2025年6月18日水曜日

これまでにない戦争である。Ⅲ

https://worldheritagesite.xyz/masada/
どうやら、アメリカが参戦するようである。トランプは「無条件降伏」という語をイランに突きつけたようだ。最大のウラン濃縮施設を破壊するためには、アメリカが所有する最も破壊力の大きいバンカーバスターが必要で、それはB2爆撃機のみが落とすことができる。最後の警告であり交渉である。強硬派に見えて戦争をしないトランプも、ここにきて最後のカードを切ったわけで、イランがどう出るかだが、テヘランを始めとした制空権を失っている現状ではイランに勝ち目はない。

今回のイスラエルの先制攻撃は充当に準備され、モサドや特殊部隊が制空権を得るために、また重要人物へのテロを実行するためにかなり前から準備してきたことがわかる。https://www.youtube.com/watch?v=nXFHV6swYhM

さて、前回のエントリーに引き続き、イスラエルの側からの視点。ガザの問題の際のときのものだが、参考になる。https://www.youtube.com/watch?v=mpr9YZeDd_A

タルムードのサンヘドリン篇72章1節に「誰かが殺しに来たら立ち向かい、こちらが先に殺せ」というのがある。タルムードは、ユダヤ教の聖書(=旧約聖書)の注釈で全60巻もある。アシュケナジが中心となって編纂されてきたもの。で、現政権がアシュケナジの正統派主導であることを示唆していると私は見る。古来より、ユダヤ民族は何度も存亡の危機に立たされてきた。現在も高校を卒業した新兵は、西暦66年のユダヤ戦争で、ローマの前に敗れ集団自決を行った場所・マサダ要塞(世界遺産:画像参照)で入隊式を行う。高校の修学旅行は、ポーランドのアウシュビッツである。英委任統治領時代から戦い、独立の翌日から中東戦争が始まっている「国家がなければ自分たちを守れない。」という覚悟が、イスラエル国民にはある。イスラエルの国是というか、正義がここにある。イランのウラン濃縮度が60%を超えてきたことは、イスラエルにとって、国家安全上の重大問題であることは、たしかにいがめない。

さて、両者の正義がぶつかり合い、どうこれから進展するかはわからない。十二イマーム派もユダヤに近いアリー以後の苦難の歴史を有しているので、互いに折れることはないような気がする。

2025年6月17日火曜日

祝 大谷選手の投手復帰

https://www.sankei.com/article/20250617-KXA74UHDONOC7NVUOAK7WJ5KJY/
パドレス戦で、大谷投手がたった1回だったが先発して、なかなかすごい投球を見せてくれた。数字的には被安打2で自責点1を献上してしまったが、魂のこもった投球だった。もっと投げたかったという野球少年のような言葉が、その全てで、チームを見事に牽引し、自身もタイムリーを放ったりして勝利に貢献した。

これから、少しずつ球数や投球回数を増やしていくのだろうが、今日はその第一歩。稀有な二刀流として怪我なく過ごして欲しい。

2025年6月16日月曜日

これまでにない戦争である。Ⅱ

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1605125
イスラエルは、イランの心臓部である石油・天然ガス関連施設を続いて攻撃した。イランもテレアビブに引き続き報復攻撃をしている。互いに引けない状態に突入したといえる。

イスラエルは、イランに国外脱出を勧めると宣言したようだ。これは、核攻撃ではなく、各施設へのバンカーバスター攻撃による放射能被害を想定しての話だと私は思う。もし、イスラエルが核を落としたら、ほぼ全世界を敵に回すことになるだろう。

ところで、イランの十二イマーム派は、正統カリフ第4代のアリーの子孫を正統とみなす。ムアウィアーとの戦いに敗れた悔しさを、アシュラという苦行で再確認するような宗派である。いわば、隣国の「恨」に近いものがある。それ故に、イスラム革命で親米であったパーレビ朝が倒され、十二イマーム派の原点、宗教指導者が指導する国に戻ろうとしたのである。イマームの歴史をたどると、なかなかの人物が輩出されており、十二人目のイマームは隠れたままである。十二イマーム派の信仰心はかなり厚い。

イスラムで民主主義社会は形成されにくい。トルコのように完全に政教分離するか、マレーシアのように王政(スルタン制)下の立憲君主国化するか。アラブの春で、多くの共和国が批判され、それはある程度証明されてしまった。特にイランの社会体制では、民主主義は形式的でしかない。専制政治と揶揄されてもしかたがないが、それがイランにおける正義なのである。

欧米キリスト教諸国は、民主主義の限界を知りつつも、正義であるとしている。イランの価値観・正義を理解するのは難しい。トランプの得意のアメリカのプラグマティズム的「交渉」が、イランを必ずしも動かすとは思えない。すでにアメリカは、イラクやアフガニスタンで民主主義を確立しようとして見事に失敗している。

まずは、イランの側から見てみた。価値観の大いなる相違、恐るべしである。

2025年6月15日日曜日

これまでにない戦争である。

https://kaiyoukokubou.jp/2024/12/29/bunker-buster/
イスラエルが、イランの核関連施設や軍事施設を空爆し、イランが報復を行った。テレアビブも攻撃された。両国の対立は、すでに戦争であるといっていい。

当然ながら、両国の報道は、ウクライナの場合同様、信用できるものではないし、実際にどれくらいの被害が及んでいるのかもわからない。

ただ、信用できそうなことは、トランプ政権が当初期限を切ったイランとの交渉期間の60日間の翌日にイスラエルが攻撃をしたこと。アメリカとしては、防御(ミサイルやドローンの迎撃)には関与していることを認めているが、(現時点で)攻撃には関与していないとしていることである。

一方、トランプは、心理戦で側面的に支援していたようで、イスラエルの攻撃は、すぐにはないだろうと発言し、これを受けてイランの軍や原子力関係者の会議開催を間接的に促した。それはモサドに筒抜けで、空爆で会議中に多くの指導者が殺害されたようだ。

これからどうなるか。焦点はイスラエルが、アメリカの誇る「バンカーバスター」(画像参照)をどれくらい購入(もしくは軍事支援)して核関連施設を破壊するか、である。そして、その放射能被害はどのようなものになるか、想像できない。

シーア派・十二イマーム派のイランは、多民族(60%のペルシャ人+アゼルバイジャン人・クルド人+アラブ人など)でありながら、宗教的には統一(90%)されている。シーア派は、スンニー派の六信五行ではなく、五信十行である。五信には、神の正義、預言者とイマームなどが入り違いがある。十行には、アシュラなどの苦行、ジハード(聖戦)なども入っている。意外に理性的判断を重視するという特徴もあるのであるが、その根底には好戦的な部分も強い。

すでに、「イスラエルに死を」という、イラン革命時のスローガンの「シャー」(国王)がイスラエルに変換されている。戦前・戦中の「鬼畜米英」のようなもので、当時の日本のように超専制的で超集団主義的な匂いが漂う。これから先を注視していきたい。

2025年6月14日土曜日

世界奇景探索百科4(番外編)

https://www.500type-eva.jp/gallery/

https://www.traicy.com/posts/20240326294090/
日本人にとっては、決して奇景で反ないのだけれど、非日常的ではある公共交通機関への様々な遊び心のペイント等が、外国人には奇景として映るらしい。上の画像は、エヴァンゲリオンの新幹線とR2D2のANA。https://www.youtube.com/watch?v=DE1DQSiLu4o

これも日本的おもてなしの発露であるようだが、こういうオリジナル化はまさに日本文化の特徴であると私は思う。こういうペイントは、近隣では、京阪の私市線の「機関車トーマス」ペイントがあるし、決して珍しいことではない。JR四国で「アンパンマン」特急に乗ったこともある。(笑)

https://www.tiktok.com/discover/
YouTubeで、「ネコバスの地下鉄」を見た時は驚いたが、さすがにこれは合成らしい。あまりに非日常的すぎる。本当にあったら奇景中の奇景だし、流石に私も乗ってみたい。(笑)

2025年6月13日金曜日

世界奇景探索百科3

https://ameblo.jp/kohei-kkk-kohei/entry-12876138021.html
世界奇景探索百科の書評3回目。気になった記事から本日は、エジプト・カイロにあるマンシーヤ・ナーセル地区の南側・ザバリーン(アラビア語で”ゴミの人々”)と呼ばれ、カイロの家庭ゴミを集めてくる場所の話である。

