2025年8月2日土曜日

教材研究 HDIと4つの罠

https://globalnewsview.org/archives/987494368
教材研究を進めている。HDIのランキングを記す提出課題を元に、次にポール・コリアーの「最底辺の10億人」にある4つの罠(紛争の罠・天然資源の罠・内陸国の罠・劣悪なガバナンスの罠)と対比しながら進めていくことにした。

紛争の罠については最新の世界紛争地図をパワーポイントに示しながら解説しようと思う。ただ、深入りすると莫大な時間を要するのでプリントでは最小限の記述に止めた。紛争の原因は、民族問題、エスニックグループの勢力争いや、特にイスラム復古主義の武装組織などによる宗教対立も多いが、根底には経済格差問題と次に述べる資源の罠による利権も絡んでいることが多い。

…これはあくまで私の感じ方であるが、独立後内戦に陥るのには、少し宗主国の法則性のようなものがあるのではないかと思う。イギリスの間接統治は、独立戦争(インドやケニアのマウマウ団など)以外では、それなりに独立後の移行はうまくいったといえる。フランスの直接同化政策よりはマシだった。ひどいのはポルトガルで、アンゴラもモザンビークも東ティモールも悲惨だったと思う。まあ、こんな話を授業ではしないと思うが…。

天然資源の罠については、いくつかの視点で語る。まずはモノカルチャー経済の危険性。顕著な例はザンビアの銅生産で、国際価格の変化で大きな影響を受けること。2点目は、内戦や腐敗が進むこと。ここでは、特にコンゴ民主共和国を取り囲む国々が関わる、タンタルなどの紛争鉱物について語ることにした。3点目は、植民地時代の影響。途上国の鉱業のレンティアはの多くは搾取されていること。ただ、うまく国策会社に移行した例も挙げておくことにした。サウジやUAE、マレーシアもそうで、ノルウェーのような政府系ファンドで儲けている場合も紹介しておきたい。さらに、政治経済の学習との関連で、オランダ病についても述べることにした。

内陸国の罠については、ジェフリーサックスのスピルオーバー(隣国の経済が1%成長するとその隣国は0.4%成長するが、内陸国は0.7%も成長する。)の論理を使う。高校のレベルを少し超えるが、これもまた私の授業らしいところ。(笑)ウガンダとスイスの状況を比較しておきたい。

劣悪なガバナンスの罠については、まず「ガバナンス」という高校生には聞き慣れない語句の解説から。パワーポイントでは、国際NGO/Transparency Internationalによる世界腐敗認識指数の地図を見せ、次にガバナンスが悪いと、インフラや企業の設備投資の資金が海外から入らない。そのためには、金融面と法的整備が必要であること。しかしながら、デモクレイジー(ポール・コリアーのデモクラシーをもじった造語)が行われ、専制的・独裁的な政府が生まれていること、さらに「情の経済」で血縁・地縁重視の官僚主義が腐敗を高めることを説く。

https://www.afpbb.com/articles/-/2521113
次のプリントでは、世界腐敗認識指数の上位国と下位国の表をつくってみた。またまたこの表にHDIの順位を入れていく作業を入れたいと思っている。面白いのは、下位(腐敗度がひどい)の国は、HDIの順位に近い。南スーダン、ソマリアが最下位2カ国であるのはHDIと同じ。ここに赤道ギニアやエリトリア、トルクメニスタン、タジキスタンといった独裁国家が顔を出してくる。意外なのは、上位国にウルグアイ(13位)とブータン(18位)セーシェル(同18位)といった国が日本(20位)より上位にあることだ。

…ウルグアイは、バスク系のホセ・ムヒカ元大統領(報酬を財団に寄付して月$1000強で生活していた世界一貧しい大統領と呼ばれた人物。)の伝統が生きているようだ。ブータンも文化や価値観から決して意外ではない。セーシェルは、アフリカで、モーリシャスを抑えてHDIの順位が最も高い国。1993年以降、複数政党制をとり、大統領も直接選挙で選ばれるガバナンスも良好である。こういった発見を生徒諸君にもして欲しいな、と思う。

2025年8月1日金曜日

教材研究 HDI理解

8月に入った。教材研究も進めなければと、HDIのランキングの提出課題後の授業プリントを作り出した。まずは、HDIの基礎的な知識を確認。1人あたりのGNI(国民総所得)について、GDP+海外からの所得であること確認。健康や教育の指標が入る理由がアマルティア・センの貧困の定義と潜在能力の話は外せない。

提出課題には、HDIの順位の1位から193位まで記入するようにしてある。まずは、先進国の確認。先進国の定義としては、一応OECDの加盟国というのがあるので、プリントにOECD加盟国を以下のテリトリーにわけて、順位の番号に◯をつけて、確認してもらうことにした。1990年までのEU加盟国、1990年以降のEU加盟国、EU非加盟の欧州諸国(イギリス・スイス・ノルウェー・アイスランド)、その他のOECDに90年代以前加盟国(日本・アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・トルコ)、その他のOECDに90年代以後の加盟国(メキシコ・韓国・チリ・イスラエル・コロンビア・コスタリカ)。HDIの上位は当然先進国となるのが一目瞭然である。

プリントには、新たに名目GNIのランキングを、1位アメリカから17位のオランダと、20位スイス・107位アイスランド(HDIでは両国ともかなり上位)、HDI最下位の152位ソマリア・168位南スーダン、アフリカで最もHDI順位の高いセ-シェル、GNI最下位・213位のツバル(最低額のGNI=91✕百万USドル)を表にした。この表では、GNIと人口の対比が重要である。対比してその分母(人口)が多いと1人あたりGNIの数値が下がることを実際の数値を見て確認してもらおうという魂胆である。なお、この表に、ジニ係数も記入しておいた。

この表の右端の欄に、HDIの順位を提出課題から入れ込むので確認しやすいかと思う。また、提出課題の順位の一部を後々重要視したいので太字にしてある。それはアフリカ諸国である。さらに次のプリントでいよいよ、ポール・コリアーの4つの罠の内容に入るので、HDIの161位以下のアフリカ以外の国を書き出す内容も入れた。HDI162位のシリア、166位のハイチ、168位のパキスタン、181位のアフガニスタン、184位のイエメンである。共通しているのは、紛争地域である。(ハイチは、内戦や紛争というカテゴリーに入らないかもしれないが、まるで「北斗の拳」のようなギャングが支配する無政府状態に陥っている。)これは、紛争の罠に関連してのことである。

2025年7月31日木曜日

アイル分家の「虎の皮」

https://nhkeasier.com/story/979/
「恋するソマリア」(高野秀行/集英社)の書評の続きである。早稲田大学に学ぶソマリ人兄妹との約束を高野氏は果たすわけだが、まず兄の歯磨き用の木の棒は、ソマリランドの市場から少し離れた場所(木の棒専門店で)で手に入れる。1本日本円で約4円。

妹の方は、モガディシオに行ってからの話になる。ここで前述した氏族社会の話と絡んでくるのだ。実は、兄と妹は異母兄弟であったのだ。イスラム社会である故に珍しい話ではないのだが、ソマリ人ではそう多くはないらしい。しかも第一婦人(兄の母)と第二夫人(妹の母)は仲が良くなかったらしい。

高野氏のモガディシオのコーディネーターは、本書の表紙に写っているソマリ美人のモガディシオ支局長のハムディ嬢、22歳である。同じソマリ人でも、ソマリランドの方はイサック氏族ばかりで、陽気な反面、プライドが高く、体面を重視する。高野氏の表現では「東夷(あずまえびす)」あるいは「坂東武者」というイメージなのだが、モガディシオは様々な氏族が同居している町人の気安さがある。「都人(みやこびと)」は洒落が分かる。ただ、ソマリランドの独立を認めない。高野氏はこれには閉口したようだ。

兄妹の元スポーツ大臣の亡き父は、バスケットの名選手だったが、レール・シャベルという弱小氏族の出身。出世して、ハウェイ氏族の武闘派で知られるハバル・ギディル分家の(更に分家にあたる)アイル分家(武闘派中の武闘派らしい)の女性を娶った。早大生の兄はその長男である。さらに、レール・ハマル氏族(ポルトガル人との混血の子孫とも言われ肌が褐色で美男美女の氏族として名高い。モガディシオで最も古い氏族でもある。)の女性(妹の母)を娶った。兄妹は共にモガディシオに住んでいたが、数えるほどしか会ったことはなく、第一婦人との不仲が原因で第二夫人は離婚してしまったという。第一婦人は夫の死後、同じ氏族の男性と再婚、ケニアの難民キャンプに移り住み、第二婦人も同じ氏族の男性と再婚し、モガディシオに今も住んでいる。父の死後、議員となった叔父の努力で、兄妹は日本に来ているわけだ。

