショックを受けやすくなり、資産変動とインフレ体質が定着してしまったのである。今年の消費者物価上昇率は20%前後、とりわけ大都市の地価が高騰している。今や、資産を持ちマネーゲームに参加できる都市の富裕層と農村出身者の格差が急激に拡大している。(論文は、この後、統計の実施や景気過熱への監視、外貨規制、株・不動産取引規制、不労所得吸い上げのための税制など様々な政策提言を行っている。)

うーん。なるほど。アフリカでベトナムのように新興国と呼べる国はまだまだ少ないが、アジアの開発経済学の視点はこのような段階にきているのかと、今さらながら考え込まされた次第。明日の経済教室<下>も楽しみである。

ところで、今日は本校の視聴覚行事の日であった。3限目で授業は終了し、昼から大東市のサーティホールというところで、ビッグバンドのスウィング・ジャズを聞いた。教育的なプログラムなのでスウィングの名曲のてんこ盛り。なかなか良かったのである。ホールを出ようとしたら、部活動をするために、自転車でどっと帰校する生徒の群れに出会った。まるで昔の上海であった。気をつけて走れよぉ。(笑)

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