カイロの人口は1700万人を超えているが、市によるゴミ収集は行われていない。その代わりに数万人のフリーランスのザバリーンがいて、何十年もの間、このゴミ収集を生業としてきた。トラックやロバに引かせた荷車でマンシーヤ・ナーセルに運び、リサイクルや再利用を行い、不用品は売却する。プラや金属は入念に分別し、廃品として売却。有機体のゴミは豚の餌にする。

…豚?

https://ameblo.jp/kohei-kkk-kohei/entry-12876138021.html
実は、ザバリーンは、キリスト教の一派・コプト教徒である。故に豚を食することができる。国民の80%がイスラム教徒であるエジプトでは、常に迫害の対象であった。2003年、政府は産業廃棄物処理の企業を雇い、ザバリーンを格下げしようとしたが、回収所までゴミを運ばなければならない企業のシステムより、手数料が必要だが各戸まで取りに来てくれるザバリーン回収システムのほうが人気だったし、リサイクル率も企業たったは20%、ザバリーンはなんと80%で、明らかに生産性が高いので、結局企業による実験は終了したという。

コプト(正)教は、歴史のある合性論のキリスト教である。イエスの位格は、神性と人性は合一であるとするのが合性論で、単性論(イエスに神性のみを認める)ではない。合性論の教会は、他にアルメニア正教や、エチオピア正教がある。

https://ameblo.jp/kohei-kkk-kohei/entry-12876138021.html
イスラム国家の中にある少数派のコプト正教徒。彼らは、ごみ収集を生業にして生き延びているわけだ。奇景であるとともに、その存在自体も奇であると思う。

2025年6月12日木曜日

世界奇景探索百科2

https://www.xiaolongbao.work/entry/2018/09/02/180940
通勤時に一応読破したので、久々に「世界奇景探索百科」の話題。この本の中で、私が行ったことのある奇景は結局3つだけあった。まずはそんな話から。

まずは、日本で長崎の「軍艦島」、たしかに世界的な奇景と呼ぶにふさわしい。上陸していないのが悔やまれるところである。

さらに、マレーシアのタイプーサムで有名な「バトゥ洞窟」。1890年にタミル人の実業家が、洞窟の入口がムルガン(シヴァ神とパールヴァーティの息子のスカンダ神の別名)の持つ槍(=ヴェル)のようなカタチをしているのに気づき、ひらめきを得て寺院を作り聖地に変えたというのが由来らしい。タイプーサムは、パールヴァーティがムルガンに槍を与えたのを祝う祭りである。上記画像の金色の神像がムルガンである。

3つ目は、コラム的なその他の見どころに掲載されていた「ミュージアム・オブ・マン・アンド・サイエンス」南ア、ヨハネスブルグの呪術用品の店である。アフリカの紹介編のパワーポイントで、多くの生徒に見せてきた店である。

気になった記述について、以後少しずつ記しておこうと思う。

2025年6月11日水曜日

アシュケナジ出自論争

カトリックの信徒であるT先生に、「アシュケナジ(中欧・東欧にいたユダヤ人)はユダヤ人といえない、と私は思うのですが、どう思いますか?」と聞かれた。この論法は、9世紀にハザール王国(突厥などの遊牧民やスラブ系の王国。)が、ユダヤ教に改宗したという説に基づいている。アシュケナジは、アブラハムの血統(DNA)とは言えないというわけだ。

この論争については、①人種とは何かという問題と②民族とはなにかという根本的な問題、さらに③ユダヤ人とユダヤ教の関係性の問題が絡んでいると私は思う。

①現在の地理では、人種という概念(生物学的とされた皮膚の色などによる分類:以前はモンゴロイドとかコーカソイド、ニグロイドに大別されていた。)は、教えない。社会的な歴史的要因を重視するようになっている。アブラハムが現実に存在していたとして、彼はメソポタミアのウルの出身(コーカソイド)とされている。長い歴史の中で彼の持つDNAは、かなり拡散されているといえるだろう。

②民族とは、地理の教科書(帝国書院)では、「同じ言語や慣習、歴史などを共有することから、共通の帰属意識をもつ集団」と定義されている。

③ユダヤ人は、②の定義から、ヘブライ語(モーセ五書やタルムードなどはヘブライ語表記である。)を用い、ユダヤ教の律法を基本に生活し、ユダヤの歴史(聖書の記述)を共有していると言える。(但し、ヘブライ語は本来文語であり、イディッシュ語やラディーノ語で生活してきたユダヤ人も多い。)ハラーハ(ユダヤ法)では、ユダヤ人の母親から生まれた者、正式な手続きをしてユダヤ教に入信した者とされている。よって、ユダヤ人=ユダヤ教徒という見方ができるわけだが、中世ヨーロッパでの迫害の中、キリスト教徒として生きることを選んだ者もいるし、律法を厳守しない世俗派もいるし、ユダヤ教もヘブライ語も全く理解していないDNAの繋がっただけのユダヤ人も存在する。

私は、ニューヨークのシナゴーグで、黒人女性のユダヤ教徒と親しくなった経験がある。生物学的な人種でユダヤ人は語れない。エチオピアにディアスポラした者で、長い歴史の中で黒い肌のユダヤ人が多数存在し、イスラエルに移住した者も多い。彼らがユダヤ人としての帰属意識を持っていれば、ユダヤ人であると言う他ない。

エルサレムのイスラエル博物館には、ディアスポラ後の様々な地域のトーラーやシナゴーグの展示がある。インドや東南アジアにまで、広がっていて驚く。ユダヤ人は、完全に人種という概念を超えている。また、南欧や北アフリカのスファラディ、中東から南アジアのミズラヒム、欧州のアシュケナジなどの地域別な文化の相違もある。ただ、ヘブライ語という基本言語やユダヤ教の聖書などの共有は頑然と存在している。

なにより、ハザール王国には、改宗者と他から招かれたユダヤ人も存在したようだ。でないと、国ごと改宗することは指導者なしでは不可能である。長い歴史の中で、DNAは交錯しているはずだ。アシュケナジは、ユダヤ人ではないという論には、こういう問題点が潜んでいると思う。

そもそも漢民族だって、匈奴や女真とDNAは交錯しているし、ロシア人もモンゴルと交錯している。日本人も当然で、純粋な縄文人のDNAを持つ人はかなりの少数派ではないか。弥生人や渡来人との交錯があって普通であろうと思う。

このアシュケナジ=ハザール王国出自論は、そういう意味でナチのニュルンベルグ法(ユダヤ人の規定を行い、迫害を進めた。)のような気持ち悪さを感じるのである。

ちなみに、松岡正剛の千夜千冊に記された「ユダヤ人は誰か」(アーサー・ケストラー)のほうが面白そうである。https://1000ya.isis.ne.jp/0946.html

2025年6月9日月曜日

ロスの不法移民を守る暴動

https://www.youtube.com/watch?v=7A20gHwWgKM
YouTubeのカナダ人ニュースで、ロスで起こった不法移民を守るための暴動について貴重な情報が流されていたので共有したいと思う。https://www.youtube.com/watch?v=7A20gHwWgKM

6月7日に、トランプ大統領は、CA州の州兵2000人の出動命令を出した。さらにCAにいる海兵隊もいつでも出動できる準備をしているという。これはただごとではない。前日にICE(移民関税執行局)による大規模な不法移民の取締を行ったのだが、ロスの警察が何もしない故にICE施設が包囲され、車への放火やブロックの投石などで負傷者が出たうえに、近隣のコンビニでは略奪も起こったという。

このバックには前民主党政権時にCA州や連邦政府によって資金援助されていた左翼組織がいるようで、アンティファ、CHARLA(人道的移民権利連合)、中国共産党の支援を受けているPSL(社会主義開放党)などの左翼団体などの名が挙がっている。

今回のICEが逮捕しようとしていた不法移民はかなりの重犯罪者であるのだが、左翼はこれを守ろうとしている。それは、前政権が目指した不法移民に選挙権を与え、選挙で民主党を有利に導くためという党利党略であることは明白だ。

税金が不法移民のために蝕まれ、まともな国民がバカを見ることに、現トランプ政権は妥協せず立ち向かう姿勢を見せているわけだ。日本も同様のステルス侵略を受けている。メディアは沈黙し、従順な国民は知らないうちに、税金を蝕まれ、気がついた時はすでに遅いという未来が来る可能性が高い。