妹の自宅をハムディ嬢と支局員たちと訪れた高野氏は、イスラム社会らしい接待を受ける。当然ながら成人男子だけの食事で、女性は姿を見せない。妹宅には男性は学生の弟だけだが、まだ成人とみなされないので同席しなかった。しかしソマリでは男女の接触が許されている方で、中庭でビデオメッセージをもらい、母親から10kg超のボストンバッグ2つ分のお土産を預かった。

帰国後、早大生の妹は、お土産を渡すと「お母さん、やっぱりよくわかっているわ。」と馴染みのあるシャンプーや化粧品を見てそう言った。誰しも馴染みのあるものを使いたいのである。平和だろうと戦火の中に生きていようと関係ない。この高野氏の感想は実に深い。

さて、このハムディ嬢も第二夫人と同じ氏族・同じ分家(武闘派中の武闘派のアイル分家)出身である。政府軍もイスラム過激派アル・シャバブも共に中枢はアイル分家に抑えられているもっぱらの評判で、ジャーナリストであるハムディが首都の州知事と対立し激しい批判を加えても、手が出せないというわけだ。彼女は支局と(アル・シャバブ支配下地域の)家の往復は政府軍の前線を超え、ベールをして顔を隠し乗合バスに乗って平然と通っている。

さらに詳しく聞くと、彼女の父親は、ソマリア独裁政権時代、政府軍の大佐で通称「虎の皮」という異名で有名だったという。今はカルグドゥード州の街で隠居しているというが、高野氏の推測では、「戦国大名」のような存在ではないか、ということだ。だが、彼女は「私は家族とは関係なくやってきた、一人でやってきたのよ。」「目標は大統領になること。」そう言った彼女にとって、決して夢物語ではないと高野氏は思うのだった。

2025年7月30日水曜日

ソマリの知識人と漱石・鴎外

https://bs.tbs.co.jp/kyosyo/bknm/08.html
「恋するソマリア」(高野秀行/集英社)の書評を再開したい。高野氏をサポートしてくれるのは、ソマリアのケーブルTVネットワークを指揮するジャーナリスト・ワイヤップ氏の紹介部分で、「反応と行動が異常に早く、交渉事が得意で政府や他の権威が何と言おうと自分の意見を曲げず、フットワークが軽く現場に向かう、というソマリ人の象徴を備えた「ブンヤ」であると記している。ワイヤップというのは「矢尻」を意味する名であるそうだ。

高野氏は彼のようなソマリ知識人は明治の知識人と重なる部分がある、としている。日本人における中国文明のように、ソマリ人にとってイスラム世界こそが文明であった。イスラム法学者の父のもと、論語の素読よろしく、クルアーンの暗誦を幼少からしており、造詣が深い。一方、ソマリランドはイギリスの植民地となって以来、クリスチャンの中学高校で英語教育を受けた。2つの外来文化に親しんできたわけである。ただ、夏目漱石や森鴎外のように「近代的自我」などには全く悩んではいない。(漱石も鴎外も、イギリスやドイツにおいてヨーロッパ的な思想の影響を受け、自己の存在について大いに悩み苦しむことになる。明治の知識人=留学経験者が、同様の問題意識に陥ったことは、よく知られている。)

「イスラム教徒は、自分がヨーロッパ人より上だと思っている節がある。」とは漱石を愛する在日スーダン人研究者の言だとか。イスラム教徒が、個人のアイデンティに悩む必要がないのに加え、伝統的氏族社会故に「自分は何者か」などを問う余地は少ないのだろう。よって、内部に葛藤を持たないソマリ知識人は、常に直球ドマン中勝負である、とのこと。

…高野氏のこの明治知識人との対比による考察は実に面白い。このソマリ知識人=イスラム教+イギリス文明の基盤にソマリアの氏族社会があるわけだ。日本ではこういう氏族社会の概念が完全に薄れている。すでに、日本の知識人は、このような数式めいた構造を失っているように見える。我々の世代限定で、無理に数式化すると、八百万の神の多神教的基盤の上に、仏教+朱子学+平和主義+左翼的リベラリズム(今回の参議院選でもかなり減少していることが明らかになった。)という考察になるかなと思う。

このソマリ人の基盤となる氏族社会的な話は、後に南部ソマリアの首都・モガディシオで再登場する。

豪州とカムチャッカの地震

https://x.com/youki01kun/status/1950342441581891628
先日、オーストラリアとニュージーランドの中間くらいの南地域で大きな地震があった。実は、学院ではメルボルン、学園ではニュージランドの、それぞれの姉妹校への短期留学期間で、心配していたのだが、学院の連絡ツールであるClassiでは、全く地震のことには触れられていなかったので大丈夫のようだと安心していたら、今朝、カムチャッカで大きな地震があり、北海道から宮崎までの太平洋岸に津波注意報が出た。各地で震度2くらいの揺れもあったようだ。震源は、北米プレートだが、太平洋プレートが沈み込むあたりになる。

少しカムチャッカの津波の映像情報も出てきたが、我々日本人にとって東北大震災時の津波のトラウマが共有されていて、心から恐ろしく思う。被害が少なければ良いのだが…。

2025年7月29日火曜日

イチロー氏 殿堂入りスピーチ

https://full-count.jp/2025/01/22/post1689549/
NY州北部の田舎町・クーパーズタウンで行われたイチロー氏の殿堂入りスピーチを聞いて感無量だった。ユーモアを交え、全て英語のスピーチだったが、何より「野茂さん、ありがとうございました。」と唯一日本語で述べた一説は胸に染みた。イチロー氏も感極まった表情だったが、冷静にスピーチを続けた。不調だった2度目のMLB決勝戦でタイムリーヒットを打った時のように…。

https://www.youtube.com/watch?v=ifO08pj7Pro

イチロー氏はスピーチの中で「愛する野球を45歳まで最高レベルで続ける唯一の方法は、野球に完全に身を捧げること、ファンのためパフォーマスをする責任があり、すでに勝敗が決まっていても用具を片付けたり箱をテープで止めたりすることは決してなく、ファンに毎試合完全な注意を払うことがプロとしての義務だと感じていた。(趣意)」と述べている。この言はまさに真実のイチロー氏の姿であり、NYヤンキース時代にレギュラーを外れ、もう敗北が決まり、若手のチャンスとなった試合で、他のレギュラーがスパイクを脱いでいる中、何時代打に指名されてもいいように、裏で素振りを続けていたという話がある。多くの前人未到の記録を残したことも凄いが、こういう武士道的姿勢がとんでもなく凄いと私は思う。

「夢は必ずしも現実的ではないが、目標はそれに到達する方法を深く考えれば可能になり得る。」「目標は、困難で挑戦的でしかも一貫性が基盤になる。」まさに今の大谷選手の高校時代の曼荼羅から始まる姿勢と努力はイチロー氏の言う”夢と目標の違い”を体現したものであるといえるだろう。大谷選手もこのスピーチに大きな感銘を受けていたようだ。まさに師弟関係。

イチロー氏、そして大谷選手へと繋がる武士道的・野球道は、MLBそしてアメリカ世界に大きな影響を与えているように私は思う。

2025年7月28日月曜日

ボストン 公立校の構造

https://www.expedia.co.jp/Boston-Charlestown.dx88542
ドジャーズが、ボストン・レッドソックスとアウェーで三連戦して負け越した。ボストンは私の大好きな都市である。「恋するソマリア」の書評を少しお休みして、ボストンでの追憶を記しておきたくなった。

古いオリジナルの視察日誌によると、1994年10月24~26日に大阪市立の教員視察で訪れている。ビーコンヒルや茶会船博物館、ボストン美術館、ハーバード大学・MITなどの観光も思い出深いのだが、アメリカでの初の訪問校となったチャールズタウン高校の視察でのことを記しておきたい。

チャールズタウン高校は、WASPの総本山のようなボストンにあって、アジアンやヒスパニック、黒人がマジョリティを占める学校だった。食堂では障がいを持った生徒たちのサービスを受けたし、保健室では妊娠もしくは子育てしながら39人の女生徒が通学している話やエイズ対策のことも伺った。またマリファナの蔓延対策も伺った。コンピュータ教育が盛んで、ベトナム、ドミニカ、プエルトリコ、ハイチの生徒が学んでおり、台湾出身の優秀な賞を取った女性教員が教えていた。

さて、視察日誌には書かなかったことなのだが、アメリカの公立高校は、事実上私学のような存在であった。学校長は進学実績やその他の学校運営全てに責任を持つ「経営者」であって、学校の運営費を出している(市や区・群などの単位の)納税者の評価によって、時にはクビにされることもあるそうだ。アメリカでは、納税は全て自ら計算し納税する。日本のような会社による天引きは行われないので、納税者は自分の納めた税金の使途についてはるかにシビアなのである。チャールズ高校では、前述の優秀な台湾の女性教師を雇ったりして目に見える成果を挙げているらしい。だからこそ視察校に選ばれたわけだ。

