2025年8月17日日曜日

ルソーからヘーゲルへのリレー

https://keu-blog.com/he-geru/
「伝授!哲学の極意! ー本質から考えるということはどういうことかー」(竹田青嗣・苫野一徳著/河出新書)の書評第8回目。ルソーの社会契約説をヘーゲルは批判し、近代民主主義社会の原理を最終的に確立した、ということ。

ヘーゲルの時代は、イギリスの初期資本主義のひどい矛盾が露呈した時代で、単に契約によって自由を認め合うだけではだめだ、というわけだ。近代国家は、自由競争が生み出す大きな貧富の差を調整するような役割を果たさないと行けない。ここで、前述(8月13日付ブログ参照)の「人倫」が登場する。人倫における国家において「一般福祉」(万人が福祉を得られるように配慮する原理)を付与することになる。

…「人倫」の概念は高校生にはかなり難解だと思われる。人倫というのは、法・道徳を統合した概念(社会全体の倫理的な枠組み)であり、その体系は家族・市民社会・国家と弁証法的に発展するとしたもの。今回のキーワードである「一般福祉」の概念は、利害の対立する市民社会から国家へと止揚される中で生まれている。

…カントの道徳が個人的内面的な自律的な行為による自由であるのに対し、ヘーゲルの人倫は社会制度や慣習の中で実現する自由を重視したものといえる。

近代民主主義社会の根本原理は、「自由の相互承認」であり、法=権力の正当性の原理は「一般意志」である。一般意志を目指し続ける国家は、同時に「一般福祉」すなわち全ての人の自由、福祉、よき生の実現を目指し続ける国家であり、そのような国家でなければ正当性を持ち得ない。

…これが、本書の前半部の重要な結論といえるわけだ。

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