隣国はベネズエラを目指す

http://polandball.jp/blog-entry-10271.html#google_vignette
隣国の大統領選で、左派政権がまた生まれた。石破首相は当然のように祝意を表したらしいが、欧米は無視。隣国大統領がまず行うアメリカとの電話会談、トランプ政権は拒否しているようだ。この辺、日本と違いはっきりと意思表明をしている。さらに、国連で先進国認定された後、先進国を引っ張っていくとか、とんでもない発言をして、世界中から顰蹙を買っている。なんとも話題の多い左派政権だが、文在寅政権以来の反日、断交などという言葉も早速出てきている。是非断交を実行してほしいものだ。日本製の重要な製品・資材が入らないと、隣国の自動車もIT関係も生産活動は崩壊する。

なお、三権分立を破壊し、司法も左派が抑えるようだ。これはベネズエラの資本主義から社会主義への移行政策を真似たものらしい。ベネズエラは石油埋蔵量が世界一で、石油企業の国有化で、その利益を国民にばらまいたのは良いが、油田の設備投資を怠った故に経済は崩壊、さらにハイパーインフレを招くような紙幣増刷も行った。これまでの世界経済を学んでいないとしか言いようがない。隣国は、経済を支えるヒュンダイなどの財閥を国有化し、ベネズエラの石油と同等に考えているらしいが、前述のように日本と断行したら見事にしっぺ返しをくらう。経済音痴が政権を担うと、国民が困窮するだけだ。

日本は、これまでアメリカだけでなく、中国や隣国とも波風を立てないようにやってきた。それが戦後日本の美学であるが、このあたりで媚中派・媚韓派の政治家を排し、言うべきことは言った方が良いと思う。

媚中派維新の元凶のハニトラが改めて報道され、父親が反社であったことや、従兄弟が同様に犯罪者で出所後に、元凶の盟友Mによって政治家秘書となったことなどが明白(名誉毀損の裁判で事実認定された)になった。同じような疑いが濃い外務大臣を筆頭とする多くの媚中派・媚韓派は、外患を引導しており、内乱罪を問われてもおかしくない。

隣国はベネズエラを目指す。(ちなみに、このタイトルは五木寛之の”青年は荒野を目指す”のパロディである。)日本は、このままだと(事実上中国の属国となった)ラオスを目指すことになる。

2025年6月8日日曜日

僻地を行くYouTube

https://wikimapia.org/17813/ja/%E3%83%90%E3%83%AD%E3%83%BC-%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%AB%E5%B7%9E#/photo/1297841
地理を教えていて、私などは比較的いろいろな土地を旅した”一見”があるのが強みである。生徒諸君は各地の経験談を非常に喜んでくれている。とはいえ、私の行ったことがない土地を知るのに、YouTubeは実に有為である。

私が足を踏み入れていない気候区は、前述のようにETとEFくらい。先日、アラスカの最北端のバローに行ったYouTubeを見た。https://www.youtube.com/watch?v=7qCy43gB7ic

永久凍土なので、アスファルト塗装ができないとの情報は実にありがたい。また空輸のみしか輸送手段がないゆえに物価は高い。意外にカップヌードルも売ってたり、OSAKAというレストランがあったりと、興味深かった。ただ、ツンドラがなかったので、蚊が無茶苦茶多いということもなく、これは反対に意外だった。シベリアとはだいぶ違うようだ。

もうひとつ、中国のウィグル自治区の最西端に行くYouTubeも見た。悪名高いウィグル民族への漢民族による迫害の地であるが、意外にウィグル人の警官がいて、温厚で愛想も良さそうだった。外国人観光客も多かったようだ。パキスタンとアフガニスタンとの国境、行けるところまでまで行った内容。ここは授業でほとんど教えない、H(高山)気候である。チベットもそうだが、日本には全くない凄い景色が印象的であるし、ヤクに乗るというアクティビティもあるよううだ。https://www.youtube.com/watch?v=TUkoExSZW9g&t=2149s

昔は、実際に行くか、TV番組でしか知り得なかったことが、百聞ではなく”一見”に繋がっている。だが、やはり半分は”百聞”でしかない。自分自身で体験する”一見”の重要性は変わっていないように思えるのである。

ラジエターに難あり

https://auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t1122703398?cpt_s=onlineads&cpt_m=websem&cpt_c=webp
la&cpt_n=280497681_aud-384044827646:pla-381481861571_70752603081_c&gad_source=1
愛車の半年点検に行ったら、ラジエターから水漏れがあって、1時間以上走ったりするのは危険というので、部品と代車が来たら整備工場に入院ということになった。

マレーシアから帰国後、四国に行く前に購入した中古車で、そもそも古い車の上に5年ほど乗っている。四国ではだいぶ酷使したけれど、大阪に帰ってから遠出は年1・2回ほどである。そろそろ寿命なのかもしれない。私は気に入っている車なので、できるだけ長く乗りたいと思っている。

さてさて、どうなるのか、と思う。私の身体も同様に疲れやすくなっており、昨日などは、朝5時過ぎにおきたものの、朝寝で1.5時間、さらに昼寝で2時間と、睡眠過剰であった。車同様なのかなと思ったりする。

2025年6月7日土曜日

トランプ入国禁止12カ国

https://www.istockphoto.com/jp/search/2/image-film?
トランプ政権が、4日、原則として14カ国の入国禁止を発表した。アフガニスタン、ミャンマー、チャド、コンゴ共和国、赤道ギニア、エリトリア、ハイチ、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメン。さらにブルンジ、キューバ、ラオス、シオラレオネ、トーゴ、トルクメニスタン、ベネズエラの7カ国は、商用ビザ・学生ビザによる入国が禁止であるとか。

国家安全上の措置であるというのだが…。イスラムの過激派の多い国やかなり中国よりの国、厳しい専制政治の国、政治不安で混乱している国などがあり、理由は様々でありそうだ。

トランプ政権二期目の外交については、関税戦争を始め考察するのがが難しい。反グローバリズム的政策であることは確かなのだが、まだまだ判断しにくい状況にある。

2025年6月5日木曜日

アメリカ歴代大統領の祖先

YouTubeで、ワシントンからトランプまでの歴代大統領の祖先の国を示したものがあった。残念ながらそのURLを再度見つけることができなかったけれど、Wikipediaで元の資料を見つけた。多くは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、さらにはフランスやドイツ、オランダなどWASPバリバリである。ちなみに上記画像にある"Ulster scots"とは、北アイルランドに居住していたスコットランド人を意味している。初期のバージニア王朝はやはりイングランド主体。ワシントンにはフランスも祖先の国に入っていた。独立戦争を指揮したワシントンのバックには、支援してくれたフランスの影もあるのかもしれない。

強烈なのは、やはりJFKのアイルランド一国。アイリッシュの血が混じっている大統領もいるが、かれは特別である。オバマは、かなり祖先が多い。イングランド+フランス+ドイツ+スコットランド+ウェールズ+北アイルランド+スイス+ケニア(それも、故ピーター・オルワ氏と同じルオーであることを発見した。)となっている。

アイゼンハワーも面白い。ドイツ+スイス。UKの血が入っていないのはレアである。ナチのドイツと永世中立国の血を引く将軍がノルマンディー作戦を指揮したのだと思うと感慨深い。Tルーズヴェルトはオランダ系と学んでいたが、イングランドとフランスの祖先もいるようだし、トランプはスコットランドのブレスビテリアンだと思っていたが、ドイツも祖先に入っていた。

アメリカがいかに移民の国であるかがよく分かる。

2025年6月4日水曜日

アメリカの宗教事情のPP


地理総合の今年度の期末の範囲は、一神教の対比・カトリックと正教会の対比・プロテスタントの対比の、3つのパワーポイントで賄うことになった。
最後のプロテスタントの対比には、アメリカの宗教事情(どうしても歴史的な解説が必要になる。画像参照。日本史組にはキツイ。笑)と、利子に対する一神教全体の対比も付け加えた。教義面とも完全ではないが比例しているし、比較宗教学的なシメとした。

アメリカにおける福音派は人口の25%を占めており、世界価値観調査でも伝統的な価値観を重視するゾーンにアメリカが入っている。このことを理解して欲しいところ。現在のトラさん政権やイスラエルとの関連についてもキーとなる話だ。テネシー州の進化論裁判やエルサレムの第三神殿にまつわる話も入れる予定。詳しくやりだしたらキリがないところなので、内容を精選して伝えようと思っている。
利子に対する一神教全体の対比も、かなりアバウトだが、地理総合の授業としては精一杯ハードルを上げたつもり。私の考察の結論は、利子の禁止について、まずユダヤ教は同胞以外は可としており、遵守しているように思われるが微妙なので除外。イスラムが最も無利子を守っており、正教会がこれに次ぐ。公式に最も早く利子を認めたカルヴァン派、ヘンリー8世が認めた英国国教会が、非伝統的。中間派がカトリックとルター派というところ。