当時の私はI工業高校勤務で、”のほほん”と過ごしていた。日本の公立高校から見ると実に驚くべき「構造」(単純に図式化すると、納税者が株主/校長は経営者)であった。当時の大阪市立の各高校では、各校の個性化が図られてきつつある時だったのだが、まだまだアメリカのような危機感はなかった。後に個性化を図ったM高校・H高校へと転勤するが、「構造」の相違からアメリカほどの危機感があったとはいえまい。

今、私立高校にお世話になっている身からすると、この危機感が理解できる。保護者の存在は、アメリカの納税者に近い。そんな危機感・緊張感が様々な面で見られる。私にとっては苦ではない。反対に台湾の女性教師のようでありたいという思いが湧き上がる。

2025年7月27日日曜日

日本の中古車輸出とジブチ到着

https://daiki55.com/djibouti2/
「恋するソマリア」(高野秀行/集英社)には、日本の中古車を直接ソマリランドに販売するルート(UAEのドバイ経由がほとんど) を検討するシーンがある。マークⅡやランドクルーザーが人気らしい。マークⅡは15年落ちで日本円で30万円ほど。直輸入すれば10万円ほど安くなるようだ。これは、高野氏が東京支局長をつとめるソマリランドのケーブルTVのCMの取り組みから出てきた話であるが、結局うまくいかなかった。というのも、ソマリ人のTV局はプライドが高く、放映料は1分$25をビタ一文まけることがなかったのである。

ちなみに、日本の中古車輸出について少し調べてみた。アフリカでは、モンバサ港を中心にケニアやタンザニアが主な輸出先らしい。たしかに、ケニアでは日本車が多い。頑丈で、燃費が低く、故障しにくく、また故障しても部品が安価で早く手に入るという利点もあるらしい。前述のUAEは中東・北アフリカばどへの中継地点で、販売国のニーズをつかみかなり利益を得ているらしい。アジアでは、トラックのみだがフィリピン、それからバングラディシュ、モンゴルも多いらしい。一方で、中国(商業目的の中古車の輸入禁止)やタイ・インドネシア・ベトナム・スリランカ(各国とも規制が厳しい)などには輸出されていない。

ところで、ソマリ人の居住地域は、旧イギリス領のソマリランド、旧イタリア領のソマリア、旧フランス領のジブチ、エチオピア東部とケニア北東部にまたがる。ソマリ人の人口比率は、ソマリランドとソマリアは95%、ジブチは60%である。

そのジブチに、高野氏はまず降り立つ。ジブチは市内中心から半径1kmくらいは立派なホテルやフランス料理店、航空会社のオフィスなどが立ち並んでおり、フランス語の世界である。高級ワインを傾ける観光客や海賊対策でこの地に駐留する兵隊がナイトクラブやバーに繰り出している。フランスの海外県といった趣なのだが、そのエリアを一歩出れば、植民地の雰囲気(画像参照)であるとのこと。そのエリアのホテルに泊まることになった高野氏は、スタッフに何処の出身と聞くと、その属する氏族を言い当てた。ソマリ人は氏族社会で、もともと土地に縛られない遊牧民である彼らは、血縁で固まる。とはいえ、何か事が起きなければソマリ人は一般的に氏族や国籍などに頓着せず親切である。

ジブチは、ソマリ人にとっては「欧米とアラブ社会向け窓口」である。ここから陸路でソマリランドへ凄まじい難行苦行となるのだが、詳細は割愛しておく。

2025年7月26日土曜日

書評 恋するソマリア

本日、大阪府予選準決勝で、東海大仰星高校が、まさに三田学園同様の惜敗をしてしまい、私の”夏の甲子園”は終わった。関わった各校の選手や関係者の皆さんの努力に想いをはせると悲しすぎるのだが、これも真剣勝負の高校野球の醍醐味である。皆さん、本当にご苦労さまでした。改めて秋季大会で大暴れして、是非私をセンバツに連れて行って欲しいと思う。

さて、気分を変えて新しい本の書評を書き始めたい。「恋するソマリア」(高野秀行/集英社)である。ちょうど1周間前、期日前投票に行った時、支所の横にある市立図書館で借りてきたものである。ソマリアは先日のHDIの最新版で、後ろから数えて世界第2位(ちなみに第1位は南スーダン)という国である。2学期の教材研究のためでもあるし、作者が高野秀行であるというのも絶対的に面白いという安心感があって借りてきた。

以前、高野氏の「謎の独立国家ソマリランド」はすでに読んで、非常に感銘を受けた。(2013年の4月から5月にかけて、このブログ上で書評を5回に分けて書いている。)その続編的な内容になるが、いよいよ旧イタリア領の南部ソマリアに向かう話である。

高野氏はソマリ語をさらに身に着けようと、母校・早稲田大学に在学しているソマリ人兄妹を探検部の後輩を使って探し出す。すぐに見つける探検部現役も凄い。(笑)彼らは、南部ソマリアの暫定政権のスポーツ大臣の子供であるのだが、2009年の自爆テロで犠牲者の一人となった。「あしなが育英会」の招聘で日本に来たのだった。兄は、モガデシオ出身ながら、珍しく温和な人だった。かなりの「箱入り息子」である。妹は主張の激しい典型的ソマリ人で、ソマリランドに行くと告げると、「モガデシオにも行くんでしょう。」と、実家に行き、「半年も同じで飽きたアクセサリー(腕輪や指輪)を母に取り替えてもらって。」とお遣いを頼み、おみやげ(芳香剤や紙おむつ、日本のお菓子等)を託した。兄は「歯磨き用の木の枝を買いいてきてくれ。」とだけ言った。

…ソマリ人はケニアもいて、ピーター・オルワ氏に「彼女はソマリ人やね。キレイやね。」と教えてもらったことがある。たしかに美人がすこぶる多い。(笑)前述の兄の所望した”歯磨き用の木の枝”を、ブルキナファソ・サヘルの村で、オマーンや運転手が使っているのを見たことがある。ただし、彼らは、木から直接取って歯磨きしていたのだが…。

2025年7月24日木曜日

今年の高校野球 2025

https://sports.yahoo.co.jp/video/player/21522524
自分と関わった学校が甲子園に行ってくれないかというのが毎年の夏の楽しみである。元大阪市立のI工業もM高校もすでに無く、公立の雄だったH高校も早々と姿を消した。

一番可能性が高いと思われた秋田商業高校も今年は20日の段階でベスト4で終わってしまった。残念である。

三田学園は、今日ベスト4をかけて小野高校と戦ったが、9回裏に逆転され4-3で惜敗。本当に残念である。両者とも涙、涙の熱い戦いだった。

残るは、大阪府予選、東海大仰星高校で、ベスト4進出である。準決勝は、土曜日に本命同士・大阪桐蔭と履正社が対戦するが、東海大仰星は柏原が相手である。もしかすると、甲子園…と期待が膨らむ。

昨年度の冬休み、野球部の先生と、もし甲子園に行くことになったら応援に行きますねと約束した。正夢になることを祈りつつ。

2025年7月23日水曜日

カラモジャに「平和」を

https://www.terra-r.jp/blog/20240618.html
「荒野に果実が実るまで」(田畠勇樹著・集英社新書)の書評、最終回。このプロジェクトの収穫の様子、そして近隣の村への原付き三輪車によるトマトの販売の成功談で、本書は終わっている。最後の最後に、農業はビジネスであるという原理が示されていた。

この現金収入で主食を得、飢餓を回避できそうである。とはいえ、課題は山積み。未知数のトラブルもまだまだ起こり得るだろうが、主人公の青年の1年半の戦いは勝利したと言っていいだろう。彼は、飢餓の克服とともに「平和」をカラモジャの地に根付かせようとしている。彼が「失業することが最終的な勝利である」という記述は正直な吐露であると思う。

昔、大阪の京橋駅で、救済を訴える難民申請をしているウガンダ人と邂逅したことがある。スワヒリ語で挨拶したら。実に喜んでくれた。彼の英語も私の英語も大したことがないので、彼がなぜ難民になったのかはよくわからないままであったが、おそらくは、このカラモジャに近い北部で武装闘争を続けている「神の抵抗軍」(LRA)との関連ではないかと思っている。LRAは、子ども兵と残虐行為で有名である。このプロジェクトを推進しているNGO、テラ・ルネッサンスは、子ども兵に関しても様々な国際協力を行っている。

ウガンダは、国内避難民も多く、しかも南スーダンやコンゴ民主共和国からの難民の受け入れも行っている。https://www.japanforunhcr.org/activity-areas/uganda

本書は、まさにアフリカの国際協力の暗黒面をも正直に書き記したノンフィクションで、実に貴重な一冊だと思う。新刊書である。一冊でも多く売れて欲しいと思うし、多くの人に読んで欲しいと思う。

アフリカの「平和」。主人公の青年の挑戦はまだ始まったばかりである。小さな一歩かもしれないが、援助依存構造や汚職利権構造に抵抗していくことで、少しずつ変わっていくことを期待して、書評を終わりたい。

2025年7月22日火曜日

厚顔政治家は許せない

https://note.com/tabatytabaty/n/nf13007f773db
「荒野に果実が実るまで」(田畠勇樹著・集英社新書)の書評第6回。主人公の青年のメンタルはかなり冷静で強い。様々なトラブルに対しても23歳とは思えない対処をしている。彼のメンタルを保証しているのは、カラモジャの人々への熱い思いであるのだが、時には正義感とぶつかり「彼だけは許せない。」と記している箇所がある。

歪んだ援助構造を体現するようなプロジェクト・モニタリングを開催せざるを得なくなった時のことである。農場までの燃料代、軽食代と日当を負担し、日本円で数万円を必要とする。全くの無駄金である。5分で帰った県知事も、たいがいだが、群議会議員のMという男は、「このプロジェクトをもたらしたのは自分の手柄だ。」と言いながら、一方で住民には「働かされて一銭も受け取っていない。もっと食料を配らなければならない。」と言い、拍手喝采を浴びた。そもそも「食糧援助が地域の発展を阻害してきた。カラモジャに必要なのは食料ではない、食料を作る技術だ。」と言ってきた男の厚顔な変節であった、

彼が去った後、混乱した住民の中から「同志よ、政治家に混乱させられてはいけない。」と立ち上がったリーダー・ロモイの言葉が主人公の青年を救うのだが、ウガンダも日本も変わらない。

自分の言に責任を取らない保身と利権あさりの政治家ばかりであるところは、日本もウガンダも変わらない。教え子の中に少数だが政治家を目指している者もいる。彼らには、こんな輩にだけはなってもらいたくはないと思うのだった。

暴力が全てを奪う

https://www.terra-r.jp/blog/20221119.html
「荒野に果実が実るまで」(田畠勇樹著・集英社新書)の書評第5回。このブロジェクトが進み、収穫が始まった頃、大事件が起こる。白昼の大通りで刈り取りを終えた4人が武装集団に襲われ、スマホや収穫物を奪われたのである。

主人公の青年は、かつてルワンダの大学に留学しているとき、紛争地から来た学生の「紛争が全てを奪ってしまう。」という言葉を思い出す。幸い、襲われた女性たちに命や怪我などはなかったが、地域の治安を守るUPDF(ウガンダ政府軍)に向かわざるをえなかった。住民たちは、武装集団と政府軍がダブルスタンダードで銃の供給をしていることも知っていた。諦め。絶望。だが、彼らは「農作業が楽しいから、これからも農場に行く。」と行ってくれた。

結局、UNDFに警備を依頼するのだが、その兵士の一人は、他に生計を立てられる手段がなかったので入隊したと言う。最低限の衣食住を得て、ある程度貯金が溜まったら何かしらの専門性を身に着けれる学校に行くつもりだという。ウガンダでは、大学出で流暢な英語が話せてもたいした働き口があるわけでもないという。

私はこの話を読んで、まず南アのバックパッカー宿のスタッフをしていた青年を思い出した。大学を出ても、学んだ専門性を活かせないと言っていた彼。ジンバブエ行きの際、親切に対応してくれので、コーラを奢ったら、こんなこと初めてだと感激してくれた。彼は今自分の力を発揮できる職についているだろうか。

また、H高校時代の教え子の一人を思い出した。彼は私のクラスではなかったのだが、3年時に保護者が他界され、姉と2人きりになってしまった。彼はサッカー部でひたすら愚直に練習していたがレギュラーの座を掴むことはなく、ただ真面目さが取り柄という生徒だった。彼が選択した進路は自衛隊であった。私は自衛隊へのリスペクトは高いのだが、長年接してきた「教え子を戦場に送るな」という組合の有名なテーゼを無視はできない。だが、彼の場合、自衛隊が最も良い選択肢であったと思う。私が担任でも賛成したに違いない。今どうしているかな。もしかしたら、専門技術を得て除隊しているかもしれない。

アフリカと日本、たしかに大きく状況は違うけれど、本質的な人間としての問題は全く変わらないと私は思っている。

2025年7月21日月曜日

自然と化学の合間で

https://www.terra-r.jp/activity_karamoja.html
「荒野に果実が実るまで」(田畠勇樹著・集英社新書)の書評第4回。自給的農業の代表的作物であるトウモロコシ(”メイズ”とクーンズ・イングリッシュで呼ばれることが多い)が害虫にやられ、主人公の青年は、やむを得ず農薬を1度だけ撒くことを決断する場面が描かれている。

彼は、自給的農業において、このような商業的農業の農薬・肥料、さらには生産性の高い種子などアグリビジネスに関わることを忌避したいと考えている。なぜなら、持続性のある種子を保存することができなくなることを恐れていたからである。これは、実に正しい選択だと私は思う。生産性より持続性が、特にカラモジャのような飢餓地域では重要だと思う。

そもそもこのトウモロコシ、灌漑工事の関係で、一時引き抜くことが想定された。青年は住民の声を聞いて周り、彼らの反対意見をしぶしぶ尊重することになる。この時の住民の主体性を守ったことが、後の援助依存ではないカラモジャの灌漑農業に繋がっていく。後に、この決断が分岐点だったと回想している。

ケニアで園芸農業を推進したJICAの専門家を知っている。花卉をオランダ等に輸出するバリバリの商業的農業であるが、どうやって現地の人々の主体性を引き出したのだろう。主体性がなかれば発展はない。かの専門家はまさに熱血漢で革命家然とした方だった。その人間力こそが主体性を引き出したと私は感じている。

トラブルの連続と貯水池

https://www.terra-r.jp/blog/20230919.html
「荒野に果実が実るまで」(田畠勇樹著・集英社新書)の書評第3回。結局、貯水池を掘るのは民間業者に委託することになったカラモジャの灌漑プロジェクト。途上国でよくあることだが、なかなか予定通りに進まない。中進国であるマレーシアでも、PBTの生徒をバスで移動させる場合の遅延など日常茶飯事だった。

また主人公の青年が信頼していた専門職の現地スタッフとのトラブルも起こる。金銭について厳格にしていても起こる小さな汚職(レシートのごまかし)など、23歳は思えないリーダーシップをもってこれらのトラブルを乗り越えていく姿。内心では忸怩たる思いや葛藤を抱えながら進んでいくところは、本書の最重要な文脈であると思う。

降雨と貯水池の完成(画像参照)はまさにギリギリ。いよいよ灌漑農業が開始されれる。

ところで、昔地理Aを教えていて、農業を大別すると、自給的農業と商業的農業というカテゴリーだった。今はそんなことは教えない。「農業はビジネスである」とはっきり言えるくらい、商業的農業が中心だからである。飢餓地域であるカラモジャの場合、当然ながら自給的農業が中心である。アフリカの農業全体に言えることなのだが、欧米資本によるプランテーション以外は、自給的農業を行い、一部換金作物(マンゴーやパパイアなどの果実を国道沿いなどで販売している姿を何度も見た。)も育てている、と言った具合だ。

2025年7月20日日曜日

エリート官僚と利権

https://yuuboku.hatenablog.com/entry/0053
「荒野に果実が実るまで」(田畠勇樹著・集英社新書)の書評第2回。実は本書は前述の貧困かつ援助依存症的な人々に続いて、エリート官僚の利権に卑しい姿が描かれる。

JICAのケニア研修旅行では、意外なことに我々はスーツ姿であることが多かった。様々な視察の場所で接するのは、体格の良いスーツ姿のエリート官僚たちで、その数も多かった。今思えば、彼らもJICAから様々な恩恵を受けていたように思う。

アメリカのトランプに潰されたUSAIDほどではないにしろ、JICAも国際協力推進のために、表には出せない苦労があったのではないかと思うのだ。ただ、JICAの国際強力のポリシーは、自助努力、途上国の人材を育てることに主眼が置かれているので、USAIDのような国内外での金まみれの無茶苦茶はしていないと思われる。

ブルキナファソで出会った教育省のエリートは、日本にJICA研修員として学び、ブルキナファソの教育にシビアに向き合っていた。彼の言には、心底自国の教育に対する危機感がありありとあったし、利権への興味など微塵も感じられなかった。心底尊敬できるエリートであった。このような人物に会った経験は私の宝でもある。

ただ、総じてアフリカのエリートは、”情の経済”に流れがちである。(”情の経済”については、2021年5月29日付ブログに、「開発独裁と情の経済考」と題して詳細に記してあるので、興味のある方は、そちらを参考されたい。)アフリカでは、学歴が日本以上にものをいう世界である。また有力者の血縁・地縁がものを言う世界でもある。これらが”情の経済”と結びついて、エリートにおける経世在民の概念を置き去りにしていく。