教義面では英国国教会をハイ・チャーチとロー・チャーチに分割して見なければならないと思う。そうなると、ハイ・チャーチはルター派よりカトリックに近い。さすがアングロ・カトリックと呼ばれるだけのことはある。ロー・チャーチはカルヴァン派にかなり近い。というわけで、利子という視点で、伝統的・非伝統的という無理やりな比較に挑戦してみたわけだ。

2025年6月3日火曜日

地理探求の受験について

現在、地理総合という基礎科目を教えているわけだが、この上位互換で地理探求という教科がある。新カリキュラムで地理「B」は地理「探求」になった。共通テストはともかく、私大を地理で受験するとなると困る。私大の文系学部では地理を受験科目に入れていないことが多いのである。関西なら、同志社や京産、甲南、龍谷などがそうだ。理系はともかく、文系受験生にはそういう意味で不利なのである。また、参考書や問題集などの種類も、世界史・日本史に比べて種類が少ない。

武田塾のYouTubeで、地理の勉強法についてまとめていた。https://www.youtube.com/watch?v=0gJBCQhqmfY

地理の法則性と地誌との絡みなど、私の言いたいことと全く同じで、実によくできている。今回の期末試験の範囲などは、民族・言語・宗教を地誌と絡めながら法則性を見ていく内容で、少しばかり探求の範囲の上を行っているといえる。(笑)今日の画像は、その武田塾おすすめの参考書である。

2025年6月2日月曜日

逆算的期末試験を作ってみた。

https://news.goo.ne.jp/picture/sports/sponichi-spngoo-20250602-0131.html
エース・山本由伸が先発したものの、ドジャーズはヤンキースに敗れてしまった。山本の体調が悪かったらしい。長い戦いである。大事にしてほしい。

さて、期末テストまでの授業コマ数の計算をしてみると、なかなか厳しい。というわけで、まず土曜日に一日がかりで早くも期末考査を作ってみた。長い教員生活で初である。逆算してみると、どう見ても一神教の解説で終わりそうだ。ユダヤ教、イスラム教、カトリックと正教会の対比、ルター派・カルヴァン派・英国教会(ハイ・チャーチとロー・チャーチ)、そのうえで、旧約にある利子の禁止を元にこれらを対比。昨年度は、2学期の中間試験のスパンだったので、インド思想や日本思想(仏教や儒教も含めて)にも触れたのだが、そこまではちょっと無理なようだ。

ここは無理をせず、じっくりとやっていこうと思っている。山本投手にもドジャーズにも言えることかもしれない。

2025年6月1日日曜日

ヤンキースに2連勝

https://news.yahoo.co.jp/articles/05558bffab3fc92ef6f87324cd16b4272996fcea/images/000
ドジャーズが、本境地でヤンキースに2連勝した。第1戦は、1回表にジャッジのHRが出た後、その裏すぐ大谷選手がHRを打ち、凄い始まり方をした。その後、ヤンキースに押されていたドジャーズが大谷選手の2本めのHRを皮切りに逆転し、8対5で第1戦をものにした。めちゃくちゃいい試合だった。

第2戦は、ジャッジが孤軍奮闘2HRを放ったが、なんと18対2(2回終了時点で10点差、高校野球の予選なら5回コールドである。)でドジャーズがヤンキースを完膚なきまでに叩きのめしたのだった。

ヤンキースは、大差故に8回に野手をマウンドに送ったが、ドジャーズも私も妻も大好きなキケ=ヘルナンデスが、あの変なヘルメットを被って2回めの登板(画像参照)で、最後の攻撃も0点に押さえた。(笑)あの変なヘルメット姿のキケのボブルヘッド人形、作れば絶対にファンが喜びそうである。

ワールドシリーズを彷彿とさせた第1戦だったが、第2戦はドジャーズを応援している側としては嬉しいが、ジャッジなどは実に忸怩たる思いだろう。これも野球という「物語」である。

2025年5月31日土曜日

イスラエルを理解する教材

引き続き、土曜になのでボチボチ教材研究をしている。昨日の続きで、律法の理解も重要だが、イスラエルという国の複雑さも教えておきたいと思い、さらにパワーポイントを追加した。イスラエルのユダヤ人の14%は超正統派、41%が正統派、45%が世俗派ということで、なかなかステレオタイプに判断できないのだが、およそ整理してみた。

超正統派は、バリバリの選民思想をもっている。男性はすべて宗教学者といってよく、職業を持たない。政府から生活保護を受けながら、子供を増やしている。今のところ兵役も免除されている。(かなり批判が強いので以後どうなるかはわからない。)意外なことに、彼らはシオニズムに対しては批判的な立場をとっている人が多い。

正統派も、職業を持ちながら律法を守り、(特に中東欧出身のアシュケナジは)シオニズム推進派である。危険を恐れず、ヨルダン川西岸やゴラン高原に入植するのは、正統派が多い。

律法厳守に熱心でない世俗派は、経済を支え、兵役につき、イスラエルを支えているがシオニズムに反対する(=和平派)も多い。私の印象では、フツーのアメリカ人、という雰囲気を持っている。民主主義国なので、言論も自由だ。

ユダヤ人以外にも、アラブ人(ムスリムだけでなくキリスト教徒も多い。)やその他のドゥルーズ教徒の人々もいるわけで、この多様性もイスラエル理解には欠かせないと思う。

2025年5月30日金曜日

ユダヤ教の律法を語る教材

https://illustimage.com/?id
=12736#google_vignette
曇天の朝。学院は校内球技大会なのだが、雨で中止の様相を呈していた。ところが朝礼前には青空になり、結局降水確率が高かった天気予報を覆して実施されたのであった。生徒たちは「てるてるボウズ(日本以外の読者のために右画像参照:晴天になるように祈るグッズ。)」をだいぶつくったらしい。(笑)

授業がなくなったので、帰宅してから教材を作っていた。一神教の話の中で、表面的ではなく、経験に裏打ちされたユダヤ教の律法の教材として、イスラエルに行った際、息子の下宿の大家さんに、安息日のディナーに呼ばれたことをパワーポイントで示してみた。この時のメンバーは、大家さん(正統派のユダヤ人で、超正統派ではないが一般人として信仰がかなり厚い方である。)、大家さんの奥さん、息子夫婦と私達夫婦、それに、大家さんの奥さんのご両親であった。YouTubeでよく使われるフリー素材の顔のイラストを使ってみた。(笑)

この時の言語状況は非常に複雑である。大家さんはヘブライ語と英語。奥さんはヘブライ語とグルジア(現ジョージア)語。つまりグルジア出身なのである。息子が最も多言語が話せる。ヘブライ語もアラビア語も(ドイツのユダヤ人の言語である)イディッシュ語、それに英語が堪能で、息子の奥さんは英語が堪能。私たち夫婦は日本語+ちょっと英語。奥さんのご両親はグルジア語のみであった。

よって、私が奥さんのご両親と会話するには、日本語で息子に伝え、ヘブライ語に通訳してもらい、奥さんがグルジア語で伝え、それが同じルートで帰ってくるという状況だった。

さて、安息日のディナーであるから、律法に決められた祈りを大家さんが行い、手の洗い方も複雑で、結局食事が始まるまで1時間弱かかった。(笑)奥さんのお母さんは、しびれを切らして途中退場してしまった。奥さんのご両親はグルジアからイスラエルに移住してきたユダヤ人であるが、そんなに熱心ではなく、血筋がユダヤ、というだけで、律法もヘブライ語もご存じないわけである。大家さんは、お構いなしに律法に沿ったお祈り・儀式を続けた。さすが正統派である。

この時に、大家さんの奥さんが高校の音楽教師であり、国内の高校生は、修学旅行でポーランドのアウシュビッツに行くこと。卒業してもすぐ兵役につくので、3年生は勉強に身が入らないと言うことも教えてくれた。お父さんが、グルジアで公務員をしていたことも教えてくれた。寡黙なお父さんだったが、最後に私はロシア語で、「ありがとうございました(スパシーボ)」。「さようなら(ダスピダーニア)。」と申し上げると、笑顔になってくれたのを思い出す。さすが、旧ソ連グルジアの公務員さん、ロシア語は解するのだった。

2025年5月29日木曜日

「サコ学長、日本を語る」Ⅲ

https://sunrise-okayama.com/archives/11978
元京都精華大学学長のサコ氏の「サコ学長、日本を語る」書評、第3回目である。前回に引き続き、少年期の話から。グレンと呼ばれる少年から青年になる時の割礼の通過儀礼で同世代の男の子は同時に割礼を受けるのだが、1ヶ月くらい前から集団生活をして、儀式と伝統について教えられ、そのグループ(10~15人くらい)は一緒に成長し、絆を深めるらしい。現在では、割礼は行われていないようであるが、この文化は現代でも残っているとのこと。

割礼は、ユダヤ教では生後8日目に行われるが、イスラム教は少年期、ここでもイスラム教的な話であると私は感じる。しかも現在は行われていないというのは、中東やマレーシアでは考えにくい。アフリカ北部のイスラム教は少し他の地域と違うのかもしれない。

このグレンという集団は、秘密を共有し、ある意味人間性を育む場所、恋人と付き合う時も結婚の時もグレンの仲間に相談し、大人になっても続く帰属意識の強い組織である。見捨てるという習慣はなく、親以上に親身になり説教もするし、喧嘩もあるとのこと。だが、喧嘩しても尾を引かないそうだ。

私は、このサコ氏の話から、薩摩藩の郷中制度就中、二才のことを思わず想起した。かなり内容は異なるけれども、青年期の同世代の若者が切磋琢磨していくという点では共通点がある。

ちなみに、マリのグレンでは、迷惑をかけるのは当たり前である。日本の迷惑をかけない文化に対しては、サコ氏は、本音を言わない、真の誠実さにかけると感じているようで、大好きな日本であるが、これだけは譲りたくないと語っている。

2025年5月28日水曜日

「サコ学長、日本を語る」Ⅱ

https://note.com/kyotoseika/n/nefc5cec3394d
元京都精華大学(画像参照)学長のサコ氏の「サコ学長、日本を語る」書評の続きである。昨日、妙にマリの宗教事情について記したのには理由がある。少年期の話の中で、サコ氏の父親が国家公務員であり、それなりに裕福であったようだが、多くの親戚や知人、そのまた知人などが居候していた話が出てくる。これをどう捉えるべきか?

一つの仮説は、最近「イスラームからお金を考える」で長らく記したが、イスラム教徒故の喜捨意識である。貧しいもの、困っている者への援助は、神の望む姿であり、天国に行く道であるからだ。

もう一つの仮説は、アフリカに存在する「情の経済」故である。富める者は貧しい者を助ける習慣があり、血縁・地縁が有効である。特に農村から都市へ出てきた者に冷遇はできないし、第三者から見るとタカられることが多い。それがフツーである。

私は、この2つの仮説の1つ、もしくは両方であると思ったのである。ただ、不思議なことに、サコ氏の父親は、カトリックの私立学校への入学を認めている。熱心なイスラム教徒ならありえないことではある。ただ、政権に近いエリートである国家公務員としては、息子を将来エリートとして育てるためには、フランス語の習得が必須である故に送ったとも取れる。

私は、マリの南部に位置するブルキナファソで、不思議な光景を目にした。それは、キリスト教徒の十字架が掲げられた墓地とイスラム教徒が埋葬されている墓地が共存している姿だった。中東やマレーシアでは考えられないと思う。意外に旧フランスの地域では、そんなに対立していないのかもしれない。ちなみに、イスラム復古主義者がキリスト教徒にテロなどを起こしているのは、旧イギリス領(ナイジェリア、エジプトなど)に多いといえる。

書評といいながら、仮説で終始してしまったが、実に興味深いところ。サコ氏は明確にイスラム教徒であるという記述はない。また彼の発想や意見には、あまりイスラム色も見られないと感じている。その内容については、次の機会に、と思う。

2025年5月27日火曜日

「サコ学長、日本を語る」

学院の図書館で、「サコ学長、日本を語る」(ウスビ・サコ著/朝日新聞出版)を借りて通勤時に読んでいる。サコ学長とは元京都精華大学の学長(2018~2022年)で、マリ出身である。

京都精華大学には、M高校時代とPBT時代に教え子を送り出しているし、教員にブルキナファソでお世話になった荒熊さんがおられる関わりの深い大学である。

内容は、まずサコ氏のマリでの伝記的な話から始まる。これが実に衝撃的である。書評の詳細はは後日に譲りたいと思っているのだが、マリの基本情報を先に記しておきたい。

マリは、かなり複雑な多民族国家である。サコ氏は首都バマコ出身なので、バンバラ人であると思われる。マリというと砂漠を連想するが、バマコは外来河川・ニジェール川に沿ったサバナ気候区に属する。宗教的には、少なくとも実家は、イスラム教スンニー派のマーリク法学派であると考えられる。メディナ時代のスンナを重視する点で他の法学派と異なるという特徴があるようだ。サコ氏の少年時代は、一党独裁の時代でブルキナファソと紛争を抱えていたようだし、現在も北部でトゥアレグの独立紛争など政治的・治安的に脆弱な状況が続いている。

マリといえば、世界遺産のトンプクトゥーを思い浮かべるとともに、NYCの国連本部を案内してくれた女性職員が、フランス語圏なのにキレイな英語を話すマリの人だったことを思い出す。…つづく。

2025年5月26日月曜日

イスラームからお金を考えるⅧ

https://ja.sekaiproperty.com/article/3770/stay-malaysia-islam
「イスラームからお金を考える」の書評、最終回。著者の言われている現代の金融資本主義を是正する手段としてイスラムの「無利子銀行」を始めとした、利子なき助け合いの経済は有効か?という問題についての考察である。

天国に行くための義務としてのイスラームの喜捨は、やはり神への絶対的な服従がなせる技であると思われる。人間には欲望(仏教的に言えば煩悩)がある。経済的な欲望を抑えることは至難である。故に神の設計図がない(=ユダヤ教やイスラームのような律法やシャリーアが存在せず、自然法的なスタンスを取らざるを得ない)キリスト教では、利子を結局のところ認めざるを得なかったといえる。多神教世界では、天国という概念が希薄だし、イスラームの喜捨という概念も理解できたとしても、実践に移すことは容易ではない。まして中国のような人口圧にまみれた世界では、欲望が他者のことなど考えない利己主義に昇華しているといえる。日本国内における米の買い占めやマクドの子供のための景品を買い占めに走る中国人の行動は嫌悪を頂くし、全く理解不能である。https://www.youtube.com/watch?v=2-8Ls958d2o

私はこれは深く人生観に関わる問題であると思う。カントは、判断力批判の中で、真善美という価値の追求を説いたが、ムスリムにとっては、それは神の領域であり、無意味なことである。ただただ神に従い義務を果たすというスタンスがあるからこそ、公平を実現できていると思われる。これは、善悪や正邪の問題でもない。マレーシアで3年半過ごした私は、ムスリムの生き方を否定しない。リスペクトべきであるとも思っている。だが現在の金融資本主義をイスラム金融や喜捨の精神が凌駕できるか、と問われれば、否と答えるしかない。

それは、神(ここではアッラー)への信仰がなにより必要だからである。その前提なしには、同じ神を信仰するユダヤ教徒やキリスト教徒では、義務的に欲望を制御できないし、多神教世界、就中、中国のような利己主義が価値として蔓延する人々には到底無理だと思うからだ。意外に、日本の文化には、他者への思いやりが根付いており、喜捨については理解が十分可能であると思われるが、日常的な実践についてはやはり無理が生じるのが現実であろう。ある意味で、残念な見解になってしまったが、この問題、これからも考えていこうと思う。

2025年5月25日日曜日

イスラームからお金を考えるⅦ

https://blog.goo.ne.jp/munehemmi/e/e011ec045657fa6733b168c1bdef4b86
「イスラームからお金を考える」の書評、今回は「無利子」について、他の一神教との比較をしながら、これまでの私の見識の中で考察してみたい。

利子の禁止は、一神教の基盤となっている旧約聖書の出エジプト記22章26節「あなたが共にいるわたしの民の貧しいものに金を貸す時は、これに対して金貸しのようになってはいけない。これから利子をとってはならない。」また申命記23章20節「同胞には利子を付けて貸してはならない。銀の利子も食物の利子もその他利子が付くいかなるものの利子もつけてはならない。」に記されている。