最後に、ブルキナファソで出会ったNGO・緑のサヘルの方の嘆き節。日本で懸命に集めた寄付が、現場に届くまでに、その半分が消えてなくなると言う。様々な官僚が中抜きしているわけで、寄付していただいた方に申し訳ないと言われていた。これもアフリカの現実である。

植民地主義の洗礼

「荒野に果実が実るまで」(田畠勇樹著・集英社新書)の書評を本格的に始めたい。前述のように、このウガンダ・北部のカラモジャ地域は、Aw(サバナ気候:雨季と乾季に分かれる熱帯)であり、カラモジャは遊牧民的要素も強い。雨季の不安定な天水による農業は、生産性の低い土地ではかなり脆弱である。そこで、貯水池を作り灌漑農業化するのが、主人公の青年の描いたプロジェクトである。

驚いたのは、その灌漑プロジェクトの説明会に参加した人々が、参加したことに対価を求めたことである。砂漠化を助長する環境破壊である木々の枝を刈り取って現金化するくらいしかできないほど彼らは極端に貧しい。”援助屋”が、植民地主義的な上下関係を維持してきた故に、彼らにはそういった習慣が深く根付いていたのであった。

主人公の青年は、これを断固拒否する。アマルティア・センの飢餓論に忠実である。自助努力なしに彼らの未来はないという信念が息づいている。

そもそも、貧しい者は、富める者からなにがしらを得ることは、グローバルスタンダードである。イスラム教での喜捨が最も顕著だが、ウガンダは、キリスト教圏でカトリックやプロテスタントの国である。これは植民地時代の悪しき上下関係という側面が強いといえる。主人公は富める外国人として認識されている。

私がアフリカで、経験した同様の体験は、ジンバブエの公園で幼子の兄妹の笑顔見たさに、小銭を与えたことぐらいである。大人から直接何かしらの対価を求められたことはない。それほど、カラモジャ地域の経済的困難さは厳しいといえる。

2025年7月19日土曜日

ウガンダの飢餓地域に立つ青年

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1学期が、今日終わった。長かったような短かったような…。今年の3年生は、一応に昨年以上に熱心に授業を受けてくれている。特に特進クラスは優秀な子も多く、来春に期待大である。長い休暇になるが、私は私でコツコツと教材研究を進めていこうと思う次第。

さて、夏季休暇に入ったところで、いよいよゆっくりと書評を書きたいと思っている。まずは、「荒野に果実が実るまで」(田畠勇樹著・集英社新書)である。京大農学部・新卒23歳のウガンダ駐在員奮闘記のノンフィクションである。

ウガンダでも最も飢餓が厳しいカラモジャ地方への派遣を願い出た主人公には、純粋な国際協力士としての矜持をまず感じる。我々教育界の人間から見れば、最も困難とされる学校への赴任を希望するに等しい。特に就職先のNPOテラ・ルネッサンスの上司は、そもそも気になっていた地域であり大賛成してくれたというのも凄い。

なによりいくら優秀な京大農学部(環境経済学科)を卒業したとはいえ、23歳という若さの青年に、プロジェクトを託してくれることも凄い。学校現場で言えば、新任教師に教頭職を任すようなものだ。自分と比較するのもおこがましいが、新任教師は、ほぼ見習い扱いである。

この新書、現在私が毎年選ぶ「今年この一冊」の本命候補に躍り上がっている。ただ、読者の皆さんにも是非読んでいただきたいので、書評では内容を少しはかりボカして、アフリカ開発経済学の視点も交えながらエントリーしていこうと考えている。

2025年7月16日水曜日

HDIランキングから始める

https://hdr.undp.org/data-center/country-insights#/ranks
2学期の地理総合は、UNDP(国連開発計画)が毎年作成する豊かさを表すHDI(人間開発指数)のランキングから始めることにした。すでに提出用紙は作成済みである。残念ながら、この表には指数(1が最も良く、0がもっとも悪い)のみ書かれている。この指数がどうして計算されるかは、実に重要なのでプリントで説明するとして、まずは世界中の国の豊かさの順を作業しながら感じ取ってもらうことから始めようと思っている。

なぜアイスランドやノルウェイ、あるいはスイスが豊かなのか?ちなみにアメリカは17位、日本は23位、中国は78位、インドは130位である。当然ながら下位の国にも注目して欲しいと思っている。

下位10カ国では、内戦下のイエメンが184位で、後はすべてサブサハラ・アフリカである。ここから、先日の難民キャンプの話と重ねていこうと思っているところ。

先週の土曜日に、枚方市駅に通院で出かけた折、ついにウガンダでの京大農学部を出たばかりの青年のノンフィクションを手に入れた。これがなかなかすごい話なので、この内容も加味できればと思っている。

2025年7月15日火曜日

大谷選手と間柄的存在Ⅱ

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/ntv_new
s24/sports/ntv_news24-2025071503912576
オールスター前の記者会見で、大谷選手に「ドジャーズ以外で気になる選手」と言われているにもかかわらず、自軍のリリーフ投手2名の名前を挙げたことに、私は感動している。黙々と頑張っているあまり有名でない投手をこの場で取り上げる感性。こそこそが大谷選手の間柄的存在である。ドジャーズの大谷。大谷のドジャーズ。名前の出た2人は驚き、そして大いに感激したのではないか。

さらに、故意の報復死球を受けたパドレスの投手に、「まだ痛いよ。」と言って近づき、握手、そしてハグ。こんな事ができるスーパースターがいるだろうか。MLBの大谷。大谷のMLB。この間柄的存在に、全米が感動している。

一神教世界の個人主義世界で、日本的な間柄的存在を、毎日のように披露する大谷選手。実に凄いとしか言いようがない。

2025年7月14日月曜日

ドジャーズ SG3連戦を振り返る

https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/photonews/photonews_nsInc_202507120000865-1.html
記録的な連敗を続けていたドジャーズだが、このサンフランシスコ・ジャイアンツとの3連戦は見ごたえのある接戦だった。

第1戦は、なんといっても大谷選手のスプラッシュヒットの32号2ランである。しかしメイ投手の乱調もあって試合は混戦に。コンフォートの見事なバックフォームがあったり、ベッツの死球をうけつつも激走があったり、コンフートの2ランもあったり、ベッツの3塁打、スミスのタイムリーで1点差に迫ったのだが、最後はチャンスを作りながら7-8で惜敗したのだった。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOKC1304P0T10C25A7000000/
第2戦は、大谷投手が先発で3回を投げた。全米を驚かせる快投だった。1回は三者連続三振。2回は四球1、3回はヒットが1本出したものの無得点で終了。この快投をシーハン投手が繋ぎ、コンフォートも3安打で大活躍。ラッシング捕手のダイビングが華を添え2-1で連敗を脱出したのだった。

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2025/07/14/kiji/20250714s00001007113000c.html?page=1
第3戦は、山本投手が7回まで7奪三振、無得点の完璧なピッチング。しかし、9回に同点にされ、勝ちががぶっ飛んだ。延長11回に3点を奪い5対2で勝ったのだが、センター・アウトマンの好守備やフリーマンやパヘスのタイムリーが光った。

いずれも好試合。なんとか勝ち越して”オールスターゲーム”である。

2025年7月13日日曜日

自宅から”ブルー”を見る。


ブルーインパルスが再び大阪にやってきて、枚方にもその勇姿を見せてくれた。空自の航空ショーで何度か見せてもらったが、編隊飛行だけでも十分素晴らしい。

空自としては、十二分に広報活動ができたと思う。ところで、YouTubeで「残酷な天使のテーゼ」にのせての広報ビデオがあって、なかなか感動的な仕上がりを見せている。よろしければ是非。https://www.youtube.com/watch?v=frX68f22aNA

PP 世界価値観調査の日本2

次に「自己表現・多様な価値観を認める」が、この位置にあることについての考察。これには、日本の価値観のオリジナル化という視点と、和辻哲郎の「間柄的存在」という視点で解説した。

日本文化の重層性と仏教・儒教のオリジナル化を説いた(ここには大分時間がかかる。笑)後、使った画像は大谷選手の高校時代の曼荼羅。朱子学的な理気二元論と林家の上下定分の理が見事に昇華しているといえる。これは、生徒諸君にとっても理解しやすそうであった。その他東京駅の新幹線の7分間の清掃と出発時のお辞儀の話や、スーパーやコンピ二の店員さんのプロフェッショナリズムの話も加える。

そして最後に、私が鉄板的に使う川端康成のノーベル賞受賞講演「美しい日本の私」で、間柄的存在をまとめた。現在売られているものは無味乾燥な表紙になってしまったが、以前の講談社新書の方がはるかに良いと思う。(笑)