ユダヤ教の律法では文字通り同胞(=選民たるユダヤ人)への無利子を説いているので、異教徒で同胞と認めないキリスト教徒対象の金貸しの生業が発達した。キリスト教徒が利子を禁止していた時代にあって、農業を禁じられた故に幸いしたといっても良い。しかしながら、さらにカトリックも13世紀頃から実質的に認めだし、16世紀にカルヴァンが公式に5%までの利子、ヘンリー8世が10%までの利子を認めた後、19世紀にはカトリックも公式に利子を認めていく。(正教会は教会の慈善活動等以外は原則的に認めていない。ルター派は慈善目的など利子そのものではなく目的に応じて認める姿勢、英国国教会も、経済成長や社会貢献に関する限り禁止していない。)こうしてみると、利子に関しては、その伝統重視の姿勢は、ユダヤ教はさておき、イスラム>正教会>カトリック>ルター派>英国国教会>カルヴァン派という比較ができよう。カトリックの柔軟性と正教会の保守的なスタンスは、この利子という問題でも明らかである。とはいえ、現実の世界では、イスラムも経済活動のため正当化できるギリギリ一杯まで利子的なモノを存在させているわけで、他の一神教でもイケイケというわけではなくとも、事実上認めているわけだ。多神教の世界から見ると、ご苦労なことであるというのが実感ではないだろうか。

次に、イスラム教のスンニー派の大多数・穏健派における隣人観は国家や民族を超えている。(ただし、復古主義の過激派や、教義的対立関係にあるシーア派や政教分離観の強いトルコのクルドとの抗争を除く。)キリスト教圏においての隣人愛(画像参照)はかなり限定的で、国家や民族をイスラム教ほど超えているとは言い難い。ユダヤ教に至っては選民思想があり、他の国家・民族への隣人観は最も希薄だといえる。前述した欧米の既存銀行の「無利子銀行」サービスも、やはり預金者獲得(=利潤目的)の為と受け取っても良いのではないかと私は思っている。

著者は、現在の金融資本主義への批判を長く記しておられ、これからは、イスラムの知恵が有効ではないかと考えておられる。前述したように、比較的長い間書評を止めていたのは、このことに対する私の考察がまとまらなかったからである。

メッツとの死闘の裏で

https://www.youtube.com/watch?v=V_d0cPnJwZs
現地時間23日のメッツ・ドジャーズ戦は、雨による中断を挟み、5時間46分の延長13回の死闘だった。結局、ドジャーズが7対5で勝利したのだが、様々な判定や人間ドラマがあったようだ。

クレイトン・カーショーが2回を無失点に押さえ、いい立ち上がりだったのだが、雨で中断。かなり悔しかったようだ。ロッカールームでグローブを持ったまま忸怩としていた彼に。飲み物をもった大谷選手が近寄り、「投球はどうだった?」と聞かれ、「最高だったよ。」と答えたそうだ。これで、また次のために立ち上がれると、カーショーは感じたとインタヴューで答えている。

再開後、1死三塁ライトフライを取ったテオスカー・ヘルナンデスの返球で、三塁走者をホームで刺したのだが、三塁手のマンシーが、走者の視界を遮ったとして走塁妨害を取られ、セーフとなった。(画像参照:この判定には多くの野球関係者が疑義を表明している。)マンシーはベンチで深くうなだれていたが、大谷選手が誰よりも早く近づき、「気にすることはない。誰でもそういったミスはあるよ。次で打ってミスを取り返してよ。マンシーならできるよ。」と言ったそうだ。激しく抗議した監督やベッツやフリーマン、他の選手も声をかけようとしていたのだが、ここはやはり大谷選手だった。その後、マンシーは大谷のためにも打つと集中力を高め、タイムリーヒットを打つのである。(感動的なシーンだった。)

カーショーもマンシーもベテラン選手である。ドジャーズでは、ちょうと、2人のベテラン選手が解雇された直後だった。マンシーはインタヴューで自分の立場を深く憂慮していることを率直に述べている。MLBの世界は厳しい。そんな中での出来事だったのである。

ドジャーズはワールドシリーズ連覇を狙うチームである故に競争は激しい。だが、チーム内の士気は高く、互いに尊敬し支え合う素晴らしいチームだと思う。その中には、MVPトリオ、就中、大谷選手がいる。いよいよ投手としての復帰も近いらしい。

2025年5月24日土曜日

イスラームからお金を考えるⅥ

https://globe.asahi.com/article/15341885
「イスラームからお金を考える」の書評の続きである。利子が禁止されているイスラームにおける「無利子銀行」についてである。利子の禁止を守りながら、利子に代わる儲けがきちんと手に入る方法として、近代以前のムスリム商人たちが使っていた「ムダーラバ」という方法がある。これは、お金を持っている人が、借りたい人と協力(情報をあたえたり、知友を紹介したりといった間接的な協力)して商売を行い、あらかじめ決めた比率で儲けを分け合うシステムである。もし、儲けがなかったら、お金は帰ってこない。

「無利子銀行」は、借りたい人とムダーラバ同様の関係を持ちつつ、元本が減ることを想定しない預金者ともムダーラバの関係を持つ。「無利子銀行」が黒字であれば、預金者の元本は保証されるという二重のムダーラバ関係を結び、成立しているわけである。

そもそも、この「無利子銀行」の構想は、1941年にパキスタンのマウドゥーディーが、ヨーロッパの利子を取る金貸しによって貧しいムスリムが苦しんでいることを憂い、利子のない社会の実現を訴えたのがきっかけである。1960年代になって、我がマレーシアで、メッカ巡礼に行きたい人のための「無利子銀行」タブン・ハッジ(上記の画像は現在の本社)が設立された。預金者は毎月少しずつ預金し巡礼資金を貯め、その預金をムダーラバで増やし、巡礼資金を増やす道を開いたのである。1970年代には、UAEのドバイ・イスラーム銀行が設立され、それまで銀行嫌いで、金などの貴金属に財産を変えていた信心深いムスリムが大挙して押し寄せた。

https://globe.asahi.
com/article/15341885
こんな中、私の尊敬してやまないマハティール首相は、資本主義の問題点を十分に理解していたので、ビジョン2020の牽引役として「無利子銀行」に期待を寄せた。これによって新しく作られた「無利子銀行」もあったが、既存の銀行の多くが「無利子銀行」のサービスを始めた。(左の画像は、マレーシアにある普通の金利システムとイスラムの無利子システムの併用されたATM)マレーシアではムスリムではない中華系やインド系の人々もこの「無利子銀行」の利用者が多く、中東とともに「無利子銀行」の二大拠点になっている。成功するはずがないと冷ややかに見ていた欧米諸国の銀行も参入し、現在50カ国・600行に広がっている。

ちなみに、2023年現在の「無利子銀行」の各国の比率は、サウジが75%、ブルネイが67%、クウェートが51%、マレーシアが31%、カタールが29%ほど。その他、バングラディシュ、ジブチ、UAE、パキスタン、ヨルダン、パレスチナ、オマーン、バーレーンなどが続く。

2025年5月23日金曜日

イスラームからお金を考えるⅤ

http://www2.dokidoki.ne.jp/islam/quran/quran002-5.htm
久しぶりに「イスラームからお金を考える」の書評。随分と間があいたのは、この本の基軸的主張についてあれこれ考えていたからである。その件はまた後述するとして、本日は、クルアーンを中心に据えていこうと思う。

第2章「雌牛」第275節に「アッラ-   は金儲けをお許しになっている。」とある。この世で金儲けをすることが天国に行ける可能性を高めると捉えられている。さすが商人の宗教と言われる所以である。マルコの福音書に「金持ちが天国に行くよりも、ラクダが針の穴を通る方がまだ簡単である。」という記述があるが、180度違う。ただ、イスラーム的な正しい3つの金儲けの方法がある。1つ目は利子の禁止、2つ目はギャンブルの禁止、3つ目は喜捨の義務である。

第2章275章の続きには、「アッラーは金儲けをお許しになっているが、利子は禁じられた。」また第3章「イムラーン家」130節には「信仰する者たちよ、倍にも何倍にもなる利子を貪ってはならない。」とあり、利子自体も支払期日が過ぎた時の延滞利息も禁止されている。第2章275章の別の箇所には「利子を取る者は、悪魔に取り憑かれた者がようやく起き上がるようにしか起き上がることができない。」という警告があり、第4章「婦人」第161節にも「禁じられた利子を取り、不正に他人の財産を貪った者には、痛ましい懲罰を準備している。」第30章「ビザンチン」39節には、「利子を付けて人にお金を貸しても、アッラーのもとでは(天国に行ける可能性は)何も増えない。」第2章第276節には「人々が利子を付けてお金を貸した時には、アッラーはその恩恵を消し去る。(=最後の審判で地獄行きになってしまう。)」ともある。

イスラームの利子禁止について著者は、不労所得を嫌う故としている。また利子の存在が経済格差を生み、7世紀のメッカでは利子による経済格差が深刻な社会問題化になっていたので、経済の潤滑油的な側面を認めつつも、社会の安定を最優先させたといえるらしい。

ちなみに、イスラーム的な正しい3つの金儲けの方法・2つ目のギャンブルの禁止については、運不運によって結果が変わってしまう故で、先物取引や保険も同様。イスラームは全てをアッラーに委ねる故、アッラーにしかわからない未来の出来事を金儲けのネタにすることは、アッラーによって創造されたこの世界のあり方を人間が自由に変えることができるという人間の奢りに対する警告だといえる。

喜捨については、体験的に前述したが、第9章「悔悟」第60節に「喜捨は、貧者、困窮者、喜捨を管理する者、イスラームに改宗した者、奴隷解放のため、負債を抱えている者、アッラーの道のために努力する者、旅人のためのものである。」とあり、アッラーを介して人から人へお金を受け渡す役割・再分配の役割を喜捨が支えているといえる。…つづく。

2025年5月21日水曜日

期末の学習範囲の精選

明日が地理総合の中間試験だが、期末の学習範囲を言語や宗教に決めた以上、ある程度の準備を進めておく必要がある。採点が始まるとできない。(笑)昨年度、この範囲は2学期の中間の範囲だった。記録を見ると授業時間数は10コマから9コマというところ。本年度の1学期の期末はそれより各クラス、2コマほど少ない。ここは、学習内容を精選するしかないわけだ。

今年度も、世界価値観調査の表(英語版)を使う。言語の授業の後、2コマ目はこの表の解説(プリントに調査のもとになったアンケート問題もいれてみた。)を軽くした後で、グループならびに各国名の和訳、さらに主要な宗教の調べ学習(上記画像はその一部)をしてもらう。昨年度、どんな質問がされるかも承知しているので、そこはすでに記入したりして少し容易にしておいた。そのうえで、宗教の比較の講義を行うのだが、順番も変えた。

昨年度は、カトリックと正教会、プロテスタント、一神教の対比という順番で講義した後、最後に世界活観調査の資料を4分割して講じた。これを、先に4分割してそれぞれ考察することにした。すると、一神教(特にイスラム)、正教会、プロテスタントという順になる。この方がわかりやすそうであるし、前述したバルト三国の話など逸話も挿入していく予定。今年度は、地理をベースに、世界史・日本史・政経・倫理といった社会科的な教材も挿入すると生徒に言ってあるので、岩倉使節団の話をプリントに入れた。「精選」とは、「省略」と同意語ではない。

岩倉使節団の最重要な点は、あまり仲の良くない大久保や木戸の両名が、欧米では教会が政府を支える権威となっていることに気づいた点だと思う。(生徒には、代表例としてカトリックがカール大帝の戴冠の話をして、この視点を理解してもらおうと思う。)正教会は、権威ではなく、二人三脚で政府を支えている場合が多い。ロシア正教では核兵器に祝福を与えるなどという話があるくらいである。さて、彼らは、キリスト教に代わる明治政府を支える権威を天皇制に求めた。それが軍人勅諭、教育勅語さらに、二人の間に立った後継者・伊藤博文の天皇主権の大日本帝国憲法へと昇華していくわけで、明治史の根幹に関わる問題だからである。こういう話は受験の日本史ではなかなかできないはずである。

2025年5月20日火曜日

バルト三国の相違点

https://tabizine.jp/2017/09/11/150725/
バルト三国は、ソ連崩壊直前、最も過激に離脱運動を展開して日本でも有名になったが、その共通点はともかく、相違点はあまり認識されていない。

共通点は、エストニア・ラトビア・リトアニアの三国ともEUにに加盟するユーロ圏であり、シェンゲン協定加盟国であり、NATO、OECDの加盟国である。これだけ見るとまさに三国と一括りにされてしまうのだが、言語や民族、歴史などはかなり違う。

高校の授業レベルで解説すると、まず言語はそれぞれ、エストニア語・ラトビア語・リトアニア語と違う。特に、エストニア語は、フィンランドと同じウラル語族に属する。民族的にもエストニアはフィンランドに近い。宗教的にも、フィンランドと同じルター派が多数派になっている。

次にリトアニアは、ポーランドとの結びつきが強くカトリックが多数派である。「世界奇景探索百科」にも載っている「十字架の丘」(画像参照)は、ソ連時代に何度か破壊されたが非暴力的抵抗の象徴として生き残り、ポーランド人教皇のヨハネ・パウロ2世の祝福を受け世界的に有名になった。この話は授業も挿入したいと考えている。とはいえ、リトアニアはそもそも非キリスト教国で、北方十字軍ドイツ騎士団との抗争が続き、耐えかねてポーランドと同盟を組みカトリックを受け入れた歴史がある。

https://ameblo.jp/toshi-atm-yamato/entry-12444314597.html
フィンランド的なエストニアと、ポーランド的なリトアニアに挟まれたラトビアは面白い。言語的・民族的には、バルト系なのでリトアニアに近いが、無宗教が多数派である。ラトビアも多くの支配を受けてきたが、キリスト教の受け入れ以前からラトビア神道(画像参照)と呼ばれる多神教があって、まさに日本の神道とよく似ている。無宗教が多数派というのは、日本同様の玉虫色の宗教観なのかもしれない。

…いずれにせよ、バルト三国を一括りで見るのは違うと思うし、生徒諸君への知的刺激として語りたいものだ。

2025年5月19日月曜日

ベルギーの二言語問題の話

https://saspecialist.southafrica.net/jp/jp/topics/entry/jp-jp-kruger-national-park
ベルギーは、オランダ語系のフラマン人とフランス語系のワロン人という、異なる二言語の国家であり、ベルギー語というのは存在しない。いわゆるベルギーの言語問題である。さてフラマン人とは2つ、ワロン人とは1つ思い出がある。

M高校在職時代、ある日の放課後、校門付近でフラマン人のカップルと出会った。観光で大阪に来ていた2人に、日本の学校を案内してあげようかと言ったら、是非というので教頭に了解をもらい、校内に入れた。M高校は、国際的な雰囲気をもっているので、生徒たちも外国人には興味津々なので英語でどんどん話しかける。ちょうど茶道部がお茶会をしているという情報が入ったので、連れて行った。外部から来ておられた茶道のご年配の先生も歓迎していただき、生徒に英語の通訳をさせながら彼らに茶道を教えてくれた。フラマン人カップルは正座には苦しんでいたものの、良き日本体験ができたと非常に感謝してくれたのだった。

南アのソウェト・ツアーで知り合ったフラマンの母娘とツアー中にいろいろ話した。近日中にクルーガー国立公園(画像参照)に行くらしい。一方、ドイツ人の女性教師とも同じ宿の中庭で知り合った。彼女は、英語が苦手だが、ゲルマン系なので皆から英語で話しかけられ困っていた。そこに英語が苦手そうな東洋人が翻訳機を片手に英語の漫画本を読んでいるのを発見したらしい。気軽に話せると思ったのだろう。日本に来たこともあるそうで、彼女もクルーガー国立公園に行くのだと言っていた。夜のレストランで、母娘とドイツ女性が離れて食事をしていた。私は、母娘にドイツ女性を紹介した。なぜなら、フラマン人の話すオランダ語とドイツ語は近い言語だからだ。意思疎通は英語を介するより楽なはずで、ドイツ人女性にとってはクルーガーに行く間、気が楽になると思ったからだ。案の定、フラマンの母娘とドイツ人女性は会話が弾んだようで、私も良いお節介が出来たと思っている。

オランダ語は、英語とドイツ語の中間のような存在。だから、福沢諭吉が蘭学から英学に切り替えたことを長い間すごいと思っていたが、たいしたことではない。ベルギーのフラマン人がオランダ語系であることと、このゲルマン系三言語の関係性を知っていれば、このようなお節介も可能なわけだ。