いわゆるキリスト教社会の欧米諸国の個人主義とは一線を画す故にこの位置にあると、言えるのだった。

PP 世界価値観調査の日本1

期末考査度の授業は全クラス・2コマ。時間の関係で期末考査の範囲で解説できなかった「日本の位置の考察」を行っている。まずは、日本が世界で最も「非宗教的・理性的価値を重視」が高数値である理由について、私なりの解説。

ブログで前述したISSP国際比較調査/宗教2008のデータをもとに、アメリカの大学が行った価値観調査であるから、無宗教49.4%という数値がかなり重視されていると思える。

しかし、日本の宗教観は、一神教世界とは事情が異なる。日本人の思い浮かべる「神」は一神教の神と八百万の神の両方である。

八百万の神の説明には、「千と千尋の神隠し」の画像を使った。知らない生徒もいたのに驚いた。これも今の高校生にはあまり知られていないのだが、「聖☆おにいさん」の紹介もした。世界的にも評価されているし、学院の宗教科のI先生にも読んでいただき、「面白いですね。」と言っていただいたので安心して紹介した。(笑)このような独自の宗教観をもつが、日本の無宗教層であるわけだ。

2025年7月11日金曜日

アメリカ 12の国家

https://x.com/happa23232/status/1214748704386641920/photo/1
またまた興味深いYouTubeを発見した。50の州(国家としての要素をもつ)で構成されるアメリカを価値観や文化などの地域文化圏として”12の国家”であるとしたものである。https://www.youtube.com/watch?v=U2eTN6yDRGE

元ネタはコリン・ウッダードの「11の国のアメリカ史」である。地域文化圏は以下の通り。

1.El Norte(エル・ノルテ)メキシコとの国境地帯でスペイン文化の影響が強い。

2.New France(ニューフランス)ニューオリンズなどフランス文化の影響が強い。

3.Tidewater(タイドウオーター)バージニアを中心にイギリス植民地時代からの歴史を持つ。

4.Yankeedom(ヤンキーダム)ニューイングランドなどピューリタンの影響が強い。

5.New Netherland(ニューネザーランド)NYCを中心にオランダ植民地時代の歴史を持つ。

6.Greeater Sppalachia(大アパラチア)スコットランド・アイリッシュ系の文化が強い。

7.The Midkands(ミッドランド)ペンシルベニアを中心に様々な文化が混在する。

8.The Deep South(ディープサウス)奴隷制度とプランテーションの発展した地域。

9.The Fair West(ファーウエスト)開拓時代の精神が残る地域。ロッキー山脈やアラスカ。

10.Spanish Caribbe(スパニッシュ・カリブ)フロリダ南部とプエルトリコ。

11.The Left Bak(左岸)19世紀後半以後に形成されたリベラルな価値観を持つ地域。

このチャンネルでは、ここに描かれた11の地域文化圏にさらにハワイをプラスしている。

アメリカの歴史と地理を総合した、州という枠組みを取っ払った分類で実に面白い。これもまた、2学期の教材研究の一環なのだが、よければYouTubeをご覧いただければと思う。

2025年7月10日木曜日

NATO加盟国別ランキング

https://www.youtube.com/watch?v=btppL1Pas-8
YouTubeで、「NATOの最も強力な軍隊32選」というチャンネルを見て、”きっと驚く”というサブタイトルに惹かれて見た。これも地理総合の教材研究の一環である。https://www.youtube.com/watch?v=btppL1Pas-8

軍事力の低い順に紹介されている。人口40万人のアイスランドには常設の軍隊がない。しかし地政学的にロシアの潜水艦の移動を見張る重要な位置をしめておりNATO軍の基地がある。モンテネグロが31位。2350人の現役軍人。空軍は11機のヘリ、装甲車両662台、牽引砲12門、ロケット発射装置12基。海軍は5隻の巡視船のみ。30位は北マケドニア。9000人の現役軍人、空軍は10機の練習機、ヘリ10機、攻撃用ヘリ4機、23両の戦車、装甲車両は2156台、牽引砲191門、ロケットプロジェクター24台。(内陸国故に海軍ナシ)29位はルクセンブルグ。現役軍人は1000人、輸送機が1機、装甲車両が180台。(内陸国故に海軍ナシ)という感じである。全部記していくとすごい文章量になる。ここから順位と国名のみでいくことにしたい。

28位ラトビア、27位はスロベニア、26位はアルバニア、25位はリトアニア、24位エストニア、23位はベルギー。ベルギーは戦闘機を45機(F-16の写真が出た )持っている。22位スロベキア、21位はクロアチア。クロアチアも11機の戦闘機(仏製ラファール)を持っている。20位はブルガリア。ここも11機の戦闘機(ミグ29)を持っている。19位はハンガリー。ここも13機の戦闘機(スウェーデンのグルペン)を持っている。18位は最近NATO入したフィンランド。55機の戦闘機(米国製F18)を持っている。17位はデンマーク。ここも33機のF18を持っている。16位はルーマニア。14機の戦闘機を保有。画像はF16。15位はチェコ。スウェーデンのグルペンを12機保有。

14位はノルウェイ。さすが富裕国で30機の戦闘機はF35とF16 である。なお、この辺の国から潜水艦を保有(6隻)している。13位はオランダ。26機の戦闘機(F16 )、3隻の潜水艦を保有。12位のポルトガルもF16で28機。ここから給油機(2機)も登場。潜水艦は2隻。11位はギリシア。(本日の画像はギリシア空軍の輸送機。尾翼のデザインがなんとも素晴らしいと思う。)戦闘機がぐっと増える。米仏製の混合で194機。11隻の潜水艦保有。10位はスウェーデン。自国製の戦闘機は71機。給油機が1機。潜水艦は5隻。9位はカナダ。65機の戦闘機は当然米国製。給油機は6機。潜水艦も4隻。8位はポーランド。戦闘機は59機。輸送機も49機。なにより現役軍人が20万2100人もいる。潜水艦も1隻(デザインから元ソ連製?)

7位はスペイン。戦闘機は139機(F18とユーロファイター・タイフーンの混合)いよいよスペインから航空母艦を1隻、潜水艦を3隻もっている。6位はドイツ。戦闘機は113機。潜水艦は6隻。陸上戦力は伝統的に充実しているのでスペインより上位に来ているようだ。5位ははフランス。戦闘機は自国製で224機。輸送機は118機もある。給油機は17機。航空母艦1隻、ヘリ空母3隻、駆逐艦(ここでやっと下位国のもついフリゲート以上の艦船が登場する)10隻、潜水艦は9隻。4位はイタリア。90機の戦闘機(F35とユーロファイター・タイフーンの混合 )給油機は8機。航空母艦が2隻。駆逐艦4隻。潜水艦8隻。

3位はトルコ。陸軍だけで35万5200人の現役軍人。205機の戦闘機(F16と懐かしのF4ファントム)輸送機は83機。給油機は7機。陸上戦力(戦車など)もかなり多い。航空母艦はないが、の潜水艦は12隻。2位はイギリス。120機の戦闘機、31機の輸送機、9機の給油機。2隻の航空母艦、6隻の駆逐艦、10隻の潜水艦を保有。

言わずもがな1位はアメリカである。陸軍が132万8000人。1854機の戦闘機、896機の爆撃機・攻撃機、957機の輸送機、606機の給油機、11隻の航空母艦、ヘリ空母9隻、駆逐艦75隻、潜水艦64隻。まあ陸上戦力も当然、桁が違う。

…なんらかの数値でランキングされていると思うが、”きっと驚く”というのは、トルコが第3位であること、ならびにフランスよりイタリアが上位ということ、ポーランドが地政学的にもかなりの軍事力をもっていることだと思う。ちなみに日本は、ある資料によると、イギリスとトルコの間らしい。NATOのランキングでは3位に位置するようだ。ついつい航空ファンとしては、戦闘機数に偏った記述となったが、NATO内でも大きな差があるし、戦闘機もかなりバラバラなので、有事にはどんな協力体制が取られるのだろうかという疑問も浮かんだ。

2025年7月9日水曜日

今まさに崩壊しつつある国

https://www.cnn.co.jp/world/35216680.html
スリランカ パキスタン レバノン ハイチ ベネズエラ スーダン ミャンマー ジンバブエ アフガニスタン ウクライナ。この国名群は、YouTubeにあった”今まさに崩壊しつつある国10”である。ランキングになっていて、ウクライナが最上位である。https://www.youtube.com/watch?v=XvNvzDTeSq8

多くの国が政治的な混乱や内戦、インフレと食糧不足など様々な問題が指摘されている。正直なところ、アフリカ諸国が、スーダンとジンバブエだけだが、様々な問題を抱えている国は多い。状況によっては、イランも入ってくる可能性があるし、シリアもアサド政権が崩壊したとはいえこれからどうなるかわからない。ガザ(パレスチナ自治区)も国という概念ではない故に入っていないのだと思われる。

https://www.cnn.co.jp/world/35216680.html
2学期の地理総合では、経済的な側面から世界を見ようと思っているのだが、昨日の人権学習で提起された難民という視点、悲惨な現状からスタートするというアイデアも浮かんでいるところである。今日の画像は、世界初の黒人独立国でありながら、ギャングによる支配が続いているハイチ。まさに北斗の拳の世界といえよう。

2025年7月8日火曜日

学院の人権学習について 2

https://www.y-history.net/appendix/wh1703-092.html
学院の人権学習・本番の日である。S先生からサポートを頼まれていたので、かなり登壇者と接する機会があった。1コマ目は、前回話題にしたユニクロの”届けよう 服のチカラ”であった。H高校でのハランべー・プロジェクトから10年。出前授業も、昔JICA大阪で学んだ「難民のアクティビティ」も取り入れられていた。もしあなかたが難民となった時、何を持っていくか?というものである。JICAの高校生セミナーでは、時間経過とともに持って行けるものが、どんどん減っていき、精神的にもしんどいものだったが、今回はいくつかから1つ選ぶという簡素化されたものだった。パワーポイントの途中、難民になる原因の1つが「人種」となっていたのだが、高校地理の学習では、人種という概念がすでに消えていることを伝えておいた。「民族」の方がはるかに適切だと思うとも…。

さて、2コマ目は、近くのカトリック教会で難民の支援を行っている方が、実際の難民申請中の方を連れて来られた。クルディスタンの男性であった。あまり細かなことは個人情報なので書かないほうが良いと思うが、私にとっても初めてのクルディスタンとの邂逅となった。貴重な経験である。ちなみに私の「地球市民の記憶」(ブログの常設ページ)は109カ国・地域になった。

日本の難民申請は先進国の中でも極めて厳しい。私は、ただ単に批判する立場にはない。日本語という言語の学習が、共存の鍵だと思っている。そんな話を講演後に応接室でしていた。彼は独学で日本語を学んでいるらしい。難民申請中故に日本語学校にも行けないようだ。マレーシアでの日本語学校での経験と照らし合わせても、日本語の習得はそう簡単なことではない。

クルディスタンの難民申請中の彼は、まさに「民族」的な問題で日本に来たのである。ナイスガイなので、是非難民申請が通って欲しいものだ。3年生には、民族問題でクルディスタンについても授業で話している。彼の地域のクルド語の文字はアラビックであるとのことだった。こんなことを3年生に質問してほしかったが、2階席だったので皆臆してしまい残念。(笑)

2025年7月6日日曜日

三沢にB1ーBが4機来ている

https://www.kotatv.com/2025/04/03/south-dakota-air-space-museum-is-open-2025-season/
日米で使っている青森の三沢基地に、B1ーBが4機駐留しているそうである。ベトナム戦争時の嘉手納にB52が駐留して以来のことで、グアムやオーストラリアにも駐留しているが、日本にも置いておこうということらしい。

B1ーBは、私にとっても思い出深い爆撃機である。サウスダコタとワイオミングを旅するにあたって、AAA(アメリカのJAFのような会社)が発行していた州ごとの観光案内本(もちろん全て英文である。)をチェックしていて、サウスダコタのラピッドシティ空港から、バッドランズ国立公園を目指す途中に、空軍基地と航空博物館があるのを見つけた。そこは、”戦略”空軍基地であったので、ICBMなども配置されている基地だったが見学可能となっていた。今から思えば、英文の記事をよく翻訳したと思う。必要に迫られてのことだったが、ネットのない時代というのは、こういう苦労と喜びもあったのだ。

残念ながら、ちょうどケニアのアメリカ大使館が攻撃され、星条旗は半旗となって掲げられており、期待していたICBM基地のツアーは中止になっていた。幸い、航空博物館は見ることができた。戦略空軍基地らしく、B-29やB-52などの爆撃機が多く展示されていた。そんな中、凄い爆音と超低空での離陸、ならびに超低空飛行のB1ーBと遭遇したのである。とんでもない爆撃機である。あの衝撃は文章化できないほどのものであった。(上記画像は、航空博物館近くを離陸するB1ーB)

このB1ーBは、核攻撃ができないようになっているが、B52以上に爆弾を積めるし、なにより速度がめちゃくちゃ早い。ステルス性もあり超低空を一気に目標まで向かうことができる。巡航ミサイルも多く積めるし、とんでもない性能であるのだが、可変翼機なので整備にコストがかかり退役も近い。

とはいえ、三沢にB1ーBが常駐(スパンは未定らしい)しているということは、大きな抑止力である。三沢には、米軍のF35もいるので、かなり強力な基地となったのは間違いない。ただの抑止力であることを祈るが…。

2025年7月5日土曜日

学院の人権学習について

https://www.kyoiku-press.com/post-205454/
火曜日に、学院では中高で人権学習が組まれている。主担はS先生で、懇意にさせてもらっている。私はこの日授業はないのだが、成績処理のため登校することを生徒諸君にはクラスルームというGoogleのアプリで伝えてある。

というのも、1コマ目は、ユニクロの”届けよう、服のチカラ”プロジェクトで、S先生にお話を伺って、懐かしさが込み上げてきた。2013年というから、10年前、奈良教育大学のユネスコスクールの大会時に知ったこのプロジェクト、H高校で”ハランべー(スワヒリ語で助け合い)プロジェクト”として立ち上げたものだからである。(本ブログの右側のラベルを見てもらうと13回エントリーしていることがわかる。興味のある方は是非見て下さい。)

問題は、”子供の服”を集めることである。高校生は意識は高いが、子供服を集めるとなると大変で、たくさん段ボールを送ってもらったのだが、なかなか難しかった。学院には、幸い小学校から幼稚園、保育園まであるので、協力してもらえればかなり集められるのではないかと思う。送られる先は、難民キャンプなので、地理総合の授業でも少し後押ししていこうと思っている。

期末考査と1学期の評価 考

https://www.hira2.jp/quiz/quiz-gaidai-20151022.html
期末考査の採点と1学期の評価が、昨日今日でほぼ終了した。昨日は、同僚のO先生と前々から約束していた京橋での懇談の日で、久しぶりにアルコールを注入した。(笑)O先生の話は、非常に独創的で勉強になる。

ところで、最近の受験事情については、二分化する傾向にあって、年明け(共通テストや一般入試)まで頑張る受験生と、指定校推薦や自己推薦入試などで年内に合格を決めたい受験生である。

1学期の評価は、後者にとっては実に死活問題である。特に指定校推薦を希望する生徒にとって校内の競争がある故に熾烈である。

受験における選択肢を論じるつもりはないし、各人各様に成長してくれればそれでいいのである。K外大(本日の画像参照)のチェコの留学生がLHRで3年生に伝えてくれた「勉強は未来への自分へのプレゼント」というテーゼは実に正しいと思う。(6月27日付ブログ参照)

2025年7月3日木曜日

期末考査の採点考

試験最終日1限目。私の地理総合の試験が終わった、すぐに集まった解答用紙をスキャンしてPDFに変えてYou Markという採点ソフトに入力。生徒の出席番号をクラスごとに入力していよいよ採点開始である。それまでの事前準備にも1時間以上を費やすのだが、7クラスの採点を行うゆえに不可避の作業である。今日は、職員室でほぼ3時間、根を詰めて採点した。1問1問、正解ならmを押して◯、間違いならxを押して✗をつけていく。

このソフトを使う利点は、採点時間がかなり短縮できることと、正解と間違いの再チェックを1問ずつ一気に行えるので、採点間違い防止にきわめて有効であること。アナログで採点すると点数計算のミスが出てしまうが、さすがコンピュータ、そういう煩わしさがなく正確であることの3点だと思う。

2025年7月2日水曜日

日本人の宗教観について

https://www.nippon.com/ja/features/h00226/
期末試験後の授業準備のため、日本人の宗教観について改めて調べてみると、様々な統計データがあって困惑する。

文化庁のデータ「宗教年鑑」(2021)によると、神道系48.5%、仏教系46.4%、キリスト教系1.1%、その他4%で、人数で換算すると人口の1.5倍になる。これは宗教法人からのデータであるからで、アンケート調査では、何らかの信仰を持っている人は2~3割という結果が出ることが多いらしい。

現代の日本社会は、どの宗教・宗派を信仰しているかは、さほど重視されず、無信仰を自認する場合も含め信仰を意識することが少ない。NHKの調査(ISSP国際比較調査/宗教2008)では、無宗教49.4%、仏教34%、神道2.7%、その他1.1%、プロテスタント0.7%、カトリック0.2%で、宗教を信仰していると答えた人は38.7%であった。

神の存在については、①神の存在を信じない/8.7%、②神の存在はわからないし方法的に明らかにできない/19.2%、③神がいるとは思わないが超自然的な力はあると思う/23.2%、④神の存在を信じるときもあるし信じない時もある/32%、⑤疑問に感じるが神は存在すると信じている/1.9%、⑦神の存在に疑いを持たない/4.3%となっている。