ところで、フランス語系のワロン人とは、四国・三崎高校で出会ったことがある。知己の中学の教頭先生宅でミカン収穫を手伝っている若者だった。英語は、かなり厳しいようだったので、挨拶で終わってしまった。(笑)ラテン系のフランス語を使うワロン人とのコミュニケーションは、やはり難しい。というような話を授業でしていたのだった。

2025年5月18日日曜日

世界の民族と言語の教材

教科書的に言えば、民族とは言語や慣習、歴史などを共有することから、共通の帰属意識をもつ集団であると言える。言語との関連性は極めて強いが、イコールではない。

世界最大の国家を持たない民族であるクルド人は、ペルシャ語系のクルド語を言語としているが、地域による方言があり、しかも興味深いと思うのだが、それぞれ方言ごとにラテン文字やキリル文字、アラビア文字が使われている。

今回は、中間試験でヨーロッパの地誌を出題している関係上、ヨーロッパ内でラテン系・ゲルマン系・スラブ系に属さない地域(バスクやフィン、マジャールなど)も紹介するつもりだ。また、バルト三国もそれぞれ違うし、UKでもイングランドの影響が強いものの、スコットランドやウェールズ、アイルランドもなど本来はケルト系の言語である。時間の関係でどこまで伝えれるかはわからないが…。

私が言語の中で最も重視しているのは、AA諸国の公用語が旧宗主国のものであることが多いことである。これは、いろいろな理由があるのだが、欧米列強が勝手に国境線を引いたため、エスニックグループ(私は”部族”という語彙を使いたくない。)が分割され、多言語なうえに国内でも意思疎通に支障をきたす故という理由が大きい。ケニアでは、スワヒリ語を小学校過程で学び、セカンダリースクール(中高)ではすべて英語での授業となる。スワヒリ語は前述の意思疎通のため、英語は高等教育では、スワヒリ語でカバーできない語彙を使わざるを得ないからだ。こういう言語能力による格差が生まれている。そんなことを伝えたいと思っている。

2025年5月17日土曜日

世界はラテン語でできている2

https://eiga.com/movie/56149/
「世界はラテン語でできている」(”ラテン語さん”著SB新書)を読んで、最も感銘を受けたのが、巻末の「テルマエ・ロマエ」の作者・ヤマザキマリさんと著者の対談である。テルマエ・ロマエは映画にもなった帝政ローマ時代の漫画で、作者のヤマザキ女史によると、今もラテン語はイタリア語の中に生きているとか。てっきり学術名とカトリックの世界以外では死語になっていると思っていたのだが、日本語で言うと四字熟語のような使われ方を今もするらしい。

昔、アメリカ視察旅行で視察したデトロイトの外国語学中心の高校でラテン語専攻の生徒が、「我々だけ学んだ言語先に行く修学旅行がないのです」。と言っていたのだが、今思うとイタリアに行くという学校側の選択肢はあったのかもしれない。

ラテン語が語源(さらにはギリシア語のそのまた語源)のとなるのは、ラテン語起源のロマンス語(イタリア語の他に、仏語、西語、葡語、ルーマニア語など)だけでなく、英語の語彙にも多い。最も適当な例となる語彙の繋がりは、結局amor(愛)がわかりやすいのかなと思う。仏語ではamour、伊語ではamore、西語と葡語はそのままの綴である。とはいえ、英語の方が生徒にはわかりやすいので、historyの語源はラテン語のhistriaであるくらいかなと思う。生徒たちはChromeBookを持っているので、自分で調べさせるのもいいかなと考えている。

2025年5月16日金曜日

世界はラテン語でできている

中間考査の印刷も終わり、期末試験までの授業のコマ数を確認したら、模擬試験や行事の関係で、他より少ないクラスがあって、月曜日の授業は自習の予定を取りやめ、期末の範囲を始めることにした。今年の地理総合は、「神なき時代の終末論」にあった国家の4段階(表層から順に、国家の理想、現実的な利害、歴史的な民族の背景と宗教、最下層には風土)を基本コンセプトにしていて、中間考査の範囲で、地形と気候(関連して農業も)の「風土」の部分を概説した。期末は、その上層にある「歴史的な民族の背景と宗教」をやろうと思っている。

中間試験を挟んで授業をするのは、少し憚れるのだが、まずは民族と言語の関係をやろうと考えた。昨年試行した世界の価値観と宗教の関係図が中心課題となるだろうが、その導入としたいのである。で、急遽、だいぶ前に購入した「世界はラテン語でできている」(”ラテン語さん”著SB新書)を通勤時に読んだのだった。ラテン語がヨーロッパの言語に与えた影響はすこぶる大きいので、教材としていいかなと思ったのである。私は、こういう言語に関しては苦手意識が先立つ。最もいい教材となる箇所を探しているところである。

2025年5月15日木曜日

世界奇景探索百科

学院の図書館で、「世界奇景探索百科 ヨーロッパ・アジア・アフリカ編」(原書房)を借りてきた。昨日の47都道府県オブジェつながりではあるのだけれど、オブジェというには、オドロオドロしたものもたくさんあって、たしかに奇景の連続である。地誌を教える上で参考になればと思うのだが、授業ネタにしにくいものも多い。

https://ageofrevolution.org/digitisation-of-
jeremy-benthams-papers-now-complete/
今回記しておきたいのは、イギリス編でユニバーシティ・カレッジ・ロンドンにある「ベンサムの自己標本」である。功利主義の哲学者であるベンサムは、遺言で自分の遺体の取り扱いについて詳細な遺言(防腐処理、黒のスーツを着て、まっすぐ椅子に座り木製の棚の中に置くこと。またこの遺体を功利主義哲学者の定期会合に議長として出席させること。)を残した。しかしながら、防腐処理に問題が起き、頭部は悲惨な状態になった。そこで蝋で作ったレプリカを取り付け、本物の頭部は足元に置かれることになった。この頭部はイタズラ好きの学生より、誘拐され£100の身代金を慈善団体に支払えという要求が大学に要求された。大学は£10しか払えないと回答すると元に戻された。ひどいのはこの頭をサッカーボール代わりに使われたらしく、大学は考古学研究所の金庫に保管することになったという。これは倫理の教材となりうる話である。

…ベンサムはなぜ自分の遺体を標本として残そうとしたのだろう。快楽計算の結果であろうことは間違いない。思うに後継の定期会合に議長として出席し続けるという権威を最大の快楽だと考えたフシがある。そこまで権威に執着したいのかと思うし、だからこそ大学に£10の身代金の価値しかないと査定され、サッカーボール代わりにされたような気もするのだった。

2025年5月14日水曜日

47都道府県のオブジェ

https://mombetsu.furusato-direct.jp/spot/37/
YouTubeで、”1番インパクトのあるオブジェが優勝”というのがあって、実に面白い。この中で、私が実際に見たことがあるのは、北海道の紋別市のカニの爪と、滋賀の甲賀市のたぬき、大阪・吹田市の太陽の塔、兵庫県・神戸市の鉄人28号、そして愛媛県・鬼北町の鬼王丸の5箇所しかないのだが、岩手県・遠野市のカッパ、福島県・相馬市のコンセント、愛知県・常滑市のとこにゃん、鹿児島県の叫びの肖像などもなかなかインパクトがある。

https://www.youtube.com/watch?v=x59DJj8ZpRs

日本には、こういうオブジェがどんどん作られているようで、特に道の駅などの集客の目玉になっていきそうだ。まさに地方創生の証である。私個人としては、昔むかしに訪れた北海道・紋別のカニの爪が1番だと思っている。文字通り、すごいインパクトがあったのである。第二位は、阪神・淡路大震災を乗り越えて作られた神戸市・長田の鉄人28号かな。

2025年5月12日月曜日

47都道府県 神々のパレード

AIの凄さを感じるのは、特にグラフィックである。今朝、日本の都道府県を代表する神々の行進というYouTubeを見た。

https://www.youtube.com/watch?v=pkhcGJU1Ndg&t=191s

私は宗教学の徒であるが、神道は苦手である。漢字が複雑で読み方も難しい。この映像は知っている神もいてなかなか面白い。

見るからに怖い神も、美しい女神もいる。神々は動物を引き連れているのだが。大阪の神はビリケンでキリンだったし、和歌山の神はパンダだったりする。鳥取の大国主と歩くのはウサギ、これはわかる。徳島の金長狸は当然狸をつれている。この辺動物チョイスも面白い。背景もそれぞれ工夫されており、実に楽しい。そんなに長くないしお勧めである。