時と場合によっては人知を超えた宗教的な存在を肯定する意識を持つという③④が半数以上を占めている。また多くのものに神の存在を感じたり、祀ったりする気持ちについて、理解できる/25.9%、どちらかといえば理解できるが52.9%で汎神論的な感覚も多数となっている。前述のように宗教を信じない=無宗教が49.4%であっても、単純に無神論者・不可理論者が半数とはいえないといえる。

ギャラップ社による2017年の調査では、日本は29%が無神論者で中国についで2位になっている。これは、一神教世界の欧米から見た場合であり、ここまで記した「神」が一神教の神というよりも、日本神道的八百万の神や仏教の諸天なども含むものとして見たほうが妥当であると思われる。授業で扱っている世界価値観調査も同様であると思われる。

まあ、基礎的な資料としてはこれくらいかと思う。

2025年7月1日火曜日

大谷選手と間柄的存在

大谷選手の人間性が、アメリカで話題になって久しい。その逸話については挙げればきりがないのだが、その根底に和辻哲郎の「間柄的存在」という日本の倫理観があると私は思っている。アメリカは、極めて個人主義的でプラグマティズムの価値観が強い。その対極的な大谷選手の振る舞いに驚きを隠せないのであろう。

先日、少しエントリーしたが、大谷選手のHRを父親が取りそこね、泣いていた子供に、試合後サインボールやバットを送った話だが、私は直感的に大谷選手の行動を予想できた。野球選手とファンという間柄の中で、そういう行為が理想的だからだ。

常に社会(他者と言い換えても良い)との関係性の中で我々は生きている。大谷選手なら、ドジャーズ、MLB、アメリカ、日本などといった社会との間柄的な関係性の中で生きているわけである。だから、彼がDHという立場で、ベンチに長くいる故に、プレイヤーのための飲料を用意するのも十分理解しうるし、スランプに悩むメンバーに声をかけるのも、足を痛めたフリーマンにスパイクに敷く中敷きをプレゼントするのも、パドレス戦で死球を受けて、仲間に来るなというポーズを取って収めたのも、間柄的存在から見て妥当かつ理想的な行為なのである。

期末考査が終わって、夏季休業までに2コマずつの授業がある。日本の価値観について語るつもりだが、やはりメインは和辻哲郎、そして挫折感を味わった本居宣長かなと思う。

2025年6月30日月曜日

6月末日 真夏の夜の夢

https://booth.pm/ja/items/1424400
まだ6月末日だというのに、とんでもない暑さである。今日は、登校する予定はなかったのだが、自宅で採点準備をしていて、不備が見つかりその修正作業のために登校したのだった。

日差しは完全に真夏のストロングさで、まるでマグマ大使の光線を受けて溶けていく”人間もどき”になった気分である。修正作業を終えて、最寄り駅に着くと妻が車で迎えに来てくれていた。坂道の連続である帰路をこの暑さの中、歩くとヤバイと思ってくれたのだろう。

今夜はどんな夢を見るのだろうか。このところ良い夢を見ていない気がする。ちなみに、シェイクスピアの”A midsummer Night's Dream ”については、なぜこのようなタイトルになったのか議論が続いているようだ。今夜の夢は、できれば、シェークスピアに肖って「喜劇」であって欲しい。(本日の画像は、シャガールの真夏の夜の夢。)

2025年6月29日日曜日

アフリカから見た12日間戦争

アフリカから、今回のイスラエルとイランの12日間戦争というYouTubeを見つけた。以下に記録しておきたい。https://www.youtube.com/watch?v=IeXPMcAHvcQ

親パレスチナ政策を長年貫いている南アは当然イスラエルを非難。ガザ侵攻をジェノサイドだと国際司法裁判所に訴えていたくらい故、当然だと思われる。

モーリタニアも国連憲章違反であると非難声明を出している。首都のアメリカ大使館前でも抗議デモを行っている。スーダン外務省も不当な空爆として非難。アルジェリア、セネガル、ギニアビサウなどは懸念を表明した。

一方、モロッコなど西側と近い国は公式表敬を出していない。(モロッコはイラン革命の際、国王の亡命を受け入れた国である。)イスラエルとの国交正常化をした国でもある。西サハラ問題では、反モロッコの独立勢力をイランが支援していたという経過もある。ルワンダもイスラエルの同盟国故に沈黙を守っている。

ガーナでは、ようやくインフレが収まってきたところだが、原油価格の上昇が予想され、コストプッシュ・インフレが起こりそうで、全くヒドイ話だというところ。エジプトもイスラエルからの天然ガス供給が減少すれば、ウクライナの小麦輸入と相まってダブルパンチである。戦争がどうのこうのという前に、アフリカ諸国の脆弱な経済に与える影響が心配される。

驚いたのは、ブルキナファソの軍事政権はイランと武器輸出の安全保障などの防衛協力を強化しており、民生用の原発開発への研究・訓練の協力を深める覚書に調印しており、反フランスと反欧米で繋がっているようだ。果たしてどうなることやら。

2025年6月28日土曜日

TOKIOの崩壊

https://www.tostv.jp/recommend/1051.html
私がまだTVを見ていた頃、日曜日の鉄腕DASHがお気に入りだった。ジャニーズがまだ元気な頃で、珍しくバンドを編成しているグループだった。リーダーの城島はギター、ドラムが松岡、ベースが山口、キーボードが国分、そして長瀬がボーカルだった。

とはいえ、鉄腕DASHでは、若い彼らが主に体を張った企画(阪神電車と競争するとか、自転車やスーツケースで時間を競うとか)が多くて、なかなか楽しかった。DASH村やDASH島などの農業や建築などに関わる内容も面白かった。またガチンコで、不良たちのボクシングや受験を応援したりして、話題を集めた。

ところが、山口の問題行動でTOKIOは揺れ、長瀬が脱退。今回は国分の問題行動が取り立たされており、結局解散することになったようだ。時代の流れというか、なんというか。

2025年6月27日金曜日

チェコ・ウクライナの留学生

学院にK外大からインターンとして、チェコとウクライナの留学生が来ていて、是非話をしたいと思っていたが、今日の朝礼で最終日であることがわかった。忙しくてなかなか会えなかったのだが、うまく2限目が空いていたので、会話することが出来た。

担当のA先生から、すでに2人は無宗教だと聞かされていたので、まずはそれを確認。チェコは、フスの宗教革命以来、宗教的には複雑な歴史を持つし、ウクライナは、西からカトリック、ウクライナの正教会、ロシアの正教会など分裂傾向にある。2人とも、地図帳で出身地を示してもらったが、それぞれ東部の出身だった。社会主義時代の反ロシア的意識は強かった。色んな話をしたが、6限目の3年生全体のLHRで、プレゼンをするとのことだったので、見に行く約束をしたのだった。

チェコの留学生は、モチベーションについて、なかなか凝ったパワーポイントで日本語で語ってくれた。結論は、「勉強は未来への自分へのプレゼント」というものであった。ウクライナの留学生は、英語で(U先生の通訳つき)ウクライナ戦争の体験を語ってくれた。両方とも、生徒諸君にとって実に有意義なものであったと思う。

さて、残る時間はQ&Aであった。驚いたのは、司会のA先生が、質問はありませんか?と聞かれた時、近くにいた生徒たちが一斉に私の方を見たことである。生徒1人、先生2人が質問をしたのであるが、地理の授業で、海外の人と様々な会話を繰り広げている話もしており、期待に答える必要があると思い、残り5分というところで、「One Question!」と声を上げた。(このフレーズは、ゴルゴ13で、記者に扮したゴルゴ13が言う台詞である。正直、インパクトがあり、見事に決まったのだった。笑)

「Please teach us, Thank you,and Good bye, in Czech, in Ukraianian.」生徒諸君に、チェコ語・ウクライナ語で”ありがとう”と”さよなら”を教えて欲しいと言ったつもりである。お得意のサバイバル・イングリッシュであるが十分通じたようだ。

それぞれ教えてくれて、生徒諸君は復唱していた。最後の締めとして良き質問だったと思う。司会のA先生も実に喜んでくれたのだった。最後に、2人に私が(K外大のある)枚方在住であることも事前に言っていたので、「See you、in Hrakata.」と言ったら大受けしたのだった。(笑)

本日の画像は、ポーランドボールに良いものがなかったので、チェコ語・ウクライナ語の”ありがとう”である。

2025年6月25日水曜日

「荒野に果実が実るまで」

乱読家の私が、今一番注目しているのは、6月17日に発売された集英社新書の「荒野に果実が実るまで」である。京大農学部出身の新卒青年がウガンダでの国際協力を描いたノンフィクションである。アフリカ留魂録としては、早く読んで書評をと思うのだが、期末考査期間にぶつかってしまった。できるだけ早く読みたいものだ。